東方奇才伝   作:サンダーボルト

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フランの一人称はフランにした方が可愛いと思うのは私だけでしょうか?今回、一回だけフランが自分の事をフランと言います。


そして次話から新章突入します!


それではどうぞ!


テンプルアーマーは誰がために

泥酔した藍から逃げ出したレヴァンは、月明かりに照らされている縁側に腰掛けていた。その片腕には、鈍い銀色に輝くメカが装着されている。

 

 

 

 

 

魔導手甲(まどうてっこう)

 

 

 

 

 

レヴァンが幻想郷に来て初めて製作したテンプルアーマー第一号。指先から肘までを銀色の装甲ですっぽりと覆い、手の平から魔力による弾幕を発射できる。魔力を持たないレヴァンが魔力による弾幕を作る鍵は、パチュリーに貰った魔力を秘めた手袋である。それを変換機としてアーマーに組み込み、レヴァンの動力炉から供給されるエネルギーを魔力に変換する事で弾幕を生成するのだ。

 

 

 

これは来るべき弾幕ごっこの為に開発されたもの…………ではない。

 

 

 

これを作った真の目的は、アーマーのエネルギーを魔力に変換出来るかを試す事なのだ。

 

 

幻想郷には魔力の他にも妖力や霊力といった不可思議な力が存在している。これらは弾幕を作る為だけの力ではない。結界を張ったり、幻術をかけたり、大規模なものだとレミリア達のように幻想郷を丸ごと霧で飲みこむ、なんて事も可能なのだ。

 

いくら高性能のアーマーがあったとしても、こういった幻想郷特有の力に対抗できるかといえばそうでもない。熱線砲やミサイルが通じる相手もいれば、全く通じない相手がいたとしても不思議ではない。目には目を、歯には歯を。魔法などを研究して正しく理解し、それを自分の力にする。最悪の場合は幻想郷の全員を相手取らなければならないレヴァンにとって、これはとても重要な事なのである。

 

 

 

 

…しかしそれが全てかと言えば嘘になるだろう。

 

 

 

 

力を得なければ、守れないものもある。弱肉強食の幻想郷で力を示すことで、自分が動きやすくなる。レヴァンは自分の心境の変化を何となくだが自覚していた。守りたいもの、失いたくないものがある。だからこそ、力が必要なのだと。

 

 

魔導手甲はただエネルギーを変換するだけのもの。弾幕は出せても、魔法陣を描いて魔法を発動させる事はできない。この一歩は小さな一歩。しかし踏み外せない大事な一歩だ。これが成功すれば、魔力の他に妖力なども使えるようになる可能性も見える。魔法を使うテンプルアーマーを作る事も夢ではないのだ。

 

 

 

月に魔導手甲をかざしたレヴァンの心中は、新しい可能性を見出した興奮と、避けられないであろう戦いへの覚悟がせめぎあい、複雑なものだった。

 

 

 

 

 

 

レヴァンはドライバーでネジの締まり具合を調節しながら、手を握ったり開いたりして丁度良い具合になるよう微調整している。ネジがきつすぎればスムーズに装着できなくなり、かといって緩すぎれば何かの拍子に外れてしまいかねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レヴァン!!!」「お兄ちゃん!!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

突如響き渡る大声。その主はレヴァンが自分たちの所へ来るのを今か今かと待ち侘びていたスカーレット姉妹だった。パチュリーから顔を出すよう言われていたが、魔導手甲の調整に時間をかけ過ぎた事でしびれを切らし、探しに来たらしい。

 

 

…だがタイミングが悪すぎた。

 

 

大声に驚いたレヴァンの手元が狂い、ネジが一気に締まる。開いていた腕の部分の装甲が、バチンッという音と共に勢いよく閉まった。

 

 

「いってえ!!!」

 

「「!?」」

 

 

腕を押さえて倒れたレヴァンに驚き、慌てて駆け寄るレミリアとフラン。レヴァンは痛さに悶絶しながらも、ドライバーで何とかネジを緩めて魔導手甲を取り外した。腕の具合を診て、特に問題が無いのを確認したレヴァンは、再び魔導手甲を腕にはめた。

 

 

「精密作業中は大声を出さないようにお願いしますね、お嬢様方」

 

「「……ごめんなさい」」

 

 

勿論、注意するのも忘れてはいない。申し訳なさそうに俯く二人は小さな声で謝った。レヴァンはその言葉に頷いて、肩を軽くポンポンと叩くと魔導手甲の調整へ戻った。怒っていないと分かった二人は安心した表情になり、レミリアはレヴァンの右側に、フランは左側に座った。二人の目線はレヴァンの顔を見たのち、腕の魔導手甲へと移る。

 

 

「ねえお兄ちゃん、それってテンプルアーマー?」

 

「ああそうだ。博麗からの貰い物を使って作った」

 

「……え、今日作ったの?あなたが神社に帰ってから半日経ってないわよね?」

 

「元々似たようなの設計してて、それをちょっと書き直しただけだからな」

 

「それでも早いと思うんだけれど…」

 

「お兄ちゃんすごーい!!」

 

「そうそう、僕は凄いんだよ」

 

 

製作時間の早さに驚くレミリア。フランは無邪気にはしゃいでレヴァンに引っ付いている。レヴァンはそれを少し邪魔そうにしながらも、作業を止める事無く喋っていた。

 

 

「…そういえば、あなた早速やらかしたみたいじゃない」

 

「……」

 

 

無言の肯定を返す。確かに色んな騒ぎを起こしはしたが、中には人には言えないような内容もあるので下手に口を開かない方が賢明だ。

 

 

「なんでも…フフッ、花妖怪を押し倒して耳を撫でながら友達欲しいって叫んでたそうね」

 

「ごめん、それ僕知らない」

 

 

色んな騒ぎが混じっていた。普通に考えてそんな奇行は嘘だと分かる。レミリアもそれを分かっていて、からかっているのだろう。その証拠に可笑しそうに笑いながら喋っている。

 

 

「まったく、あなたといると退屈せずに済みそうね」

 

「いい退屈しのぎになれて光栄だよ…」

 

 

クスクス笑うレミリアに、レヴァンはうんざりしながら皮肉って返す。

 

 

「………でも、あまり無茶はしないでね」

 

「……?」

 

 

急に声のトーンが落ちた。横目で様子を窺うと、さっきまで笑っていたレミリアの表情が、不安気に曇っていた。レヴァンは作業の手を止めて、レミリアの言葉に耳を傾けた。

 

 

「私達と違って、あなたは人間よ。確かにあなたは強いけれど、それでも死ぬ危険はゼロではないわ」

 

「…」

 

「風見幽香の強さは私も知ってるわ。私と同じ吸血鬼を何十と葬り去った、大妖怪…。そんな存在にあなたは目を付けられた。

それに見合う強さをあなたは持っているのでしょう?私達の知らない大きな何かを。だから勝負の約束をした事にとやかく言うつもりは無いわ」

 

 

レミリアはここで一旦区切る。その顔は、さっきよりも不安の色が増していた。

 

 

「だけど心配なの。あなたがいつか、静かに消え去ってしまいそうで…。私達の知らない所で、死んじゃうんじゃないかって…」

 

「……」

 

「あなたは自分の定めた目的の為なら、その身に降りかかる危険を顧みずに行動するわ。……例え、自分が死ぬと分かっていても、最後まで…。それこそ、フランと殴り合ってまで、フランを狂気から救ってくれたように…ね」

 

 

フランがその事を思い出し、少し泣きそうな顔になる。レミリアは心を痛ませながらも、更に言葉を続ける。

 

 

「私達が何を言ってもあなたを止められない事は分かってるわ。……だから、だから代わりという事ではないけれど……死なないで」

 

「………」

 

「何があっても、絶対に死ぬような無茶はしないって…約束して…」

 

 

話を終えると、レミリアは懇願するような目をレヴァンに向ける。レヴァンはずっと沈黙を保っていたが、やがて意を決したようにレミリアの方に顔を向け、目をしっかりと合わせて口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理だ」

 

 

 

 

レミリアに告げられたのは、期待していた言葉ではなかった。レミリアの顔が悲しみでくしゃりと崩れ始め、それを見たフランは怒りが沸き起こる。

 

 

「僕が何をするかは僕が決める。誰に何を言われようと、最後に行動を決めるのは僕だ。これまでも、これからもそれを変えるつもりは無い。……それと勘違いしているようだから言っておくが、僕は自分の命を粗末に扱った事はは一度も無い」

 

 

レミリアとフランの感情が一転して驚愕に染まった。傍から見れば、身を捨てていると言っても過言では無いレヴァンの行動が、本人はそんなつもりは無いと言ったのだから。

 

 

「僕が傷を負うような行動をしたのなら、それが必要だからだ。無傷で済む方法があるなら、僕だってそうするさ。誰も好き好んで傷ついたりしない」

 

 

安心したような、そうでないような、なんとも微妙なラインの返事だ。レミリアは思わず苦笑する。これはある意味、妥協点なのかもしれない。自身の生き方とレミリアの願いを天秤に掛け、生き方を変えないまでも、出来る限りレミリアの願いに応えようとした結果が、この答えなのかもしれない。

 

 

「……仮に僕が死ぬような結果になったとしても、それは僕が命を懸けるに値する何かを残すためだ」

 

「何にもいらないっ!!」

 

 

フランが叫び、レヴァンの腕に抱き着いた。不機嫌そうにそっぽを向きながらも、腕はガッチリとホールドされている。

 

 

「何にもいらない……お兄ちゃんが一緒に居てくれたら、私はそれでいいもん…」

 

 

レヴァンは口を半開きにして固まった。本気で驚いているようだ。同じくレミリアも妹の言葉と行動に驚いてフリーズしている。

 

 

……そしてレヴァンが再起動した。

 

 

組みつかれている腕を体の前へ持っていくと、フランは必然と引き寄せられる形でレヴァンの胸にもたれかかる。そしてレヴァンは空いている方の手でフランの頭を撫でまわした。

 

 

「嬉しい事言ってくれるじゃねえか、このこの」

 

「ふ、ふああ!?」

 

「ははは、お前はきっと立派なレディーになれるな」

 

「フ、フランはもう立派なレディーだもん!」

 

「おっと、そうだったな。よしよし」

 

「あ、あうあうう……」

 

 

いつになく積極的なスキンシップを始めたレヴァン。フランは動揺しているが、スキンシップ自体は満更でもなく、幸せそうに撫でられている。レミリアは正気に戻った後、少し羨ましそうに見ていたが、音もせずいきなりレヴァンの背後に現れた影を見て、その感情を押し殺した。

 

 

「あら、こんな場所で随分と楽しそうですね、レヴァン様、フランお嬢様?」

 

 

微笑を浮かべた十六夜咲夜がそこにいた。少し遅れて美鈴、パチュリー、こぁも合流する。フランは慌てて手を解放して離れようとしたが、解放された腕が腰に回され、普通に抱き寄せられてそのまま撫でられていた。

 

 

「楽しそうも何も、実際楽しいからな。新しいアーマーも完成したし」

 

「……だからフランをそんなに撫でているのかしら?」

 

「そうだよ。悪いか」

 

 

顔を真っ赤にしているフランとは対照的に、顔色一つ変えずにすっぱり言ってのけた。そのあまりの堂々とした振る舞いに一同は唖然とした。

 

 

「お、お兄ちゃん!新しいアーマーってどうやって使うの?」

 

「ん?これか?」

 

 

状況を打破する為にフランが質問をぶつける。レヴァンは撫でるのを止めて、全員に見せるように魔導手甲をかかげた。

 

 

「こいつはグリップ操作…まあ指の動きで操るんだ。そんで弾幕をぶっ放せる。弾丸とレーザーを使い分けられるんだ」

 

「ほぇ~、凄いですね……あれ?レヴァンさんって魔力とか無かったんじゃ…」

 

 

感心していた美鈴が、ふと疑問に思って質問する。

 

 

「ああ、これっぽっちも無いよ?だからこいつにエネルギーを通して、魔力に変えるんだよ。こんな風にな…」

 

 

レヴァンは地面に手の平を向けて構えると、魔導手甲の手の平の部分が白く発光しだした。それを見ていた全員、特にパチュリーが驚いていた。

 

 

「嘘……これは紛れもなく、魔力の反応よ…」

 

「専門家が言うなら間違いないな。どうやら変換は成功したようだ。……よし、次は弾幕を撃ってみるか。ちょっと離れてろ」

 

 

変換が無事成功して喜んだレヴァンは、次に弾幕を撃ってみる事にした。周りが一歩離れたのを確認すると、魔導手甲からキュィィン…という甲高い音が鳴り響いた。そして一瞬強く光り、白く輝く弾幕が数発発射されて地面を抉った。

 

 

「すごいすごーい!かっこいいよお兄ちゃん!」

 

「うわぁ~!ホントに弾幕が出るんですね!これはパチュリー様でも簡単には作れませんよ!」

 

「いや、これはパチュリーの協力があったからできた物だ」

 

「……私?」

 

 

フランとこぁが弾幕が出た事に歓喜の声を上げる。一方、魔導手甲に関して今の今まで知らなかったパチュリーが、協力という言葉に首を傾げた。

 

 

「魔導手甲にはお前から貰った手袋を組み込んでるんだよ。それが僕のエネルギーを魔力に変える役割を果たしてるんだ」

 

「そうなの…。あなたの発想ってどこか飛んでるわね」

 

「まあ狂ってるからな。…次はレーザーを試してみよう」

 

 

レヴァンは再び魔導手甲を構える。フランとこぁを筆頭に期待の眼差しがレヴァンへと集まった。魔導手甲はその期待に応えるかの様に、エネルギーのチャージ音をさっきよりも大きく鳴り響かせ……。

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

そのまま静かになった。

 

 

「…………あれ」

 

 

レヴァンは構えるのを止めて魔導手甲を眺め、再度構えなおした。

 

 

「……次はレーザーを試してみよう」

 

 

もう一度魔導手甲の手の平が輝き、キュィィン…というチャージ音が大きく鳴り響く。そして……輝きが消えて音が鳴りやんだ。

 

気まずい雰囲気が流れ、レヴァンにどう声をかけていいか悩むレミリア達。レヴァンは腕を振ったり叩いたりして、魔導手甲の調子を確かめている。

 

 

「おっかしいな…。回路がどっかイカれたのか?それとも発射口に何か問題でもあるのか…」

 

 

手の平を自分に向けてグリップ操作を色々試してみる。しかし、いくら動かしても手の平に輝きは戻らなかった。

 

 

 

「その、レヴァン様…。なんと言えばいいのか…」

 

「別に落ち込んでないからそんな声出すな」

 

 

咲夜が申し訳なさそうに声をかけるが、レヴァンはさして気にしていなかった。発明に失敗は付き物だ。いくらレヴァンでも、テンプルアーマーを作る際に全くミスをしないという事は無いのだ。ましてや、今回は魔力変換という新しい分野の発明だ。失敗することは覚悟の上なのだ。

 

 

……と、ここで急にチャージ音が復活した。レヴァンはいきなりの事で反応が遅れてしまう。魔導手甲の発射口が顔に向いたままになっていたので……レーザーはレヴァンの顔面に直撃した。

 

 

「ぶぐわっっ!!!?」

 

「レヴァン(さん)(様)!?」「お兄ちゃん!?」

 

 

衝撃でレヴァンが後ろに倒れ、レミリア達が予想外の事態に慌てだした。その中で咲夜だけが冷静であり、時間を止めて救急箱を取りに行き、そのままレヴァンの近くに移動して時を動かす。

 

 

「レヴァン様、今手当てを……あら?」

 

 

消毒液や包帯を取り出そうとしていた咲夜は、肝心な事を忘れていたのに気付いた。レヴァンはナノマシンによって自己修復が可能な体なのだという事を。焼けた皮膚はみるみるうちに治っていき、ものの数秒で完全に治ってしまった。

 

 

「……改良が必要だな、こりゃ…」

 

 

倒れたまま呑気な事を呟いたレヴァンに対し、全員が困ったような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

しばらく談笑したのちに、レミリア達は中に戻っていった。そして入れ替わりに上海を抱いたアリスが隣に座る。アリスもまた、レミリアと同じように真剣な眼差しでレヴァンを見ながら話しかける。

 

 

「レヴァン、私の……ううん、私と上海からお願いがあるの」

 

「シャンハイ!!」

 

「……お願い?」

 

 

レヴァンは眉をひそめてアリスの方を見る。すると、アリスが抱いていた上海をレヴァンに差し出した。

 

 

 

 

「……この子を貰ってあげて」

 

「………………は?」

 

 

一瞬、何を言っているのか理解できなかった。貰ってというのは、恐らく文字通りの意味であってるんだろうが…。

 

 

「だが、そいつは確か…魔力の糸で操ってるんだろ?僕に魔力は無いぞ。貰ったところで動かせん」

 

 

魔導手甲はあくまでも魔力による弾幕発射しかできない。弾幕以外の何かを魔力で作り出すのは不可能だ。そもそもアリスは、魔導手甲の事をまだ知らない。

 

 

 

「……分かってるわ。私も上海も」

 

「分かってるって……ならば何故………」

 

 

 

 

レヴァンの言葉が止まる。

 

 

 

 

……まさかとは思うが…。アリスと上海の言いたい事は……。

 

 

 

 

 

「………僕にお前を、改造しろというのか?」

 

「……シャンハイ」

 

 

上海が力強く頷いた。レヴァンの表情が驚きで染まる。レヴァンは上海に何か訊こうと口を動かしているが、驚きが大きすぎて上手く言葉が出ない。レヴァンの訊きたい事を察したアリスが、上海の代わりに答えた。

 

 

「気づいているとは思うけど、上海はあなたの事が大好きなのよ。上海はあなたと喋っているうちに、いわゆる自我…心というものが芽生えたの。レヴァン、あなたは上海にとって特別な存在なのよ」

 

「……な……」

 

「まるで想像してなかったって顔ね…。まあいいわ。それで、あなたが幽香と初めて会おうとした時、上海もついて行こうとしたけど、それを許さなかったらしいわね。

 

……うん、正解。その判断は正しいわ。正直言って、上海一人じゃ連れて行っても大して役に立たなかったと思うわ」

 

 

上海はスカートのすそを握り、悔しそうに震えていた。アリスは上海の頭を撫でて、落ち着かせた後に続きを話す。

 

 

「上海はそれが凄く悔しかったみたい。大好きな人が危険な所へ行くのをただ見送るしかできなかった、力の無い自分は嫌だって…。でも私じゃ、上海をこれ以上強くすることは出来ないし…それに上海もあなたの傍に居たいみたい」

 

「……」

 

「レヴァン…上海を傍に居させてくれないかしら?その為なら、体を改造しても良いって、上海自身も言ってるし……私としても、上海が自分からこうしたいって言った事は、叶えてあげたいし…」

 

「…………」

 

「……駄目?」

 

「シャンハーイ…」

 

 

懇願してくるアリスと上海を見て、レヴァンは頭を乱暴にかきながら葛藤する。落ち着かない感じで何度も足を組み換えしたり、指で床を叩いたり、また頭をかきだしたり……しばらくそうして考え込んでいたレヴァンは、最後に大きなため息を吐いた。

 

 

「……分かったよ」

 

 

上海の表情が明るくなる。アリスも安心して胸を撫で下ろした。レヴァンは上海を両手で抱えて、高らかに持ち上げた。

 

 

「僕がお前に最高のボディをくれてやる。……よろしく頼むぜ、上海…」

 

「シャンハーイ!!!」

 

 

笑いあう二人。その姿を見て一抹の寂しさを感じながらも、アリスは静かにその場を去った。神社の中の喧騒に負けない程の笑い声が、幻想郷の夜空に響いていった。




テンプルアーマー:魔導手甲(まどうてっこう)

幻想郷初製作のテンプルアーマー。動力炉からのエネルギーを魔力に変換し、弾幕として撃ちだす。指先から肘の辺りまでを銀色の装甲で覆っている。モチーフはアイアンマンの腕。

パチュリーから貰った手袋を魔力変換機として使用している。操作はグリップ操作で行い、弾幕は弾丸型とレーザー型を撃ち分けられる。両手分を製作しているので、左右異なる弾幕を張る事が可能。

製作の真の目的は、テンプルアーマーのエネルギーを魔力に変換可能か試す事。これにより将来的には妖力や霊力も変換の視野に入れ、更には魔法を扱うテンプルアーマーの設計も考えている。



次回より、新章突入。


再会していきなり、深い溝を作ってしまった上白沢慧音。


同胞により心に傷を受け、本物の笑顔を失った射命丸文。


美しくも残酷な幻想郷は、彼女らに容赦なく牙を剥く。


レヴァンは彼女らと触れ合い、何を思うのだろうか?


テンプルアーマーは、彼女らを守る鎧となるのだろうか?



次章、『東方天沢恋(とうほうてんたくれん)



「……でも、時々思ってしまうんだ。寺子屋を始めた事は、正しかったのだろうかと…」



「………ぃゃ……………もう…いやぁ…………誰か……私を………助けてよぉ………っ……」



「シャンシャンハーイ!!!!」



「………金が無い」
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