東方奇才伝   作:サンダーボルト

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前半は幽々子と妖夢と霖之助が登場、後半はシリアスになります。


奇才の覚悟

~レヴァンサイド~

 

 

「すぅ……すぅ…」

 

橙は酔いが回り、今は九尾の八雲の膝で寝息をたてている。八雲はほろ酔い気分のようで、僕にちょっかいをかけてくる。イラつくから殴り倒そうとしたが、九尾の八雲に止められた。なんでも八雲がここまで上機嫌なのは滅多にないから、好きにさせてほしいとの事だ。………しかし、

 

 

「普段から充分好きに生きてるだろ、こいつは…」

 

「はは…」

 

「何よう、私だって色々考えて生きてるのよ?幻想郷の事とかね~」

 

 

九尾の八雲は苦笑いを浮かべている。そりゃあ酒飲んだ後に言われたって信憑性は無いわな。

 

 

「あら、随分楽しそうじゃない、紫」

 

「幽々子……来てたの?」

 

「ええ、さっき来たのよ~。妖夢がどうしても来たいっていうから」

 

 

……また変なのが来たな。片方の周りには人魂みたいなのが浮いていて、もう片方に至っては帯刀か。

 

 

「レヴァン、彼女は西行寺幽々子。私の親友よ」

 

「……お前に友達なんていたの?」

 

「……いるわよ」

 

 

流石に言い過ぎたか。見るからに不機嫌になってしまった。西行寺は変わらずニコニコしている。逆に怖いな。

 

 

「話の邪魔して悪かったな。続けてくれ」

 

「……隣にいるのは魂魄妖夢。幽々子の付き人よ。弟子とも言うわね」

 

「よろしくね~」

 

「よろしくお願いします」

 

 

西行寺はゆったりと、魂魄は一礼をして挨拶をした。まるで正反対の挨拶だ。九尾の八雲といい、どうやら主人が反面教師になっているらしい。西行寺がどんな奴かはまだ知らないから、断言は出来ないが…。

なんて事を考えていたら、魂魄が僕の目の前にやってきた。

 

 

「つかぬことをお伺いします。あなたが、文々。新聞に載っていた外来人の方ですか?」

 

「…いかにも」

 

「……そうですか」

 

 

喜べ射命丸、ここに読者がいるぞ。道で拾ったとかじゃなければな。

 

 

「で、では…私と勝負して頂けませんか!?」

 

「やなこった」

 

「ええ!?」

 

 

いきなり勝負を申し込まれた…射命丸の奴、どんな記事書いたんだよ…。

 

 

「な、なら軽く修行でも一緒にやりましょう!」

 

「やかましい」

 

「えええ!?」

 

 

いやにグイグイ来るな…。まさか僕と戦いたいから来たのか?

 

 

「話が違うじゃないですか幽々子様!宴会に行けば強い人と戦えるって言うから来たんですよ!?」

 

「この炊き込みご飯美味しいわ~。私この味大好きなのよ」

 

「そうかい、良かったな」

 

「幽々子様ぁ!?」

 

 

成程、僕をダシにして宴会に来たかっただけか。………しかし炊き込みご飯凄いな。実は全員炊き込みご飯目当てなんじゃないのか?

 

 

「どうやら君を焚き付けて、炊き込みご飯にありつきたかっただけのようだな」

 

「炊き込むだけに、か?」

 

「………」

 

 

つい反応するのを忘れてしまった。九尾の八雲が洒落を言うとは…。僕が無言で顔を向けると、九尾の八雲は真っ赤になって俯いてしまった。どうやら酒の勢いでつい言ってしまったらしい。八雲と西行寺はニヤニヤしながら九尾の八雲を見ている。魂魄はどうすればいいのか分からずにオロオロしている。……そっとしておこう。

 

 

「おーい!レヴァン!」

 

 

聞き覚えのある声が僕を呼ぶ。振り向くと酔いで顔がほんのり赤くなった霧雨がこちらへ向かってきた。

 

 

「お前いつになったら私の所に来るんだよっ!!待ちくたびれたぜ!!」

 

「別に僕を待たなくても良かったんだがな」

 

「うるせーっ!チルノとかアリスとかにお前を紹介するって約束してんだよ!!」

 

「知るか」

 

「うがーっ!!」

 

 

そんな約束、僕はしていない。だから気にする事はない。しかし、こいつやたらベタベタしてくるな…。絡み酒か…?

 

 

「魔理沙、ちょっといいかな?」

 

「あん!?……なんだ、香霖か。何か用か?」

 

 

用が無いならお前みたいな酔っぱらいに話しかける訳無いだろうが。

 

 

「にとりを見てないかい?ちょっと頼み事があるんだけど、見当たらないんだ」

 

「にとりぃ?……そういや来てないな。発明で忙しいんじゃないか?」

 

「そうか…参ったな」

 

「なあ、頼み事って何なんだ?にとりを探してるって事は、なんか面白い物でも拾ってきたのか?」

 

「ああ…まあね。見た感じは機械なんだけれど、動かし方が分からないんだ」

 

「!!」

 

 

霧雨がこっちを見て笑った。……こいつまさか…。

 

 

「ならレヴァンに見せてみようぜ!こいつ変なカプセル持ってたし、なんか分かるかも!」

 

「レヴァン?……ああ、君が噂の外来人だね?」

 

「……ああ」

 

「僕は森近霖之助。香霖堂って道具屋をやってるんだ。よろしく」

 

「こちらこそ……で、その機械の特徴を教えてもらえるか?」

 

「おや、見てくれるのかい?てっきり魔理沙がその場の勢いで言ったんだと思ったけど」

 

 

霧雨はそっぽを向いて口笛を吹いている。腹立つな…。

 

 

「良い目を持っているな、ご主人。だが、僕の数少ない趣味が機械いじりでね」

 

「成程ね…そういう事ならお願いしようかな」

 

「幽々子様!あの人の趣味は自分磨きではなかったんですか!?」

 

「炊き込みご飯おかわり~♪」

 

「幽々子様ぁー!!」

 

 

……そんなアホみたいな嘘に騙されるなよ…。趣味が自分磨きって何だよ。

 

 

「ところで機械の特徴だけど、僕は【道具の名前と用途が判る程度の能力】を持ってるんだ」

 

「ほう」

 

 

そういえば、幻想郷の住人の中には、~程度の能力を持っている者がいると聞いたな。森近もその1人か。

 

 

「で、その機械は2つあるんだけど…名前は【ジェットパック】と【サンドワーム】。で、用途は…」

 

 

その言葉を聞き終わる前に、僕は森近の胸ぐらを掴み、詰め寄った。

 

 

「……貴様、どこでそれを手に入れた…?」

 

「レ…レヴァン君……!?何を…!?」

 

「答えろ。返答次第では生きては返さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~霊夢サイド~

 

私と慧音は、宴会用の料理の追加分を運んでいた。他愛ない談笑……というか私の愚痴を慧音が聞いてたって感じね。そしたらふと、嫌な雰囲気を感じ取った。……喧騒が、止んだ?慧音もその雰囲気を感じたらしく、急ぎ足で会場へ向かった。

 

会場に着いてから私が最初に目にしたのは、霖之助さんの胸ぐらを掴んでいるレヴァンだった。そばにいる魔理沙は尻餅をついている。何故か一緒にいた紫達も驚いているようだ。他の参加者達も全員レヴァンを見ている。……向かざるをえない。

敵意とも殺意ともとれない不可思議な気。一体、彼に何があったの…!?

 

 

「レヴァン君やめろ!何があったかは分からないが落ち着くんだ!」

 

 

慧音が止めにかかる。助かったわ…慧音が行動を起こさなかったら、ずっとこのままのような気がしてたもの…。

 

 

「レヴァン君……僕が何かしたかい?もしそうなら謝る。だから…」

 

「………いや、お前は持っているだけだ。僕の作ったアーマーをな」

 

「君の作った…?」

 

「あれはこの幻想郷には存在しない。なのにお前が持っている。どういう事だ」

 

「レヴァン君……手を離すんだ…!」

 

 

慧音がレヴァンの手を引き剥がそうとしているが、全く動じていない。それどころか、声すら届いていないようにも思える。

 

 

「レヴァンやめてくれ!私が悪かったから!」

 

「その人を放しなさい!さもなくば斬る!!」

 

 

魔理沙が涙目ですがり、妖夢が刀に手をかける。………なのに、視線すら向けない。無視なんて生ぬるいものじゃない。存在すら認識していない。それほどまで執着する物を、霖之助さんが持っているの…!?

 

 

「レヴァン、私の話を聞いて」

 

 

凛とした声が響く。紫がレヴァンの近くで話しかけている。

 

 

「レヴァン。お願い、聞いて」

 

「………」

 

「聞いて」

 

 

レヴァンの顔を無理矢理自分の方へ向ける紫。

 

 

「幻想郷にはね、たまに外界の物が流れ着く場所があるの。そこの彼は、それを拾って商品にしているのよ」

 

「………」

 

「私が持ってきた訳じゃない。彼が盗んできた訳じゃないの。ただの偶然なのよ」

 

「……その言葉に嘘偽りは?」

 

「無いわ。私の命を懸ける」

 

 

レヴァンは暫く紫を見つめた後、ゆっくりと手を離した。

 

 

「悪かったな森近。僕の早とちりだった」

 

「いや…誤解が解けたならいいんだ。僕も説明不足だったしね」

 

 

さっきまでの雰囲気が消えた。ホッと胸を撫で下ろす。そして、今の出来事の理由を聞こうと近づこうと…

 

 

「だが、」

 

 

自然と足が止まってしまう。聞いた事のない強い口調に、私は怯えてしまったのかもしれない。

 

 

「それは間違いなく僕の物だ。誰にも見せるな、触らせるな。勿論君も余計な事はするな」

 

「………」

 

 

霖之助さんは顔をしかめている。まあ、当たり前よね…。いきなりあんな事された上に、自分勝手な事言われちゃ…。

 

 

「もし君や、幻想郷の誰かがアーマーを盗んだり、調べようとするなら………君達全員僕の敵だ。例外は無い」

 

 

その言葉に、頭が真っ白になった。

 

 

「博麗、お前も」

 

 

そう言って私を指差す。

 

 

「上白沢、君も、藤原も、君の寺子屋の子供達も」

 

 

慧音が指差され、絶句している。……子供まで…。

 

 

「八雲、君も、君の式神も、君の式神の式神も」

 

 

指差された紫は真っ直ぐにレヴァンを見据える。藍は怯えている橙をなだめている…。

 

 

「名前は知らないが、君もだ」

 

 

そう言って、こちらを見ている妖怪の1人を指差す。

 

 

 

「これは冗談ではない。ハッタリではない。虚言ではない。

これは責任だ。アーマーを作った僕が背負う責任だ。

例え僕が死のうと、僕の技術は誰にも渡さない。利用はさせない。……聡明な君達なら理解してくれると思う。だから、約束してくれ」

 

「……分かった。安心してくれ、僕が責任を持って保管しておくよ」

 

「大丈夫よ、あなたが危惧している事態にはさせないわ」

 

「ならいいんだ。諸君、すまなかったな。宴会を続けてくれたまえ」

 

 

両手を広げてレヴァンが言うと、元の騒がしさが戻った。その中の何人かはレヴァンを興味深そうに見ていたけど…。

 

 

「………言う事、あるよな?」

 

「怖がらせたのは悪かった。だが譲れない事だ」

 

「馬鹿野郎っ!!」

 

 

魔理沙がタックルを仕掛ける……が、簡単に受け止められる。

 

 

「レヴァン君……歯を食いしばれっ!!」

 

 

慧音が頭突きをかます……が、鈍い音がしたかと思うと、慧音のほうが頭を押さえてうずくまった。

 

 

「つぅ~…!!どんな体してるんだ、君は…!?」

 

「少なくとも、まともではないな」

 

「レヴァン」

 

 

藍が静かにレヴァンに告げる。

 

 

「君の覚悟は理解した。しかし、今後はああいった事はやめてくれ。抑えるのが大変なんだ…」

 

「……抑える?」

 

「幻想郷の妖怪は暇をもて余していてな…。面白そうな事には進んで首を突っ込みたがるんだ」

 

「……もしかして、逆効果だった?」

 

 

藍が苦笑で答える。レヴァンは頭を抱えていた。……まあ、あんな啖呵きったのに効果が期待できないのはあんまりよね…。

 

 

「……少し出てくる。悪いが後は頼む」

 

 

後ろ姿が弱々しい……何だかこのまま消えてしまいそうな程に…。

 

 

「レヴァンっ!!!」

 

 

私は叫んだ。でも彼は止まらない。

 

 

「あんたの事よく知らないし、進んで分かろうとも思わないっ!!」

 

 

「あんたがどう思ってるかは知らないけど、きっと同じ感じよねっ!!」

 

 

「でもね、勝手にいなくなる事だけはしないでよねっ!!」

 

 

「少なくとも私たちは、あんたの事、仲間だと思ってるんだからねーーーーっ!!!」

 

 

私が叫んでも、彼は歩みを止める事も、振り返りもしなかった。

 

 

ただ黙って、片腕を上げた。分かってる、とでも言ったつもりだろうか。

 

 

 

「……何、格好つけてるのよ」

 




次回は紅魔館組登場……そして奇才の本気が見られます。
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