東方奇才伝   作:サンダーボルト

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UA20000突破!沢山の人に見て頂けるというのは嬉しいものですね。これからも東方奇才伝をよろしくお願いいたします!





上白沢慧音の混乱

~慧音サイド~

 

 

今日の授業も無事終わり、私は子供達を家に送った後に帰路につく。

 

 

「……約束してしまった…」

 

 

つい口に出してしまったのは、彼とのデート……いやいや!人里の案内の約束だ!!ふ、二人きりだといっても、デートでは断じてない!!きっと彼だってそう思っている筈だ!!

 

頭を振って自らの煩悩を消し去り、早足で家へと帰る。そうだ、家で仕事を手伝ってくれている妹紅にも報告しなければな。……きっと、いや確実にからかわれるだろうが、私の背中を押してくれた彼女に何も言わないというのは失礼だろう。

 

 

「ただいま、妹紅」

 

「うぅ~ん……あ、お帰り慧音!」

 

 

家に入ると、大きく背伸びをした妹紅が私を出迎えてくれた。机の上には書類の束が置いてある。妹紅、頑張ってくれたんだな…。

 

 

「あはは、帰ってくるまでに全部やっちゃおうかと思ってたんだけど、流石に無理だったよ」

 

「何を言うんだ、こんなにやってもらえたなら充分すぎるさ。ありがとう、妹紅」

 

「どういたしまして。ねえ慧音、私お腹空いちゃったよ。晩御飯にしよ?」

 

「ああ、今すぐに準備するよ。でもその前に、報告する事があるんだ」

 

「報告?」

 

 

私は妹紅に、明後日にレヴァンと人里を回る約束をした事を話した。妹紅は最初こそ驚いていたが、すぐにニッコリ笑って私の肩を優しく叩いた。

 

 

「やったじゃないか慧音!しかも約束だけじゃなくて、どさくさ紛れに呼び捨てにするなんて!」

 

「はは…かなり恥ずかしかったけどな…」

 

 

あの時はその場の勢いで口走っただけだからな…。彼の反応もよく見ていなかったし、嫌がられてないといいんだけどな…。

 

 

「うっし!じゃあ今夜でこの仕事終わらせて、明日は慧音の服選びだ!」

 

「……え?」

 

「任せなって!どこへ行っても恥ずかしくないくらいにしてやるから!」

 

「いや、どこへって人里からは出ないからな!?」

 

 

何故だか妹紅のテンションまで上がっているぞ!?というか服選びって…何もそこまでしなくても…。

 

 

「妹紅。気持ちはありがたいんだが、そんなに気張る事は無いんじゃないか?ほら、レヴァンだってデートのつもりは無いだろうし…」

 

「この期に及んで何弱気になってるのさ!」

 

「よ、弱気ではない!私が約束したのはあくまで人里の案内であって、デ、デートとかそんなんじゃ…」

 

「純然たるデートだろ!!」

 

「だ、断じて違う!!」

 

 

暫く妹紅と言い争いを繰り広げたが、お互いに肩で息をするまで続けた辺りで折れたのは妹紅の方だった。……我ながら、ムキになり過ぎただろうか…?

 

 

「はあ、はあ…分かったよ、慧音の言う通り、人里の案内って事にするから…」

 

「はあはあ……だ、だから最初からそのつもりだと…」

 

「はいはい分かってるって…。でも、少しはおめかししていきなよ?せめて服くらいはいつもと違うのに…」

 

「必要ない!どうせ彼の事だ、私が服を変えた位で意識するわけがない!つまりは無意味なんだ!」

 

「そうかなぁ…?」

 

 

なおも不満そうな妹紅を放っておき、私は夕飯の準備をするべく台所へ向かった。まったく妹紅は、どうしてこう私をデートさせたがるんだろうか?自分だって独り身のくせに…。

 

……まあ、私と妹紅が出会ってからずいぶん経つが、お互いに浮いた話は一つも無いからな…。もしも妹紅が同じような状況になったら、私も同じ事をしていたかもしれない…。

 

レヴァンは危なっかしい男だが、その行動によって誰かを救っていたのも事実だ。自己中心的であるかと思えば、その実他人の事を考えている。不器用で、分かり辛い。しかし、時に素直で分かりやすい。掴みどころのない男だ。ただ確かなのは、彼は紛れも無く優しい人物だという事だ。お腹を空かせた妖怪のルーミアを助け、危険に巻き込まないようにルーミアと途中で着いて来たチルノと大ちゃんを紅魔館の外で待たせ、更にはその紅魔館の主とその妹の問題を解決した。幻想入りをして間もなく、不安や懸念もあっただろう状況で、だ。そんな中でも他人を気遣える彼は、少なくとも悪人ではないだろう。顔も目つきは悪いが整っているし、里の男性の中でもかなりカッコいい部類に……って、何を考えているんだ私は!?

 

僅かに火照り始めた顔を冷ますため、台所の蛇口をひねって水を二、三度顔に叩きつけた。心に渦巻き始めた謎の感情を誤魔化す為に、いつもより力強く野菜を切る。まな板が大きな音をたて、包丁の痕が残るのも構わずに切り続ける。

 

……彼の好きな食べ物は何なのだろうか…。もし私が作れるものだったら、作ってあげるのも良いかもしれない……も、勿論お礼としてな!有希達も彼のおかげで助かったわけだしな!寺子屋の教師として、お礼をするのは何も不自然ではない!

 

そういえば、今は博麗神社の庭に住んでいるらしいな。となると、霊夢と食事しているんだろうか?魔理沙経由の話では、霊夢の料理の腕はかなりのものらしい。特に和食は絶品だとか。いつかの宴会の時に出てきたおにぎりが妙に美味しかった事があったが、今思えばあれは霊夢が作った物だったのかもしれないな。毎日、霊夢の料理を食べているなら、舌は相当肥えているかもしれない…。ここは和食ではなく洋食で攻めてみるか?あまり作った事は無いが、貸本屋の鈴奈庵で外の世界の料理本でも借りればどうにかなるだろう。いやでも、ここは思い切って和食で勝負というのも……、

 

 

 

 

 

 

 

 

……あれ、ちょっと待て。せ、攻めるって何だ?勝負って何だ!?いつからそんな話になった!?私は何を考えているんだ!?くそ、妹紅がおかしなことを言い出すから、こっちの思考までおかしくなってしまったじゃないか…。落ち着け、落ち着くんだ私…。

 

そうだ、男の人なら総じて肉が好きなはずだ。私はワーハクタク……半分牛の妖怪だから牛肉はあまり使いたくないな…。豚肉か鶏肉、猪の肉を使って何か作ってみるか?うん、それがいいだろう。もし彼に牛肉料理を出して、

 

私を、食・べ・て?

 

みたいな感じに捉えられたら一大事だからな。

 

 

 

 

 

 

 

………いやいやいやいや!!!そうじゃない!!違う、こんなの私じゃない!!なんて破廉恥な想像をしてるんだ!?

 

くっ…冷静になるんだ上白沢慧音…。そもそも、明後日に彼に料理を振る舞うわけではないんだし、今この事で悩んでいてもしょうがないじゃないか。まずは明後日、彼の好きな食べ物もしくは料理をそれとなく聞き出して、十分な練習を重ねたのちに改めてお礼として私の手料理を振る舞おう。よし、それが一番だ。

 

おっと、野菜はもう切り終わっていたか。早く作ってやらないと妹紅が駄々をこねはじめるな。まったく、まるで手のかかる子供を持った気分だよ…。彼と結婚して子供ができたなら、妹紅みたいに育つのだろうか?レヴァンは子育てに向いてなさそうだから、私がしっかりしなくては…。

 

 

 

 

 

 

 

………だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!どうしてこう変な想像ばかりしてしまうんだ!?緊張しているのか!?情けないぞ私!?たかがデートくらいで!!あっ、いやデートじゃなかった!!

 

そうだ、きっと疲れているんだ!何だかんだで最近は慌ただしかったからな!妹紅には悪いが、今日は早く寝かせてもらうか!そうと決まれば、さっさと料理を作ってしまおう!鍋に火はかけてあるから、あとは野菜を入れて中火で煮込めば…。

 

 

「慧音ぇぇぇぇぇぇ!?鍋にまな板入ってるぞ!?しかも鍋に水入ってないし!お前いったいどんな料理を私に食べさせる気だっ!?」

 

「え?……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?何だこれはっ!?」

 

「今気づいたのかよ!?」

 

 

……今夜は、外に食べに行くか。私と妹紅の身の安全のためにも…。ついでに、夜風にあたって私の火照った心身を冷ましておこう…。

 

 

 




人の心境を書くのは難しいもんです…。上手く書けたかどうかは分かりませんが、楽しんで頂けたならなによりです。

次回は奇才の心境と、説教で有名なあのキャラを出そうか悩んでおります。どうなるかはまだわかりませんが、お楽しみに。
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