東方奇才伝   作:サンダーボルト

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今回は上海がある決断をします。あの式神達も再登場します。

どうぞご覧ください!


ランチェンハイ

宴会場に戻ってきたレヴァンを待ち受けていたのは、上海の突進だった。一瞬息が詰まったが、どうにか抱きとめる事に成功した。

 

 

「シャンハーイィィィィィ……!!!」

 

「あ~…悪かったな…心配かけて」

 

 

胸に埋まって泣いている上海の頭を撫でて慰める。幽香はそれを見て、組んでいた腕を離した。

 

 

「あらあら、変わった子に好かれてるのね」

 

「誰のせいであんなに泣いてると思ってんだよ」

 

 

幽香の後ろで魔理沙が睨む。幽香はそれを気にすることなく、上海に向けて手を伸ばす。

 

 

「ごめんなさいね、お人形さん」

 

 

幽香もレヴァンと同じように慰めようとしたのだろう。だが、頭に伸びた手は他ならぬ上海自身によって払いのけられた。

 

 

「…シャンハイィィィィィッ!!!!!」

 

 

敵意をむき出しにした上海がうなり声を上げながら幽香を睨みつけた。可愛らしい外見とは裏腹に、上海から発せられた気迫は大妖怪の動きを止めるには充分すぎる程に巨大だった。魔理沙は口を開けたまま呆然とし、座っていたパチュリーと幽香は興味深そうに上海を観察していた。その視線、特に幽香からのものが癪に障ったのか、上海はより一層怒りを増して今にも襲い掛かりそうだ。

 

 

「落ち着け。こいつが僕に危害を加える事はしばらくない」

 

 

レヴァンがなだめるように言うと、上海が発していた敵意が弱まる。それでも幽香を睨むのはやめなかった。

 

 

「これ以上一緒にいると不味そうだな。一杯付き合ってやりたいところだったが、こいつが完全にへそを曲げちまうから止めておくか」

 

「そうね、残念だけれど」

 

 

とか言いつつちっとも残念そうではない幽香を置いて、レヴァンはパチュリーの隣へ座った。幽香もレヴァンをちらりと見たのち、別の所に歩いていった。幽香がいなくなったのを確認すると、魔理沙が慌ててレヴァンの隣に座った。

 

 

「おい大丈夫だったか?あいつは幻想郷でも上位に入る実力者な上に、かなり血の気が多いからな」

 

「……そうね。見たところレミィと同等かそれ以上の力を持っているわ」

 

「いくらお前でも、闇雲に勝負仕掛けるのはやめといた方がいいぜ」

 

「……もう遅い」

 

 

小さく首を振りながら呟いた言葉に、魔理沙とパチュリーの表情が凍る。

 

 

「お…おい……?」

 

「まさか…?」

 

「……戦うって約束しちゃった」

 

 

魔理沙はさっきよりも大きく口を開けて固まり、パチュリーは頭を抱えて項垂れた。

 

 

「…だってしょうがないじゃん。逃げられそうになかったし。な~上海?」

 

「……シャンハイ」

 

 

上海に同意を求めたが、返ってきたのは非難めいた眼差しだった。上海もいつも味方ではないようだ。我に返った魔理沙がレヴァンの肩を掴んで揺さぶる。

 

 

「お前どうすんだよ!?よりにもよってあいつなんかに…!」

 

「…まあ大丈夫だろ。こっちの準備が整うまで待ってくれるって言ってたし」

 

「準備ったって…本気であの風見幽香に勝てると思ってるのか!?」

 

「勝てない相手じゃない」

 

 

きっぱりと言い切ったレヴァンに対し、魔理沙は更に抗議しようと口を開く。しかしそれをパチュリーが遮った。

 

 

 

「もうよしなさい。あなたがいくら言ったってしょうがないわ」

 

「けどよ…!」

 

「…もしもの時は、私も力を貸すわ」

 

 

パチュリーの力強い眼差しがレヴァンを見据える。レヴァンは視線を合わせようとはしなかったが、パチュリーの強い意志は伝わっていた。

 

 

「必要ないと思うが……もしもの時は頼らせてもらう」

 

「…そう」

 

 

レヴァンからの返事にパチュリーは満足そうに微笑む。魔理沙は納得できていないようだったが、パチュリーの言う通り何を言ってももう遅い。大きなため息を吐き、レヴァンの肩を叩いた。

 

 

「…しょーがないから私も力を貸してやるよ」

 

「ありがたいね」

 

 

魔理沙は少し嬉しそうに笑うと、もう一度肩を叩いて去っていった。

 

 

「…どこ行ったんだアイツ」

 

「さあ?霊夢の所じゃないの」

 

「…シャンハーイ!」

 

「おわっ!?」

 

 

今まで黙っていた上海が急にレヴァンの元から飛び出した。

 

 

「…いきなり何だ?」

 

「ご主人様に戻るよう命令されたんじゃない?…さてと、悪いけどそろそろ私もレミィの所に戻るわ」

 

「そうかい、じゃあな」

 

「ええ。後でレミィ達にも顔を見せに行った方が良いわよ?」

 

「分かった」

 

 

手を振ってその場を後にするパチュリー。また一人になったレヴァンは、楽な姿勢をとって少し休憩をとることにした…。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

一方、上海はアリスの元へと戻り、体を揺すって起こそうとしていた。

 

 

「シャンハーイ!シャンハーイ!」

 

「……ううん…どうしたの……上海…?」

 

 

目をこすりながら起きたアリスに、上海は身振り手振りを交えて必死に何かを伝えていた。傍から見れば何を伝えたいのかまるで分からないような動きだが、生みの親であるアリスには充分に伝わっていた。

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

そして上海のジェスチャーが終わると、その内容を理解したアリスが信じられないという風に唖然とした表情を浮かべた。上海は不安そうな顔でアリスを見つめている。

 

 

「シャンハーイ…」

 

「……ふふっ」

 

 

アリスは優しく微笑んで、上海の頭を撫でる。

 

 

「上海、そんな顔しないの。私は嬉しいわ」

 

「シャ、シャンハーイ…?」

 

 

上海は戸惑いが混じった声を出す。そんな上海を安心させるように、アリスは上海を抱きしめた。

 

 

「レヴァンと会ってあなたは変わったわ。理由は分からないけれど、あなたには確かに心というものが宿った。そのあなたが自分からそうしたいと思ったのなら、私はそれを応援するわ」

 

「……シャンハイ…」

 

「私の事なら気にしないで。あなたはあなたの道を自分で見つけたの。それに誇りを持って…いきなさい」

 

 

アリスの目尻にうっすらと涙が浮かぶ。

 

 

「……シャンハイ、アイシアイ…」

 

「!!……ええ、私も愛してるわ…。私の、可愛い上海…!」

 

 

上海がアリスの胸に思い切り顔を押し付け、アリスが強く抱きしめる。

 

 

心を持った人形は、決意を胸に新たな道へと歩き出す…。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「やあ。隣、いいかい?」

 

「……九尾の八雲か。お好きにどうぞ」

 

 

休んでいたレヴァンの隣に座ったのは、いつぞやの宴会の時に紫と一緒にいた八雲藍。そしてその後ろに隠れるように橙が座る。心なしか怯えている様子だ。

 

 

「はは…できれば、藍、と呼んでくれないか?」

 

「呼んでいいならそう呼ぶが」

 

「そうしてくれ。どうもその呼び名は慣れない」

 

 

困ったように笑っていた藍だが、レヴァンが藍と呼ぶと伝えると普通に笑った。…ここでレヴァンは橙が藍の服をつまんだまま怯えているのに気が付いた。

 

 

「……で、そこの化け猫は何故ビビってるんだ?」

 

 

橙の体がビクッと跳ねた。藍はそんな橙の頭を撫でながら苦笑する。

 

 

「前に君に小皿をぶつけられたのがまだ尾を引いてるようだ。私がいるから怯える必要は無いと散々言ったんだがな…」

 

「妖怪がいつまでもそんな事でビビんなよ…」

 

「そう言うな。妖怪にも色々いるんだ」

 

 

呆れたように橙を見ると、それから隠れるように藍の体にしがみついた。やれやれ、と藍は首を振ると、レヴァンの目の前に置いてある中身の入ったコップが目に入る。

 

 

「どうした、飲まないのか?まだ酒が入っているぞ?」

 

「休憩中だよ。なんならこれ飲むか?口は付けてない」

 

 

そう言ってコップを藍に手渡す。

 

 

「口を付けていても気にしないけどね。まあ、ありがたく頂こう」

 

 

レヴァンからコップを受け取り、そのまま口を付ける藍。……その中身の酒のあまりの強さに顔をしかめた。

 

 

「これは……人間が飲むには強すぎないか?一体どこからこんな物を…」

 

「子鬼は総じて悪戯好きだ」

 

「……ああ、うん。大体分かったよ」

 

 

全てを察した藍は黙って酒を飲み続ける。レヴァンはまだ中身の入っている酒瓶を手に取ると、橙に向けて差し出す。

 

 

「お前もいい加減飲め」

 

「……ふぇ?」

 

 

橙は目をパチパチさせ、どうしたらいいか戸惑っている。藍はそれを見て空のコップを橙に渡す。

 

 

「ほら、受けなさい」

 

「は、はい藍しゃま…」

 

 

コップを両手で受け取った橙は、そのままぎこちなくコップを差し出した。レヴァンはそれに酒をなみなみと注いだ。

 

 

「ほい」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

ちまちまとコップに口を付ける橙。段々緊張がほぐれてきたのかペースが上がり、尻尾も嬉しそうにぴこぴこ動いている。藍もその様子を見守りながら酒を飲む。

レヴァンはさりげなくテーブルを見渡した後、アームを伸ばして他のテーブルから藍や橙の好きそうな料理を持ってきた。料理が二人の目の前に置かれると、橙は目を輝かせて喜び、藍は少し驚いた後に満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

「ふふ、ありがとう」

 

「わーい!」

 

 

橙は手掴みでワイルドに、藍は箸を使って上品に料理を食べ進める。余談だが、何故か橙よりも藍の方が料理の減るペースが早い事に、レヴァンは目を丸くして驚いていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

酔えない事はつら(以下略

 

 

 

 

「それでなぁ!私の膝に橙がすり寄ってくるんだよ!眠たそうにとろけた目をして、『らんしゃまぁ…ふみゅぅ……』なんて言うんだぞ!?その時の私の気持ちが分かるかい!?」

 

「……すんません藍様、その話もう十回はしてんすけど…」

 

「何だと!?なら私が何故十回も話してるのか分かってるのか!?」

 

「…橙が可愛いからですよね」

 

「違う!!橙が超絶可愛いからだ!!」

 

「…………く~……」

 

「!!聞いたかレヴァン!?今、橙が寝言で『藍しゃま、好きです!一生橙の傍にいてください!橙は藍しゃまの式でいられて幸せです!』って言ったぞ!」

 

「言ってねえよ」

 

「いいや言った!心で言った!私は橙の心の声を聞いたんだ!」

 

「お前自分で”寝言”っつったじゃねえか」

 

「心の寝言だ!!」

 

「…もうやだこいつめんどくさい」

 

 

大好物のおかげで酒もどんどん進み、現在藍は絶賛泥酔中だった。橙はそこまで強くないのか、藍の膝でくうくう寝息をたてている。藍はそんな橙の寝顔をながめて、ほっこりとしていた。

 

 

「はぁぁ……なんで橙はこんなにも可愛いのだろうな?なあレヴァン?なんでだろうな?」

 

「知るか…」

 

「橙だからに決まってるだろう!君は何を言ってるんだ!」

 

「むしろお前が何を言ってる」

 

「ああ橙……ちぇぇん……ちぇんちぇんちぇええええええん!!!」

 

「…………」

 

「ちぇええええええええええええええん!!!!」

 

 

危ない場所にトリップしだした藍を見て、もう手遅れだと判断したレヴァンは、そそくさと神社の縁側のほうへ退避していった。




次回は上海が何を決めたのかが明らかになります。


今までろくに絡まなかったレミリア達との絡みも…?


そして、遂に新しいテンプルアーマーが…。



次回もお楽しみに。
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