東方奇才伝   作:サンダーボルト

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大変お待たせいたしました!

今回はあの説教キャラが出てきます!


奇才の葛藤

~レヴァンサイド~

 

 

「すいませーん、親子丼大盛り下さい」

 

「へい、只今!」

 

 

上白沢と人里を回る約束をした後、僕は近くの定食屋で飯を食う事にした。頼んだメニューは親子丼。隣の席の客が食ってるのを見たら、僕も食いたくなった。だっていい匂いが漂ってくるんだもん。すげー美味そうに食ってんだもん。

 

しかし上白沢と二人で出かける事になろうとはな。家の下見に丁度いいと即OKしてしまったが、後になって考えてみると、これデートじゃねえか?年上美人と二人で色んなとこを見て回る……もう誰がどっからどう見てもデートじゃん。誘ったあいつはそうは思ってないかもしれないが、こちらからすればデートも同然だ。

 

マズイ、これはマズイ。何がマズイって、デートとかした事ねえんだけど僕。十数年間、女性と付き合ったりしない寂しい人生を送ってきた僕に、勝手の分からない場所で大人とデートとか……これなんてムリギャルゲー?いや、別にあいつを口説くつもりは無いが、エスコートも気遣いもせずにされるがままというのは男としてどうかと思う。僕の為に態々案内を買ってくれた以上、それなりに楽しい思いをさせてやりたい。しかし下手な事をすれば、あいつの気分を害する可能性がある……どうしたものか。

 

 

「へい、お待ち!親子丼一丁!」

 

「おい店員。マズいぞ、これはマズイ」

 

「まだ食ってませんよね!?」

 

 

動揺のあまり、店員にいらん事を口走ってしまった。……いや、僕がいくら考えても分からないのだから、他の誰かに聞いてみるのも手か。でもなあ…聞いたところでまともな返答が返ってくる気がしねえ。そもそも人間の年上の知り合いとか、五郎と未亡人しかいねえんだけど。博麗や魔理沙や咲夜や藤原は恐らく同い年か年下だろうし。

妖怪の年上なら腐る程いるが、当てにはならないだろうな。八雲紫は面白がって適当な事ほざくだろうし、藍は橙コンプレックスだし、風見幽香に聞きに行ったら軽く殺されそうだし、レミリアやフランは年齢は大人、見た目や頭脳は子供だし、射命丸は今それどころじゃないし、霖之助はヒッキーだし、ルーミアは……期待できるかもしれないが、こいつには聞いちゃいけない気がする。

 

 

「……美味い」

 

 

ああ、親子丼美味いな。フワフワでダシが効いた卵に、柔らかい玉葱と食いごたえのある鶏肉の組み合わせが最高にマッチしている。米も心なしかいつも食べていたものより美味い。親子丼にしておいて良かった。

 

 

「ど、どうです?美味しいでしょ?」

 

「そうだな。現実逃避にピッタリの味だ」

 

「それは褒めてるんですか!?どうなんですか!?」

 

 

親子丼が美味くても、僕のデートは上手くいきそうにない……マジでどうしよう、モグモグ。今の僕にできるのは、ただ無心で親子丼をかきこむだけなのだろうか……モグモグ。

 

 

「お客さーん!?どうして虚ろな目になってんですか!?」

 

「さっきからうるせえぞ。どっかおかしいんじゃないのかお前…」

 

「それはあんたでしょうが!?」

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

腹は膨れたが、相も変わらず良い案が浮かばない。適当に人里をぶらぶら歩いているが、状況を打破する切っ掛けはどこにも落ちていないようだ。

 

 

「……僕はどうすればいいんだろうな」

 

 

僕の懐で眠る上海に問いかける。当然、答えなど返ってはこないがな。紅魔館や道中でやけに眠そうだと思ったら、どうやら新しい体が完全に馴染んでいなかったようなので大人しく寝かせている。無理は禁物だ。

 

 

「――ばかものーーーーーーー!!!!」

 

 

人里に響き渡った大声。吃驚して振り向くと、道の真ん中で女が男数人を説教していた。女の方は今朝の美鈴のように頭にシニヨンキャップを二つ被っており、右腕はびっちり包帯が巻かれ、左腕の手首には鎖付きの鉄の腕輪をしている。男達の方はそれぞれ、剣士とか魔法使いとかをイメージする格好だ。傭兵?退治屋?何にしろそれなりに強そうだ。しかし女の方も凄いな。屈強な男達を恐れずに説教するとは。

 

大声なので内容もちらほら聞こえてくる。どうもあいつら、子供と一緒に遊んでた妖怪を退治しようとしたらしい。確か人里じゃあ妖怪は人間を襲えないが、その逆に関しては何も無かったな。しかもあろうことか、その妖怪を庇った子供ごと退治……殺そうとしたらしい。随分と性質が悪い連中だ…。説教を聞く姿勢もクソ悪い。そっぽ向いたり耳ほじくったり…明らかに聞いてないよね。まあ説教を聞くのが好きな奴なんていないだろうが。

 

 

「…あの、すんません。あそこで説教してる奴隷と怪我人とチャイナを混ぜ合わせたような人、誰ですか?」

 

 

それにもめげずに説教してる女が気になった僕は、近くで様子を見守っていた野次馬に聞いてみる事にした。

 

 

「ああ、あれは華扇様だよ。茨木華扇、仙人様さ」

 

「仙人?」

 

「なんだ、お前さん仙人様を知らないのかい?修行で寿命を伸ばして、不老長寿の体を手に入れた者を仙人と呼ぶのさ。俺達人間の心強い味方だよ。ま、説教臭い所もあるけど、それ以外は良い人さ」

 

 

仙人……僕のイメージは雲に乗って杖を持ってるハゲジジイみたいなものしか無いが、あれが幻想郷の仙人なのか…。仙人って感じしないな…髪ピンクだし。仙人が髪染めていいのか、おい?

 

……そういや、仙人も年上に入るよな?しかも人間の味方って事なら、話をするのも容易い筈。何か良いアドバイスとか貰えるかも……。藁どころか霞を掴むような話だが、聞くだけ聞いてみるか。

 

 

「~っ!!ちゃんと聞いているのですか!?」

 

「はいはい…聞いてるっての……うるせえなあ」

 

 

やっぱ聞いてねえじゃん……って、まだ続けんのかよ…。どうせあいつら聞いちゃいないんだから、早いとこ終わらせてほしいんですが。そして僕の話を聞いてください仙人様。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

あれから小一時間経過。茨木華扇はずっと説教を続けている。もう野次馬も殆どどっかに行ってしまった。当たり前だけど。いくら説教しても反省の色を見せない男達に対し、遂に茨木華扇は怒りよりも呆れが勝ったのか、大きく溜息を吐いて説教を止めた。若干息切れしてるっぽい。

 

 

「……もう結構です」

 

「ちっ……ようやく終わりかよ」

 

「ったく、話長えんだよ…糞女」

 

「さっさと行こうぜ」

 

 

終わったと見るや否や、悪態ついて男達はとっとと去っていった。ガラ悪いなおい。……残された茨木華扇の背中から哀愁が漂うこと漂うこと…。あんだけやったのにまるで効果無しだもんな…。気のせいか木枯らしが吹く音が聞こえる…。

 

……すげー話しかけづれぇ。でも僕も困ってるし…大丈夫だよな、きっと。だって仙人だよ?メンタルだって強靭に決まってるさ…。恐る恐る近づいて声をかけてみる。

 

 

「……あのー、ちょっとよろしいですか?」

 

「……どうして分かってくれないのよ…あの子なら…霊夢ならちゃんと反省してくれるのに…」

 

「……」

 

 

博麗の顔見知りかよ、この仙人…。しかも思ってたよりショック受けてたし。僕の声も全く届いてないみたいだ。

 

 

「すんませーん、聞こえてますかー?僕の相談に乗ってほしいんですけどー?」

 

「…いくら修行中の身とはいえ、あそこまで邪険にする事無いじゃない……グスッ…」

 

「ねえちょっと、僕の話聞いて?ねえ?」

 

「……だ、駄目よ弱気になっちゃ!私が正さなければ、誰が正すというの!そう、これは私の使命――」

 

「聞けよ茨木仙人っ!!!!」

 

「ぴゃあっ!?」

 

 

あまりにも自分の世界に入ってしまっているので、大声で無理矢理覚醒させた。……ぴゃあって言ったぞ。こいつ本当に仙人か?

 

 

「な、何ですか、誰ですかあなたは!?」

 

「いやすんません、さっきから声かけてたんですが、あんた全然反応しなかったんで…」

 

「えっ……そ、それはすみません…気が付かなかったもので…」

 

 

僕に驚いていた茨木華扇だったが、訳を話すと素直に頭を下げた。

 

 

「ええと、あなたは…?」

 

「初めまして、茨木華扇。あんたの名前は野次馬から聞かせてもらった。僕の名はレヴァン。どうぞよろしく…」

 

「ああ、これはどうも…。私の事はご存知の様ですが、改めて自己紹介させて頂きます。私は茨華仙…まあこちらは二つ名のようなもので、本名は茨木華扇といいます」

 

 

自己紹介を終えると茨木仙人はにこやかに笑い、左手で握手を求めてきた。僕もその手を握り返す。…手首の腕輪が目に留まるが、ここで聞くのは不躾というものだろう。趣味嗜好は人それぞれだからな。しかし、あれをどこかで見たような記憶があるんだが……どこだっけかな…?

 

 

「それで、私に声をかけたという事は、私に何か御用だったのですか?」

 

「……あ、はい。ちと相談したい事がありまして…」

 

 

いかんいかん、腕輪なんか今はどうでもいいか。茨木仙人は僕の相談というワードを聞いた瞬間、目を輝かせて僕ににじり寄った。……えっ、何この反応。

 

 

「そうですか相談ですか!ええ、ええ良いですとも!最近の若者は先人から学ぼうという意欲がありませんから、あなたのように自ら教えを乞いに来る者は久々です!さあ、言ってごらんなさい?どのような相談事であろうとも、この茨木華扇が解決してみせましょう!」

 

 

テンションMAXでヘンテコな構えをしながら、茨木仙人は僕に微笑みながら慈愛の眼差しを向ける。どうでもいいけど気合い入り過ぎじゃね?やる気になってくれるのはありがたいが…。

 

 

「あのですね、明後日に僕、人生初のデートするんですけど、どうにも上手くいく気がしないんすよ。だから人生の先輩である茨木仙人になにか良いアドバイス貰えないかなぁ……と話しかけた次第で」

 

「ふむふむ、成程デー……ト…?」

 

 

……何だどうした。今度はデートという単語を聞いた途端固まったぞ。情報が足りなかったんだろうか?しょうがない、少し恥ずかしいが背に腹は代えられないからな。もっと詳しく説明するか。

 

 

「いえね、デートの相手は上白沢慧音っていう獣人で、ご存知かもしれませんが教師やってるんすよ」

 

「……え、ええ。慧音さんの事は存じてますよ…」

 

「あ、そうですか。それでそいつが僕の為に人里を案内してくれるってんで、二つ返事出したんですけど、ほら、あいつ美人で大人じゃないですか。そんな奴と二人で人里回るなんてデート以外の何物でもないでしょ?いや、あいつはそうは思ってないんでしょうけど、僕からすればデートも同然なんすよね。それにあいつには色々と心配とか迷惑かけたし、本人も楽しみにしてるって言ってたし、どうにか楽しませてやりたいんですよ、はい。

でもさっき言った通り、僕はこれが人生初のデートなんですよ。正直言って何すればいいのかまるで考え付かないんですよね。上白沢の事知ってるんなら、どんなことしてやれば喜ぶか分かりますよね?それ、僕にご教授願えますかね?」

 

 

ふう、これだけ詳しく説明してやれば伝わるだろう。……伝わってるよな?さっきから固まって動かないんだけど。

 

 

「……ええ、あなたが不安に思うのも仕方がない事です。それは人間誰しも通る道であり、避ける事は出来ません」

 

 

再起動した茨木仙人がおかしなポージングをしながら語りだした。何でいちいち決めポーズするんだこいつは…。

 

 

「ですが、恐れる事はありません。成功からも失敗からも学べることは多いのです。それに慧音さんなら大抵の事なら受け入れてもらえますよ。慧音さんの胸を借りるつもりで、思い切って行動するのです」

 

 

ここで一旦言葉を切った茨木仙人は、片手を胸にそえてもう片方の手を僕に向けて差し出し、

 

 

「――――それがあなたの糧となり、あなたという存在をより一層の高みへ連れていってくれるでしょう…」

 

 

満足そうに慈悲のあるドヤ顔を披露した。

 

 

僕はそのありがたいお言葉を飲み込んで頷き……

 

 

……。

 

 

右手の人差し指と中指を茨木仙人の鼻の穴へとねじ込んだ。

 

 

「いだだだだだだ!?」

 

「んな張りぼてみたいな薄っぺらい言葉なんか求めてねえんだよっ!!具体案を言え具体案を!お前それっぽい言葉並べ立ててるが、ただ答えをはぐらかしただけじゃねえか!!」

 

「だ、だって私、今まで男性とお付き合いした事なんて無いんですもん!!」

 

「ふざけんなよ淫乱ピンクがァ!!それならそれで適当なこと言って誤魔化してんじゃねえ!!!」

 

「痛い痛い!?鼻!鼻取れちゃうぅぅぅぅぅ!!!」

 

「取れちまえ!!!」

 

「許ひてぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

道の真ん中で騒ぐのも他の人に迷惑がかかるので、僕は茨木仙人と近くの団子屋に入った。決して他人の目線が痛かったからとかそんな理由じゃないから。

 

 

「……で、結局茨木仙人は考えがあるのか?」

 

「……具体的に何をしろ、というのは申し訳ないですが分かりませんね…。ああ、それと私の事は華扇で結構ですよ?」

 

 

のんきにみたらし団子を頬張る茨木仙人…華扇を前に僕は頭を掻き毟った。想像以上に頼りにならないんですけど…。

 

 

「あの、お団子食べないのですか?美味しいですよ?」

 

「さっき飯食ったばかりなんで…」

 

 

口元にたれを付けた華扇が団子を一本僕に差し出してくるが、正直それどころじゃねえ…。仙人クラスで駄目なら、もう誰も頼りになんないじゃん…。

 

 

「……ふむ、そうですね……具体的でなくてもいいなら、アドバイスくらいはできますよ」

 

「マジで!?もうそれでいいから教えてくれ…」

 

「ええ。といっても、何ら特別な事ではありませんよ」

 

 

お茶を飲んで一息吐いた後、華扇がどこか寂しそうな顔で僕に告げた。

 

 

「……彼女と普通に接してあげて下さい」

 

 

……どういう意味だろうか。僕はいつだってあいつに対しては普通に接しているつもりなのだが…それでは駄目なのか?また誤魔化しているんじゃないかとも思ったが…どうにもそんな感じじゃないな。

 

 

「あなたがどう行動しようと、これさえ守っていただければ関係が悪化することはないでしょう」

 

 

……どんな意図があるかは分からんが、大人しく従った方が良さそうだ。そもそも態度を変えるつもりなど微塵も無いのだがな。

 

 

「了解した。どうもありがとう」

 

 

アドバイスも貰えたので、金を置いて店を出る事にした。明後日のデートも大事だが、明日もやる事があるからな。

 

 

「え、ちょっと!自分の分は自分で払いますよ!」

 

「アドバイスの礼だ。大人しく受け取れ」

 

 

団子くらい、大した出費でもない。割り勘とかかったるいし。

 

 

 

 

 

 

「……な~んだ、あんな振る舞いができるなら、助言なんて必要ないじゃない」




はい、茨木華扇の登場回でした!


四季映姫を期待していた方、安心してください。次話で出ます。


ちなみに私は両方とも説教キャラとして認識しております。
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