東方奇才伝   作:サンダーボルト

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この東方奇才伝も、東方小説の中でちょっとは有名になってきたり……あっすいません。調子に乗りました。


今回は題名の通り、慧音の話になります。それではどうぞ。


上白沢慧音の憂鬱

~慧音サイド~

 

 

 

私は走る。ひた走る。里の守護者としての使命を全うする為に。空を飛べる事も忘れ、必死に走っていた。

 

 

人々が叫びながら逃げている。黒煙の上がっている場所から、必死で逃げている。

 

 

あの場所を、私はよく知っている。あそこは私にとって、命よりも大事な場所なのだから…。

 

 

「……!!!」

 

 

寺子屋が燃えている。子供達が炎に包まれ、泣きながら私に助けを求めている。水も何も無い。けれども放っておく訳にはいかない。私はがむしゃらに走り出す。炎の中の子供達に必死で手を伸ばす。

 

 

 

――――子供の声が止んだ。

 

 

 

ゆっくりと、その体が宙に浮いていく。

 

 

 

子供の体を無残に貫いた何か。その何かを辿り、視線を動かした先にいた者。

 

 

 

「……レヴァン君!?」

 

 

 

彼は人形のように無表情のまま、次々と子供達をその背から生えた触手で貫き始めた。

 

 

 

「やめろ!!やめてくれ!!何故君がこんな事を!!」

 

 

 

私が叫んでも、彼は止まらない。

 

 

 

博麗の巫女と普通の魔法使いが空から現れ、彼を止めようとお札とミニ八卦炉を構える。

 

 

 

二人は一瞬で胸を貫かれた。彼はなんの戸惑いも無く…二人を…殺した…。

 

 

 

巫女は彼に手を伸ばしたまま死んだ。

 

 

 

魔法使いは目に涙を浮かべて死んだ。

 

 

 

彼は二人を炎の中へ投げ捨てた。

 

 

 

「何故だっ!!?霊夢は、魔理沙は君の事を……!!!」

 

 

 

触手から放たれた赤い光線が、逃げ遅れた人々を焼いた。

 

 

 

振り下ろされた触手が、人間の体を易々と砕く。

 

 

 

ここが地獄だと言われたならば、誰も疑わないだろう。

 

 

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

力の限り叫ぶと、彼はこちらを向いた。

 

 

 

その目はどこまでも冷たかった。まるで、前の宴会で霖之助に詰め寄った時のように…。

 

 

 

彼はゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 よ く も 裏 切 っ て く れ た な ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉が終わると同時に、私の体は触手によって串刺しにされた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 

 

飛び起きて目に入ったのは、いつもと変わらない自宅の天井。荒い呼吸を整え、深呼吸をする。汗でびったり肌にくっついた寝間着をめくり、自身の体に傷が無いか確認する。

 

 

 

 

…夢か。

 

 

 

……はぁ。私はどうしてしまったのだろうか…?宴会が終わってからというもの、どうにも変だ…。今日は寺子屋の子供達にまで心配されてしまった…。まったく、これでは教師として恥ずかしいぞ…。

 

 

……原因は分かっている。あの無茶苦茶な外来人、レヴァン君だ。宴会が始まるちょっと前に、彼の行動に対して苦言を呈したら、彼が怒りを露わにして怒鳴ったのだ。…確かに、あの時の妹紅が言った通り、彼の行動まで制限するのはやり過ぎだったかもしれない。でも、私は間違った事は言っていない筈だ。彼は自分の命を投げだしたと言っても過言では無い程の事をしたんだ!

 

 

 

……私は、君を心配しているのに……何故、分かってくれないんだ…?何故、あんな目で私を見るんだ…?

 

 

 

 

次に彼と会ったのは、彼が人里にいた時だ。あの事があったから少し声がかけ辛かったが、いざ話してみると意外と普通に会話をしてくれた。私はそれでつい安心してしまって、また彼に色々と説教をしてしまった。彼は最後にはうんざりしたような顔で、逃げるようにして去ってしまった。……うう、なんでこうなってしまうんだろうか…。次は、もっと上手く会話したいな…。私が話すだけでなく、彼の話も聞いてあげよう。

 

 

そう決意した次の日、また彼が人里に来ていた。今度は私が話を聞いてあげよう。そう思って彼に手を振って走ろうとした。

 

 

 

 

 

――――彼は私の姿を見ると、すぐに人ごみに紛れて逃げてしまった。

 

 

 

 

……少なからずショックだった。まさか、あそこまで露骨に嫌われてしまっていたなんて…。信じたくない、認めたくなかった。でも、否定しようがない。私と目が合って、それで逃げてしまったのだから。

 

その日は家に帰るまで、何をしていたか覚えてない。覚えているのは、帰った後に布団の中で、少し泣いてしまった事だけだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

「…で?私に相談って何、慧音?」

 

「ああ…」

 

 

私は胸に溜まったもやもやを、親友である妹紅に打ち明ける事にした。妹紅はレヴァン君と波長が合うとかで、かなり通じ合っていたからな…。情けないけれど、すがらせてもらうよ、妹紅…。私は事の顛末を妹紅に洗いざらい話した。妹紅は私が話し終えると、うんうん唸りながら何かを考えていた。私がじっと待っていると、妹紅はようやく口を開いた。

 

 

 

「言いにくいけど、嫌われちゃってるね、慧音は…」

 

 

 

……ああ、やはりそうなのか。ははは…何を期待していたんだ、私は?

 

 

妹紅に聞いたからって、何かが変わると思っていたのか?

 

 

親友である妹紅が私に気を遣って、都合のいい言葉で慰められるのを期待していたのか?

 

 

…なんて醜いんだ、私は。これでは、寺子屋の子供達に合わせる顔が無いじゃないか…。もしや彼は、こんな汚い私の心を見抜いていたのではないだろうか?……だとしたら、あの反応も当然…だな。

 

 

「あ~、でも…心の底から嫌ってる訳じゃないと思うよ。慧音が心配してくれてるのは分かってるし、それをありがたいとも思ってるよ」

 

 

 

…………え?

 

 

 

「も、妹紅……何を言ってるんだ?今更、気を遣わなくてもいいんだぞ」

 

「いや、慧音こそ何言ってるのさ…」

 

 

呆れた顔で私を見る妹紅。だって…私がしつこくいったから彼は怒ったのに…。

 

 

「慧音はさぁ…レヴァンの事、どう思ってるの?」

 

「……どうと言われても、危なっかしくて目が離せない男だと思っているが…」

 

「レヴァンはきっと、それが気に入らないんだと思うよ」

 

「……え?な、何故だ?」

 

「だってさ、それって里の子供達を見る目とまるっきり同じじゃないか」

 

「!!」

 

 

妹紅の指摘に私は目を丸くした。

 

 

「レヴァンはあれで結構しっかりした奴だし、子供と同列に扱われるのは嫌だったんじゃないかな?」

 

「わ、私はそんなつもりじゃ…」

 

「だろうね。きっと無意識だったんだよ。ほら、慧音って男っ気が無いから男の気持ちなんて分からないでしょ?」

 

「う、ううむ…」

 

 

そう言われると、男の気持ちが分かるかと聞かれたら、分かるとは答えられないな…。

 

 

「それにあいつ、自分の時間は大事にするみたいだから、それを侵した慧音の言葉に怒ったんだと思うよ」

 

「………そう、か…」

 

 

あそこまで怒ったのは、それでか。私は知らないうちに、彼の地雷を踏み抜いてしまったようだ。

 

 

「妹紅……私はどうすればいいと思う?」

 

「うん?」

 

「無意識にそういう発言をしてしまうのなら、私は彼と話すべきではないのかもしれないけれど……このままで終わらせたくないんだ」

 

「そうだなぁ…」

 

 

妹紅は手を顎に当てて考え込んだ後、悪戯っぽい笑みを浮かべながら答えた。

 

 

「なら、呼び捨てで呼んでみたら?」

 

「…………は?」

 

「レヴァンの事、ちゃんと一人の男として見れるようになるよ、きっと」

 

「……なんか楽しんでないか?」

 

「やだなぁ、そんな事無いって」

 

 

ニヤニヤしながら言われても説得力が無いぞ、妹紅…。まあ、単にからかってるだけではないだろうし、それで解決するのかもしれないが…。

 

 

「しかし、どういう会話の流れで呼び捨てにすれば…」

 

「ああ、もう!固いなぁ慧音は!!普通に次会ったらそう呼べばいいんだって!慧音がいきなり呼び捨てにした事なんて、レヴァンにとっては取るに足りない事なんだからさぁ!!」

 

「ちょっと待て妹紅!それは安心していいのか!?」

 

「いいんだよ!どうせ慧音の事なんてまるっきり意識してないんだから、それを逆手にとって積極的にアピールして、言い逃れできない位の関係まで強引に持っていっちゃえば勝ちなんだよ!!」

 

「お前やっぱり楽しんでるだろう!!!」

 

 

途中から方向がおかしいぞ!?言い逃れできない関係って何だ!

 

 

「…まあ、さっきのは冗談だけどさ、別に凝った段取りなんて必要ないんだよ。例えば、人里を案内するとか言って、二人だけの時にさりげなく呼ぶとか…」

 

「ふ、二人だけ!?待て、それではまるで、デ、デートでは…?」

 

「そうだけど…なんか問題でもあるの?」

 

 

きょとんとして首を傾げる妹紅。いや、首を傾げたいのは私の方だ!!

 

 

「いつからデート云々の話になったんだ!?」

 

「へ?だって慧音、あいつに嫌われたくないんでしょ?」

 

「ま、まあそうだが…」

 

「なら、好かれたいって事じゃないの?」

 

「う、うむ……そうなるの、か?」

 

「ならデートしかないって」

 

「…………いやでも、それはおかしい気が…」

 

「…いつまでもウジウジウジウジ女々しいなぁ!!!大体、慧音がよかれと思ってやった行動が原因で、ここまで拗れたんでしょう!?」

 

「うっ……」

 

「あいつと仲良くするなら、慧音の価値観なんて何の役にも立たないんだから捨てちゃえよ!!」

 

「実際その通りだから反論できないが、言い方を考えてくれないか!?」

 

 

さっきから私の扱いがぞんざい過ぎやしないか!?それでも親友か!?

 

 

「とにかく一遍、二人で話してみなって」

 

「……でも、デートなんてどうすればいいか…」

 

「さっきも言ったろ?人里を案内してやればいいんだよ」

 

「……それで、本当に大丈夫だろうか?」

 

「大丈夫だよ」

 

 

妹紅が私の肩に手を置いて、優しい笑みを浮かべた。

 

 

「私にも同じ事してくれた時あっただろ?その時の慧音、良い顔してた」

 

「……はは、そうだったな。お前が言うなら大丈夫だろう」

 

「頑張れよ、慧音。直前になって尻込みするなよ?」

 

「ああ、分かっているさ…」

 

「分かりにくい言葉使うなよ?察してくれるだろう、とか思ってお茶を濁すような言い方するなよ?緊張で早口になるなよ?」

 

「分かってるって言ってるだろう…」

 

「ちゃんとお洒落していけよ?胸は見せてもいいけど開けすぎるなよ?元が良いんだから化粧を濃くするなよ?」

 

「しつこいなお前は!!!」

 

 

……まったく、お節介が過ぎるがいい友人をもったな…。

 

 

彼とも、こんなふうに軽口を叩きあえる関係になれたらいいな…。




次回は文の話です。文ファンの方には読むのが辛い内容になると思います。覚悟を決めておいて下さい。……それは慧音にも言える事かもしれませんが。



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