長夜月(偽) 作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?
毎回こことか後書きに書こうと思ってた事があっても忘れて何を書こうかって悩んでる。
トリアンの死亡。別れを覚悟していた黄金裔達ではあるが、例え分かっていたとしても悲しいもの。特に半神では無い黄金裔達の悲しみは大きかった。
しかし悪い事ばかりでなく、アナクサゴラスの考案した作戦によりフレイムスティーラーの持つ儀礼剣からオロニクスの火種を奪い取る事に成功した。そして紛争の半神となったモーディスがクレムノスに帰還し、フレイムスティーラーの撃退に成功した。
紛争の主、天罰の矛メデイモス。彼はクレムノスの民や自らの師匠であったケラウトルスと話し、自らの在り方を決めた。そして他の黄金裔や開拓者達と会話を交わし、終焉が訪れるその時までクレムノスで暗黒の潮と一人戦い続ける事になる。
そしてトリアンの死後、トリノンの案内で開拓者とファイノンはトリスビアスがどうして火種を継いだのか、千年間半神として立っていられた理由を求めてヤヌサポリスへと向かい、トリスビアスの旅立ちを見届けた。
以前までの輪廻では不明だが、今回の輪廻に限ってはトリスビアスの旅立ちを支援した者がいた。ファイノンや開拓者は不思議に思っていたが、その人物は誰にも見聞きされずにいた三月なのかであった。
人々は一人と別れを告げ、その者だけが奇跡を目にする事になる。これぞまさしく運命――それが、半神の二人が隠していた神託。再創世を成し遂げられるのはたった一人だけであり、その者だけが最後に立っていられるという残酷な真実だった。
――その者は、お前でなければならない。
今はまだ自分の役割をハッキリと理解していないファイノンだが、世を背負う者として彼は全てを担わなければならない。
その後開拓者はオロニクスの神権を引き継ぐ為の試練を受け、自らは既に死んでいる動くだけの記憶だと知る。歳月の半神として認められる為には、失われたその魂を取り戻す必要があるが……その手掛かりとなる死の半神「タナトス」の行方は、未だ誰も知らない。しかしそのヒントは既にアナクサゴラスが掴んでいた。
私が介在する余地も無く、世界は用意された筋書きの通りに進んでいく。世界の謎を解き明かす段階で、行方不明のタイタンを探している段階だから、世界自体に動きは無いのは当然とは言える。そもそもこの千年間、激動とも呼べるのはほんの僅かな時だったと言えるだろう。
いつでも常に何かに駆り立てられる訳では無い。一息吐く時も必要であり、その後にまた背中を追われる事になる。山があれば谷があり、緩急があるから人々は心を動かされる。
民会での元老院と黄金裔の対立、その後タナトスの火種を手に入れる為キャストリスと開拓者達がサフェルの助けを借りてスティコシアへと向かった。
♭
スティコシア。かつて「海洋」のタイタンであるファジェイナを信仰していた都市国家は、過去に既にステュクスに沈んだ場所だ。
その都市国家の残骸には、冥界に拒まれて彷徨うだけの亡霊達がいた。
「あら、これは記憶の残像かしら?」
ミュミュミュとしか言えなかったピンクの聖獣ミュリオンは、随分と話せるようになった人の言葉でそう言った。
その地に焼き付くような強い記憶や、強い思いによってその地に残る記憶、それらを利用すれば、かつての光景を見る事が出来る。
「これは……長夜月様?」
映し出された光景は、黒い傘を差したピンク髪の少女が誰かと会話をしている所だった。その話はイマイチ要領を得ないものであり、重要そうなものはノイズがかって聞くことすら出来ない。しかし、聞き取れた中にもいくつか気になる発言があった。
「壊滅、太陽、絶滅大君、鉄墓、知恵の使令……一体、どう言う意味なのでしょうか?」
「それって……」
「うん。天外の……オンパロスの外で聞ける内容だね」
キャストリスは聞き覚えが無くて当然の単語だが、天外の存在である開拓者と、彼女達との会話で多少の知識を蓄えたミュリオンには知っている内容だった。
「それはつまり……長夜月様は天外から来られた存在だと言う事でしょうか?」
「でも、もし彼女がなのだったとしたら時間が合わないよ」
「じゃあ、あなたの仲間であるなのかとは別の存在なんじゃないかしら?」
ニカドリーを狂気に堕とした存在だとして詰問しようとした直後に、弁明すらせずに逃げ出した長夜月。記憶の残像を覗けばその秘密が少しでも分かるのではないかと思ってみれば、更なる謎に襲われた。
「もう……どういう事かしら? 全く分からないわ」
「――待ってください。この記憶の残像、まだ続きがあります」
もう終わったと思っていた記憶だが、その中の長夜月はゆっくりと振り返った。その顔にはいつもの薄い微笑みを浮かべていた。
『……ああ、もしかして見てるのかな? ピンクの妖精さん。もし貴方達がタナトスを追っているのなら、この道で間違いないよ。でも気を付けて、メデイモスすらも感じ取れない死の半神の居場所は、この現世には無いからね』
その発言を最後に、長夜月の記憶は消えた。
「彼女は、見られる事を予見していたのでしょうか?」
「ピンクの妖精さんなんて、ミュリオンしかいないもんね」
「そういう事なら、彼女はスティコシアに最近訪れたって事になるわよね?」
「もしかしたら、ニカドリー様の征伐を行った後か、神悟の樹庭で逃げ出した直後にスティコシアに来ていたのかもしれません」
彼女から得られた情報を信用するならば、タナトスに通じる道は間違いなくここにあるようだ。アナクサゴラスと長夜月、樹庭の七賢人の一人と未だ謎に覆われた黄金裔が同じ事を言っているのだ。話の信憑性は一気に増した。
「しかし、助言を残してくれるのなら、どうして逃げたりしたのでしょうか?」
「なのの見た目をした壊滅の行人……あまり信用したくないんだけど」
開拓者の脳裏を掠めるのは、絶滅大君の一人である幻朧だ。仙舟同盟の羅浮に赴いた時に起きた星核騒動、それを利用して同盟の壊滅を目論んだ下手人。幻朧は他者の肉体に取り憑いて利用し、使われた肉体の持ち主は壊滅の影響で命を落とす事になる。
もし長夜月が三月なのかの肉体を利用した、幻朧のような壊滅の存在であった場合、三月なのかの肉体の無事は保証出来ない。
絶滅大君や宇宙ステーション・ヘルタを襲った軍勢の事もあって、開拓者の壊滅に対する印象はあまり良くなかった。
だからこそ、壊滅の運命に属すると思われる長夜月も受け入れ難かった。
しかし、いつまでも頭を悩ませている訳にはいかない。彼女達は新たに現れた謎に混乱しつつも、当初の目的の為にスティコシアの奥へと足を進めた。
その後は、彷徨う魂に死を与えたり偉大な研究者と出会い、死に抗うモーディスやトリアンとも再会した。
覚悟を決めたキャストリスは儀式を行い、既に亡くなったボリュクスと呼ばれる死竜を現世に呼び戻し冥界へと向かった。その花の海の果てで前世の妹と再会したキャストリスは死の半神となり、死から開拓者を帰還させた。
この時黄泉が出てくるのマジでエモいよねー。
こうしてタナトスの火種はキャストリスから開拓者の手に渡り、歳月は正式に開拓者へと引き継がれた。
一方で民会では火を追う旅の継続か中断か、それを決める議論が行われていた。ファイノンの演説は人間性を喪失したアグライアには出来ない人情に問いかけるものであり、火追い否定派を減らす優れたものだった。
実はこの時使われた手法はQUESTと呼ばれる商品販売に使われるものであり、それをより心に響くように改変したものだ。流石はアナクサゴラスの教え子でアグライアの薫陶を受けたファイノンだと言うべきか。
ファイノンの活躍により民会の意見は完全に割れ、最後の審判はアナクサゴラスの手に委ねられた。キャストリスがアナクサゴラスの推論を証明した事で真理を解き明かし、彼は火追いの旅を支持する事を宣言、見事黄金裔側が勝利する事となり、逆に追い詰められた元老院はこれから粛清者を使った実力行使へと出る事になる。
「ふっ、最後はこのようになりますか……いよいよ私の番ですね」
場所は代わり創世の渦心。タナトスの火種は返還され、キャストリスが神性の反響として最後の言葉を黄金裔達に託した。涜神行為を働いたとして死刑宣告されたアナクサゴラスは、自らに融合した火種を取り出し返還する為にこの場に来ていた。
そしてそれを、私も陰ながら見ている。
「さあ、さっさと処刑を終わらせましょう――オクヘイマの神聖な法に泥を塗らないためにも、私の新世界創造を遅らせないためにも」
アナクサゴラスが解き明かした真理とは、火種を継ぐ半神とは次代のタイタンとなる事だ。そして彼は、自らの知性を以て次の輪廻をより良きものにしようとしていた。
しかしファイノンは疑問に思う。例え次の輪廻に行けたとして、この世代のサーシスのように前世の記憶は忘れてしまうではないかと。その事に意味はあるのかと、彼に問い掛けた。
「意味ならあります。たとえ本当に自分が何者かを忘れたとしても、頭は変わらず切れるはずですから――前世の記憶を取り戻すなんて簡単なこと。それに、あなたもいるじゃないですか?」
完全なる記憶の持ち主であるファイノンから全てが再構築される。つまり前世の記憶を保持している彼がいるのだからどうとでもなるだろうと、そう言う意味なのだろう。
「それでも、先生が民会で言っていたことは理解出来ない。もし本当にそうだったとしても……記憶を再構築して作り上げたものは元の存在とは違うはずだ」
「そんな事はありません。「我ら」は一体何者なのか? 黄金裔とは未来のタイタンであり、その逆もしかりと言いましたが、それは明らかに私たちだけのことです。では、よく考えてみてください。一般人はどうなのか? その者たちの「我ら」とは一体なんなのか? 世界の本質である魂、その一つ一つには世界に対する誰かの記憶が一部記録されています――それはまるで目に見えない小さな種のように。そして一般人という括りにおける「我ら」とは、その種が芽生えて成長した大きな木なのです」
「それが……知性の種の意味?」
「その通り。私たちの身体は誕生した時から、世界を続けさせる為のものになっています。そして、私たちの種も誰かの記憶に蒔かれ、いつか無数の人々の心に広がっていくのです。種が環境の影響を受けるように、私たちの姿も多くの記憶の中で違うものになっていきます。しかし、受け継がれてきたものは永遠に変わりません。なぜなら、世界そのものがそうなのですから。私たちの存在を消すには、世界が滅びるほかない。しかし、必ず誰かが完全な記憶を持って生き残る……それがあなた、ケファレの子です――「世を背負う」タイタンの意味でもあります。ですから、この世界すべてを背負って生きてください。大切な人や「金織」を落胆させず――そして、私の理論に恥をかかせないように」
「全ての人々を導いて、新世界で再会する事を約束するよ、先生」
「ふん、よろしい。ここまでです。さようなら、また来世で会いましょう」
「ええ、さようならヒュポクリテス。サーシスがその思想を守らんことを」
恐ろしくあっさりと、別れを告げるアナクサゴラス。そして試練を完了したとして、サーシスはアナクサゴラスを理性の半神と認め、彼に神託を授けた。
「其方は至純な者の終点を越え、腐敗に満ちた苦悶の闇へと帰るだろう」
「ほう、それが神託ですか? 単に私の過去と現在、そして未来の功績を唱えただけに聞こえますが。サーシスよ、あなたも所詮はその程度という訳ですね」
何処までも傲慢に、誰よりも苛烈に。しかし、ただ自分の求める真理こそを唯一無二と掲げる彼は、最初から最期まで何一つとして変わらずに火追いを成し遂げた。
自らの肉体に埋め込まれた火種を抉り出し、その瞬間自らの命を繋ぐ力を失った彼は足元から金色の粒子となって消えながら高笑いをし続けた。
「喜ぶといい、サーシス。あなたの魂を使い、新世界に「疑念」の種を撒きましょう――以上、これにて終了。言葉はもう不要です」
そうして、賢者アナクサゴラスはその役目を終えた。それは今までの悲壮感が溢れる別れとは違う、爽快なまでの達成感に満ち溢れた別れだった。
「おめでとう、黄金裔。これで残る火種はエーグルとケファレだけになったね」
彼等には再創世に集中して貰いたい。私というノイズが思考を邪魔し、彼等の行動を阻害してはならない。
故に、あの時逃げ出したツケの精算をするとしよう。
♭
「ここは……私は確か……」
真理を解き明かし、火種を返還した。そうして自分は消え、次に目覚めるとすれば記憶を失った状態でサーシスとなっていた筈だった。
しかし、自分の意識は変わらずに続いている。これは私の推測が間違っていたという事でしょうかと頭を悩ませるが、見えている景色にさらに混乱する。
『長夜月……裏切り者が、よくも顔を見せられましたね』
『ふふ、随分と反応が鈍くなったんじゃないかな? 金織ちゃん。今までの貴方なら、私が創世の渦心に潜んでいた時に既に警戒出来てたはずなのに』
視界に映るのは、先程までいた創世の渦心の光景。その場に居るのはアグライア、トリノン、開拓者、丹恒……そして視点の主か。創世の渦心に灯っている星座はケファレとエーグルのみとなっている事から、私が火種を返還した後なのは間違いない。アグライアがこちらに向かって長夜月と呼んでいた事から、どういう訳か私は長夜月としてこの場に居る事になる。
「アグライア、一体何をふざけた事を言っているのですか?」
声を出し語りかけてみるが、どうにも彼女達に聞こえている様子は無い。
「ああ、ごめんねアナクサゴラス先生。今の状況について説明はいるかな?」
「なるほど、長夜月……私はあなたに取り憑いているような状態と言うことですか」
「流石、理解が早いね」
会話に気を取られていた訳では無いが、いつの間にか長夜月の身体は金糸に捕らわれていた。これがアグライアの力であり、黄金裔やオクヘイマに害を為す存在を断罪してきた刃だ。
『今更何をしに来たのですか』
『ふふ、糸で縛り上げるなんて余程怖いのかな? 君はもう少し余裕を持っていたと思ったけど……ああ、そう言えばカイザーの没後からずっといっぱいいっぱいだったね』
『何をしに来たのか、と聞いたはずですが』
ギリギリと金糸が絞め上がる。こちらの命を奪おうと襲い来る相手とは違う、ジワジワと命を奪われていく感覚――あまりいい気はしませんね。
「色々と聞きたい事はあるだろうけど、少し待っててね。この茶番を早々に終わらせるから」
「茶番、ですか……黄金裔を裏切ったと判断されればこうなるのは当然の事かと思いますが」
「そう判断されても生き延びてた先生が言うとあまり説得力が無いね。元老院なんかの庇護程度で、アグライアの金糸が鈍る訳も無いのだし」
「ふ、貴女がこの局面をどう切り抜けるのか、見届けさせて貰いましょうか」
『強いて言うならツケを払いに、かな。聞きたい事に答えてあげるよ金織ちゃん』
『貴女がこのタイミングで創世の渦心に来たのは、キャストリスが居なくなったからですか?』
『納棺ちゃんが居なくなったからじゃなくて、賢者ちゃんが居なくなるからだね』
意味が分からないと、アグライアの表情が困惑に歪む。アグライアだけじゃない、ファイノンも開拓者も理解出来ていない。
もしその意味が分かるとしたら、私だけだろう。
『何をしにここに来たのですか』
『オンパロスでもっとも賢い存在に、祝福を授けに……そんな事を聞きたかったの?』
『では質問を変えましょう。長夜月、あなたは一体何者なのですか?』
『「我ら」は一体何者なのか? それについての答えなら、賢者ちゃんが解き明かしてくれたんじゃないかな――そう睨まないでよ、ちゃんと答えてあげるから……そうだね、貴方達に分かりやすく答えるなら、私は暗黒の潮そのものだよ』
暗黒の潮。その言葉を聞いてファイノンは大剣を、開拓者はバットを、丹恒が槍を構える。アグライアの金糸は更に絞まり、長夜月の肉体へと強烈に食い込んでいた。
唯一トリノンだけが、何故か複雑な表情をしていたのが気がかりですね。
『お前が――ッ!』
ファイノンの瞳に宿った隠し切れない憎悪の色。そして燃え盛るような怒りを抑えきれなかったのか、鍛え上げた戦士としての力で彼は長夜月へと斬りかかった。
『模倣・天火聖裁』
しかし長夜月の身体を絞め上げていた金糸が消え、彼女の手に灼熱の大剣が握られファイノンの一撃を受け止めた。いや、受け止めるどころかその熱で彼の持つ大剣を溶かしてしまった。
『模倣でもやばいねこれ』
握っていたのはたかが一瞬、しかしその一瞬で起きた被害は壊滅的だった。ファイノンの武器を溶かし、握った本人である長夜月の腕は炭化してしまっていた。彼女の手には既に灼熱の大剣は握られていないどころか、その大剣はどこかへ消えてしまっていた。
『武器を奪った所で――』
武器が溶けようとも肉体がある、そう言わんばかりに拳を握ったファイノンだったが、今度は彼が金糸に縛られる番だった。
『待ちなさいファイノン。彼女が敵なのは明白となりましたが、まだ聞かねばならない事は山ほどあります』
『でもアグライア、それは長夜月さん……いいや暗黒の潮が抵抗すら出来なくなるまで痛めつけてからでも構わないんじゃないかな』
『いいえ、彼女が暗黒の潮であると言った以上、最悪の事態は想定すべきです』
くっ、と悔しそうな声を上げファイノンは握った拳を解いた。それに合わせて金糸も緩み、彼の身体を解放する。いつの間にか長夜月を縛るそれが消えていた事から、どうやらアグライアは長夜月を縛るのは無意味だと判断したようですね。
『長夜月、教えて。あんたは自分が暗黒の潮だって言ったけど、私とミュリオンが見た記憶では壊滅って言っていた。この違いはなんなの?』
『そうよ、貴方は天外から来た存在じゃないのかしら?』
『ああ、私の伝言はちゃんと伝わったんだね。でもそれを疑問に思うって事は、予想通りあの会話はほとんど聞けなかったのかな? ふふ、質問に答えてあげるとは言ったけど、疑問に対する答えをあげるとは言ってないよ。でもまぁ、ここでの解答に関して私は一切嘘偽りを言っていないとだけは言っておこうかな』
『ならばその時、お前は一体誰と会話をしていたんだ?』
『その質問には答えてあげたいけど……隠されていたって事は、明かすべき時じゃないって事だね。だから残念な事に、私はそれを教えてあげられない』
『そもそも何故暗黒の潮が黄金裔だと偽る事が出来たのですか? カイザーや剣旗卿を欺けるとは思えませんが』
『ふふ、暗黒の潮も黄金裔も同じ事だよ。それに、その質問は皇帝ちゃんを侮りすぎてるね……彼女は気付いてたよ、ちゃんとね』
『暗黒の潮と黄金裔が同じとはどういう事だ?』
『あれ、龍鱗ちゃん。君なら気付いてもおかしくないと思ったんだけど……まだ分かってないみたいだね? でもその疑問に対しては、そのまま答えだとしか言えないかな』
さて、と長夜月は言う。オンパロスを代表する半神と、天外からの盟友と、世負いの剣士を前に、彼女は警戒の色一つ見せずに背を向ける。
今すぐにでも背中を刺されてもおかしくない状況で、何とも大胆な行動だ。自らの命が握られている現状ではハラハラさせられる。
『じゃあね、黄金裔。ここからは貴方達が再創世を成し遂げるのが先か、私がオンパロスを滅ぼすのが先か……勝負だね』
長夜月がその場から本気で離れようとしているのを察知して、トリノンを除いた面子が攻撃や妨害をしてきたようだが、彼女は少しの焦りも見せなかった。
『模倣・エデンの星――生と死、貴方達に選ぶ余地は無い』
長夜月の手に握られた球状の何か。それから発生したエネルギーが黄金裔達を包む様に重力場を発生させていた。どうやらトリノンだけは範囲から外れているようですが、出力が凄まじいのか誰も動けないようだ。
『何故お前がヴェルトさんの技を使える!?』
『もう質問に答えてあげる時間は終わりだよ。おやすみ、アグライア……良い夢を』
偽夜月さんが使用した天火聖裁とエデンの星は、それぞれ神の鍵と呼ばれる黄泉さんの世界で言う妖刀みたいな立ち位置の武器の、見様見真似で作った劣化版です。
千年あるし暇やな……せや、ファイノンに天火聖裁持たせたろ!ほな似た様なの作る練習するか!ってノリで二つだけ超劣化で再現。ちなみに今後使われる事はありません。
炎の律者コアから作られた第七の神の鍵が天火聖裁、岩の律者コアから作られた第九の神の鍵がエデンの星ですね。ヨウおじちゃんが使う杖は理の律者の力で複製されたエデンの星です。
この作品にはもう出ないけど。