東方奇才伝   作:サンダーボルト

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現在、文は天狗の里でどのような扱いを受けているのか、それをちょっと書きました。


何気に初登場のキャラもいます。


心の準備はよろしいですね?よろしければ、どうぞ…。


射命丸文の恐怖

~文サイド~

 

 

 

「……失礼しました」

 

 

今日の分の仕事を終え、天魔様への報告も終わった。ここ最近、同じ事しかしていないような気がする。

 

 

……あの一件以来、私は文々。新聞を作れなくなってしまった。作るなと命令されてはいない。ただ、恐ろしくなってしまったのだ。またいちゃもんを付けられて、新聞と私が汚されるのが…。

 

 

向こうから歩いてきた数人の男性の天狗が、私の体を見て嫌らしい視線を向けてくる。反射的に胸を腕でかばうと、下卑た笑いを浮かべてこちらに近寄ってきた。

 

 

……やめて…来ないで……。

 

 

「どーも、文様。今日もお綺麗ですねぇ…」

 

 

舐めまわすように私の体を見る天狗達。いつもだったら、格下にこんな態度とられたら軽く脅して黙らせるのに…それができない。たとえ私に非が無くても、私が問題を起こしたら連中の思う壺だ。大天狗様の一人が完全に私を陥れようとしている上、他の大天狗様も私に良い感情を持っていない。天狗の里には、私の絶対的な味方は殆どいない…。孤立とはいかないまでも、上の権威に逆らってまで私の味方をしてくれる天狗はいないのだ。

 

……分かってる、それが他ならない私の生き方のせいだって事は。秩序を重んずる天狗社会において、私のような存在は珍しい。鴉天狗、白狼天狗、鼻高天狗等、山には様々な天狗がいるが、天狗全てに共通する特徴が人間や他の妖怪とはあまり関わりをもたない、排他的な思想である。天狗同士の仲間意識が強い分、山の妖怪以外の種族に対してはかなり風当たりが強い。

私は別段友好的な訳ではないが、そういうのをあまり気にしない性格だ。それどころか、面白い記事になりそうなら進んで関わろうとする。それこそ、わざわざ人里まで飛んで行ったりするほどに。

 

 

大天狗様や白狼天狗達は、そんな私が気に入らないらしい。それでも今まで記者として活動できたのは、新聞を作るのが鴉天狗の立派な仕事である事と、私自身の実力の高さのおかげである事に他ならない。

……だが、危うい均衡によって保たれていたものが崩れてしまった。新聞記事に問題があるとして、私に正式な処罰を与える。里が正式だと認めた以上、その一員である私は逃げる事は出来なかった。もし逃げたら、私は天狗の里を追放されてしまうからだ。力尽くで抵抗しても、その時は天魔様自らが私を消しにかかるだろう。

 

……八方塞がりだ。一度成功したからには、少しボロを出したならまた同じ手で私を辱めるに違いない。多少無茶な理由づけでも、私を擁護する者がいないからそれが通ってしまう。数の暴力……それを身に染みて理解した。

 

 

「……ひっ…!?」

 

 

近づいてくる天狗達から逃げるように数歩後ずさると、突如お尻に不快な感触を受けた。

 

 

「何をしておる、射命丸文?」

 

 

恐る恐る振り向くと、大天狗様が私を見下したような視線を向けながら立っていた。その右手は私のお尻に伸びている。何をしている、はこっちの台詞だというのに…!

 

 

「貴様が後ろを確認せずに下がったせいで、私にぶつかりそうであったぞ。ん?」

 

「え、あ、その……」

 

「文様ぁ、謝った方がよろしいのでは?」

 

 

……なんて幼稚な言いがかりだ。煽ってくる天狗達も憎たらしい。だけど、ここで逆らえば、また…!

 

 

「…も、申し訳ありませ、ひあっ!?」

 

 

屈辱に耐えて謝罪の言葉を口に出したが、それを最後まで言えなかった。大天狗様の右手に力がこもり、私のお尻を強く揉みしだき始めたからだ。

 

――――あの時の記憶が蘇る。ろくに抵抗も出来ぬまま、劣情をぶつけられて体が汚された時の、思い出したくもない記憶…。あの時も、今と同じような状況だった。立場を盾にして好き放題触っている後ろの大天狗様。それを見て数人の天狗達が私を嘲るような目で見ている。中には一緒になって私に触る者もいた。

 

忌々しい記憶がフラッシュバックして、私は嫌な汗を流しながら小刻みに震えていた。そんな事などお構いなしに、大天狗様は更に私のお尻に手を這わす。

 

 

…気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…!!離れて、離れて、離れてよ…!

 

 

「謝罪の続きはどうした、射命丸文?まさか、さっきのふざけた言葉がそうだとは言うまいな?」

 

「ええ?文様、大天狗様に向かってそれはないんじゃないですか?」

 

「もっとちゃんと謝らないと、ほら!」

 

 

そうまくしたてながら、私を取り囲んで言葉を浴びせる天狗達。目線が腕で庇っている胸に、触られているお尻に集中している。

 

 

「……っ!!」

 

 

私は大天狗様から離れるように、強引に包囲していた天狗達を押しのけた。乱れた心を落ち着かせ、呼吸を整えると大天狗様達へ向き直った。

 

 

「先程は私の不注意でご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 

深く頭を下げて謝罪した私を見て、大天狗様達は愉快そうに笑う。怒りと屈辱が渦巻く内心を悟られぬよう、必死に平常心を装いながら頭を上げた。大天狗様は指を一本見せるように立てて、その指先に妖力を集めて風を生み出した。そして…

 

 

「…つうっ…!?」

 

 

鋭い風の弾丸が私の顔を掠め、頬に刃物で斬られたような切り傷が残った。

 

 

「今回はこれで手打ちとする」

 

「いや~良かったですね文様!この程度で許してもらえて!」

 

「………ありがとう、ございます」

 

 

絞り出したようなか細い声で礼を言うと、大天狗様達は満足した様子で去っていった。…間違いない、アイツらはグルだ。新聞記事にいちゃもんをつけたのも、確かあの天狗達が最初だった筈。それであの大天狗様が天魔様に進言し、今回の事が起きたのだ。

 

……でも、分かったからってどうしようもない。権力も数も違い過ぎている。…せめて、大天狗様の内の誰か一人でも味方だったならば、まだやりようはあったのに…。

 

思考に耽りながら歩いていると、私が苦手とする知り合いと目が合った。

 

 

犬走椛。

 

 

天狗の中でも下っ端である白狼天狗の少女だ。真面目でお堅い性格が私と合わない上、元々白狼天狗は鴉天狗を軽視する傾向があるので、相性は最悪と言っていい。何となく、目を合わせたくなくて顔を背けながらすれ違うと、椛が一瞬口を開いた。

 

 

「……無様ですね」

 

 

冷たく言い放たれた言葉が突き刺さる。何も言い返せない悔しさで強く唇を噛み、足早に椛から離れる。椛は何の反応も見せずに歩いていった。今まで好きに行動してきたツケが回ってきたとでも思っているんだろう。

 

 

……ははは、やはり嫌われてますね、私は…。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

仕事場を出て、気分転換でもしようと里の広場へやってきた。でも、ここでも他の天狗が私に様々な視線を送ってくる。悪意、嘲笑、敵意、困惑。ほんの僅かだが、同情も混じっていたのは喜ぶべきなんだろうか…?

 

 

「…文!?どうしたのその顔!?」

 

 

大声を上げて近づいてきたのは、花果子念報(かかしねんぽう)という新聞の発行者で、私と同じ鴉天狗でライバル記者の姫海棠はたて。はは、まさかライバルに気遣われるとはね…。

 

 

「あなたが気にするような事じゃないわ。ちょっと転んだだけよ。大したことないわ」

 

「だからって手当てくらいしなさいよ…」

 

 

ポケットからハンカチを取り出して、私の頬の傷を押さえるはたて。普段ならなんとも思わないだろうその行動に、私はひどく安心感を抱いてしまった。情けない……けれど、今ははたての優しさが嬉しい…。

 

 

「…丁度いいわ。文、うちに来なさい。もうそろそろお昼時だし、手当てのついでにご飯食べていきなさい」

 

「……いいの?迷惑じゃない?」

 

「自分から誘ったのに言う訳無いでしょうが…」

 

 

はたては私の発言に呆れたように首を振った。ありがたい申し出だけれど、このまま甘えてもいいのだろうか?もしかしたら、はたての評判も悪くなるんじゃ…?

 

私が葛藤していると、ふと、足元辺りに違和感を感じた。風の流れがおかしい……っ!

 

 

「きゃあっ!」

 

 

急に私の足元からつむじ風が巻き起こり、履いていたスカートが思い切りめくれ上がる。私はスカートを押さえながら、『風を操る程度の能力』でつむじ風をかき消した。はたては突然の事に驚いていたが、すぐに何が起きたかを理解して、顔を真っ赤にして怒り出した。

 

 

「誰よ、今の風吹かしたの!?出てきなさいっ!!」

 

 

いまの風は自然に巻き起こったものではない。天狗は全員、差はあれど風を操る力を持っている。今のつむじ風はその力で作られたものだ。はたては犯人を見つけようと怒鳴っているが、恐らく無駄だろう。見つけるためには、ここにいる天狗全員を疑わなくてはならないからだ。

 

 

「はたて、もういいから行きましょう」

 

「でもっ…!」

 

「いいのよ」

 

 

強引にはたての手を引っ張って広場から離れる。あなたのその気持ちだけで充分よ。照れくさいから言葉にはしないけれど、ありがとうね、はたて。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

はたての家で傷の手当てをしてもらい、お昼ご飯をご馳走になった私は、気晴らしに妖怪の山を飛び回っていた。ストレスが溜まるとたまにやるのだ。お気に入りのスポットを巡り、リフレッシュが終わったので家に戻る。

 

 

 

……失敗した。帰り道を考えるべきだった。

 

 

 

帰る途中で私の目に入ったのは、私が連れていかれた拷問小屋。それを見た瞬間、私の脳裏にあの時の事がまたフラッシュバックした。

 

 

「……うぷ…っ…」

 

 

体の内側から強烈な不快感に襲われ、私は帰宅を急ぐ。口を両手で押さえて、胃から込み上げてくるものを必死に押しとどめながら飛んだ。この時ばかりは、私が幻想郷最速で良かったと心から思った。

 

家の前に降り立ち扉を乱暴に開けて、私は洗面所に駆け込んだ。そして、今まで押しとどめていたものを吐き出した。

 

 

「おぇぇぇ……!」

 

 

いつまで洗面所にいただろうか…。何度も何度も体の中のものを吐き出して、ようやく不快感が消えた。自分の顔を鏡で見ると、今まで自分でも見た事が無い位に疲弊している顔が映った。

 

 

「……ごめん、はたて。全部……戻しちゃった…」

 

 

折角ご飯を作ってくれたはたてに罪悪感を芽生えさせながら、私はのっそりと布団の中にうずまる。

 

 

……カタカタと、体の震えが止まらない。自分で自分を抱きしめ、更に小さく丸まる。それでも治まらない。

 

 

「…………やだ、やだ、やだやだやだ…!」

 

 

もう限界だった。私の目から涙が零れる。

 

 

「………ぃゃ……………もう…いやぁ…………誰か……私を………助けてよぉ………っ……!」

 

 

誰が助けてくれるというのか。博麗の巫女に言ったところで、これは妖怪同士の揉め事だから動かない。はたてに助けを求めても、二人まとめて狙われるのがオチだ。巻き込めない。

 

 

でも、それでも…助けてくれる者がいなくても、言わずにはいられなかった。口をついて出てしまった。

 

 

 

 

私を……助けて……。

 

 

 




現在、天魔様に関するアンケートと、新しいテンプルアーマーの名前募集を実施しています。

全部とは言いません、どれか一つだけでもいいのでご協力お願いします。
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