それではどうぞ。
「…くか~……くか~………」
魔法の森の中にひっそりと佇む”霧雨魔法店”。そこに一人で住んでいる霧雨魔理沙は、まだ自室のベッドの中で寝息をたてていた。しかし、部屋の中の空間に突然切れ目が開き、中から魔理沙の睡眠を邪魔する者が現れた。
「魔理ちゃんおはよおおおおおおぅ!!!!」
「シャンハイシャンハーーーーーーーーイ!!!」
「!?な、なんdわぁっ!?」
突如部屋に響いた奇声に驚いた魔理沙は、ベッドから転げ落ちてしまった。ひっくり返った状態のままで床に打ちつけた頭をさする魔理沙は、自分の部屋にいる筈のない人物を見て目を丸くした。
「れ、レヴァン?」
「そうだよ、僕だよ。しかしお前、変な格好で寝てんだな」
「いや、これはお前に驚いて落ちただけだぜ……てか助けて…」
「しょうがない奴だ」
レヴァンは魔理沙に手を貸して立たせると、パジャマに付いた埃を丁寧に叩いて落とす。そして魔理沙の肩に手を置いた。
「よし、綺麗になったな。魔理沙は今日も可愛いな」
「…へぁ!?いいいいいいきなり何を言ってるんだ!?」
「だが残念だったな!こいつの方がもっと可愛い!!」
「ハイッ!!」
「……はい?」
突然可愛いと言われて顔を赤くして取り乱した魔理沙だったが、レヴァンが横に浮いていた上海を指差した事で途端に顔の火照りが冷める。上海はドヤ顔で手を上げ、ふんぞり返っていた。
「……こいつ、アリスのとこの上海だよな?色とか違うけど…」
「聞いて驚け。見て驚け。なんとこいつはな、テンプルアーマーとして生まれ変わったんだよ」
「……はぁ!?」
「どうだびっくりしたか!?しかもそれだけじゃねえぞ、魔力を使って弾幕ごっこも出来る優れものだ!」
「シャァァーンハーイ…!」
「…ほ、ほんとかよ…?」
矢継ぎ早に言われて半信半疑の魔理沙だが、上海の指先に集まる魔力を感じて、レヴァンの言っていることが事実だと理解した。眠気が一気に吹き飛んで目を輝かせた魔理沙は、机に置いてあった帽子を被って、ミニ八卦炉を掴んでレヴァンと上海に向けた。
「そうか、弾幕ごっこが出来るって事はあの時のリベンジって訳だな?なら受けて立つぜ!」
魔理沙は不敵に笑って言い放った。だがレヴァンの反応は彼女が思い描いていたものとは違っていた。
「えっ、いや違うけど。ただ見せびらかしたかっただけ」
「ハーイ」
「……えっ」
驚くほどあっさり返されて、しばし放心する魔理沙。レヴァンはそんな彼女を放置して、
「おっと、いつまでもここに留まってられんな。八雲、次だ次!」
「はいはい……お邪魔したわね、魔理沙」
「シャンハ、イーッ!」
そそくさとスキマの中に戻っていった。一人ぽつんと残された魔理沙はベッドに戻ったが、不意に可愛いと言われた事を思い出して悶絶していたのは紫しか知らない…。
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「ん~…良い香り…今朝は上手く淹れられたわね」
「シャンハーイ!」
「ホウラーイ!」
アリス・マーガトロイドは優雅に紅茶をすすっていた。キッチンでは複数の人形が朝食を作っている最中だ。アリスの周りに浮いているのは、レヴァンについて行ったのとは別の上海人形とその姉妹にあたる蓬莱人形である。アリスは朝のティータイムを楽しみながら、レヴァンの元にいる上海の事を考えていた。
「(上海、元気にしてるかな…?ふふっ、人形は病気になんかならないのに、元気って言い方もなんだかおかしいけど)」
我ながら変な事を考えた物だ、とアリスは笑って再び紅茶に口を付けた。
「アリス、イン、ワンダーランッッッッッッ!!!!!」
「シャンハ、イッ、シャンハイッッッッッッ!!!!!」
「ぶふぅっ!?」
背後から大声を浴びせかけられたアリスは、盛大に紅茶を噴き出した。むせ返るアリスを庇うように上海と蓬莱が剣を構えるが、自分たちと同型である上海―Xを見て困惑の色を見せた。
「おいおい大丈夫か?落ち着きの無い奴だな。紅茶くらいゆっくり飲めよ」
「げほっ!げっほっ…!!後ろから大声出されたら、誰だってこうなるわ…よ…?」
レヴァンに非難の眼差しを向けるアリスだったが、その隣で浮いている上海―Xを見て表情を固まらせた。アリスは恐る恐る言葉を発する。
「…しゃ、上海なの…?」
「……シャンハーイ」
こくん、と頷いた上海―Xの瞳は潤んでいた。アリスが微笑みながら両手を広げると、上海―Xはその胸に飛び込んだ。
「シャンハーイ!シャンハーイ!」
「ふふっ…甘えん坊さんね。前より可愛くなったわね」
「シャンハーーーーーーイ!!!」
「うん嬉しいのは分かったから止めて止めて止めてキャアアアーーー!?」
抱き着いたと思ったら、上海―Xがアリスの両手を取り、グルグル回りだした。上海―Xとしては嬉しさを表現しているだけなのだが、振り回される方のアリスはたまったものではない。上海と蓬莱もどうしたらいいか分からずにオロオロしていると、二人の間をくぐったレヴァンが上海―Xを制止した。
「嬉しいのは分かるが、ちょっと落ち着け上海」
「シャッ!!」
回転のスピードが徐々に遅くなり、アリスはゆっくりと降り立った。気持ち悪そうに口を手で押さえるアリスを上海と蓬莱が支える。
「うっぷ……凄いパワーね…。魔力もとても強くなってるわね。レヴァン、どんな改造をしたの?」
「魔力を生み出す半永久機関を埋め込んだ」
アリスはまた固まり、信じられないといった目で上海―Xとレヴァンを交互に見る。上海―Xはドヤ顔で自分の胸を叩き、レヴァンはそんな上海―Xの頭を撫でていた。
「……ま、魔力を生み出すって…そんなの河童でも作れないわよ…」
「だろうな。僕だから作れたんだ。ああ、名前も変わってるからな。ほれ、言ってやれ」
「I`m、シャン、ハイ、エックス!!」
両手両足を大きく広げ、体全体で"X"を表しながら自己紹介をする上海―Xを見て、アリスは驚き、そして笑った。
「…元気そうでなによりね」
「実は今朝動いたばかりなんだ」
「あら、じゃあ真っ先に私に見せに来てくれたの?」
「そんな訳ないじゃん。まず博麗に見せて、そのあと八雲に見せて、そして魔理沙に見せた」
「えっ、霊夢と紫は分かるけど、何で私より先に魔理沙に見せたの!?おかしいわよ私達友達なのに!名前を教えた時だって私より先に魔理沙の名前覚えさせたのに!」
「うるせえ、ぼっちマジシャン」
「酷い!?」
喚くアリスを後目に、レヴァンは開いたままのスキマの中に戻っていく。
「これって、八雲紫のスキマ…?だからいきなり現れたのね…」
「ああ、邪魔したなマーガトロイド」
「もう行っちゃうの?朝ごはんならもうすぐ用意できるから、食べていったら?」
「ほんと?私お腹ペコペコなのよ。ここはお言葉にあm」
「そんな暇はない。まだこいつを見せびらかしてない連中がいるんだ」
「ねえレヴァン聞こえてる?私お腹g」
「うっせえぞスキマ。一食抜いたって死にやしないだろうが。飯を食うのと上海―Xを見せびらかすの、どっちが大事だ?」
「そんなのごはんにk」
「そういう訳だからとっとと次に行くぞ」
「……くすん。もういいわよ…」
スキマから顔を出した紫の意見は頑なに無視され、アリスは恐らく初めて紫に同情した。スキマの中に戻ったレヴァンと上海―Xを見送ったのち、アリスは出来上がった朝食を食べた。傍らにいる上海と蓬莱に、奇才の元へ行った姉妹の事を楽しそうに話しながら…。
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「すまないな、妹紅。私が頼まれた仕事だというのに、期日に間に合いそうにないから手伝ってもらって…」
「あはは、気にしないで良いよ。そのおかげで慧音の作った朝ごはんにありつけるんだからさ!」
「ふふ、そう言ってもらえると気が楽になるよ。これは腕によりをかけなくてはな!」
人里の慧音の家。上白沢慧音は里の有力者の一人にある仕事を頼まれていたが、予想以上に手こずってしまい、一人ではどうしても終わらせられなくなってしまった。そこで親友の藤原妹紅に頼み込み、三食ご飯をご馳走するのを条件に手伝ってもらっているのだ。エプロン姿の慧音は腕まくりをして気合いを入れると、張り切って厨房に立つ。妹紅はそんな慧音をわくわくしながら見ていた。
「もこもこもこたんインしたおーーーーー!!!!!」
「シャンシャンシャンハイシャンハイハーーーーーイ!!!!!」
「うわあっ!?」
「ひゃあっ!?」
スキマが開き、中からレヴァンと上海が大声を上げながら飛び出した。レヴァンは妹紅の姿を確認すると、一目散に駆け寄ってその肩を掴む。
「ここにいたか妹紅!久しぶりだな妹紅!」
「う、うん久しぶり…。もこたんって私の事か?」
「分からん。僕の頭の中に急にこのフレーズが浮かんできてな…」
「……失礼かもしれないけど、頭大丈夫か?」
「ハハハ、大丈夫だ。今に始まった事ではないからな!」
「それ大丈夫じゃないだろ!?」
「レヴァン君っ!!」
妹紅と喋っていたレヴァンの間に、慧音が怒鳴りながら割り込む。
「いきなり人の家に侵入するなんて非常識だぞ!妹紅も普通に喋ってるんじゃない!」
「失礼な、靴はちゃんと脱いでるだろうが」
「そんな事言ってるんじゃない!親しき中にも礼儀ありというだろう!ちゃんと玄関から入ってこい!」
「分かった分かった…仕切り直しだ上海。一旦外に出るぞ」
「シャンハーイ」
そう言って渋々スキマへ戻っていく二人。慧音と妹紅はお互いに顔を見合わせて首を傾げる。少しすると、玄関の戸が叩かれる音がした。慧音が戸惑いながらも玄関へ行って戸を開ける。
「おはよう上白沢。新しいアーマーができたから見せに来たぞ」
「シャンハーイ!」
「あ、ああ…おはよう…。あがっていくか?」
「おじゃましまーす」
「シャンハイハーイ」
先程とはうって変わって大人しくなった二人に困惑しつつ、家にあげる慧音。仕切り直しというのは本当らしい。妹紅は苦笑しながらもそれに付き合う事にした。
「やっ、レヴァン。久しぶりだな」
「おう妹紅。こんな所にいたのか」
「こんな所って……ここは私の家なんだけどな、レヴァン君?」
「……こんな所にいたのか」
「おい!?」
訂正する気ゼロのレヴァンにツッコんだ慧音だったが、レヴァンは全く気にせずに上海―Xの紹介に移った。
「あ、こちら僕が作った上海―Xだ。どうぞよろしく」
「シャンハイ、エックス!」
「あはは、元気いっぱいなアーマーだな!」
「…ふぅむ、アリスの持っている人形に似ているようだが…」
「似ているというか、アリスから貰ったんだよ。付いてきたというのが正しいかもしれんがな」
「付いて来た?ははっ、君も面白い表現をするんだな」
「……なんか笑う要素あったか?」
「イイヤー」
「慧音……」
「…え?あ、いやその……すまない…」
いらない事を言ってしまったと後悔する慧音だが、この三人がからかっているだけだという事は、この三人と紫しか知らない…。
「うし、紹介も終わったし次に行くか」
「シャンハーイ!」
「え、もう行くのか?折角だから慧音の手作り料理でも食べていけばいいのに…」
「何でお前が言うんだ、妹紅…。で、でも君がどうしてもというなら…」
「是非お願いするブフッ!?」
「戻れやスキマ。悪いが、まだ自慢したい奴がいるからもう行くよ」
「そ、そうか…。あ、そうだレヴァン君!よければ今度、私が人里を案内s」
「いやー!!お腹空いたお腹空いたー!ご飯食べたいー!!」
「災難だと諦めろ。プラズマぶち込むぞ。上白沢、それは僕がまともなテンションの時に誘ってくれ。あとエプロンめっちゃ似合ってる」
「むぐぐー!!!」
「シャーンハーイ♪」
紫の顔を鷲掴みながらスキマに戻っていくレヴァンと、手を振りながらそれに続く上海。帰り際にエプロン姿を褒められて真っ赤になった慧音を、妹紅が弄って遊んだのは言うまでもないだろう。
口にも顔にも出しませんが、レヴァンは魔理沙達の事は普通に可愛いと思っております。つまりちょっと本音が出てます。
後編は紅魔館と、書いてはいませんでしたがルーミア達の所に出没します。お楽しみに。