食事中は和気藹々。でもその後は、殺伐?
それではどうぞ。
紅魔館の食卓はいつになく賑やかになっていた。フランは急な来客に戸惑っていたが、チルノ達と面識のある美鈴が間を取り持ったおかげですぐに打ち解けた。レヴァンもレヴァンでテンションが高く、大図書館からパチュリーを無理矢理引きずり出して食卓に着かせた。
「……何で私まで座らされているのかしら…」
「お前にもこいつを見てもらいたくてな」
「こいつ?」
「シャンハーイ!」
上海は席に着いたパチュリーの目の前に移動し、その場でくるっと回ってお辞儀をしてみせた。パチュリーは上海から発せられた膨大な魔力に驚き、目を見開く。
「……これが、あの上海?魔力量が桁違いじゃないの…」
「専門家から見てもそう思うか?」
「ええ。下手をすれば私以上かもしれないわ」
「そうか、予想以上の結果が出たな!ハハハハ!」
「…ふふっ、嬉しそうね。あなたがこんなに笑うのを見るのは初めてのような気がするわ」
「今は寝不足だからな」
「寝不足だと感情表現が豊かになるのね…やっぱりあなたはどこか狂ってるわね」
「言わせんな、恥ずかしい」
いつもと違うレヴァンを新鮮に思いながら、パチュリーはコーヒーをすする。と、ここでレヴァンがある事に気付いた。
「お前、髪結んだのか」
「……今更?自分でもかなり違和感があると思ってたんだけど…」
パチュリーは自分の髪を後頭部の高い位置で一つに束ねていた。所謂ポニーテールという結び方だ。普段髪を結ったりしない彼女がポニーテールにしたのには理由がある。
「あなたから貰ったヘアゴムを使ってみたのよ。…似合ってないかしら」
香霖堂で咲夜に渡したお土産。それは紅魔館の全員に対してのレヴァンからのプレゼントだった。ちなみに妖精メイド達の分も用意してあったらしく、妖精メイド達からのレヴァンに対する好感度は鰻上りであった。
「いいや似合ってる。これ以上ないくらい似合ってる」
「…そ、そう…ありがとう…」
ストレートに褒められて少し恥ずかしくなったパチュリーは、少し顔を赤くして顔を逸らしながらもお礼を言った。それを見たレミリアが、若干嫉妬しながら話しかける。
「ちょっとレヴァン?私も髪型変えているのには気づかないのかしら?」
「ん?気づいているに決まってるだろう」
「なら何で何も言ってくれないの?」
「自分の贈った物でそういう事を自分から言うの、なんか恥ずかしいじゃん」
レミリアは呆れたように首を振り、頬杖をついて溜息を吐く。
「あなたにも羞恥心ってあったのね…」
「お前は僕を何だと思ってんだよ」
「…あのね?恥ずかしいのは分からないでもないけど、だから何も言わないっていうのは間違っているわ」
「……そうなのか?」
「そうだよ!」「そうですよ!」
フランと美鈴がここぞとばかりに食いついた。
「お兄ちゃんがくれたリボン、折角付けたのになんにも言ってくれないなんて酷いよ!」
「フランお嬢様の言う通りです!私だって貰ったシニヨンキャップを付けているのに、反応無しというのはあまりにも酷すぎます!咲夜さんだって、普段なら絶対に付けないような可愛いヘアピンを付けてるのに!」
「美鈴!?」
フランはいつものサイドテールを下ろしてセミロングになっており、赤いリボンを結んでいる。美鈴は長髪を団子状に纏めて白いシニヨンキャップを付けた髪型だ。咲夜は髪型こそ変わっていないものの、前髪をオレンジ色のヘアピンで留めている。誰がどう見ても分かる程の変化だというのに、レヴァンはあろうことか全てスルーしたのだ。レミリア達はそれが気に入らないようだった。
「私達だって少しは恥ずかしいのよ?」
「……僕の贈り物を付けて人前に出るのは、恥だというのか…」
「いや違うわよ!?恥ずかしいというか……照れる?の方が正しいかもね」
「ふーん…」
「とにかく!女の子がこうしてお洒落をしてきたなら、褒めるのが男の甲斐性ってものなの!自分がプレゼントしたものなら尚更ね!」
「ふむ…今度から気を付けるとしようか」
「だーかーらー!!!」
バンバンとテーブルを叩いて抗議するレミリア。その姿は紅魔館の主というより駄々をこねる子供のようだ。
「今褒めなさいよ!私とフランと咲夜と美鈴を!!あとついでだから、紅魔館関係者全員を名前で呼ぶこと!良いわね!?」
「今ぁ?……まあ良いか。レミリアの髪型は可愛いな。子供らしさというか可愛らしさというか、そういうのが出てて良い。普段と髪型が少し違うだけで、こうも印象が変わるもんなんだな。似合ってるよ」
「……へ?あ、うん。ありがと…」
「フランドールは逆に、髪を下ろした事で大人っぽくなったな。僕はそっちの髪型も好きだぞ」
「えへへ、そうかな?ありがとう、お兄ちゃん♪」
「美鈴のその頭…妙にしっくりくるな。良いぞ、これは良い。」
「そ、そうですかね…?」
「咲夜の髪型は変わってないのか…だがそのおかげで、ヘアピンが良いアクセントになっている。可愛いよ」
「……あぅ…ありがとう、ございます…」
割とあっさり要求が通って戸惑うレミリアをよそに、同じく褒められた三人は嬉しそうに笑う。
「……ん?おいルーミア。口が汚れてるじゃねえか。もっと上品に食えよ」
「美味しいからしょうがないのだ~」
「しょうがないじゃねえよ。おいこっち向けオラ。見てて不快だ」
「んむ~…」
レヴァンは隣でご飯を食べていたルーミアの顔を自分に向けさせ、ナプキンで丁寧に口周りを拭いてあげた。
「……よし。食っていいぞ」
「ありがと~!」
ルーミアは笑顔で食事を再開。綺麗にしたばかりの口周りも再び汚れた。レヴァンは若干顔を引きつらせたものの、言っても無駄だと判断して自分も食事に戻った。
「…しかし、あれだな。紅魔館ってのは洋食のイメージがあったんだが、普通に納豆も出てくるんだな」
「あら、当然でしょう?うちの咲夜は万能だもの。それに私も納豆は好きよ?」
「……好きなのは良いが、せめて納豆を食う時ぐらいは食器を替えろよ」
半分に白米、もう半分に納豆が盛り付けられた皿を見て、カレーライスを連想しながらレヴァンは言う。レミリアは気にせず納豆ご飯をスプーンですくい、美味しそうに頬張る。
「分かってないわね。このほうが優雅さが出るでしょう?誇り高きスカーレット家の吸血鬼たるもの、朝食一つとってもエレガントさを失ってはいけないのよ。そうよねフラン?」
「ごめんねチルノちゃん、大ちゃん。食べ辛いよね?お姉様はまだお箸を使えないの。皆がお箸を使うのに自分だけスプーンとフォークなのが恥ずかしいから、皆に同じ物を使わせてるの」
「「へぇ~」」
「フラーン!?」
フランに同意を求めたものの、当の本人は話を聞いていないどころか、とてつもなく恥ずかしい秘密を暴露していた。先程までの余裕は何処へやら、レミリアはあたふたしながら必死で言い訳を考える。しかし同席した面々は、精神的にレミリアより大人だった。
「まあ、箸で食うとボロボロ落ちるし、スプーンの方が食いやすいな。なあ八雲?」
「ええそうね。私もこの食べ方は画期的だと思うわ。家でも今度からこうしようかしら?」
「そうしろそうしろ。ついでだから幻想郷中の家庭にこの食べ方を普及させてしまえ」
「そうね。箸の使えないあなたに!レミリア・スカーレット考案の新しい納豆の食べ方!なんてキャッチコピーも付けましょうよ」
「そりゃ面白い。なら本も出さないといけないな。きっと大流行するぞ」
「お前ら人の傷口を抉って泥を塗りこむのがそんなに楽しいか」
訂正、大人げないの間違いであった。赤面してプルプル震えるレミリアが二人を睨む。レヴァンと紫が一回レミリアを見て、そして互いに顔を見合わせる。
「「……ふっ」」
同時に鼻で笑った後、何食わぬ顔で食事を再開する二人。レミリアは涙目で咲夜に助けを求めたが、咲夜は苦笑いを返すのみであった。レミリアは大きな敗北感を心に残したまま、力なく納豆ご飯を食べ続けた……勿論スプーンで。
「ねえちょっと……あれって大丈夫なの?」
「ん?」
パチュリーに腕をつつかれ、指差された方を見たレヴァン。そこにはテーブルに座った上海と、彼女にご飯を差し出しているチルノと大妖精がいた。
「どう、お人形さん?美味しい?」
「ヒャン、ヒャンファーイ!」
「あたいのもあげる!あーん!」
「ングング…アーン!」
上海は大妖精とチルノから、交互にご飯を食べさせてもらっていた。一見すると幸せそうな空間だが、パチュリーは人形である上海にご飯を食べさせていいのか心配していた。
「別に平気だ。あれくらいで腹を壊したりはせんよ」
「お腹壊すとかじゃなくて、食べさせてもいいのか聞きたいんだけど…」
「逆に考えるんだ、食べちゃっても良いさと」
「……大丈夫って事でいいのよね?」
「ああ」
崩壊しかけの会話から、何とか問題は無いという答えを聞き出したパチュリーは安堵する。どんな仕組みで食べた物を消化しているのか気になるところではあったが、今のレヴァンからはまともな返答が得られそうになかったので、大人しくほのぼのとした光景を見守っていた。
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朝食の時間が終わり、からかわれた心の傷も治ったレミリアは紅茶をすする。美鈴は門番の仕事へと戻り、フランはチルノ達と一緒に自室で遊んでいる。紫はレミリアと同じく紅茶を飲み、パチュリーは静かに本を読んでいる。レヴァンは椅子に座ったまま眠りにつき、上海がレヴァンの肩に乗っかって同じく眠っている。咲夜はそれを見て優しく微笑みながら毛布を掛けてあげた。
「ふふ、彼も随分と幻想郷に馴染んできたわね」
紫がティーカップを置き、取り出した扇子で口元を隠しながら嬉しそうに言う。レミリアも同じくカップを置くと、険しい目つきで紫を睨む。
「馴染んできた、ねぇ…。誘拐同然で連れてきておいて、よく言うわね」
「あら、誰が誘拐してきたおかげで、数百年越しの仲直りができたのかしら、お姉様?」
「……貴様」
おちゃらけて言う紫に対し、レミリアの瞳に怒りがこもる。
「……私達に恩でも売りたいのかしら、八雲紫?」
本から目を離さずにパチュリーが静かに訊く。紫は扇子を閉じると、可笑しそうにクスクスと笑った。
「私が?あなた達に?ふふっ、それで何の得があるというのかしら?」
ギリッ…と、レミリアが不愉快そうに歯軋りをする。あからさまに自分たちを見下した態度。咲夜もパチュリーも外面では平静を装ってはいるものの、内心はレミリアと同じくはらわたが煮えくり返っていた。
「……フン、まあいいわ。それよりも本題に入るわよ」
「本題?あらやだ、ゆかりん何を聞かれちゃうのかしら~?あ、言っておくけど、スリーサイズはヒ・ミ・ツ☆」
「いつもみたいにはぐらかせると思うなよ、スキマ妖怪」
レミリアの声のトーンが下がる。
「霊夢から聞いたわよ。レヴァンに自分を幻想郷に連れてきた理由を聞かれて、面白そうだったからって答えたそうね」
「ええ、そうよ。それがどうかしたのかしら?」
「あり得ないわね、その答えは」
「……何故?」
「レヴァンは、この幻想郷の均衡を崩しかねないからよ」
その言葉に、紫は目を細めて薄ら笑いを浮かべる。
「あんたは胡散臭くて信用ならない奴だけど、幻想郷を危険に晒すような真似はしない奴だっていうのは嫌と言う程知ってるわ」
自身も参加した異変、『吸血鬼異変』の事を思い出す。圧倒的な力を以って、幻想郷を自らの支配下に置こうとした数百に及ぶ吸血鬼の侵略。彼らの暴虐は人間妖怪問わずに振るわれ、たった一週間のうちに幻想郷はほぼ陥落した。配下の者も、幻想郷の者も含めて千をゆうに超えていた。誰もが吸血鬼達の勝利を疑わなかった。
しかし、それは所詮幻想だったと思い知る事となる。
吸血鬼が最も力を増す満月の夜。八雲紫は十にも満たぬ人数で反撃を開始した。己の式を始めとした、幻想郷最高クラスの妖怪達。そして人間最強と謳われた、初代博麗の巫女。彼女らの本気の戦いは、最早蹂躙に等しいものであった。当時のレミリアは紫と対峙していたが、決着は一瞬の内についた。その時の紫の表情を、レミリアは一生忘れる事は無いだろう。
怒りで歪ませる事も無く。
愉悦で笑う事も無く。
ただただ、無機質で無表情なだけ。庭の雑草を刈り取る方がまだ楽しいと言わんばかりの顔であった。
レミリアは紫と向かい合った時、表情を見て体を竦ませた。その一瞬にも満たない時間の中で、レミリアの意識が一気に刈り取られる。気絶こそしなかったものの、視界がぼやけて力も魔力も体から抜けていった。それでも反撃をしようと体に鞭打ちって力を入れようとしたが、それも許されない。レミリアはあっという間に妖力の光弾の波に呑みこまれて負けた。レミリアは未だに、自分の意識を刈り取ったあの時の攻撃の正体を知らない。紫本人に聞いたところで、散々からかわれた挙句にはぐらかされるのは目に見えている。それにボロボロに負けてなお残ったプライドが、紫に教えてもらうために頭を下げるのを許さなかった。
「あの時のあなたは若かったわねぇ…愚かな程に」
レミリアの思考を読んだのか、同じく吸血鬼異変を思い出した紫は懐かしむように言った。
「ええ、本当にね…。あの時のあんたを敵にするなんて愚かとしか言えないわ」
幻想郷の均衡を破壊した吸血鬼達は紫の逆鱗に触れてしまった。レミリアに限らず、紫は自身の目に映った吸血鬼を片っ端からなぎ倒していったのだ。弱点を突くような事はせず、真正面から力を以って叩きのめした。程度の違いはあれどもプライドが高く、自分の力に絶対的な自信を持っていた吸血鬼達は、無表情で制裁を下し続ける紫によって恐怖のどん底に落とされた。
余談だが、この戦いで一番の戦果を上げたのは紫。にもかかわらず、返り血の一つも浴びていなかったという。壮絶な戦いが終わり、服や顔にこびりついた血の感触や生臭さで各々顔をしかめていたが、紫だけは涼しげに笑っていた。その姿は味方である者達にも若干の恐怖心を植え付けたという…。
「私や同胞が幻想郷で好き勝手やって、それであんなに怒ってたあんたが、自分から幻想郷を滅ぼすような真似をする筈無いでしょう?」
「それについては否定しませんわ。でも、何故レヴァンが幻想郷の均衡を崩すと思うのかしら」
「レヴァンのアーマーは強いわ。人の手で作られたとはとても思えない程にね。もしもこの技術が人里に広まったら、人間と妖怪のパワーバランスが逆転してもおかしくないわ」
妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を恐れる。これが幻想郷を成り立たせているルールである。しかし、それに全員が納得しているかといえばそうでもない。人間が暮らす人里では、妖怪は人里の中の人間を襲ってはいけないという決まりがある。これによって人里にいる限りは妖怪の脅威にはさらされないが、それを妖怪に飼いならされていると感じる人間もいる。そういった考えの人間がレヴァンの技術を利用し、妖怪に対して大規模な攻撃を仕掛けかねないというのがレミリアが考えていた事だ。しかし、紫はそんなレミリアの懸念を否定する。
「それはありませんわね。宴会であなた方が丁度来る前だったので知らないでしょうけど、レヴァンはアーマーの技術が自分以外の誰かに渡った場合、幻想郷を敵に回すと言い切りましたから。無論、人間も例外ではないでしょう」
レミリアの動きが固まり、咲夜の表情が僅かに引きつる。パチュリーは本を読みながら、溜息を一つ吐いた。あの時に何となく空気が悪かったのを思い出し、その原因がこれではっきりした。
「それに仮に奪われたとしても、アーマーは彼以外には作る事は出来ませんわ。幻想郷はもちろん、外界ですらオーバーテクノロジー……現代の科学で作れる代物ではありませんもの」
紫以外の全員の顔色が驚愕に染まる。外の世界の話はたまにしか耳にしないものの、技術力の高さは誰もが知っている。科学が発達したせいで妖怪達は追いやられてしまったのだから、身を以って理解しているのだ。
だがテンプルアーマーはそれすら凌駕している。その言葉は容易く信じられるものではなかった。しかし、彼女達は既に見てしまった。吸血鬼の拳を受けてもまったく壊れていなかったサンドワーム、流れたエネルギーを魔力に変換して撃ち出した魔導手甲、パチュリーも認める程の強大な魔力を秘めた上海―Xを。紫はレミリア達の反応を見て、また可笑しそうに笑う。我に返ったレミリアは、先程からからかわれっぱなしの紫に一矢報いようと紫が考えていないだろう可能性を指摘しようと意固地になる。そして一つの考えが浮かんだ。
「…確かにそれならアーマーを奪われたりする心配はないみたいね。でも、レヴァン自ら幻想郷を侵略するかもしれない、とは考えなかったのかしら…?」
普通でないにしろ、レヴァンは人間である。なら妖怪が闊歩する幻想郷を、テンプルアーマーの力を使って変えようとするのではないか。レミリアは頭に浮かんだ考えを、意地悪い笑みを浮かべながら紫に投げかけた。
――――――――言い終わってすぐに後悔した。
紫の顔から笑みが消え、蔑んだ目でレミリアを睨んでいた。
「あなたにしては品の無い冗談ですわね。他人の物を奪って我が物顔で威張る血吸い妖怪と、彼が同じ事をすると言いたいの?あなたが逃げ続けたあなたの妹と真っ向正面から向き合った、彼が?」
普段の紫からは聞いたことの無い冷淡な声。レミリアは自分の背筋が凍りつくような感覚に襲われた。咲夜も珍しく人前でたじろいでいる。パチュリーの本をめくる手が止まり、額から冷や汗が一滴流れた。
「あんな塵芥共と彼を同列に扱うなんて、天下のスカーレット家も落ちぶれましたわ。ゴミと人の区別もつかないのかしら?日中も暗い所に籠っているから、目が悪くなったのではなくて?」
飛んでくる罵詈雑言に怒りを覚えたが、それ以上に紫の圧倒的な怒りの感情に襲われる。言い返したいが何も言えず、威圧されて縮こまるレミリアを見る紫の目つきは段々鋭さを増していた。
「……ごめん、なさい…」
やがて耐えきれなくなり、レミリアは小さく絞り出すように謝罪の言葉を口にした。紫は、はぁ…と息を吐いて発していた威圧感を収める。
「…幻想郷で暮らして、その傲慢な考え方が変わるかと思っていたけれど……そうでもないみたいね。妹との仲直りも、結局は人にお膳立てされた上でやっとですものね…」
「……っ!」
レミリアは更に俯き、潤んだ瞳から涙が零れそうになるのを必死でこらえている。咲夜もパチュリーも、レミリアと紫にどう声をかけていいか分からず、黙って見ている事しかできなかった。
「…成程、だから僕を呼んだのか」
―――――今にも泣きそうな少女に助け舟を出したのは、眠りから覚めたばかりの奇才であった。
紫がレヴァンをさらった理由、お気付きの方もいらっしゃいますかね。
本当はもっと書いてから投稿するつもりだったんですが、それだと遅くなりそうだったので…。中途半端ですいません。
次回もお楽しみに!