東方奇才伝   作:サンダーボルト

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今回オリキャラが登場します。名前を付けないとどうにもやりにくかったもので…。タグも追加させて頂きます。


それではどうぞ!


袖振り合うも結構な縁

~レヴァンサイド~

 

 

紅魔館からの帰り道。特に妖怪に襲われる事も無く、僕は人里に到着した。何故寄ったかというと、この前助けた奴らに頼んでおいた事がどうなっているかを確認するためだ。

 

 

土地と家。

 

 

今の手持ちだけで買えるとは流石に思っていないが、せめていくらで買えるかが分かればこれからの計画が立てられる。拠点を拵えるなら早い方が良い。いつまでも神社の庭を借りる訳にはいかんし、博麗に飯をずっとご馳走になるのも悪い。助けた連中の住所は聞いてあるから、まずは近い方から行こう。

 

……今更かもしれんが、こうして人里を歩いていると自分がタイムスリップをしてしまったような錯覚に襲われる。高層ビルが無いのは当然として、建物の殆どが瓦屋根なのだ。現代でも瓦屋根の家はあるが、割合としては少ないだろう。例外は紅魔館のように、新しく幻想郷に入ってきた建物のみだ。人里の全ては回っていないものの、恐らくは全て木造建築だろう。……火事が心配だ。

 

服装も着物ばかり……と思いきやそうでもない。すれ違った人間のおおよそ一割位は洋服を着用しているし、服屋の店先にも少ないが洋服が置いてある。どうやら単純に昔のままで文明レベルがストップしている訳ではないようだ。どこで仕入れたかは知らないが、現代の文化も取り入れつつ発展していった独特な文明を形成しているらしい。射命丸が持っていたカメラもそうだし、河城の光学迷彩技術に至っては現代の技術を凌駕している。妖怪が自らを追いやる原因となった科学技術を使っているとは、なんとも皮肉なものだ。

 

……っと、目的地に着いたか。

 

 

「おい、ちょっといいか?」

 

「はい?……おお、旦那!」

 

 

僕を旦那と呼んだこいつは、枝妖怪の餌食になりそうだった男だ。名前は五郎。兄弟はいないが、五郎だ。自称、人里ではそれなりに顔が利く商人らしい。別に利こうが利くまいがどっちだっていい。重要なのはそこではないのだからな。

 

 

「へへ、あん時は旦那のおかげで命拾いしやしたぜ。まさかあの人の良い兄ちゃんが妖怪だったとはねぇ…」

 

「それは良かったな。それで、頼んでおいた事はどうなった?」

 

「ええ、ばっちしでさぁ!いくつか纏めてきやしたぜ。どうぞご覧くだせぇ」

 

「おう」

 

 

五郎から資料を貰い、目を通す。

 

 

「基本的に、里の中心から遠い程安くなってますぜ。外側になればなるほど、妖怪に襲われる危険があるんで誰も住みたがらないんでさぁ」

 

「人里の中にいれば妖怪に襲われないんじゃねえの?」

 

「旦那ぁ、あっしの時の事忘れたんですかい?いくら博麗の巫女や八雲紫がいるからって、絶対安全なんてのはあり得ねえんでさぁ。そこらの野良が迷い込んで、運悪く一人でいた所を美味しく頂かれるってのも前にありやしたしねぇ…。里の内外関係なく、なるたけ沢山固まってた方が安全なんでさぁ」

 

「杜撰な警備だなオイ」

 

「いやいや、自警団の連中にだって人数とか諸々限界はありやすぜ。慧音先生みたいに一対一で妖怪と戦える人も少ないですしねぇ……っとと、話が逸れちまった。ま、そういう訳であっしとしては値は張っても安全を考えて買うべきだと思いますぜ?」

 

 

五郎の心配も尤もだが、正直僕にはいらない心配だ。……そうだ、ついでにもう一つ頼んでみるか。

 

 

「なあ五郎、お前、金属取り寄せられるか?鉄とか、金とか、チタンとか」

 

「まぁたけったいな物を欲しがりますねぇ…。まあ紹介は出来ますが、こっちはあまり安く手に入る物じゃございやせんぜ?」

 

「構いやしない。ある意味、僕の生命線だからな」

 

「何でぇ、旦那は鍛冶屋かなんかですかい?」

 

「メカニックだよ」

 

 

五郎はいまいちピンと来ていない顔をしながらも、僕の注文を引き受けてくれた。家に関してはこの資料を元にしてじっくりと吟味していこう。実際に場所を見てみないと分からない事もあるだろうからな。

 

この後に仕事がある五郎と別れ、僕はもう一人の方の家へと向かった。今の時間は…昼時かその少し前といったところだろうか。僕が助けた子供三人は恐らく寺子屋に行ってるだろうから居ないだろう。居て困るって程でも無いが、騒がしいのは勘弁願いたい。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

僕の予想は当たっていたようで、子供達は寺子屋に行っていて留守だった。母親が洗濯物を干していた所を捕まえるのに成功し、子供達が居ない事を確認して家に上がらせてもらった。

 

 

「わざわざご足労いただいて申し訳ありません…。本来なら私の方からお伺いするべきなのに…」

 

「場所が場所だ、気にするな」

 

 

お茶と資料を僕の前に置いた後、申し訳なさそうに頭を下げる。いやこっちが頼み事したんだから、頭下げられても困るんですが…。人里と博麗神社の間はそれなりに距離がある。当然、途中で妖怪に襲われる危険がある。僕に資料を届けさせるためだけに護衛を雇わせるのは流石に悪い。アーマーを護衛に付けてやるという手もあるが、それやる位なら直接出向く方が早い。

 

出された緑茶を飲みながら資料に目を通していると、横に座って覗き込み始めた。あんたが見てどうすんだよ。

 

 

「つかぬ事をお伺いしますが、住む場所をお探しなのですか?」

 

「家と土地を探してるんだ、それ以外無いだろう…」

 

「やはりそうですよね…。あの、ご迷惑でなければうちに来ませんか?」

 

「……は?」

 

 

いきなり何を言い出すんだ…。

 

 

「うちには空き部屋もありますし、蓄えもそれなりにありますから…」

 

「だからって住めるか。赤の他人だぞ、僕達は」

 

「それはそうですが……その、あんなことがあった後ですし、女だけで暮らしていくのが少し恐くなってしまって…」

 

「……旦那はどうした?」

 

「夫は、早くに病気で亡くなりました…」

 

「そうか…」

 

 

子供を探しているのが母親だけ、というのが少し気になっていたが、そういう事情か。女手一つで子供三人を育てるというのは中々に大変だろう。しかし、それとこれとは話が違う。

 

 

「だからって一緒には暮らせんよ。問題があり過ぎる」

 

「……そうですよね。すみません、変な事聞いてしまって…」

 

 

子供が誘拐されて、精神がすり減っているのだろう。普通では考えられない発想になってしまうのも無理はない。子供のためにも早く持ち直してもらいたいものだ。更なる不幸に見舞われないよう、しばらくジェットパックに空から見張らせようか…。肩入れしすぎか?

 

 

「気にしなくていい。そっちも大変だろうが、まあ頑張れ」

 

「はい…ありがとうございます」

 

 

寂しそうに微笑む母親に見送られ、僕は家を後にした。取り敢えず今日のところは神社に戻り、貰った資料から優先度を決めて見に行くとしようか。

 

……そういや腹減ったな。昼も過ぎてることだし、どこかで飯でも食うか。蕎麦か、丼ものか、結構種類があって悩むな…。

 

 

「おに~ちゃ~ん!!」

 

 

今日はがっつり食いたい気分だな。となるとやはり丼ものか。でも、もりそばも量あるし安いし…。そういや大盛りのシステムって幻想郷の飯屋にあるのか?無いなら二つ三つ頼まないと満足できんぞ。

 

 

「お、おにぃちゃ~ん…」

 

 

別に満腹にならなくても問題は無いが、金はあるし贅沢しても罰は当たらないだろう。それにこういう場所で飯を食うなんて現代ではできないからな、時代的に。折角だから堪能していこう。

 

 

「に~ちゃん、に~ちゃ~~ん!!」

 

 

そうだ、博麗に土産がてら食べ物でも買っていこうか。いつも食わせてもらってたから、こういう時にお返ししておかないとな。よく煎餅を食ってるから、それを買って帰るか…。

 

 

「おに~ちゃん!!」「おにぃちゃん!!」「に~ちゃん!!」

 

「っ!?」

 

 

突如、前から走ってきた少女三人が僕に向かって体当たりを仕掛けてきた。普通より硬い僕の体にぶつかり、鈍い音をたてて三人仲良く鼻を打つ。少女達は尻餅をついて涙目で鼻を押さえている。お前ら何故僕に体当たりした?

そんな疑問を浮かばせていると、一番大きい少女が立ち上がって鼻を赤くしながら睨んできた。

 

 

「何で無視したのさ、おに~ちゃん!」

 

 

……こいつ何言ってるんだ?無視も何も、お前の事なんか知らないんだけど。知らない奴に兄と呼ばれて返事するわけないだろう。そう少女達に伝えると、何故だか酷くショックを受けたようだった。……本当に何故だ。

 

 

「お、おにぃちゃん…私達の事覚えてないの…?」

 

「……どっかで会ったっけ」

 

「に~ちゃん、恐い人から守ってくれた…」

 

 

……恐い人?恐い人ってなんだ………あっ。

 

 

「お前らひょっとして、誘拐されてた幼女か」

 

「「「うんっ!!」」」

 

 

なんてこった、折角避けてたのにこんなところで会ってしまうとはな…。子供の顔とかよく見てなかったから覚えてなかった。ルーミアは僕の事をわすれんぼーと言っていたが、これでは否定できないではないか…。

 

 

「こら~!有希(ゆき)雪奈(せつな)風吹(ふぶき)!勝手に皆から離れるんじゃない!」

 

 

どっかで聞いたような怒号が聞こえ、三人がビクッと体を震わせた。まさかあいつとも鉢合わせかよ…。

 

 

「まったくお前達は!このあいだ恐い目に遭ったばかりだというのに!少しは親の心配も……ってレヴァン君!?」

 

 

鬼のような形相で迫ってきた上白沢慧音は、僕を見て固まってしまった。叱られるのを覚悟していた少女達は、それを見て戸惑っているようだ。

 

 

「ゆ、有希……彼と知り合いなのか?」

 

 

上白沢が恐る恐る口を開いた。なんだよその反応。僕が子供と知り合いなのがそんなにおかしいか?……おかしいな。

 

 

「?うん!おに~ちゃんは私達を助けてくれたんだよ!」

 

 

一番大きい少女…有希と呼ばれてたのが笑顔で答えた。あ~あ、出来れば答えないで欲しかったんだがな…。こいつらの誘拐事件の事を知っているであろう上白沢は、怒りの矛先を少女達から僕へと向けた。

 

 

「君はまたっ!!危険な事はするなと言ったじゃないか!!」

 

「うるせえな、金がいるんだよ金が」

 

「お金と命、どっちが大事なんだ!?」

 

「命に決まってる。だが命を守るのにも金がいるんだよ…」

 

「屁理屈を言うな!!大体君は…!」

 

「待ってよ先生っ!!」

 

 

また言い争いに発展しようかという時に、さっきまで上白沢の剣幕にビビっていた少女達が目の前に行ってなにかを訴え始めた。

 

 

「どうしておに~ちゃんのこと怒るの!?おに~ちゃんは私達のこと助けてくれたんだよ!?」

 

「そんなことは分かっている!いいからお前達は皆の所へ戻ってなさい!」

 

「分かってるのにどうして怒るの…?おにぃちゃんが来てくれなかったら、私達きっと酷い目に遭ってたのに…」

 

「……先生は、私達がどうなってもいいの…?」

 

「!?風吹、何を言い出すんだ!?そんなことある訳ないだろう!?」

 

「それなら、どうしておに~ちゃんのこと怒ってるの!?先生は誰かが悪い事したら怒るじゃん!おに~ちゃんが来てくれたのは悪い事なの!?」

 

「……そ、それは…!」

 

「……ぐすっ、酷いよ先生…お兄ちゃんは何にも悪くないのに…」

 

「ま、待ってくれ雪奈…!」

 

 

涙ながらに訴える彼女らに対し、上白沢は上手く言葉を見つけられないらしい。雪奈と呼ばれた少女に至っては少し泣いている。慰めようとしたいけどできないのか、両の手が虚しく空を切る。上白沢が何も答えられないのを見て、三人の目が更に潤み始めた。上白沢も更に焦るが、口から出てくるのは意味を成さない言葉だけ。

 

……これ以上ほっとくと関係が崩れそうだな。しょうがないからフォローしてやるか。

 

 

「なあ有希。お前、たとえばどんな時に怒られた?」

 

「……え?」

 

 

しゃがんで目線を合わせ、有希に問いかける。有希は突然の質問に困惑していたが、少し考えたのちに答えを言った。

 

 

「えっと、誰かに悪戯した時とか、何かを壊しちゃった時とか…」

 

「そうか。それだけか?もっとあったんじゃないか?」

 

「……う~ん、分かんないよ…」

 

「例えば勝手に人里の外に出ようとしたとか、屋根の修理してるとこに近づいたとか…」

 

「……あっ!そういえば、前に森の向こうの綺麗な向日葵畑を見に行こうと思ったらすっごい怒られた!」

 

 

その言葉に同意して二人も頷く。

 

 

「何で怒られたのか、お前達は分かっているか?」

 

「……えっと…悪い事だから…?」

 

「正確には、お前達の身が危なくなるからだ」

 

「え?」

 

「人里の外に勝手に出れば、妖怪に襲われるかもしれない。屋根の修理してるとこに近づけば、上から工具が落ちてくるかもしれない。危険があるからこそ、行っては駄目だと叱るんだ」

 

「……」

 

「そして上白沢も、同じ理由で僕を叱ったんだ」

 

「……へ?」

 

 

上白沢が呆けた声を出し、呆けた顔で僕を見る。

 

 

「誘拐犯と鉢合わせになれば、僕の身に危険が及ぶ。だから僕を叱ったんだ。決してお前達の事がどうでもよかった訳じゃない。そこだけは分かってやれ」

 

「「「……」」」

 

 

三人が顔を見合わせた後、上白沢に向き直り…一斉に頭を下げた。

 

 

「「「先生!酷い事言ってごめんなさい!!」」」

 

「!い、いや、気にするな。私は大丈夫だから、早く皆の所へ戻るんだ」

 

 

一瞬驚いたようだが、すぐに微笑んで頭を撫でてやっていた。三人はそれに安心して、僕に手を振りながら走っていった。……はあ、もう二度と僕の前で喧嘩しないでほしいね。

 

 

「……レヴァン君、ありがとう」

 

「お前も教師の端くれなら、あれくらい答えてやれよ」

 

「面目ない。君がいてくれて助かったよ。おかげで子供達に余計な不安を植え付けずに済んだ」

 

 

上白沢は優しく笑って子供達の方を見ている。こいつの子供を思う気持ちは本物らしい。

 

 

「……レヴァン君、あのな?その……朝の事の続きなんだが…」

 

「朝?……ああ、人里の案内がどうとかいう話か?安心しろ、ちょっと寝たからテンションは普通だ」

 

「そうか……もし迷惑でないなら、私が人里を案内しようと思うんだけど、どうかな?」

 

「それはありがたいな。ぜひともお願いしようか」

 

「…そうか!分かった!この上白沢慧音に任せておけ!!」

 

 

豊満な胸を自分で叩き、自信満々に笑う上白沢。丁度家を見に行きたかったところだ。こいつなら色々と知ってるかもしれんし、これ以上ない助けになるぞ。しかし、こいつの気合の入れようは何なんだかね…。

 

 

「日時はどうする?私は明日からでも平気だが…」

 

「いや、明日はちょっとやる事があるんでな。明後日にしてくれ」

 

「ああ、分かった。待ち合わせは…」

 

「大丈夫だ、どこに居ようとお前を探し出してやるから」

 

「…なんだか言い方が恐いな…。なら時間は…十時頃でいいかな?」

 

「ああ」

 

 

上白沢は満足そうに頷いて、別れの挨拶を交わして子供達の元へ走ってゆく。はあ、何だか今日はどっと疲れたぜ…。

 

……あれ、あいつ止まってこっちを見たぞ。何だ?

 

 

「レヴァン!楽しみにしてるから!じゃあね!」

 

 

そう言って今度こそ走り去っていった。……あれ、僕いま呼び捨てにされた?別にいいけどさ。美人に呼び捨てにされるっていうのも悪い気はせんし、このままでいいか。

 

振り返った時の赤みを帯びた笑顔に、少しだけ見惚れてしまったのは僕だけの秘密だ。

 

……あ、結局飯どうするか。




オリキャラは今後も恐らく登場します。場合によっては増えるかもしれません。


次はデートにおける、二人の心情を書ければ良いなと思っております。


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