八雲紫
Q:私と藍と橙、お嫁さんにしたいのは誰♪
A:纏めてスキマに入ってろ。
~咲夜サイド~
パチュリー様が見つけた外来人の記事。それを危惧したお嬢様が宴会へ行くと仰いました。勿論、宴会で騒ぐ為に行くのではありません。この外来人の実力を見極め、私達の計画の妨げになるか判断するためです。
「パチュリー様、大丈夫ですか~?」
「……へ、平気よ…」
普段、大図書館に籠っているせいか、体力が無いパチュリー様と、それを心配そうに見つめる門番の美鈴。
「……咲夜、喘息の薬は用意してあるかしら?」
「はい、ここに」
そして私、紅魔館のメイド長である十六夜咲夜と、紅魔館の主であるレミリアお嬢様。
……正直言って、心配し過ぎではないかと思ってしまう。警戒すべきなのは分かっていても、わざわざ見に行く程なのだろうか?……でも、レミリアお嬢様には運命が見える。もしかしたら、その外来人が未来で何かしでかすのだろうか…?
そんな事を考えているうちに、博麗神社へ到着した。さっさと博麗の巫女への挨拶を済ませてしまおう。
「邪魔するわよ……あら?」
「……吸血鬼?」
「博麗の巫女だけじゃなくて、スキマ妖怪までいるとは驚きね」
「何か用?出来ればまた今度にして欲しいんだけど…」
「宴会に参加しに来たんなら勝手にどうぞ」
……どうしたというのかしら。博麗の巫女の周りだけ、宴会をしていたという雰囲気では無いわね。
「これ、つまらない物ですけれど」
「あ、わざわざどうもね。で、何しに来たの?宴会に出る…って感じじゃないわよね?」
「そうよ、私達が来た目的はただ1つ……外来人に会いに来たのよ!」
そうお嬢様が言った瞬間、周りの空気が変わった。
「……今はやめとけよ、何されるか分かんないぜ」
「そうだな、今はそっとしておいた方がいい」
「……あの、何かあったんですか?」
「あんた達に言うわけ無いでしょ」
美鈴が遠慮がちに聞いたけれど、どうやら何があったかは話す気は無いようね。いえ…話したくない、という方が正しいかしら。
「フン、何があったか知らないけど、私達はその為にわざわざ来たのよ」
「あんたね…!」
「いいじゃないか、会わせてやりなよ」
「妹紅!?」
一触即発の空気を変えたのは……確か、藤原妹紅だったかしら。……何故か毛布を被ってるけど。
「妹紅……寝てたんじゃなかったの?」
「……ゴメン、ちょっと恐かったから寝たふりしてた」
「………」
「そ、そんな目で見ないでよ!私にだって怖いものくらいあるわよ!」
その場にいた全員が、白い目で彼女を見た。
「それより…会わせてもいいってどういう事だよ?」
「言葉通りさ。あいつならもう立ち直ってるさ」
「はぁ!?今さっき出てったばかりだぜ!?」
「あいつは傷ついたから出ていったんじゃないよ。1人でじっくり考え事がしたいから出ていったのさ」
「考え事?」
「ああ。こう騒がしくちゃ、纏まるものも纏まらないだろうからね」
「だが、それなら尚更行かせない方がいいんじゃ…」
「どうせ会ったらすぐ帰るんだろ?あんた達は外来人と仲良くするようなタイプじゃないだろうし」
「……そうね」
「なら、こっちで無駄にややこしくするより、さっさと目的を果たしてもらった方がいいんじゃない?」
この女……お嬢様に対して無礼極まりない物言いね…。でも説得力はあったわ。何人かは考え込んでるようね。
「……私達が来る前に何をしてたの?彼の事を随分理解してるのね?」
「波長が似てる……っていうのかな。何となく分かるんだよ」
「ふ~ん……ま、それも面白いかもね♪」
スキマ妖怪……八雲紫がこちらを見て微笑む。
「良いわよ、彼に会っても」
「別にあんたの許可なんて求めてないわ。……行くわよ」
「ああ、行くなら神社の外側から行くといい。多分縁側にいるから」
「……」
私達は言われるがまま、外へと向かった。癪にさわるけど、信頼できる情報だから。
縁側に寝転んでいる人物………間違いない。幻想郷では珍しい男。間違えようがないわ。あいつが…新聞に載ってた外来人ね。
近くにある酒瓶とお猪口をみると、酔って寝てしまったようね。……考え事なんてしてないじゃないの。パチュリー様と美鈴は呆れた顔であいつを見ている。レミリアお嬢様も、どこか失望したような表情だ。
私達はレミリアお嬢様を先頭にして、ゆっくりと近づいていく。
と、思ったら急にお嬢様が止まった。全員が歩みを止めた後、お嬢様が私に視線を向ける。……成程、私が試せということね。
私は頷いた後、ナイフを取りだし近付く。
さて、あいつはどんな反応をするのかしら。
私は多少抑えているものの、殺気を発している。流石に気づかない事は無いだろう。
私に怯えて逃げ出すかしら?
それとも酒瓶を手に迎え撃つのかしら?
誰かに助けを求めるかもね。
安心して、命まで取らないわ。私達の邪魔をしないよう、恐怖を植え付けるだけよ。
そして、後2、3歩でナイフが届く距離まで来た。……まだ寝てるの?警戒する事は無かったわね…。
「悪いが色々あって疲れてるんだ。暗殺ならまたの機会にしてくれるかな、メイドさん?」
ーーーーーーー!!?
あ…危うくナイフを落とすところだった…!こいつ、起きて………ない!?目をつぶったままで話している…!な、なんで私がメイドだと…
「お前は今、何故自分がメイドだと分かったんだと考えただろ?」
考えを、読まれた…!?い、いえ違う。さっきの言葉を考えれば、予想はできるわね。冷静にならないと…。
「簡単な事だ、消去法だよ」
………消去法?
「まず君達の編成は、1人をリーダーにした4人組だ」
……当たっている。
「1人は格闘術を使えるな。足音が他より小さい。格闘家ならではの足運びだな」
「1人は足音がおぼつかなく、息も乱れてる。普段は出歩かないらしいな」
「そして残りの2人の足音が被っている。これは1人がもう1人に合わせて歩いているという事だ。普通に考えれば…主人と従者だな」
……嫌な汗が止まらない。たかが足音でここまでの情報を引き出せるなんて…!
「格闘家は音を出さずに相手を殺すのは難しいから違う。不用意に音をたてれば、近くにいる博麗達に気づかれるからな」
「勿論、体力の無い奴に暗殺をさせる訳もない」
「そして、一旦止まってた時だが……恐らくご主人様がメイドに指示を出してたんだろ?ハンドサインかアイコンタクトかは知らんが」
……ことごとく的中している。私は…今ほど外来人を恐ろしいと思った事は無いわ…。
「さて…何か間違ってる所が無いか答え合わせするとしようか?」
そう言って目を開けて、私と目があった。つい、ビクッと体が反応してしまう。すると意地悪い笑みを浮かべて、
「そう恐がるなよ、とって食おうってわけじゃない。しかし…メイド服まで着てるとはな。従者って意味でメイドと言ったんだが、ここまで当たるとは思わなかった」
「恐がってなんかいないわ」
「それは失礼。まあ、暗殺とは自分で言ったが、本当の目的は僕を調べに来たんじゃないのか?お前達が企んでいる計画の為に」
「な、何故それを…」
「美鈴っ!!!」
「えっ………あ!!」
美鈴を制すが遅かった…。カマをかけられて正直に喋ってしまった美鈴を見て、外来人は笑っていた。
「良いね、そういう正直なのは僕は好きだ。だが口が軽いのはいただけないな」
美鈴は悔しそうな目で睨み付けているけれど、当人は全く気にしていないわね。……まあ、口の軽さについては擁護できないけれど。
「…フフ…どうやらパチェの予感は当たっていたようね…」
レミリアお嬢様が遂に口を開いた…!
「……お前がリーダー?」
「ええ。私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。あなたの名は?」
「レヴァン。苗字はまだない」
「そう……いい名前ね」
「お前には負けるさ」
「あら、ありがとう」
お嬢様がこちらに歩いてくる。……正確には、レヴァンと名乗った外来人の元へ。
「なあ、お嬢様」
「何かしら?」
「………随分小さいな」
そして、盛大にずっこけた。後ろでは、パチュリー様と美鈴が吹き出した。美鈴は後でお仕置きね。私?私はお嬢様を馬鹿にされた怒りで震えているわ。そうよ、決して笑いをこらえている訳ではないわ。
「……フ…フフフ…度胸があるわね…。500年を生きる吸血鬼のこの私に向かって…!」
「500年間成長無しか。哀れだな」
「………」
涙目でプルプルしているお嬢様……可愛い。
「……コホン、まあいいわ」
咳払いをして仕切り直したお嬢様。そして、真っ直ぐ外来人と向かい合う。
「あなた、私の下に来る気は無い?」
「ええっ!?」「レミィ!?」「お嬢様!?」「無い」
「………」
「………」
私達が驚くのと同時に答えた外来人。揺るぎなさすぎるでしょう…。
「僕は人の手下になって動くのは嫌いなんだ。僕は僕の判断でしか動かない。ずっとそうやって生きてきたからな」
「……薄々そう答えるだろうとは思っていたわ」
少し残念そうな表情をしたお嬢様。でも、それは一瞬の事。
「だけど…あなたが敵なら退屈しなさそうね。精々私を楽しませて頂戴」
笑みを浮かべて言うお嬢様。
「……ご期待通りになるかは分からんと思うがね」
対する外来人は不服そうね。そもそも来るかも分からないけれど。
「挨拶は済んだわ。さ、帰りましょ」
「……ちょっと休ませて」
「帰るわよ」
息が荒いパチュリー様を引きずるようにして、お嬢様はその場を後にした。美鈴もそれに続き、私は外来人に一礼した後、その場を去った。
かくして、私達の外来人視察は、宣戦布告という形で終了したのである。
ごり押しっぽい理由ですが、『奇才だから』で補完して下さい。