マキマさん『総理大臣!消費税を100%にすると言いなさい!』   作:バケギツネ

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デンジくん。心臓をあげると言いなさい!

 

 

「俺たちの邪魔ァすんなら死ね!」

 

 エンジンは唸りをあげる。少年の手と頭には、悪魔を切り裂く鋼の刃が授けられた。

 

『これは契約だ。私の心臓をやる。代わりに、』

 

 少年・デンジの脳裏を過ぎるのは、聞き慣れた声。彼の唯一の家族だった悪魔・ポチタの遺した言葉。

 

『デンジの夢を私に見せてくれ。』

 

 食パンにジャム塗ったり、女とイチャイチャしたり。彼が夢見ていたのは、そんな普通の日々だった。

 

「ギャーハッハハァ!!』

 

 そんな夢を掴むために、デンジは手にした力を振るう。ゾンビの悪魔を、借金の大元を、群がるその他大勢を斬り裂き、血を飲んで、暴れ回ったその先に、

 

『これ、キミがやったの?』

 

 一筋の光が差した。

 

「おん・・・な・・・?』

 

 光の中心には1人の女。血と臓物の溢れたその空間で,彼女だけが異質だった。

 

 いや、そんな事より、

 

「ヘヘッ、いい、女・・・』

 

 美人だった。

 

 スラリと伸びた手足に、整った顔立ち。それを彩る燃えるような色彩の赤髪。そして、底知れない引力を纏う美しい瞳。

 

 汚ねえ、臭えと蔑まれ、異性から近寄られもしなかったデンジにとって。彼女のような“いいツラの女”は、夢の中でしか出会ったことがない。

 

 その存在を確かめるように。思わず伸ばした手からはチェンソーが崩れ落ちる。他の部位も少しずつ、人間・デンジの輪郭を取り戻していく。

 

 彼が最初に吐き出したのは、本能と欲望に任せた、率直な願い。

 

「だ、抱かせて・・・

 

 

『ままま、まきまーーー!!わたしの名は、まきま!総理大臣より偉い、日本のだいとうりょうだよ!』

 

 美人だった。

 

 死体を踏みつけて珍妙なポーズをとり、意味不明な事を口走ってはいるが、美人ではあった。

 

『これ、キミがやったの?って言うかキミ、臭いね!お風呂はたまにしか入らない派の、私より臭いね!ぎゃははははははは!』

 

 美人ではあった。

 

 笑い声に品は無く、近付くとドブみたいな匂いはしたが、

 

 でも、美人では・・・あった。

 

『それより答えて!キミの身体って、今どうなってるの!?教えて!』

 

「え、っとぉ、俺、デンジっていって、飼ってた悪魔が、心臓になってんすよ。」

 

『えぇ!?それ、ホントに!?』

 

 デンジは自分自身の言葉で現実へと引き戻される。そう、苦楽を共にしてきた唯一無二の相棒は、もう隣にはいない。

 

「信じられないでしょ?俺も信じたくないっすよ。俺のためにポチタが死んぢまったなんて・・・」

 

 俯いていたデンジの頭には、マキマの手がそっと置かれる。

 

『信じるよ。』

 

 彼女の細くしなやかな指が、デンジの荒れた髪を、梳くように撫でていく。

 

『わたしは信じるよ、キミの話。』

 

 柔らかに、そして静かに。マキマは聖母のような笑みを向けてくれる。少し前までの醜態が嘘のようだ。

 

『わたしの鼻の良さは最高なんだ!』

 

 ドヤ顔でエッヘンと彼女は胸を張る。

 

『キミからは、人と悪魔、2つの匂いがするからね!キミの親友は、キミの中で生きている!』

 

「っ...!」

 

 その言葉はデンジにとっての救いであり、異性から向けられた初めての優しさでもあった。

 

「そっか。そりゃ〜、すげーよかった!」

 

 鼓動を刻み続ける、自身の心臓に手を当てる。そこには確かに、愛おしい温もりがあった。

 

「ポチタはちゃんと、俺ん中で生きて、」

 

『隙あり!死ねぇ!!!!』

 

 マキマの右ストレートが、デンジの心臓を抉り出す。

 

『ぎゃはははは!わたしの可愛いさに油断したね!IQが500だったか1000だったかな、わたしの作戦勝ち!』

 

 死にかけで倒れるデンジを尻目に、マキマは勝ち名乗りをあげる。

 

『あー、痛かったね〜、ごめんね!わたしたちの邪魔だから、一旦死んでね!』

 

 そうして、奪った心臓を高々と掲げるのだった。

 

『さあ出てきて!』

 

 彼女は呼んだ。地獄のヒーローの名を。

 

『助けて、チェンソーマン!!』

 

 

 

 しかし、何も起こらない!!!

 

 

 

『アレ?なんで?助けてチェンソーマン!助けてチェンソーマン!助けて、助けてぇ!』

 

 悪あがき虚しく、やはり何も起こらない。

 

「あ、あの、マキマさん。」

「どうしました?助けてとしきりに仰ってましたが・・・」

 

 奥の扉から、黒服2人が顔を覗かせる。マキマに支える、公安のデビルハンター達だ。

 

『ああ、みてみて!ゾンビの悪魔はわたしが殺したんだ!その他の雑魚も、みーんな、わたしが殺したの!瞬殺だったよ!』

 

 誇らしげなマキマは、死体の山へと指を差す。

 

 人の手柄は容赦なく奪い取るべし。それこそがマキマ流の出世術である。

 

『それとさ、悪魔と一体化した人間くんがいたんだけど、おかしい事があって・・・』

 

 黒服達の目線は、胸に穴を空け死んだデンジと、マキマが手にした心臓を、交互に行き交う。

 

「なるほど、悪魔による死体の乗っ取り。その新たな事例でしょうか。」

「既にマキマさんが処理してくださったんですね。本人が生きていれば、直接聞き出す事もできたんでしょうが。」

 

『あ。』

 

 部下の冷静な分析で、初めてマキマは己の失態に気づく。

 

 デンジとかいう人間くんから,大した情報を聞き出せないまま、勢い任せに殺ってしまった。

 

『えーっと、』

 

 彼女は持ち前のIQ1000(自己申告)を駆使して、打開策を練り始める。

 

『君たち。名前何だっけ?』

 

「渡辺勇です。」

「鈴木進一ですが。」

 

 2人の部下は、意味を図りかねながらも、自身の名前を告げてくれた。

 

『じゃあ鈴木くん。キミ、減給ね。』

 

「はい!?」

 

『だって鈴木くん。デンジくんを殺したでしょ?生け取りにしてたら、情報が取れたかもしれないのに!』

 

「でも、彼を処理したのは、マキマさんでは・・・

 

『さいっていだね!人のせいにするんだ!キミに殺されたデンジくんの前でも、同じこと言える!?』

 

「え?いや、

 

『人間じゃないわたしが言うのもなんだけど、このっ、人でなし!!』

 

「?????」

 

 余りにも無茶な責任転嫁に、鈴木は目を白黒される。

 

 マキマの虚言癖をよく知る渡辺は、巻き込まれないよう静かに目を逸らしていた。

 

『でも,安心して鈴木くん。部下であるキミの大失態は、上司のわたしが、かれいに挽回するから!』

 

「は、はぁ。」

 

『えーっと、これをこうして、』

 

 心臓を拾い上げたマキマは、デンジの身体にそれを無理やり埋め込んだ。

 

『やっぱ死なないで、デンジくん!』

 

 身勝手な願いと共に、スターターが引っぱられる。変身したデンジは、程なくして5体満足な人間の姿に戻っていた。

 

「信じられん...!」

「奴はっ、魔人なのか...?」

 

 驚く部下をスルーしたマキマは、ツカツカと意識の戻ったデンジに近づいていく。

 

『おはようデンジくん。』

 

「げっ!人殺し女っ!!」

 

『え?キミを殺したのって、そこに居る鈴木くんだよ?目撃者も沢山いるんだ。全員、鈴木くんがやったって、

 

「いーや間違いねえ!アンタが!俺ん心臓引きちぎって

 

『やっぱ死んで、デンジくん。』

 

 マキマは再びデンジから心臓をぶっこ抜く。

 

『よし、これで口封じ完了!』

 

 保身は徹底すべし。目撃者消すべし。これもまた、マキマ流の出世術である。

 

 因みに一連の出世術が上手くいった試しはない。

 

「マキマさん!!!」

「貴方、何がしたいんですか!?」

 

『分かったよ!戻す!心臓戻せばいいんでしょ!?』

 

 しっかり怒られたマキマは、頬を膨らませながらも再び一連の動作を行う。

 

『おはようデンジくん。改めて、わたしの名はマキマ!この世で一番偉いんだ!だからちゃんとひれ伏してね!』

 

「・・・・・・」

 

 再度自己紹介を行なうが、それを見つめるデンジの目は冷たい。彼のマキマへの好感度はもはやゼロに近かった。

 

『幾つか聞きたい事があるんだ。正直に答えてくれたら、悪いようにはしないから!』

 

「俺っ、アンタにもう2回殺されてんだけど!何もしてねぇーのに!」

 

『殺された?2回も?全く、酷い事するよね、渡辺くんも。ああ、可哀想なデンジくん。よしよし。』

 

「ざっけんな!嘘糞女!!」

 

 芝居がかった仕草で頭を撫でられるが,流石に彼もそんな事では騙されない。

 

「確かに俺は、ツラが良い女なら、ある程度の理不尽は許してやる!でもよぉ、限度だってあんだぜ!」

 

 割と当然の主張と共に、デンジは啖呵をきる。

 

「決めた!テメエみてーなイカれ女はぜっってえ許さねえ・・・むごっ!」

 

 そんな彼の顔を、柔らかく温かい何かが包み込んだ。

 

「あ、ああっ、」

 

 声にならない呻きがデンジの喉から漏れていく。

 

『デンジくんにね。聞きたい事があるんだ。』

 

 視界と呼吸を塞がれながら、彼は感じていた。

 

「これ、これっ...!」

 

 怒りも理性も溶かし尽くす、マシュマロのように甘い弾力を。

 

「胸だーーーーーーーっ!!」

 

 マキマの胸元に抱きかかえられ,デンジは歓喜の叫びをあげる。

 

 逃げ道を奪われ、強張らせた身体は強引に引き寄せられて、2人の距離は一気に近付く。

 

 顔を動かすたびに、ポヨンポヨンと心地よい反発が頬や額に返ってくるようになった。

 

 彼はもう、抗わずに身を任せる。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 因みに渡辺と鈴木は、居心地が悪そうに目を逸らしていた。

 

 知り合いの、それも一応直属の上司の色仕掛け程、視るに堪えないものはない。

 

「クッソ、コイツはクソ女っ、なのにぃ...!」

 

 まあそれはそうと。

 

 デンジにとって初めてだったその快感は、風呂は月一派のマキマの体臭がどうでもよくなる程に、強烈で。

 

 獲物を罠に絡めとるように、デンジの理性を支配していた。

 

『いい子だから。これからのわたしの質問には、ぜーんぶ正直に答えてくれるかな?』

 

 マキマは自信たっぷりに微笑む。

 

 最悪なことに、彼女は自分の可愛さとスタイルの良さを自覚していた。

 

『返事は?』

 

「ワン!!!!」

 

 デンジはすっかりマキマを許すことにした。

 

 余談だが、マキマの胸には合計7枚のパッドが入っている。

 

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