マキマさん『総理大臣!消費税を100%にすると言いなさい!』 作:バケギツネ
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『本日のメインは、“支配とチェンソーの赤ワイン煮”。そして私は、その調理を担当する、落下の悪魔と申します。』
現れたのは、根源的恐怖を讃えた超越者。その圧倒的なプレッシャーは、木々や大気をも震わせる。
『っ...!!』
久しく相対する格上を相手に、マキマは動く。
『助けてぇ!チェンソーマン!!』
それは、圧倒的な他力本願!
声を張り上げ、全力で、地獄のヒーローの名を叫ぶ。
「むりでぇす!俺ぇ、身体がふわふでぇ!!」
だが、頼みの綱からは、情けないコメントのみが返ってくる。デンジは今、落下の悪魔の能力で、空中という奈落へと落ち続けている最中なのだ。
『お願いデンジくん!何とか時間を稼いでくれない?いや別に、その間に自分だけ逃げようとはしてないよ!ただ、例の大技の準備にちょっと時間が掛かるだけで・・・』
「それにぃ、何か変なんですぅ!頭ん中にぃ、嫌な事ばっか思い浮かんでぇ!」
『これこそが私の調理工程です。』
テンパるバカ2人を他所に、落下の悪魔は淡々と自身の力を明かす。
『過去に傷を持つ者は、心が下へ落ちるほど、身体が上へと落下する仕組みになっております。』
その言葉通り。デンジの頭では、封印していた過去が強制的に掘り起こされる。
『開けちゃダメだ。』
「ポチタぁ...?」
暗闇から懐かしい声。唯一無二の友達が、頭の中で呼びかける。
「でも、んな事ぉ、言ったってぇ!!」
それでも落下は止まらない。重力という世界の理に抗う術は無い。
『開けちゃダメだ。』
天も地も逆さにひっくり返った世界の中。デンジが引き摺り込まれたのは、傷の終着点。
乱雑に張り紙が纏わり付いた、古びたドアだった。
『開けちゃダメだ。』
その言葉だけが繰り返される。
「ッ、ソォ!!!!!」
デンジはとうとう、己の過去と向き合わされる。
「そうだ。俺ぁ、」
蘇る。そして溢れていく。
生きるために。普通でいるために。ドアの奥に仕舞い込んでいた過去の罪が。
「俺は、親父にぃ、」
デンジが思い出したのは、父の顔。父の声。父の匂い。そして、父が自分に向けた、あの感情。
「俺は親父にぃ、めちゃめちゃ愛されてたんだ!!!」
デンジの落下はピタリと止まる。そのまま彼は正しい引力に従って、無事に地上へと帰還した。
『・・・はい?』
落下の悪魔の声には、珍しく戸惑いが滲む。余りにも急な食材心変わりに、困惑の色を隠せていない。
「そんでお袋もぉ、俺の事が大好きで!美人で!うんめえ料理を、俺とポチタにたんまり食わせてくれてぇ!」
声と表情には確かな自信が満ちていた。ただの強がりや嘘ではない。
『貴方、どうかしていますね。一体何が・・・』
落下の悪魔はようやく気づく
マキマの指から伸びた鎖が、デンジの頭を貫いている、異様な光景に。
『チェンソーマンも、ついでにデンジくんも、ぜーんぶわたしの物だから。人のもの盗らないでよ。キミって卑しい盗っ人なの?』
覚悟を決めた表情で、マキマはその場に立っていた。
『なるほど。彼の頭の中を弄って!』
頭の中を支配し、その記憶を書き換える。嫌な記憶を丸めて捨てて、余白をハッピーで埋め尽くした。デンジの頭は今、理想の生活と家族で一杯になっている。
「そうだぁ!俺、ぜーんぶ思い出したぞ!」
宣言するその声は、喜びに満ちていた。
「俺ん家は金持ちで、ステーキも寿司も喰い放題!ゲームだってやり放題!ふかふかのベッドでゴロゴロし放題!!」
存在しないはずの幸せを謳って、彼は胸のスターターを引く。
「そんでぇ、学校じゃあモテモテなんだ。彼女にして欲しいって女が、100人いんだ!まあ、俺が一番好きなのは、マキマさんだけどなぁ!マキマさん最高!マキマさん最強ぉ!』
頭に鎖が巻きついたまま、デンジの姿は悪魔へと変わる。首輪付きチェンソーマンの、出来上がりだ。
「なぁ〜んだ。俺の人生、超超ハッピーじゃねえかぁ!嫌ぁなことなんてぇ、生まれてこの方1つもねえぜぇえええええ!!』
精神的に無敵の人となったデンジは、唸り声と共に鋼刃を構える。エンジン音は、ご機嫌に鳴り響くファンファーレのようだった。。
『過去のトラウマという上等なスパイスをっ、偽の記憶などという添加物で汚すだなんてっ!なんとっ、勿体無いことを!』
「ゴチャゴチャうるせえなぁ!』
独自の矜持から、怒りを露わにする料理人を、無礼な食材は一蹴する。
「お前っ、顔は良いし、胸もそこそこあっけどよぉ!ニョキニョキ生えた腕がキメーから、俺の彼女、失格ぅ!!!』
落下の悪魔は、フラれた。
『な、なんとっ、失礼なぁ!!』
「なあ、モテバトルしようぜ!モテバトル!お前ぇ、恋人いたことあんのかよ!』
『私は、今は仕事が楽しいので!それに集中しているんです!そんなものにうつつを抜かす暇など、』
「じゃあ俺の勝ちぃ!モテね〜お前が、モッテモテな俺にぃ、勝てるわけねえだろうがぁ!!』
『意味不明です!』
言葉のドッジボールを、提唱した謎理論で締めながら、デンジは真正面から飛びかかる。
「お前もぉ!細切れにしてやんぜぇ!お袋の血ぃ継いでる俺がぁ、美ん味え料理にしてやるからよぉおおお!!』
デンジの身体は、落下の悪魔の反撃でバラバラに斬り刻まれていた。
「あ、アレェ!?』
『あれぇ!?』
『・・・あれまぁ!?』
落下の悪魔の腕一振り。たったそれだけで、デンジは戦闘不能になっていた。
『私とて、根源的恐怖の名を持つ、悪魔が1人。そう簡単に死にはしません。それより驚きました。チェンソーマンの成り損ないがこれ程までに弱いとは。』
そう嘲る超越者の足元に、デンジの残骸がボトボトと落ちていく。両者の力の差は、それ程までに隔絶していた。
『ご安心を。殺しはしません。我が主人は、どんな下衆の命も重んじる徳の高いお方。ですから、生きたまま召し上がって頂き・・・あらまぁ!』
デンジに繋がるマキマの鎖が紅く染まる。バラバラになった飼い犬へ、飼い主の血液が注がれていた。
『デンジくん!わたしの血をあげるから!出血大サービスだからね!』
同時に、枝分かれした鎖がスターターを引き絞り、デンジの身体を復活させる。
「うおおおお!マキマさんの血ぃって、こんな味なのかぁ!すっげえや!身体に力が漲ってくるぜぇ!!』
チェンソーの奥の瞳が、ギラついた光を取り戻す。
「これがっ、俺とマキマさんの初めての共同作業だぁ!!』
雄叫びと共に、落下の悪魔の至近距離でデンジは復活を果たし、横一文字にチェンソーの一撃を喰らわせる。
「俺さぁ、ステーキ飽きるほど食ってきたけどぉ!悪魔のステーキってのは、喰ったことねえんだよなぁ!!』
斬る。齧る。飲み込む。
斬る。齧る。飲み込む。
斬る。齧る。飲み込む。
狂気の晩餐会が幕を開けた。落下の悪魔の身体は次々と斬り分けられ、デンジの胃袋へ収まっていく。
『こらっ!私は料理人です!料理の方ではありませんよ!』
「うるせえッ!俺を腹一杯にできんだ!料理人なら、本望ってやつだよなぁ!!』
『た、確かに!一度自身が食材として、誰かの食道に入ることも、料理人としての有意義な研究・・・
「黙ってろぉ!ステーキはぁ、喋らねえんだよぉ!!』
最後に残った、落下の悪魔の頭部までもが3枚に卸される。
「これでぇ、最後の一口だぁ!!』
ゴクリとソレを飲み込んだ大口からは、豪快なゲップが漏れた。
「ご馳走様ぁ!』
デンジはそっと、両手のチェンソーを合わせる。
「やっぱステーキは、普通のに限んなぁ!テメエの肉、あんまり美味くなかったぜぇ!...あ?』
次の瞬間。デンジの中で何かが蠢く。
「んっ?あああああっ!!』
彼の腹は内側から突き破られていた。
『残念です。私の肉は不味いのですか。』
堪らず叫ぶデンジの内側から、血と胃液に塗れた生首がヒョッコリと顔を出す。
『料理の腕とは関係ないですが、不味いと言われるのは、やはり傷付きますね。』
落下の悪魔は目に見えて沈んでいた。戦いなどどこ吹く風で、自身の不味さにショックを受けている。
「お前っ、喰われたくせに出てきてんじゃねえ!ウンコ野郎がぁ!』
『ウンコ野郎!?お下品な!やめなさい!!』
胸、腕、足。
デンジの身体中を引き裂いて、落下の悪魔のパーツは次々と現れる。
「ぎゃああああああああ!!』
吸い寄せられるようにパーツが集まり、瞬く間に元の人型へと戻る。その佇まいからは、傷も消耗も一切感じられない。
『さて。お分かり頂けたでしょうか。ご覧の通り、このチェンソーマン擬きでは相手になりません。』
落下の悪魔の視線は、もはや脅威にならないデンジから、本命へと移される。
『さあ、次は貴方を調理する番です。マキマ。いえ、支配の悪魔。』
真名で呼んだ素材の方へ、地獄の料理人は歩を進めた。
『ひっ、ひぃ!来ないでぇ〜!』
『・・・・・・』
対するマキマは、小さく悲鳴を漏らすと、うずくまって頭を抱える。その姿には高位の悪魔の威厳もクソもない。
『ちょ、ちょっと待って!わたしは悪くないの!全部、総理大臣に命令されてやったことで!わたしはアイツに洗脳されて、操られてた被害者なの!』
迫り来る根源的恐怖を前に、彼女は必死に命乞いを捻っていた。その声は裏返り、恐怖に震えている。
『だからごめんなさいいいいい!もう何か洗脳も解けたし、デビルハンターなんて仕事辞めるから!見逃してぇぇ!』
地べたに這いつくばって赦しを乞う。落下の悪魔も流石にこれにはドン引きだ。
『関係ありません。私の目的は支配の悪魔である貴方を調理する事ですから。』
『あ、それだったら!実はね、デンジくんが支配の悪魔なの!それで、わたしがチェンソーマンで!』
『チェンソーマンの方も、調理する予定ですが。』
『じゃあ!デンジくんがチェンソーマンと支配の悪魔を兼業してて!わたしは、えっと死の悪魔なの!キミは妹とわたしを、人違いならぬ悪魔違いしてて・・・』
『死の悪魔、ですか。よりによってその名前を出すとは・・・』
余りにも情けない態度に、落下の口からは大きなため息が漏れた。
『貴方が弱体化しているというのは、本当だったのですね。あのお方の妹ともあろう者が情けな
『なーーーーーんてね!』
震える声を一転させ、丸めていた背中を伸ばし、マキマは勢いよく立ち上がる。
『時間稼ぎ、ありがとうデンジくん!おかげで準備は万端だよ!』
その頭には、自分の指から伸びた鎖が何本も突き刺さっていた。マキマの奥の手。それは自分自身を支配する事。
『ぎゃはははは!落下の悪魔?雑魚じゃん!私、地獄で、何度も落下の悪魔を倒してた気がする!憶えてるもん!』
狂気じみた笑い声が森にこだます。それは壮大な現実逃避。マキマの頭は偽の記憶で塗りつぶされ、その恐怖も拭い去られる。
『っていうかわたし、地獄でも最強だった気がする!お姉ちゃん達も、根源的恐怖の悪魔も、みーんなわたしに膝まづいて、靴をペロペロしてた気がする!』
『・・・もう、見ていられませんね。』
『わたし最強〜!マキマ最強〜!ギャハハハハハハハハ!』
壊れたオモチャのように笑い続ける彼女が、それ以上醜態を晒す前に。落下の悪魔は一旦、標的をバラバラにしようと腕を振り上げ、
身体が動かない事に気付く。
『おや....?』
頭の中に靄がかかって、思考が薄らいでいく。身体中の感覚が鈍り、あらゆる自由が奪われていく。
まるで、圧倒的な何かに支配でもされているように。
『これは、まさかっ...!』
視線の先には、他の誰よりも傍若無人な悪魔の姿がある。
『ギャハハハハ!わたし最強!マキマ最強!』
マキマの正体。
それは支配の悪魔である。
『だからわたし以外、みーんな雑魚ぉ!!』
その能力は、“自分より程度が低いと思う“者を支配すること。
『落下の悪魔。わたしの靴をペロペロすると言いなさい。』
料理人と食材の関係は、支配者と奴隷の構図へと、すげ替えられていた。
『っ...!』
マキマの鎖が落下の悪魔の腹を貫く。支配の力がその身体を蝕んだ。動きは鈍り、制御できずに、体は地面へ這いつくばる。
『ほら!やっぱりわたしは強い!そして尊い!そんでキミはわたしの下僕!』
得意げに響く悪魔の声。相手の無様な姿を見て、マキマの力はさらに強まる。そんな支配の悪循環は超越者をも縛り付けていた。
『諦めが悪いよ!雑魚のくせに!命令通り、わたしの靴をぺろぺろするなら、一生下僕として使い倒すだけで許してあげてもいいよ。』
『だれっ、がっ...!料理人の繊細な舌で、そんな不衛生な真似をするわけには、いきませえええん!』
落下の悪魔にも根源的恐怖としての意地がある。己を蝕む支配の力に、歯を食いしばり、懸命に抗った。
『もぉ、しつこいなぁ〜!だったら!』
枝分かれした鎖のが、バラバラのデンジに血を与え、エンジンを吹かす。
「ふっかーーーつ!楽しいクッキングの続きだぜーーーっ!』
『デンジくん!早くアイツをやっつけて!わたしの支配も長くは持たないから!』
「りょーかい!!!!!』
元気いっぱいの返事でチェンソーを唸らせ、デンジは落下の悪魔へと飛びかかる。
『これは、よろしくありませんね。』
普段ならばいず知らず。支配に蝕まれた今の彼女は、身体能力・再生能力が極端に落ちている。先程のように反撃で退けることも、バラバラにされた身体を瞬時に繋げることも難しい。
『ならば!!!』
落下の悪魔も能力を自身へ適用する。支配されかけた屈辱で心を落とし、上空へと身体を落下させることで、チェンソーの射程から逃れたのだ。
「おい、ずりーぞ!降りてきやがれ!』
『そーだそーだ!卑怯者〜!悪魔としてのプライドはないわけ!?』
「命乞いしてたマキマさんより、よっぽどカッコ悪いぞ、テメェーッ!!』
『はぁ!?わたし命乞いなんてしてないよ!わたしは誰よりも高潔なんだから!惨めに命乞いするくらいなら、潔く死を選ぶもん!』
地上で喚く食材2人を、落下の悪魔は冷たく見下ろす。その狙いはシンプルだ。
『この支配。長くは持たないそうですね。』
『ど、どうしてそれを!?』
『ご自身でそう仰っていました。』
『あ。』
無茶な支配の時間制限。マキマの失言から、落下の悪魔は活路を見出していた。
『ならば支配が解けるまで、待たせて頂きます。主には申し訳ないですが、貴方達の調理はそれからです。』
『え、えっと、落下ちゃん。仲直りの握手しない?こんな戦いは無益だよ!だから早く降りてきて!わたしは何もしないから!』
『お断りします。』
『ハァ!?何その態度!いくら平和主義者のわたしでも、流石にブチギレちゃうよ!決めた!キミはグチャグチャにぶっ殺してやるから!』
キーキーと喚き散らしていたマキマは、大きく深呼吸をした後に、一転して落ち着いた口調で言い放つ。
『これは命令です。』
そのフレーズに落下の悪魔は身構える。どんな命令が来ようとも抗ってみせると決意を固くし、次の言葉を待っていた。
『デンジくん。わたしを殺しなさい。』
「えぇ?』
『はい?』
しかし、その口から飛び出したのは、予想外のデンジへの命令。
『大丈夫だよデンジくん。わたしを信じて。ほら、返事は?』
「・・・ワン!』
自身の名を呼ぶその声と、自身をまっすぐ見つめる瞳。その2つが、デンジにマキマを信じさせる。
「マキマさん、入刀ぉおおお!!』
チェンソーはマキマの身体を袈裟斬りにする。飛び散った血が、鮮やかに宙を舞った。
『っ!?』
落下の悪魔から血肉が噴き出す。マキマと同じ位置に大きな斬り傷ができていた。
それと同時に、斬られたはずのマキマの身体は、元通りにくっついている。
『これはっ!?私の身体が、マキマの身代わりにされている!?』
鎖で繋いだ相手に、自分の傷を肩代わりさせる。支配の悪魔の能力の一つだ。
『デンジくんもっと!もっとキッツイの頂戴!!』
「わんわーーーん!!!!』
狂気の主従は止まらない。
全治したマキマは、チェンソーの刃にその身を捧げる。胸、腕、脚、首、顔。次々に斬り裂かれては、元通りにくっついていく。
『なんという、何という事を!?』
その分のダメージは、回避不能の攻撃となって、落下の悪魔へと襲いかかった。
『この、私がっ...!』
落下の悪魔は最後の力を振り絞る。千切れた腕を残った足で蹴り飛ばした。
「おわっ!?』
即席の飛び道具は、デンジの身体に貫いて、絶命させる。だが、
『何寝てるのデンジくん!ほら、もっとやって!はやく!』
「は、はぁああい!」
スターターを引かれたデンジは、命令によって起き上がる。傷付いた身体も、マキマの返り血をガブ飲みして回復させていた。
「こりゃあ良いぜぇ!俺はマキマさん斬って、その血ぃ飲んで回復ぅ!マキマさんは、テメエを身代わりにして回復ぅ!んで俺は、またマキマさん斬って回復ぅ!ぎゃはははは!永久機関が完成しちまったなぁ!!』
落下の悪魔には際限のない致命傷が刻まれ続ける。
回復しようにも、支配の及んだ今の状態では間に合わない。支配を打ち破ろうにも、マキマへの攻撃は自分にはね返ってくる。デンジを攻撃しても、マキマの血で何度でも立ち上がってくる。
八方塞がりだ。落下の悪魔に逃げ場はない。
『申し訳、ありません。主よ。本日のメイン料理は、欠品のようです...!』
掠れた声でポツリと謝罪を口にして、落下の悪魔は崩れ去る。その生首は小さな人形に変わっていた。
「んぁ!?何だありゃー!?』
『よく分かんないけど、追いかけるよ!跡形も残さず吹っ飛ばしたやるんだから・・・ぎゃふっ!』
追撃する気満々のマキマだったが、へにゃりとその場に崩れ落ちて、意識を失う。
支配の力で無理な記憶を詰め込むには、脳への強い負荷がかかる。戦いの中でその限界が訪れたのだ。
「マキマさん!あれぇ?俺もぉ、頭がっ、』
それはデンジも同様だった。支配の糸が切れ、幸福という名の嘘が抜け落ちていく。
「なぁーんだ、また、夢か・・・』
現実の記憶が蘇ると同時に、意識は深く沈んでいった。
◆
『お疲れ様、落下。おかげで支配の力を測れた。』
静かな声が森に響く。人形に戻った落下の悪魔を回収し、その主は労いの言葉をかけていた。
『やっぱり、直接会いに行こうかな。妹には。』
方針を変えた落下の主は、“制服”を翻して、現場を後にする。
『今の支配でも、チェンソーマンを使いこなせるかもしれない。そうなれば、死の悪魔を・・・』
悪魔の4騎士が1人は動き出す。ノストラダムスの大予言に記された、恐怖の大王を消し去るために。