長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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誤字報告、感想毎回ありがとうございます!
3.7PVやばいですね。これ進みなさいってば案件では?
ルパート三世のデザイン地味に良いし絶滅大君鏡流カッコイイし、風焔とガチバトルするヨウおじちゃん最高だしで見どころ多いんだけど、本当に信じていいのか焼き鳥さんよぉ!
大丈夫?これちゃんとハッピーなエンド行ける?
期待がかなり大きいけどそれ以上に胸が苦しいんだけど?


第一に、私の事をアナイクスと呼ばないで下さい。

 この後はもう急転直下と言うべきか。流れに身を任せるままに輪廻となる。

 アグライアが粛清者に殺され、開拓者達はエーグルの征伐に向かう。エーグルの火種を手に入れた瞬間に偽物の空は消え天空の真実が明らかになり、同時期にセファリアがフレイムスティーラーを相手に生命と引き換えにケファレの火種を守り抜き、欺瞞の権能が解けてエスカトンが訪れる。

 ヒアシンシアは丹恒の力を借りて天空の半神となり、壁画と融合して天空の力で崩壊を遅らせる。そしてフレイムスティーラーの足止めに丹恒が残り、開拓者とファイノンは再創世に向かい――

 

 私は暗黒の潮として黄金裔達との決別をすませた。ヒアシンシアやトリビーなど顔を合わせていない者もいるが、意外と文明が発達しているオンパロスでは石版と呼ばれる実質スマホですぐに情報の共有がなされるだろう。

 壊滅と暗黒の潮と黄金裔の関係性についても伏線を張っておいたし、オンパロス編におけるラスボス枠なのでは? と思えるくらいの力は見せられただろう。やるべき事はもう終わり、後は私が介入する必要は無く、眺めているだけで良い。

 

 と言うことで、ようやく会話が出来る。

 

『おや、忘れられているのかと思いましたよ』

 

『まさか、アナクサゴラス先生にはしっかりと状況を説明しておきたいと思ってたよ』

 

 やり方を理解したので、自らの肉体に宿らせる訳じゃなく、サーシスや次の輪廻でのアナクサゴラスがそうしていたように、自らの身体から彼の思念体を離れた位置に顕現させる。これをライコスに見られるだけで面倒な事になるので、侵食の権能を使っての完全隠蔽をした状態でだ。

 

『さて、アナクサゴラス先生。貴方は勝手に与えられた情報から色々理解を深めるだろうけど、敢えて聞くよ……何から聞きたい?』

 

 私の盛大に爆死する以外にやりたかった事。それは33550336回目の輪廻におけるアナクサゴラスの魂の保護だ。

 これをしようと思ったのには勿論理由がある。33550337回目の輪廻においてアナクサゴラスは自らを賢者の石へと錬成し、ライコスの脳に寄生した。そうしてライコスのデータを探求し、隠された情報などを暴き、再創世後の世界で求めた結果を得られると断言してみせた。

 しかし、その輪廻におけるアナクサゴラスは色んな輪廻の記憶から興味深い情報を獲得し、サーシスの行動に着想を得てその行動を取った訳だが……果たしてアナクサゴラスの得られる情報から、そのような行動が取れたのだろうか?

 勿論開拓者と別れた後のキュレネが、黄金裔達に33550336回目の輪廻の記憶を語って聞かせたのだとしたら不自然では無いのだが、アナクサゴラスの言い回しが少しだけおかしく、まるで他の輪廻も知っているかのようだった。キュレネにある知識は開拓者と共に旅した記憶だけであり、それ以前の輪廻の記憶はカスライナに殺されたキュレネ達しか持っていない。

 不自然であり、疑問に思った。つまりそれは、新世界に撒かれたガバの種と言えるだろう。出来る限り元のストーリーを守りたい私としては、そこで引っかかるような事が無いようにしたい。

 

 だから、この輪廻でのアナクサゴラスの情報を保護し、次の輪廻のアナクサゴラスに与えようと思ったのだ。

 

 最悪やらなくても、キュレネが語って聞かせる記憶で何とかなるのだろう。でもそれ以上に、多くの事を知った状態で探求を行えるアナクサゴラスがどうなるのかが見たかった。

 この人なら何かやらかしてくれそうだと、実はかなり期待している。

 

 そして、自らのデータ内部での会話であればザンダーにもセプターにも察知されないというメリットがある。今まで発言や行動に気を使い続けて来たが、あくまで心の声のような扱いである此処ならば、好きなだけ好き放題に喋る事が可能となる。

 

『ふむ……そうですね。長夜月、貴女の記憶を私が読み取れない理由は何故ですか? サーシスがやってみせた事を、私に出来ないとは思えませんが』

 

『ああ、それ? それは保存先のファイルが違うからだね。私の記憶や知識は摩耗させる訳にはいかなかったから、ある程度自らの力を把握して使いこなせるようになった段階で、自分の本体とは別のところに隠して保護してるんだ』

 

『独特な言い回しですね。つまり貴女の肉体とは別のところにあるから、私には手が届かないと……そういう事ですか?』

 

『そもそも私の肉体は、擬似的なものでしか無いよ』

 

 炭化して使えなくなった右腕が、空間に解けて消える。代わりに地面や壁などを侵食し書き換えて、自らの腕として作り替える。これで綺麗に元通り。

 

『自分は暗黒の潮だと言っていましたが……なるほど、存在を作り替えてしまう力は確かに同一ですね。しかしそうですか、そうなると貴女には自らの核と呼ぶべき物があり、そこに私の魂も一緒に存在するが、記憶や知識は別の場所にあると』

 

『そう解釈してもらって構わないよ』

 

『なるほど、分かりました。では聞かせてもらいましょう。何故私の魂を確保したのですか?』

 

『それはアナクサゴラス先生にして貰いたい事があるからだね。正確に言えば、次の輪廻でのアナクサゴラス先生にだけど』

 

『輪廻、ですか。その言い方だと、どうやら再創世を続けていく事の輪廻では無さそうですね?』

 

『そもそもオンパロスとは何か、から話そうか? この世界では知り得ない天外の事も話す事になるけど』

 

『構いません。どうせ時間は余っているのでしょう?』

 

 こんな所で暇をしてるのですから、と皮肉混じりにそう言われる。

 

『前提知識程度を教える事になるけど良いかな? 私だって天外について数多くの事を知っている訳じゃないから』

 

 そう前置きをしてから、アナクサゴラスへと説明を始める。天外には星海と呼ばれるものが広がっており、世界と世界の間には虚数の壁があり本来は行き来出来ない事。星穹列車はそれを突破し世界同士を繋げてきたこと。星神と呼ばれる運命を司る、オンパロスで言うタイタンが存在する事。そしてオンパロスとは何なのか、我々とは何なのか、黒幕と呼べる存在は誰なのか。

 

『なるほど、合点が行きました。何故貴女が壊滅と呼ばれるものと黄金裔、そして暗黒の潮を同一視していたのか。ふふ、我々に流れる黄金の血も、黄金裔やタイタンが戦ってきた暗黒の潮も、全ては壊滅の恩寵という事ですか』

 

『壊滅の星神、ナヌーク。其から流れる黄金の血こそが祝福だからね。私達はみんな壊滅の造物って事になるね』

 

『そして私達はセプターの演算の下に生まれたデータ生命体ですか。だからこそ先程の言い回しがあったのですね』

 

『そう、だから正確には私はアナクサゴラス先生の魂を保護した訳じゃなく、消滅の瞬間の貴方のデータをコピーして、自分のデータファイルの中にペーストした。クローンとかレプリカに近い存在って事になるのかな?』

 

『どちらでも構わないでしょう。私が私としてある限り、やる事もすべき事も変わらないのですから』

 

 それこそがアナクサゴラスの掲げる不変。即ち真理の探求に他ならない。

 

『再創世の仕組みは理解しました。そして暗黒の潮の役割やリュクルゴスの目的も……しかし、貴女の言う輪廻とは一体何なのですか?』

 

『この面子での再創世、それを以ってセプターは壊滅の方程式を完成させる。でもそれを防ぐ為に、カスライナとキュレネが歳月の力を用いて今までの全てをリセットするの……ああ、カスライナって言っても伝わらないか。アナクサゴラス先生がフレイムスティーラーと呼称した、火種を盗む者。かれこそが最初のファイノンであり、ファイノンの本当の名前がカスライナ』

 

『火種を狙うのは、再創世を阻止する為ですか』

 

『そ。そして再創世を阻み、歳月の力でやり直す。その一連の流れをずっと繰り返してきた……ライコスが呼ぶ徒労、それを私達は輪廻と呼んでるの。その回数は今回で33550336回』

 

『数だけ聞けば膨大ですね。ですが、それだけの試行があったのならばただ阻止するだけじゃなく問題解決への糸口を掴めそうなものですが』

 

『勿論、輪廻を繰り返しているのがアナクサゴラス先生やアグライアであればそうだったかもしれない。でも、ファイノンにはそれを見付けられず、そう簡単に解決させるような甘い作りにライコスはしなかった。何故なら彼は、知恵の星神であるヌースを作り上げた最初の天才だからね』

 

『相手が悪かった、という事ですか。そもそもが私達はシャーレの中の細菌コロニー、その細菌が観測者の思惑を打ち破れる筈もない』

 

『少なくとも、ファイノンには不可能だった。けど、観測者をどうにか出来るのは同じ観測者。カスライナとキュレネは共に天外から希望が訪れる事に希望を託し、徒労と言われる永劫回帰を始めた』

 

『理には適っていますね。そしてそれが、今回の輪廻における開拓者ですか。しかしフレイムスティーラー……最初のファイノンの力量は、積み重ねた技量だけでは説明出来ないものでしたが――彼はどれだけの火種を抱えているのですか?』

 

『……4800万以上だね。少なくとも400万回目の輪廻までは、全ての火種を集めてた』

 

『なるほど。しかし開拓者が来たからと言って、オンパロスの問題が解決するものでしょうか?』

 

『開拓者が来たのは、一つの契機になるんだよ。さっきも説明したように、オンパロスには星神達が……ここでのタイタン達が目を向けている。オンパロスでの出来事は全て、神々の戦いの前哨戦になるの。壊滅と知恵と記憶……そしてそれを信奉する組織が絡んでくるし、実際壊滅の影響を受けた私と、記憶を集める組織は既に動いてる。そしてもうそろそろ知恵の天才達が、星穹列車の友人達――開拓者達を助ける為にやって来る』

 

『彼等を切っ掛けに、多くの勢力が絡んでくる……いや、順序が違いますね。記憶の組織については知りませんが、既に貴女が千年前に来ていた。これについてはどう説明するつもりですか?』

 

『そうだね……さて、どこまで明かそうか。まず最初に、オンパロス内部での時間と外部での時間は密度が違うの。そして、開拓者達より一足先に、列車の人間がオンパロスにやって来た。その存在は記憶の組織に利用されていて、本来突破出来ないオンパロスのファイアウォールを潜り抜けた。その結果生まれたのが私だよ』

 

『……はぁ、一先ずそれで良いでしょう。しかし貴女もまた天外から来た存在ならば、一つの契機になり得たのではないですか?』

 

『残念ながら、それは無理だね。まぁやろうと思えば、開拓者達が来る前にオンパロスの制御権をほんの少しだけ奪って、外部に救難信号とか送れたかもしれないけれど……それでも、時間の流れの違いは大きいの』

 

『どの道、今回の輪廻では何も変えられないと言うことですか』

 

『変えられるのは「救世」を担う存在だけだね』

 

『その結果、一体何が起こるのですか?』

 

『救世主が変わり、世界は輪廻する。開拓者もライコスも「法」の神権を狙う事になる。何故ならタレンタムは、ライコスすらも従う必要のある最終協定を……絶対のルールを設定出来るからね』

 

『「法」の半神であるケリュドラ殿に協力を仰ぎ、お互いに自らが有利になる条件をルールに書き加えようと言うのですか』

 

『これに関しては、外部の天才達の干渉を防ぎたいライコスと、その協力を得たい開拓者の戦いになるね。実際、天才達が思い通りに事を進められたら、再創世を果たせばそれだけ鉄墓の完成が遠のく事になって、その分だけ天外の組織達は時間を稼げる』

 

『その鉄墓とやらの完成を防ごうとはしないのですね』

 

『防ぎようが無いんだろうね、多分だけど』

 

『随分と曖昧ですね? 物知り顔で色々と説明してくださっていたのに』

 

『生憎と、私が知ってる事は多くなくてね。一応前置きしておいたと思うけど』

 

 しかしまぁ、良くも突然聞かされた情報を整理して話せるものだ。流石は知恵のルートで作られた存在か。

 知恵と神秘は互いに相容れない運命だった筈だから、もしかしたら本物の長夜月は彼が苦手だったりするのだろうか?

 

『貴女の言い分は大体把握しました。しかし気になるのは、暗黒の潮である貴女は一体何を目的としているのですか?』

 

 目的、か。出来る事ならば、オンパロスを圧倒的なハッピーエンドまで導いて、黄金裔達を望む者はみんな列車の仲間として連れて行って欲しいけれど、しかしそんな事は夢のまた夢だ。

 開拓者達が導く未来こそが最良のものであるとするならば、その道程を守ることこそが目的と言えるだろう。

 

『暗黒の潮としては、世界すべてを呑み込む事。壊滅としては、新たな絶滅大君を迎える事。でも私個人としては……』

 

 三月なのかを守る。それこそが絶対不変の私の使命だ。その為ならば全てを投げ出せるし、その為だけに存在していると言える。

 けれど同時に、この身を流れる壊滅の血潮は怒りに燃えている。記憶という運命と、その行人と、星神……それらを燃やし尽くせと叫んでいる。

 

 でも、その怒りは私のものでは無い。三月なのかを守らんとする長夜月本人のものだ。

 

 では、私の目的は?

 

『……何だろうね?』

 

 三月なのかの存在は教えられない。悟られてもいけない。じゃあそれ以外の目的は何かと問われたら、黄金裔達の紡ぐ悲しくも美しい物語を見る事だ。彼等の迎える明日を目撃する事だ。

 でも流石に、アナクサゴラス本人に対して「貴方達のファンだから、貴方達の生き様を特等席で見たいんです」なんて言えない。

 

『何故そこで誤魔化すのです……まぁ良いでしょう。貴女の行動を見るに、積極的に黄金裔を害そうという意志も、再創世を阻もうとする試みも見られない。むしろ、何か不都合が起こらないように補助しているとすら思えますね』

 

 きっしょ、どうしてそんな推測に行き着くんだよ。

 

『……どうしてそう思ったのかな?』

 

『簡単な事です。貴女が創世の渦心に現れたのは、私の魂のデータを取る為でしょう。そしてその目的を達成したならば、すぐにでも退散すれば良い。暗黒の潮として行動するならば、わざわざ再創世の中心となる地点に何もしない訳が無い。にも拘らず、貴女は律儀にアグライア達の質問に答えていました……まるで彼女達の抱える、貴女に対する疑問を解消するように』

 

 確かにそう聞くと分かりやすい行動を取っている。元々彼女達の思考のノイズにならないように、といった善意からの行いであるのは間違いないが、それはそれとして自分の行動原理を見抜かれているというのは恥ずかしいものだ。

 

『そこから推察するに、貴女は自分という存在が黄金裔にとって無駄に考える必要のある邪魔な存在である事を嫌っている、そう見えるのですよ』

 

『参ったね。正にその通り、その為にあの茶番はあったからね……私はただの敵で、次にまみえる事があれば容赦なく戦ってもらう。そう誘導したかったからね』

 

『しかし不可解ですね』

 

『何がかな?』

 

『貴女は私に対して、次の輪廻でやって欲しい事があると言いました。長夜月、貴女の発言はまるで予言者のものです。仮に貴女がオンパロスの辿る未来を知っているとして、そうしてまで私にやらせたい事とはなんですか? 普通、未来を知る者が何かを変えようとする場合、それは結末を少しでも良くしようとした時です。しかし、貴女の行動は自分と言う異分子によって起きる齟齬を出来るだけ無くそうとしているように見える……矛盾しているんですよ、貴女の在り方そのものがね』

 

 ああ、アナクサゴラス程の知恵者にはそう見えるのか。創世の渦心での問答がその判断材料の一部になっているのだろうか?

 確かに私の行動は、何かを成し遂げる為ではなく最期に消える為の行動であり、同時にオンパロスにおけるストーリーを出来る限り守ろうと動いている。結果自分は運命の車輪のレールに転がり込んだ小石であり、その影響が出ないように位置を調整している。ニカドリーからキャストリスにバレると言ったガバも、もしかしたら影響しているのか?

 しかしまぁ、概ねはアナクサゴラスの見立て通りだろう。そして、そうまでしてアナクサゴラスに頼みたい事とは何なのか。なるほど疑問に思う訳だ。

 

『サーシスに取り憑かれた経験と、私に取り憑いた経験。この二つを次の輪廻で生かして貰いたいだけだよ。その行いは、きっと再創世をするにあたって必要なものだから』

 

 直接的に伝えた訳じゃない。だからこそ、アナクサゴラスは考え込むようなポーズを取った。

 まぁ、今の段階で分かるはずも無いだろう。だが、その時が来ればこの事を言っていたのかと理解するはずだ。

 

『これはただの疑問なのですが……貴女は何故私の事を先生と呼ぶのですか? 貴女が私の生徒であった事は無いはずですが』

 

『ああ、それ? 貴方のような尊敬すべき識者に対して、どのような敬称を付ければ良いのか分からなくてね。賢くて教え導く人だし先生かなって』

 

 私の解答に、今度こそアナクサゴラスは何とも言えないような表情をしてから『まぁ良いでしょう』と言った。




話を進めるつもりだったんです……でもアナイクス先生と話してたら大体1話分くらいの文字数になってたんです……まぁここからはパパパッと進むからヨシ!
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