ホームカプセル内の机に横たわる一体の人形。それを見ながら、レヴァンは感慨深そうに呟く。
「……遂に、遂に完成したぞ……!」
握り拳を振り上げて腕を大きく広げ、感動をその身で表すように震える。
「クッククク…よもやここまでのものを作ってしまうとはな…!調子に乗って色々詰め込み過ぎた気もするが、これくらい豪華な方がこいつも喜ぶだろ…」
レヴァンは横たわる人形…上海の顔を覗き込む。そして胸の部分に手を置くと、上海の体が青白く光りだした。レヴァンは静かに、新たな仲間の名前を呼んだ。
「―――――
上海はゆっくりと目を開けて、自分の顔を覗いているレヴァンを見つめる。やがて口元が緩み、勢いよく飛び上がった。
「シャンシャンハーイ!!!!」
手足を大きく広げて喜んでいる上海改め、上海―X。その体からは魔力が迸り、魔力炉の稼働が正常である事が分かる。
「どうだ、上海?新しい体に不具合は無いか?」
「ン~…………ナッシン!」
「良し…」
上海を改造するにあたって、魔力炉の出力に元の体では強度不足だと感じたレヴァンは新しい体を作った。体を構成するのは魔導手甲と同じで、霊夢から貰った機械で作り出した超合金を使っている。服も変わっており、元の服よりも更に青色が増えた。腰に巻いているエプロン部分は白のままだが、それ以外は青一色に染まっている。頭のリボンも青くなり、胸のリボンは蝶々結びでやや大きくなった。リボンの中心には赤い結晶体が付いている。アリスと同じ色の金髪は透き通るような銀髪に変化し、全体的に落ち着いた印象を受ける。
「いや~しかし無事に動いて良かったよ。なにせ魔力で動かすアーマーなんてお前が初めてだからな。この一歩はでかいぞ」
「シャンハイハーイ!」
「おっとと…よしよし」
胸に飛び込んできた上海を抱きしめ、頭を撫でながらしみじみと語る。
「ああ…幸せだ。この達成感を僕達だけで味わうのは勿体無いと思わないか、上海?」
「ハーイ?」
上海はレヴァンが何を言おうとしているのか分からず、首を傾げる。レヴァンは笑いながら高らかに宣言した。
「まず博麗に言いに行くぞ!ついて来い上海!」
「ハイ!ハーイ!」
言うと同時にホームカプセルから飛び出し、勢いよく走るレヴァンとそれを追いかける上海―X。
現在朝の四時、完徹三日目の出来事である。
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博麗の巫女、博麗霊夢は布団の中で幸せそうに眠っている。廊下を勢いよく走る音がしても、少し反応するだけで眠りからは覚めない。戸が思い切り開かれて大きな音をたてても、顔をちょっと歪ませるくらいで、まだ眠っている。
「起きろ博麗ィィィィィィィィ!!!!!」
「シャンハイィィィィィィィィ!!!!!」
「…うっさあああああああい!!!!!」
だが名前を至近距離で叫ばれれば話は別だ。心地よい眠りを無理矢理叩き起こされて邪魔された霊夢は、険しい目つきでレヴァンを睨む。しかし、その横で浮いている見覚えのある人形を見て、ポカンとした表情になった。
「どうだ、驚いたか博麗。こいつが新しく作ったアーマー、上海―Xだ」
「シャン、シャン、ハイ!」
「………しゃん、はい、えっくす?」
上海を指差してカタコトで聞く霊夢に対し、上海は誇らしげに頷く。霊夢が驚くのも無理はない。彼女が知っている上海とは服装も髪の色も違うし、何よりこんな強い魔力を発したりはしないのだから。
「どーよ、この美しいフォルム。天の川の如く輝く銀髪。最高だと思わないか?」
「……ずっと引きこもって何をしてるのかと思ったら……この子を作ってたの?」
「そうだよ。なあ、最高だろ?そうだろ?そうだよなぁ?」
「え、ええ…」
上海―Xを見せる為だけに起こされた事を咎めたい霊夢だったが、レヴァンの妙な迫力に押されてしまい、思わず流されてしまった。
「そうだろうそうだろう。なんせこの僕が三日三晩寝ずに一気に作り上げた傑作だ。元が良いから失敗の筈がない!」
「ね、寝ないで作ったの……?」
「おうよ!最高で半月の間、不眠不休でアーマー作ってた事もあったなハハハハハ!!」
「……よく死なないわね。というか、作り終わったんだから寝たらどうなの?今も起きてて大丈夫なの?」
「気分が高揚して眠気なんざ無えんだよ!!今は最高に、」
「ハイッ!!」
「ってヤツだオラアアアアアハハハハハハーーハハハー!!!」
「ハハハハハーー!!!」
「……は……ははは…」
睡眠不足でテンションが狂ったレヴァンと、腰に手を当ててふんぞり返っている上海の高笑いに気圧され、霊夢は引きつった笑いを浮かべた。ひとしきり笑った後、レヴァンは真顔で霊夢に向き直る。
「さて、博麗。次は誰に見せに行こうか?」
「いや知らないわよ。私も一緒に行くような言い方しないでくれる?」
「なんだよ、こんな早い時間に起きてんだから、付き合ってくれてもいいだろうに」
「あんたが起こしたんでしょうが!?」
「うるせえ!!今何時だと思ってる!」
「逆切れ!?」
「シー!」
「そうだな、上海の言う通り四時だ」
「あんたら他所でやれ!!!」
肩を震わせながら怒鳴った霊夢だったが、今の二人にはまるで効果が無い。このままだと、ずっとここで騒いでいそうなので、霊夢は取りあえず親友に押し付ける事にした。
「はあ…そんなに人に見せたいなら、魔理沙のとこにでも行ってきたら?」
「おお、それもそうだな……と言いたいが、僕は魔理沙の家の場所を知らん」
「……私は案内しないわよ。眠いし。だからさっさと寝なさい」
「心配はいらん。こういう時はあいつを呼べば万事解決だ」
「……あいつ?」
レヴァンは表に出ると、大きく息を吸い込んである人物の名前を叫んだ。
「おい八雲!!八雲紫!!!出てこい妖怪隙間ばばあ!!!!」
「……今、すっごい不快な単語が聞こえtきゃっ!?」
何も無い空間に切れ目が入り、それが開いて中から紫が不機嫌そうに出てきた……と思ったら、レヴァンが電光石火の早業で紫の眼前に移動し、肩を凄まじい力で掴んだ。
「遅いぞ、呼んだらすぐに出てこいよ!!それがお前のウリだろうが!」
「え、私すぐに出てきたわよ!?それに私のウリって早く出てくることなの!?」
「んなこたぁどうだっていい!!それよりできたぞ新アーマー!喜べ!」
「シャンハイハーイ!!」
「……何か釈然としないけど、まあいいわ。あら、随分可愛らしいわね。この服ってあなたの趣味なのかしら?」
「よし!ならさっさと魔理沙の家に行くぞっ!!」
「ハーイ!!」
「無視!?」
紫の話を聞こうともしないレヴァンと上海は、紫を隙間の中に押し込んで自分たちも強引に入っていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ!まさか私に案内させるつもり?」
「スキマ開けばいいだけの話だろうが、けちけちするなよ」
「シャンハイ、シャンハイ!」
「ん?ああ、そうだな。ついでにアリスんとこと、妹紅のとこと、射命丸のとこ…は、今は顔合わせづらいからパスで。あ、それと紅魔館も頼むぞ」
「はあ!?嫌よ!何で私が付き合わなきゃならないのよ!私本当なら冬眠中なのよ!まだ眠いのに!」
「ガタガタ抜かすな!どうせいっつも同じような事してるだろうが!永眠させてやろうか!?」
「シャァァァァンハイッ!!」
「ひっ!?分かった、分かったから押さないで!あ、ちょ、変なとこ触らないで!?」
「さっさと奥に行け!タイガーヘアーにされたいかっ!」
紫を脅してスキマに入り込んだレヴァンと上海。完全に中に入った所でスキマが閉じ、この場に静寂が戻ってきた。霊夢は空を見上げて大きく背伸びをした後、
「…………寝よ」
二度寝としゃれ込む為に神社の中へ戻っていった。
テンプルアーマー:
レヴァンを慕ってついてきた上海人形を改造して作られたテンプルアーマー。超合金製のボディに魔力炉を埋め込む事で、アリスが操っていた頃とは比べ物にならない程の戦力として生まれ変わった。服装は青が主体になっており、髪の色も銀髪に変化している。改造前と比べて、かなりテンションが高い性格になった。話せる言葉も増えているが、基本的には『シャンハイ』と喋る。
単独の飛行が可能であり、弾幕も使えるので専ら弾幕ごっこで力を発揮する。小さいので狙いにくい上にすばしっこく、更には攻撃範囲もパワーも上級妖怪に勝るとも劣らない。ただし、ジェットパック等と違ってありあわせで作った超合金を使っているので、耐久力は純生テンプルアーマーには劣る。
武装(スペルカード)
フィンガーバラージ
指先から魔力による弾幕を撃ちだす。生み出される魔力弾は小さく、威力も低いが、連射がきく。指を広げて撃つ事で広範囲をカバーできる。
シャンハイ・クロスブレード
腕に魔力でX字の剣を作り出す。近接戦用。
魔鉄拳【ロケットパンチ】
スペルカードその1。腕に魔力を纏わせて、拳の形を保ったままで撃ち出す技。腕をそのまま撃ち出す事も出来たらしいが、それだと破壊力がカスになるので廃止した。
必殺【シャンハイブラスター】
スペルカードその2。胸のリボンに魔力を集中させて放つ破壊光線。申し分ない威力の技だが、長く照射し続けるとリボンが損傷する上、リボンが消耗していると威力が落ちる。
切札【シャンハイスパーク】
スペルカードその3。魔力炉を意図的に暴走させ、限界以上のパワーを生み出して撃ち出す上海―X最大の技。元々、魔力炉が暴走しても耐えられるように設計されたボディであるが、超合金の強度に問題があるので何度も使えない。魔理沙のマスタースパークを真似して作られた技。