砲弾の雨が降り注ぎ、憎き怨敵を炎が包み込む。絶え間なく降り注ぐ砲弾に悶え苦しみ、やがて彼奴の艤装が耐えきれず大爆発を起こす。赤く、まるで血のようなドス黒い色に染まった海が澄み切り太陽の光を反射する。
残存している深海棲艦たちは動きを止め、霧のように霧散していく。他の海域の深海棲艦も同様に消えていくと知らされる。
ーーあぁ、私たちは勝ったんだ…。遂に、始まりの深海棲艦を撃ち倒したんだと実感が湧いてくる。
勝利を噛み締めていると、同艦隊に所属している白露姉さんが近寄ってハイタッチを求めて手を上げる。私はそれに応え、ハイタッチをする。周りも勝利を仲間と分かち合い、私たちは帰路についた。
こうして深海棲艦との戦争は終わった。
◯
終戦して数日、あれからトントン拍子で戦後処理が終わった。私たち艦娘の待遇も決まり、艤装は回収された。そうして普通のどこにでもいる、ただの人間になった私たちは司令官に別れを告げ、鎮守府から去っていくことになる。まあ、司令官と一緒に生きていく子もいるちゃいるけれども。
そんなこんなで、私も鎮守府の敷居を出てキャリーケースを引いて最寄りのバス停まで歩いていく。周りには誰も居ない、それもそうだ。私が鎮守府を出る最後の1人だったから、まさか私がここまで未練がましいとは思わなかった。バス停の椅子に座り鎮守府で過ごした日々に思いを馳せる、しばらくすると誰かの手が私の視界を塞いだ。
「だーれだっぽい♪」
口調から夕立姉さんかと思ったけど、夕立姉さんはとっくに鎮守府を去っているから違う、となると声が似ていてこういうことをしそうなのは…
「白露姉さんでしょ?」
そう答えると、塞いでいた手が視界から消える。後ろを振り返るとやはり白露姉さんが立っていた。
「まさか、当てられるとは思わなかったよ。いやー、私もまだまだだねぇ」
そう言いながら私の横に座る。もう鎮守府にいたのは司令官とあの人だけだと思っていたから驚いた。
「白露姉さんも、思いを馳せていたの?」
「あー、そりゃねぇ。私にとってはこの鎮守府が家みたいな?特に白露型のみんなの事は本当の家族みたいに思ってたからさ」
目を伏せ、感傷に浸る。確か白露姉さんは深海棲艦に家族を…。
「まあ、みんなそれぞれの道を行っちゃったけども。うん、やっぱり寂しいかな?前みたいにみんなでバカできないもの」
「白露姉さん…」
そうだ、この人は帰っても誰も居ない…。そう思うと心がキュッとなる、なにか私にできる事はないのか、その思いで頭がいっぱいになる。
「私なら心配いらないよ、これでも成人済みなんだから。どうにかできるし、どうにかするもの」
私の考えていることが分かったのか、安心させるように言う。
「お姉ちゃんとしては、あんたの方が心配かなー?私より年下でしょうし、向こうでやってけそう?」
うん…?年…下?
「え?だって、あんた偶に子供っぽいしさ?なんか背伸びしている感があるっていうか…」
「ええっと、白露姉さん。今年何歳ですか?」
「私?今年で25だけど……まさか!?」
「今年27です…」
あまりの衝撃で、静寂が流れる。しばらくすると白露姉さんが慌てて口を開く。
「そ、そっかー!確かにネームシップだからと言って本当にお姉さんとは限らないって吹雪が言ってたわね!」
「そういえばそんな事言ってましたね…」
本人談なのかどうかは分からないけど、着任した時説明していた。若干遠い目をしていたような気がするけど…
ん“ん“っと咳払いをし、改めて白露姉さんが聞いてくる。
「実際どうなの?新しい就職先とか見つかってるの?」
「長年の夢だった食堂を開こうかと、少し不安ですけど」
いいんじゃない、と白露姉さんは真剣な顔でいう。
「そういえば鳳翔さんとこで手伝いとかしてたものね、腕前も任せられるぐらいって鳳翔さん言ってたし、応援するわ」
「ありがとうございます、開業したら1番に知らせますね!」
白露姉さんは楽しみにしてると言い、席を立つ。バスはまだ来てないけど?
「んー?いやぁ、夢に向かっていく妹を見たらねぇ…。あ、私の方が年齢下かぁ…不思議な感じ」
「それじゃ、またね春雨。お店がんばってね!」
これ私の連絡先ね、とメモを渡して去って行く。数歩走ったところで立ち止まり
「そういえばホントの名前言ってなかった!私、"白河露李"!また会おうね!」
「わ、私は…"雨霧春香"です!また会いましょう!」
そう言い、手を振って白露姉さん…白河露李を見送った。