マキマさん『総理大臣!消費税を100%にすると言いなさい!』   作:バケギツネ

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デンジくん。これから最高の大会を開くと言いなさい!

 

 

「いっただっっきまああす!」

 

 フォークを握り締めたデンジは歓喜の叫びをあげる。そして、念願のステーキを頬張ろうとした、その時。

 

『ちょっと待ったああああ!!』

 

 突然立ち上がったマキマが、デンジを静止する。

 

「えぇっ!?」

 

『命令です!フォークを置きなさい!これから、大事な作戦会議をします!』

 

「でも、でもぉマキマさん!食べながらでも、作戦会議はできますぜ!」

 

『我慢しなさい!大事な会議なんだよ!私だって、お腹が空いてるのに、何も食べないんだよ!』

 

「いーや!さっき、しっかりステーキ食って、」

 

『うるさいよ!一年前から、霞しか食べてないわたしに向かって!』

 

 デンジのささやかな抵抗は、マキマの暴論に圧殺される。彼女は椅子に飛び乗って、振り上げた片足をテーブルに叩きつけていた。

 

『今から大会を開きます!デンジくんに一番辛い思いをさせる方法を、考えた人が優勝です!!』

 

「マキマさん、そんなに俺んこと嫌い!?」

 

『さあ、みんな、どんどんアイディア出して!デンジくんも当事者なんだから、もっと積極的に!』

 

「いやですよぉ!自分でぇ、自分を不幸にするやり方、考えんの!」

 

 いつにも増して理不尽な催しに、マキマ以外の全員が困惑していた。

 

『さっきデンジくんは、掴んだものを奪われるのが辛いって言ってたよね?』

 

「まあ、ですねぇ。」

 

『じゃあ例えば、何を与えられて奪われるのが、一番キツイ?』

 

「んな事急に言われても、分かんないですって。」

 

『じゃあ、今までの人生で,一番辛かった経験は?』

 

「今までで、一番・・・」

 

 デンジの頭に一瞬だけ、張り紙に塗れた小さなドアが浮かび、すぐに消える。その後に思い浮かんだのは・・・

 

「やっぱ、ポチタがいなくなった時、ですかね。どんなくだらねーことでも話せる、俺の家族だったんで。」

 

『・・・そっか。デンジくんにとっての大切なものは、“家族”なんだね。』

 

 マキマは一つの確信を得る。目的を果たすための道筋が定まった。デンジに大切な家族を与え、その上で奪い尽くせばいいのだ。

 

 そして、その家族の候補にも心当たりがある。

 

「これは命令です。」

 

 マキマは命じる。全ては己の夢のために。

 

『デンジくん、今日から渡辺くんを“お母さん”と呼びなさい。そして鈴木くん、デンジくんを“お兄ちゃん”と呼びなさい。』

 

「「「はぁ!?」」」

 

『デンジくん。渡辺くんは貴方のママで、鈴木くんは貴方の妹!いいね?』

 

「ダ、ダメですっ!!」

 

『デンジくん、大切な家族ができて幸せでしょ?よかったね、おめでとう!』

 

「めでたくねえですっ!!!」

 

 これで、デンジには大切な家族ができた(確定事項)。後はそれを奪うだけである。

 

『これは命令です。渡辺くんはデンジくんのお母さんを辞めて、わたしのお母さんになると言いなさい!鈴木くんも!』

 

「・・・デンジくんの、お母さんを辞めて、マキマさんのお母さんになります...?」

「俺も、デンジくんじゃなく、マキマさんの妹に、なります...」

 

 そしてマキマは、部下2人と肩を組んでデンジへと見せつける。

 

『ぎゃははは!どうするデンジくん!キミの大切な家族、わたしに奪われちゃったねえ!』

 

「何がしてぇんですか!?」

 

『もうっ、何で上手くいかないの!?』

 

 完璧な計画の失敗に、マキマは地団駄を踏んでいた。そんな彼女に、3人からの冷ややかな視線が注がれる。

 

「あの、ステーキ冷めちゃうんで、もう俺、食っていいっすか?」

 

『ダメっ!今、わたしのIQ一万で、次の作戦考えるから!』

 

 マキマのIQ一万(出典不明)は、とある結論に辿り着く。家族の奪い方に問題があるのではと。

 

『マキマパンチ!!!』

 

「うっ!!」

 

 理不尽な暴力が鈴木を襲う。

 

『ほらデンジくん。可愛い妹が殴られたよ!』

 

「マキマさん!?」

「今俺、何で殴られたんですか!?」

 

『あれ?殴るくらいじゃ生温い?じゃあさ、終身刑以上の囚人2人と、標高の高いお寺を用意してくれる?それと2人の名前って、渡辺勇と鈴木進一で合ってたっけ?』

 

「何する気ですか!?」

「冗談でも、そういう事は言わないでください!」

 

 何よく分からないが、トンデモない提案をし出す上司を、部下2人は青ざめながら諌める。

 

「あのー、すんません。マキマさん。」

 

 ここでようやく、当事者のデンジが口を挟んだ。

 

「別に俺はぁ、その2人に何かあっても、どうも思いません。死んだって、あ、死んだなって、思うだけです。今日会ったばっかの奴だし。男だし。ステーキくれた良い奴らってのは思ってますけど。」

 

 彼が示したのは、余りにも素直で不躾な結論。

 

『あー確かにね!わたしだって、鈴木くんと渡辺くんが、例えグチャグチャに殺されても、全然泣かないと思う。ほらわたしって、血も涙もない系のクールビューティーでしょ?鈴木くんと渡辺くんじゃな〜。』

 

「あの、」

「何でいきなりディスられてるんですか、俺たち...?」

 

 不憫な部下2人をスルーし、マキマの立策は続いていく。

 

『じゃあさ!ポチタ以外で、デンジくんにとって、誰が一番、死んでほしくない大切な人なの!?』

 

「え、どーしても、一人選ばねえといけねえって言われりゃあ、まあ、」

 

 彼は少し考えた後、一応の答えを出した。

 

「マキマさん、ですかね。」

 

『んっ!?』

 

 予想外だった答えに、彼女は頬を染めて、髪を指でくるくると弄り始める。

 

『へ、へぇ〜。な、生意気だねっ!デンジくんのっ、くせに。』

 

 気の毒な話だが、彼女が選ばれた理由は消去法だ。余りにも対抗馬が少なすぎた故の悲劇である。

 

「じゃあ、いい加減ステーキ食っても、」

 

 ようやくステーキが、デンジの口に運ばれようとした、その時。

 

「た、助けてくれ!!!!!!」

 

 切迫した声と共に、1人の男が駆け込んでくる。

 

「悪魔が、悪魔がぁ!!!」

 

 男の息は荒く顔面は蒼白で、頭から血が流れ、その目は強い動揺で大きく見開かれている。

 

「落ち着いてください。我々は公安のデビルハンターです。」

「何があったんですか?」

 

 渡辺と鈴木の雰囲気が変わる。彼らはすぐに、仕事の顔へと戻っていた。

 

『悪魔が、俺の娘を攫って!俺の娘を!!」

 

 どうやら男は悪魔に襲われ、愛娘を攫われてしまったらしい。

 

『なるほど。これはいい機会かもしれないね。』

 

 1人頷いたマキマは、デンジに向かってビシッと指をさす。

 

『これはデンジくんの初仕事です!その悪魔を殺して、女の子を助け出してきなさい!』

 

「え、俺がぁ?初仕事...?」

 

 デンジの今の実力を試すため、マキマは彼に役目を与える。

 

『成功したら、またぎゅーーってしてあげる!』

 

 デンジの視線は、美しい流線を描く胸部へと爆速で引き寄せられる。もう一度、ソレに包まれたいという熱い下心が、彼の体を突き動かした。

 

「やりまああああああああああす!」

 

『まあ、緊張しなくても平気だよ!わたしは鼻がいいからね!この周辺に、強い悪魔の匂いはない!』

 

 自信満々な様子で、マキマはそう宣言するのだった。

 

『デンジくんなら、きっと楽勝だよ!パパッと悪魔を料理しちゃってきて!』

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

『すみません。お尋ねしたいことがあるんです。』

 

 場所は、パーキングエリアから少し離れた所に、ひっそりと佇むとあるスーパー。余りにも場違いな珍客が1人、ゆったりとした足取りで入店する。

 

『調理に使うワインを探しているのですが。』

 

 ソレが姿を現すと同時に、周囲の人間は上へ上へと“落下”を始める。

 

『タンニンが豊富な赤ワインだといいですね。上等な悪魔の肉にも合うような。』

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