マキマさん『総理大臣!消費税を100%にすると言いなさい!』   作:バケギツネ

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デンジくん。わたしの夢についてくると言いなさい!

 

 

『おっはよ〜、デンジくん。落ち着いて聞いてね。わたしとキミは、落下の悪魔と戦ったあの日から、一月眠り続けてたんだ!いや〜、“奥の手”の反動が思った以上に大きくってさ。』

 

『・・・はぁ!?』

 

 デンジが目を覚ましたのは、無機質だが寝心地の良いベッドのある病室のような場所。

 

 開けた視界に映ったのは、マキマの(唯一の取り柄である)整った顔だった。その口からはサラリと恐ろしい事実が告げられる。

 

『わたしが意識不明になって、公安は大騒ぎだったみたいだよ。まあ仕方ないか。実は公安の人間って、全員わたしの配下と入れ替わってて・・・』

 

 マキマの無駄話を聞きながら、デンジの意識はハッキリしていく。そう、ポチタが心臓に入り、マキマに拾われ、強い悪魔と戦い、で、今に至ると。思えば激動の1日だった。

 

『そんな事よりデンジくん。頭大丈夫?』

 

「はぃ?」

 

『ほら、わたしの力で記憶を弄っちゃったでしょ?』

 

「あー、そういや。」

 

 何とも不思議な感じだった。幸せな夢を見ていたような、掴みどころのない感覚というか。

 

『ちゃんと正しい記憶は戻った?わたし、デンジくんに500万貸してたと思うんだけど。』

 

「あー、それ気のせいっすね。」

 

『チッ、』

 

 舌打ちするマキマに、デンジは珍しく遠慮がちに口を開いた。

 

「それより、マキマさんの方は大丈夫なんですか?」

 

『え?何で?』

 

「いや、何でって、」

 

 そこでデンジの言葉は詰まる。

 

「マキマさん、腕がっ!ソレに脚もっ、目だって!」

 

 マキマの身体はそのあちこちが欠損していた。左側の上着の袖はぷらんと垂れ、車椅子に乗って、両目に眼帯をつけている。アレは、前が見えているんだろうか?

 

『ソレと、もう痛覚と味覚も無いかな。しょうがないよ。それだけの強敵が相手だったんだ。デビルハンターの力には、代償が付き物だからね。』

 

 ちなみに嘘である。

 

 1ヶ月、マキマが昏倒していたのは本当だ。が、それ以外の欠損は全てコスプレだし、痛覚も味覚も普通にある。

 

 彼女はどうしてそんな意味のない嘘をついたのか。特に深い理由はない。マキマはそういう生き物なのだ。

 

『でもね。わたし本当に安心したんだ。(チェンソーマンの心臓と次いでに)デンジくんが無事でいてくれて。』

 

「マキマさん!俺んためにそこまで!」

 

 しかしデンジは信じてしまう。実際に落下の悪魔を退けた分、中途半端に信憑性あるのが悪質だ。

 

「どうして、そんなに俺んことを、

 

『わたしね。“デンジくんみたいな人”が大好きなんだ。初めて会ったのは(悪魔基準で)ついこの間だけど、一目惚れって言うかさ。すっかりファンになっちゃって。』

 

「え、えぇーーーっ!?」

 

 2人の会話は見事にすれ違う。マキマの思い人はチェンソーマン(ポチタ)なのだが、デンジはそれを自分のことだと受け取っていた。

 

「じゃあ、その、マキマさんは、(俺が)好き、なんですか!?」

 

『うん、(チェンソーマンが)大好き!わたしの夢はね。デンジくんみたいな人と、ずっと一緒に幸せな生活を送ることなんだ。』

 

「え、えっ、えぇーーーっ!?」

 

 デンジの頭はパニックになる。そして確信した。マキマは100%自分のことが好きだと。

 

 そう言えばどこかで聞いたことがある。小さい子供は好きな相手に構って欲しくて、ちょっかいをかけるものだと。

 

 デンジの中で点と点が繋がった。

 

 虚言を連発したり、野菜を口に投げ入れたり、心臓を引っこ抜いたりしたのも全て、自分の気を引くための可愛いアプローチだったのでは!?

 

「やべえ、俺っ、本気でマキマさんのこと、好きになっちまう!!」

 

 そう思うと、デンジの中で急にマキマが愛おしく思えてきた。彼はちょろい。彼はただ、自分のことを好きな女が好きだった。

 

「お、俺もぉ、マキマさんが好きです!」

 

『えっ!?えへへ、見る目あるじゃん!』

 

 “今の”マキマは、チェンソーマンに夢中でありながら、他人から好意を向けられるのも悪い気はしない。

 

 照れて頬を赤らめるその態度が、余計に勘違いを加速させた。

 

「だから俺もぉ、マキマさんの夢を一緒に叶えたいです!」

 

『え、いいの!?』

 

「はい!だってマキマさんは、俺みてえな人と、ずっと一緒に幸せな生活を送るのが、夢なんですもんね。」

 

『うん!そうだよ!デンジくんみたいな人と!』

 

「じゃあ、俺にできることは何でも協力します!!」

 

『本当に!?ありがとーーーー!あーもうこれ邪魔ぁ!!』

 

 喜んだマキマは、眼帯やら車椅子やらをどかして、デンジの胸に飛び込んだ。

 

「あれ?マキマさん身体は...?まあいっかぁ!末長く、よろしくお願いしまああす!!」

 

 マキマの胸にぎゅーっと包まれ、細かいことがどうでもよくなったデンジは歓喜の叫びをあげていた。

 

『デンジくん。何でも協力してくれるって言ったよね?』

 

「はあああい!」

 

『じゃあ遠慮なく!』

 

 マキマはデンジの心臓を抉り出し、高々と掲げる。

 

『助けて、チェンソーマン!!』

 

 しかし、何も起こらない!!!

 

「あ、マキマさん!」

「またデンジくんを殺してる!」

 

 扉を開けて入ってきたのは。マキマの部下の渡辺と鈴木。犯行を目撃された彼女は、必死に言い訳を考える。

 

『ち、違うのぉ!わたしがやったんじゃない!えーっと、そう!死の悪魔が、公安に潜り込んでいてぇ!』

 

「じゃあその手にある心臓はなんですか!?」

「早くデンジくんに戻してやってください!」

 

『でもぉ、』

 

「「マキマさん!!」」

 

『あーもう分かったってばぁ!!』

 

 こうして、上司からの殺害3回を経験しながらも、デンジのデビルハンター生活は幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、アキくん。久しぶり〜。』

 

「マキマさん。意識が戻ったんですね。」

 

 マキマは東京本部の廊下で自身の部下に声をかける。

 

 早川アキくん。若いのに優秀で勘も良く、おまけに料理が上手い。それはもうちょー上手い。

 

 ただ一度、『アキくんの料理は世界一だね!』って言った時は、マキマ家の料理担当である渡辺くんが落ち込んだ。

 

 それ以来、渡辺くんの前では、アキくんの話題をあまり出さないようにしている。

 

「そうだ。マキマさんに紹介しておきたい奴がいるんです。上から4課に派遣された魔人なんですが。」

 

『へぇ〜。新入りの魔人は久しぶりだね。何の魔人?』

 

「血の魔人です。」

 

『ふーーん。』

 

「ほら、こっち来い。」

 

 アキに促され、その隣にいた人物が前へ進み出る。

 

『あ、素体が女の子なんだ!』

 

 腰まで伸びた薄オレンジの髪をなびかせる、セーラー服姿の少女だ。特徴的なピアスを両耳から垂らし、姿勢は悪く首は右へ傾いている。そしてその眼は、どこかマキマと雰囲気が似通っていた。

 

『どんな条件で契約したの?』

 

「“これまで通り学校へ通わせること”だと聞いてます。」

 

『変わった子だね〜。まあいっか、よろしくぅ〜!』

 

 マキマの差し出した手を、“血の魔人と名乗る少女”は迷いなくとり、その身体を引き寄せていた。

 

『よろしく。わたしは血の魔人だから、“チーちゃん”って呼んでね。』

 

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