後半に紅魔館サイドがあります。
~レヴァンサイド~
僕は霧雨と射命丸に連れられ、人里へとやってきた。都会のコンクリートジャングルとは違い、人も自然も活き活きとしている。科学技術は低いようだが、代わりに魔法が発達しているらしい。もっとも、誰もが使える訳ではないらしいがな。
「レヴァンさん、どうかしましたか?」
「……癒されていた」
「おや、私を見てですか?それとも魔理沙さんを見て?」
「全部だ」
「答えになってないぜ?」
「それは君が子供だからだ」
「なっ…」
子供と言われたのが気に入らないのか、霧雨が膨れっ面で睨んでくる。可愛い奴め。
そして、そんな僕達のやりとりを射命丸がニヤニヤしながら眺めている。気持ち悪い奴め…。
「あ、それはそうとレヴァンさん。新聞とりませんか?」
何が、それはそうと、なんだ?妖怪の思考は理解できないな。
「生憎と今は無一文でね。そんな余裕は無い」
「初回サービスって事でタダで構いません!」
「……ちょっと見せてみろ」
ぱあっと顔を輝かせて新聞を僕に渡す。……そんなに見る人間いないのか?
……ふ~ん…。僕の世界の新聞とは随分違うな。文章は射命丸が考えているのだろうか?なんだか新聞というより……週刊誌みたいな印象だ。
「……ありがとう」
「どうでしたか!?」
「文々。新聞という名前は良いな。奇抜で面白く、記憶に残る。だが書き方をもっと工夫するんだな。載せられている情報量は評価できるが、俗っぽい印象が残って信用しづらい。そこを直せばマシになる」
「え……」
いきなり射命丸が固まった。……あれ、霧雨も同じようになってるな。僕変な事言ったか?
「ま、まさかそこまで評価して頂けるとは…。他の方に感想を訊いても、掃除に便利だとか、もっと柔らかい紙がいいとか、そんな事しか言われませんので…」
照れくさそうに頭をかきながら、しかし口元は嬉しそうにつり上がっている。どうやら幻想郷にはこいつの新聞を新聞として見てる奴は少ないようだ。
「新しいのが出来たら見せに来い。しょうがないから評価してやる」
「へっ?い、いいんですか?」
「何だ?初回サービスでタダなんじゃないのか?」
「は、はいっ!是非お願いします!今後ともご贔屓に!!」
射命丸は僕に一礼した後、眩しい程の笑顔を僕に向けた。………どれだけ読まれてなかったんだよ…。
「おーい…私の事忘れてるんじゃないだろうな~?」
「悪い」
「忘れてたのかよ!?」
「そう怒るな。で、どこを案内してくれるんだ?」
「ったく…。そうだなぁ……見たい所とかあるか?」
「無い」
「ちょっとは考えてから答えろよ!?」
こいつと話してると漫才みたいになってくるな。こいつが勝手に騒いでるだけなんだが。
「あややや?あれって慧音さん達じゃないですか?」
「お、本当だ。おーい!」
霧雨が手を振った先にいたのは、山盛りの山菜とタケノコを抱えた2人の女性だった。
「ん?やぁ、おはよう」
「おはよ、魔里沙に文と……えーと…?」
「紹介するぜ。こいつはレヴァン。昨日幻想入りした外来人だ」
「それで、こちらの帽子をかぶっている方が上白沢慧音さん、髪を束ねている方が藤原妹紅さんです!」
紹介してくれるのはありがたいがな、幻想入りしたってホイホイ言っていいのか、霧雨?その単語が出た途端、2人の表情が変わったぞ。
「……レヴァン君といったね。紹介の通り、私が上白沢慧音だ。幻想郷に来たばかりで色々と不自由もあると思うが、私でよければ力になるよ」
「その気持ちはありがたいが、心配はいらないぞ上白沢。野良妖怪程度は問題にならない。衣食住も数日はどうにかなるからな」
「ははっ、頼もしい事だな。でも、強がりなら逆効果だぞ。慧音はかなりのお人好しだからな」
ケラケラと笑っている藤原。多分だが…体験談だろうな。
「それに、その有り様だと慧音じゃなくても気にするぞ?」
どういう事だ?僕にどこか変な所でも……………しまった。服が破れたままだ。正確には、噛みつかれた腕の服の袖が血で汚れ、ボロボロに破れている。
「朝はバタバタしてたから、着替える暇無かったんだよな」
「そもそも着替えも無いからな」
「そうなのか…どこかで買うか?それくらいなら私が出してやるぜ」
「いらない」
「あ、なら私が買います!お得意様ですから」
「いらないって」
「待て待て、それなら家に来るといい。男物の服は無いけれど、袖を直すくらいならできるから」
「いらないっつってんだろ、おい」
こいつら、いらない世話を焼きやがって…。服が破れたから何だというんだ。確かに目立つがそれくらいだろう。そして話を聞けよ。
「こうなったら大人しく世話になりなよ。断る理由も無いだろう?」
「それはそうだが、世話になる理由も無い」
「おや、理由ならある。私は寺子屋をやっていてね、この辺りの子供はみんな私の生徒なんだ。無論妖怪も含めてね」
周りを見ると、子供達に混じって妖怪が遊んでいる。平和だな。
「君の今の格好を見て子供達が怯えたりしたら困るんだよ。だから、ちゃんとした格好をしてほしいんだ」
……単なるこじつけだろ…。だが、断ったら断ったらで更にとんでもない理由で食いついてくるかもしれないな。しょうがない、世話になるとしようか。
お言葉に甘える事を伝えたら、何故か上白沢は嬉しそうだった。何故だ…。
「なあ、この沢山のタケノコって、宴会で使うのか?」
「ああ。慧音の家で炊き込みご飯にしてから差し入れようと思ってね」
「お、あれか!私あれ好きなんだよな~!」
炊き込みご飯か。山菜も使うのだろうか?はしゃいでいる霧雨を見る限りでは、味は期待出来そうだ。もっとも、僕は味覚は半分壊れてるようなものだからあまり関係無いか…。
ぼんやりと彼女達を眺めていると、射命丸が申し訳なさそうにこちらに話しかけてきた。
「すみません、仕事がありますので抜けても構いませんか?」
「僕の事なら気にするな。行ってこい」
「はい!あ、レヴァンさんの事は号外で大々的に宣伝させていただきますね!」
「それはよせ」
「あやや……でも普通に載せるのは構いませんよね?」
「……変な事書くなよ。」
「勿論です!では、また後で会いましょう!」
言うと同時に射命丸は飛んでいった。自称幻想郷最速と言っていたが、あながち間違いでもないらしい。
上白沢の家に着いて服を直した後、特にやりたい事も無いから料理を手伝う事にした。何度か霧雨がつまみ食いしようとしたため、僕の鉄拳が火を吹く事になってしまった。……余談だが、藤原も上白沢に頭突きを食らっていた。お前もか。
料理の最中に射命丸が戻ってきた。新聞が出来たから早速配ってきたらしい。仕事早いなお前。
で、僕に見せようと思ったが、勢いに任せて全部配ってしまったらしい。まずは僕に見せろよ、と言ったら、そんなに見たかったんですか~?、と体をくねらせながら言ってきたので鉄拳を食らわせた。図に乗るな。……これも余談だが、射命丸も料理が出来るようだ。本人曰く、
「山の妖怪ですから、山で採れる食材を使った料理は大得意です!」
との事だ。心底どうでもいい。
差し入れの料理が完成した頃、日も傾き始めていた。ちょうどいい時間だな。僕達は、これから騒がしくなるだろう博麗神社へと足を運んだ…。
~パチュリーサイド~
「レミィ、ちょっといいかしら」
「……どうかしたの、パチェ?」
私、パチュリー・ノーレッジは親友であるレミリア・スカーレットの元へ来た。理由はこの新聞記事である。
「これを見て欲しいのよ。この外来人の記事…」
「……『あの博麗の巫女が一目置く存在!?天狗を凌駕するパワー!幻想郷の誰よりも優れた頭脳!外来人、侮るべからず!』………何よこれ?」
「あの鴉天狗が号外とか言って配ってたのよ。一面は他の記事だったけれど、何だか気になって…」
「この外来人が、私達の計画の妨げになるというの?」
「それは分からないわ。でも、無視するのは危険だと思うわ。もし、この記事の通りの人物だったら、あなたでも厳しいんじゃない?」
「馬鹿言わないで。人間ごときにやられはしないわよ」
「……そう、よね」
確かに、人間はおろか高位の妖怪にだってレミィを倒せるとは思えない。例え博麗の巫女でもね…。なのに嫌な予感がするのは、何で…?
「……咲夜!」
「はい、お呼びでしょうか」
レミィが呼ぶとほぼ同時に現れたメイド長、十六夜咲夜。相変わらずの忠心ぶりね…。
「今夜の博麗神社の宴会に顔を出すわ。急で悪いけど、何か手土産を用意して」
「かしこまりました、お嬢様」
「それと美鈴にも声をかけておいて頂戴。彼女も連れていくから」
「仰せのままに」
用件を聞き終えたと思ったら、また一瞬で消えたわね…。
「パチェ、ぼやぼやしてないであなたも準備なさい。元はといえばあなたが言い出したんだから」
「ええ…ありがとう、レミィ…」
「……お、お礼なんていいから早く準備しなさい!」
顔を赤くして急かす親友……可愛いわね。
からかって遊びたいけど、今は我慢しなくちゃ。私達の計画の為に…ね。
紅魔館組は今後レヴァンとかなり絡ませようかと思ってます。だって好きなんだもん。