射命丸文
Q:テンプルアーマーって何ですか?
A:そのうち分かる。
~レヴァンサイド~
僕達が博麗神社に着いた頃には、すでに宴会が始まっていた。
霧雨も射命丸も付き合いがあるらしく、別々となった。ちなみに、僕は差し入れの料理を上白沢と藤原と一緒に運んでいる。上白沢は、
「ただ運ぶだけなんだから、君は先に宴会に行ってきても構わないんだよ?」
と言っていたが無視した。僕は別に紳士ではないが、女性に荷物を運ばせて遊びに行くなど気に入らない。
「あら、炊き込みご飯?ありがとね。これ人気あるのよ」
「ははは…魔理沙にも言われたけど、そこまで褒められると作りがいがあったというものだな」
ここの連中どんだけ好きなんだよ炊き込みご飯…。
「あんたも手伝いご苦労様」
全くもって苦労していない。
「ここはいいから、宴会にいってらっしゃい。魔理沙とか待ってるでしょうしね」
「そうだな。妹紅、君も一緒に行っておいで」
「え、私もか?………ああ、分かった」
上白沢はどうやら、僕1人だけだと不安らしく、藤原を付けてくれた。藤原もその意図を理解したらしい。
「じゃ、行くとしようか、レヴァン」
「ああ」
まあ付けてくれるならそれに越したことはないか。さして困る訳でもないからな。
会場へ付いた途端、強すぎる酒の匂いが鼻につく。業務用アルコールをがぶ飲みしてる奴でもいるのか?
「……とは言ったものの、私ってあまり騒がしい場所は得意じゃないんだよな…」
「なら2人で飲むか?」
「……いいのか?一応挨拶回りくらいした方が…」
「どうでもいい」
「そうか…。なら少しだけ飲もう。魔理沙と文くらいには顔を見せなくちゃ悪いからね」
「面倒だ」
「そう言うなって…」
どうやら藤原は豪胆そうな印象に反して、集団は好きではないようだ。
誰もいないスペースに腰掛け、グラス……もとい盃を持つ。酒を飲むなんていつぶりだろうか。
「ほら……盃を貸しな。注いでやるよ」
「……どうも」
藤原は僕に酒を注いだ後、自分の分も注ぐ。
「「乾杯」」
藤原は一気に、僕は少しずつ飲む。……これまで飲んだ事の無い珍しい味だ。幻想郷特有の酒だろうか?
「はぁ~……美味いっ!」
「……そうか?」
「何だ、美味くなかったか?せっかくこんな美人が注いでやったのに」
「お前が美人じゃなかったんだろ」
「おい」
藤原の名誉の為に言っておくが、藤原は美人である。今のはただのジョークだ。僕のジョークはレギナ曰く、本音かジョークか分かりづらいそうだが、藤原には通じているらしい。一瞬不機嫌面になったが、その後は普通に笑いながら飲んでいる。
どうやら波長が似ているようだ。僕も彼女と飲んでいて心地良い気分になっている。
酒が僕の舌に合わなかったのを気にしてか、別の酒や料理も持ってきてくれた。上白沢の事をお人好しと言っていたが、お前も大概だな。だが悪くない。僕は幻想郷に来て初めての至福の時間を噛みしめ
「は~い、宴会楽しんでる?あら、早速女の子を侍らせてお楽しみの痛ぁっ!?」
僕の至福の時間を邪魔した文字どおりの邪魔者に向かって、反射的に空瓶を投げつけた。
「紫様ぁっ!?貴様、紫様に向かって痛いっ!!」
「紫様と藍様をいじめるに゙ゃっ!?」
ゴチャゴチャうるさい取り巻きどもには、料理を食べた後の汚れのついた小皿をお見舞いだ。しかもたれや汁ものが乗せてあったやつをな。
「僕の機嫌は今、絶頂から底辺へ真っ逆さまだ。お前ら纏めて活け作りにしてやろうか。それとも解体ショーをご希望か?」
「あら、遠回しに食べたいと仰ってるのかしら?なら女体盛りなんてどうかしらぁ?」
「そうだな、お前の体を網にしてバーベキューでもするか」
「何も焼けないわよ!?焼けるの私だけよそれ!」
「…使えない奴め」
「なにおう!?」
賢者の癖に馬鹿みたいな事言ってんじゃねえ。取り巻きどももいつの間にか復活したようだ。小皿の汚れは服に付いたようだがな。ざまあみろ。
「……おい、八雲」
「何?」「何だ」
「「え?」」
返事が被った八雲と狐の尻尾が生えた取り巻き。まさかこいつも八雲姓だったとはな。一瞬顔を見合わせた後、狐の方が
「も、申し訳ありません…」
と、顔を俯かせて下がる。立場は八雲の方が上か。まあ様付けで読んでたから当たり前か。
「そういえば紹介してなかったわね。見れば分かると思うけれど、間違えて返事をしたのが私の式神の八雲藍、そして隣が藍の式神の橙よ」
「そうかい、宜しく」
「……ああ」
「宜しくお願いします…」
クスクスと八雲は笑っている。九尾の八雲の失態が余程面白かったのだろうな。九尾の八雲は恥ずかしいのか若干震えながら返事をした。橙は小皿をぶつけられたせいか少し怯えているようだ。仮にも妖怪のくせに。
「にしても、酷い事するわね。藍と橙の服が汚れちゃったじゃない」
「絶妙に最悪のタイミングで現れるからだ」
「あら、それはごめんなさいね」
「藤原、騒がしくしてすまん………藤原?」
藤原に目をやると、なんともう酔い潰れて寝てしまっている。確かにペースは僕の数倍だったが、まさかここまで酔いが回っていたとは…。
「八雲、毛布か何かないか?獣の式神いるんだから、狐毛100%の毛布くらいあるだろ」
「狐毛100%って何よ!?藍の体毛をむしったりなんかしてないわよ!」
「無いならスキマ使って持ってこい」
「あんた何様!?私の事何だと思ってるのよ!」
「別にどうも思っちゃいない。ただ効率的なだけだ」
ぶつくさ文句言いながらも、スキマに手を伸ばして毛布を引きずり出す。僕はそれを受けとり、藤原を隅まで連れていき毛布を被せて寝かせておく。
「随分と優しいのね…私達の時と違って」
戻ると八雲が軽く睨んでくる。その言葉に橙が大きく首を縦に振る。
「誘拐犯に優しくする道理なんかない」
「待て、私と橙は違うのではないか?」
「同じだよ。ずかずかと人の至福の時間に割り込みやがって。ここに来てからようやく心が休まったというのに…」
「……それは、すまん」
意外にも素直に謝ってきた。八雲の式神にしては出来た奴だ。………ああ、八雲の式神だからか。きっとこいつも八雲に苦労させられてるんだろうな。
「謝罪の気持ちがあるなら、飲み直しに付き合ってもらおうか、九尾の八雲」
「……ふふ、そんな呼び方されたのは初めてだ。紫様から話は聞いていたが、どうやらそれ以上の変わり者らしいな」
「……お稲荷さん、食うか?」
「頂こう」
お稲荷さん……油揚げに釣られて即座に座るお前も変人だと思うがね。尻尾が9つ生えてても、狐は狐か。あ、人ではなかったな。
「藍さま~私にも下さ~い」
「お前は刺身の方がいいだろう?ほら」
「ありがとうございます~!」
「レヴァン、君も飲みなさい。私が注いであげよう」
「ありがとうよ」
「ちょっと、私抜きで楽しんでんじゃないわよ!」
「紫様も早くお座り下さい」
「紫様~このお刺身美味しいですよ~」
「八雲、帰れ」
「最後だけ酷い!」
藤原妹紅(ふじわらのもこう)ですが、レヴァンは藤原(ふじわら)と呼んでいます。