長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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いつも誤字報告感想ありがとうございます!

もしかしたらスタレだけとか原神スタレだけやってて用語知らねーって人いるかもしれないので、並行同位体についてざっくり解説しときます。

例えば雷電芽衣って学園と3rdとスタレと原神に同じ顔のキャラ登場するんですけど、この見た目が同じキャラを並行同位体と呼びます。同じ世界観を共有している作品群なので、あくまで遠く離れた別の宇宙にいるかなり似た人物って感じなんですけど、それでもそのキャラの根幹は変わらないよーって設定ですね。多分原神だと雷電将軍では無くて眞の方が並行同位体だと思います。

そこからよくファイノンの事をケビン、キュレネの事をエリシアと読んだりそれで盛り上がったりする人達がいますが、3rdの方で出てきたキャラをモチーフに、並行同位体として根幹を同じくして、環境とかの違いから人生の違いを演出しつつ、なんだやっぱ同じじゃん!(歓喜)って感じになってるんですよね。

とは言えぶっちゃけじゃあ3rdの設定を知っていた方が良いという訳では無いですし、ただ知ってる人へのファンサービスがあって、それで盛り上がってるってだけですね。

ちなみにヨウおじちゃんは並行同位体とかではなくて、そのまま3rd世界から来てます。律者って言う強い存在だったけど、その力は託した後で絞りカスみたいなものなんだけど、まぁスタレやった人ならヨウおじちゃんの魅力なんて語るまでもないし関係ないよね!かっけぇぜヨウおじちゃん!


長くなったけど、もし丹恒の並行同位体とかがいつか出てくるとしたら、身内にクソデカ愛を向けて、身内の為なら全てを擲って守護する様なキャラになるんやなーくらいに思っとけばOKです。

こんな話を突然した理由は、小さい方のキュレネ星4記憶で良いから実装して欲しいなーって思ったからです。
大きくしてファンサービスするのもホヨバ関係者が軒並みエリシアに脳みそ焼かれてるのも分かるんだけどね……あとストーリーで納得出来る理由お出しされたら構わないんだけどね!
でも小さいキュレネと一緒に旅してぇなぁ!頼むよ運営!ついでに記憶星4欲しいです!


3.4終わった後エリュシオンから出られなくなった人は私以外にもいると思う

 33550336回目、ついにその輪廻は終わりを迎えた。天外より開拓者が現れ、ファイノンとキュレネの無限の抵抗についに転機が訪れた輪廻。この契機により、ファイノンは自らが負っていた「救世」の役目を開拓者へと託し、■■■■■■にその輪廻の物語を語って聞かせていたキュレネはその役目から解放された。

 ファイノンは常に抱え続けた憎悪を炎にナヌークへと立ち向かい、其へと傷を付ける事に成功し祝福を手に入れ墜落した。

 33550336回目のキュレネもカスライナによって殺され儀礼剣へとその魂を収められていた筈なのだが、新たに現れたミュリオンと言う記憶の精霊がその姿と役割を引き継いで、新たな救世主と共に冒険し物語を綴る事になった。

 

 開拓者とミュリオン、そして開拓者へとウイルスを仕込むように自らの魂と知識を預けていた偽物の長夜月。その三人は歳月の力に守られた、記憶によって作られた狭間の領域――エリュシオンへと保護されていた。

 

 そしてそれとは別に、全てが壊滅させられたそのループのオンパロスにおいて、一人の開拓者が保護されていた。

 彼の名前は丹恒。仙舟同盟の羅浮と縁のある存在で、不朽の運命を歩む龍尊が脱鱗し生まれ変わった姿。そして列車組とその歩みを守護する者だ。

 彼は列車でオンパロスから脱出を目指していたが、オンパロス内部にある列車は列車を模した何かでしかなく、それを利用した所でオンパロスの外へと脱出が可能な訳では無い。

 言ってしまえば、彼は魂だけの状態で演算世界に取り込まれている状態であり、彼と星ちゃんの肉体はオンパロス近辺の宇宙を列車と一緒に漂っている。故に、列車を修復し開拓者達を無事に天外に送り返すというライコスの発言は嘘である。正確に言えば、修理自体は可能で実際にしたのだろうが、そこから肉体や星穹列車に戻るには更に別の助力が必要となってくる。

 それを行うのは、歳月の裏に隠れていた彼等のもう一人の仲間の、その別側面。本物の長夜月だ。

 

 記憶の力で再現された創世の渦心において、丹恒と長夜月は会話をする。それは私や星ちゃんには知り得ない事だが、丹恒が愛用している本人確認の為の質問に、完璧な解答を返す長夜月。そしてそれを元に、三月ならば覚えているはずがないと長夜月を三月なのかの偽物と断定する。

 そこでの語らいは、あくまで少しのもの。もしかしたら偽物の長夜月についての会話もあったかもしれないが……どちらにせよ、その場での会話も、出会った事実も、記憶を忘却させられる事になる。そしてそのまま、長夜月は使令級と評される力を用いて丹恒の意識体だけを星穹列車へと送り届けた。

 

 

 

 ♭

 

 

 

『流石に肝が冷えましたよ。まさかここで、私を道連れにして死ぬのではないかとね』

 

『それこそまさかでしょ、アナクサゴラス先生。私は先生に、しっかりと次の輪廻でして欲しい事があるって言ったよね』

 

『ええ、勿論覚えていますとも。しかしあれだけの事を仕出かしたのです……それに、私の得られる視覚情報からでは、完全に貴女本体とファイノンの戦いでした。そして貴女の攻撃はファイノンにかすり傷一つすら……いえ、一つだけ傷はつけていたものの、その力の差は歴然。何処かでフレイムスティーラーと約束事をしていたようですが、それを除いても貴女の立場は裏切り者で、ましてや滅ぼすべき敵だったのです。死を覚悟しても不思議では無いでしょう?』

 

『私の視点のアナクサゴラス先生ですらそう思ったのなら、私は全てを騙してみせたって事になるね……まぁ、あれだけ煽っても、カスライナの結末は変わらなかっただろうから、無意味で無価値な行動ではあったけどね』

 

 カスライナがナヌークを壊滅させられたかどうかは、はっきり言って現時点では分からない。直近で分かるのは星ちゃんが識刻アンカーで天才クラブの二人と会話をする時か、遅くても次の輪廻に足を踏み入れてからだ。前者は単純にタイムラグの問題で、そんなすぐには知れない可能性がある。

 

 とは言え、仮にカスライナがナヌークを壊滅させられたとして、では今すぐにオンパロスの問題が解決するかと問われればそうではない。

 

 第一に、星神が居なくなった所で運命の影響は残るからだ。これは繁殖のタイズルスが良い例だろう。其は既に死んでいるがその運命は残り続け、スウォームと呼ばれる繁殖の権能を持つ虫達は今も宇宙の何処かに存在している。

 これは余談だが、繁殖の運命は不朽が消失した後に分裂され生まれたとされている。不朽の龍も既に死んだとされているが、意外と現在どうなっているのかを把握されている星神は多くない。

 

 第二に、ナヌークを殺したところでカスライナが壊滅の、或いは別の星神になる可能性が極めて高いからだ。星神の司る運命とは差異があれど似通ったものも多く、それこそ先程挙げた不朽と繁殖と豊穣は、違いは確かにあれど似ている要素もある。また、オンパロス関連で記憶の浮黎――或いはその立場を騙る何者か――の狙いは、知恵の運命の壊滅にある。知恵の星神が爆発した時、鉄墓に仕込まれた記憶の種が宇宙に飛び散り、主を持たなくなった運命は壊滅と記憶、二人の星神によって等分される。そうやって記憶は知恵を飲み込もうとしているのだ。まるで秩序を調和が飲み込んだように。カスライナがナヌークを壊滅させたとして、その運命が消える訳ではなく、また星神を成立させていた虚数エネルギーも消えはしない。それをカスライナが取り込む事によって壊滅ないしは近しい星神となるだけだ。

 

 つまり壊滅の烙印は消えることは無く、それによって起こった事柄も途端に変わる訳では無い。頭が居なくなっても絶滅大君達は、結局壊滅の美学に囚われている。そして鉄墓もまた、結局はライコスの妄執に囚われた道具でしか無く、そしてその文明を壊滅させるシステムは殆ど完成している。

 

 残念ながら、あの戦いの結末にオンパロスの救済は無い。しかし、意味が無かったかと問われればそうでは無い。カスライナは一つの偉業を成し遂げた。それはナヌークについた傷口から燃え盛る浄世の黄金の血を滴らせた事だ。そしてその血はカスライナの身体へと溶け込み、壊滅からの最後の祝福となった。

 

 カスライナとは反対に、最初から最後まで私の存在も足掻きも無意味で無価値で無様なものなのだ。せめて三月なのかと長夜月を隠し通し、彼女もしくは彼女達に感謝でも述べられでもしたのなら、嗚呼、きっと満足して逝けるだろう。

 

 まぁそんな事はさておき、だ。

 

『無価値で無意味? ふ、思ってもいない事を。貴女の目的は最初から何かを変えることでは無いでしょう? 一見すると、私をこうしたのは変化を望んだ故の行動にも思えますが……貴女の行動と言動、そこには隠された目的があるように思えてなりませんね』

 

『まぁ、否定はしないよ。とは言え、私が成した事なんて殆ど無いに等しいけどね』

 

『ええ、そうですね。予言めいた事を言いながら、その予言通りになるように行動する。何か下手な事をして予言から外れる事を恐れ、ついにはファイノンの手で倒される事で自らの存在を消してみせた――もっとも、見せた相手は貴女の言う黒幕……リュクルゴスしかいないのですが』

 

『ついでに言えば、開拓者も私が敗北したものだと考えている筈だよ。彼と私の力の差……どれだけ私があの場で足掻いてみせた所で、勝ち目なんて万に一つも無かったからね』

 

『貴女の行いは黄金裔に紛れて再創世が正しく進行するように補助を行い、そして暗黒の潮であると明かして自らを敵であると位置付けた。そして天外のタイタン――星神の手先であるとして戦い、そして敗れた……そこに、貴女の目的は何一つとして見えてこないのですよ』

 

 うーん、怖いなこの人。流石知恵のモデル。頭良すぎて私の全てを見透かされてるね。

 

『知りたいの? 私の本当の目的を』

 

『……いえ、やめておきましょう。私自身が自ら解き明かすなら兎も角、自らの頭の中に住んでいる私以外誰にも明かしていない内容である以上、知られる事自体が不味いのでは?』

 

『もうなんと言うか、流石としか言えないね』

 

 少なくとも、同じ壊滅として殺し合いをしてみせたカスライナ……いいやファイノン相手にすら話してない以上、あの場では話せなかったと考えるのが妥当だろう。千年間誰にも話すこと無く抱え続けると言うのは、それ程の苦痛なのだ。黎明のミハニの秘密を抱え続けたセファリアでさえ、確実にもう死んでいる相手にその秘密を吐露していたのだから。

 

 あの場で、抱えた本音すらぶち撒けた相手にさえ隠した以上、聞かせたくなかったのはライコスが居たからという事になる。そこからは多分、アナクサゴラスの頭ならば辿り着くのは早いだろう。

 

『どうやら開拓者……いえ、救世主が何かするようですね。あれは確か、天外の仲間から託された物でしたか』

 

『識刻アンカー、簡単に言えばそれがある場所を知恵の領域と見なすものだね。あれを起動すれば外との通信を可能にするし、データ生命体の保護も出来るらしい』

 

『つまりそれで、オンパロス中の住人を保護すれば鉄墓からの脱出は可能という訳ですか』

 

『まぁ……そうだね』

 

 星ちゃんとキュレネは識刻アンカーを起動し、ヘルタとスクリューガムとの通信を確立する。どうやら彼女達は既にファイノンの信号が途絶した事まで掴んでいるようだ。

 つまりは、彼はナヌークを壊滅させる事は叶わなかった訳だ。

 

『ところで気になっていたのですが、救世主の隣の少女は何者ですか?』

 

『ああ、キュレネ? アナクサゴラス先生の知ってるミュリオンの力と記憶を引き継いだ、この輪廻でのキュレネかな……ファイノンがエリュシオン出身で、自分以外の全てが暗黒の潮に呑まれたのは知ってるよね? でもキュレネは、その時フレイムスティーラーに殺されてるの』

 

『フレイムスティーラー、つまり前回の輪廻でのファイノンの事ですね。普通に考えれば、ファイノンの憎悪の一因となる殺害など、次の輪廻で自ら行う筈は無いのですが……つまり、そうするだけの理由があったと』

 

『そ、カスライナとキュレネの目的は再創世の阻止。そしてキュレネは歳月を担う黄金裔だった』

 

『理解しました。確かに歳月の力だけは何としても与えてはならないでしょうね。何せその歳月の力で永劫回帰を成し遂げてるのですから……そして、歳月さえ欠けていれば例え再創世を阻止出来なくてもそれは不完全になる』

 

『だから、カスライナは輪廻の度に自分の手でキュレネを殺してその魂を儀礼剣へと取り込んでいた。何せそれが最初のキュレネとの約束だったからね……でも、今回の輪廻ではカスライナは現れない』

 

『先程天外の天才が言っていた、ファイノンの信号途絶ですか』

 

『そう。今彼女達も話しているけど、再創世というプロセスに対して今回は「世負い」のルートに欠落が出てる』

 

『では、前回の輪廻で救世主についていたミュリオンは、今回の輪廻に来る為にその身を犠牲にしたという事ですか』

 

『大体そんな感じだね。時間と記憶の荒波から開拓者を守り、正しい時間へと送り届ける。その為に歳月の半神としての力を使い切り、ミュリオンの集めた記憶だけがキュレネへと引き継がれて……そしてその二つが混じり合った存在になった――なんて偉そうに教えてみたけれど、残念ながらこれは私の推測が多大に含まれてるよ』

 

『構いませんよ。元より貴女の話を全て信じている訳ではありませんから。少なくとも貴女の視点から見た時考えられる事、そしてそこに貴女の意図が絡んでいる可能性……それらを踏まえた上で聞いているので』

 

 もっとも、ミュリオンが消えたかと問われたら是とは答えられない。ミュリオンの正体を考えた時、キュレネに統合されると言うよりもその存在を乗っ取っている方がまだ有りそうだ。

 そう考えるのは、ミュリオンの英語名にある。日本語ではミュリオンだが、英語ではmem、そしてこれはmemoriaの略だ。そしてセプターの名前はδ-me13であり、13番目のローマ字はmである。つまりセプターの名前もmemなのだ。普通に読んでメイさん……つまりメイ博士って事!? と思った事もあるけれど、それはさておきミュリオンはセプターの名を冠する存在であり、初めて出会った時は殆ど記憶も失っており喋るのもおぼつかない状態だった。さて、セプターの頭脳体であり知性の種とも呼べるものは一体なんだったか――と、考察はここまでにしておこう。どうせ再創世を果たした後に明かされる謎なのだから。

 

 しかし、やはりと言うべきかカスライナは負けてしまったか。例えその結末に変わりが無いとしても、どうせなら本懐を遂げて欲しかったと心から思う。

 でもさぁ、ファイノンもカスライナも、完全にやってる事がケビンなんだよね。後に続く者たちの為に飛翔する。例えイカロスのように定められた墜落だったとしても、自分という前例を作る事でそれをより良く改良してもらい、太陽へと飛び立って貰えるようにと。

 更に言えば、混沌を背負う者カスライナ、この名前が君達の隣に居てくれる事をって、つまり開拓者をキアナ認定してる可能性があるんだよね。もう開拓者、お前ステラ・カスライナって名乗れよ。

 

 おっと、思考が逸れてしまった。

 

「貴方の力を信じています。開拓の手は必ずや奇跡を起こし、罪悪の火を鎮めることでしょう」

 

「私からの励ましは割愛するよ。次に会う時は朗報を期待してるから、お子ちゃま……ううん、救世主様」

 

 天才達と安定して通信出来る時間はまだ残っているが、必要最低限の情報交換とこれから行うべき事の指針を与え、通信を終えようとしていた。

 ここからは準備を整え、新たな輪廻へと向かうだけ……だったのだが、ヘルタの目が細められた。

 

「驚いた。まさか私やスクリューガムの目を欺くだなんて……お子ちゃま、あなた汚染されてるよ」

 

「スキャンの結果、開拓者さんの服の内側に開拓者さんとは別の存在が検出されました。推測:何者かが仕掛けたバックドアのようなものかと」

 

『ははは、どうやら気付かれたようですね。さて、長夜月……貴女は天外の天才達を相手に、一体どのように誤魔化してみせるのです?』

 

 活き活きしてんなぁ先生は。最悪纏めて消去される可能性もあるってのに。

 

「はぁい、私に会いたかった? なんてね。初めまして、天下無双にして傾城傾国にして銀河一の知者であるミス・ヘルタと一惑星の主でもあるスクリューガム」

 

 取り敢えず挨拶はしてみる。しかし残念ながら、出力出来る私の姿は隠れていた時のエーグルのような、一つの目玉だけ。このエリュシオンには暗黒の潮が無く、姿を現す必要の無かった私は何も侵食していない。つまり自らの肉体を作り出すだけのリソースが無かった。

 

「うそ、長夜月!?」

 

「ファイノンに倒された筈じゃ?」

 

「倒されたのは事実だけど、わざわざ死にに行く訳無いでしょ? バックアップ、では無いけれど私の本体である核は初めから星ちゃんに託してたよ」

 

「初めから?」

 

「あれ、覚えてない? ニカドリーとの戦いで、私とメデイモスが時間稼ぎに残った時。あの時わざわざ肩を叩いたのは、私自身を避難させる為だったんだよ」

 

 いつもの考え込むような姿勢をしてから、星ちゃんは手のひらを叩いた。

 

「ふふ、思い出した?」

 

「私はその時の事を知らないけれど……その時からファイノンに倒される事を想定していたって事かしら?」

 

「あれ、ピンクの妖精ちゃんは私がニカドリーに倒される可能性は考慮してないの?」

 

「あなたとファイノンの戦いを見て、今更ニカドリーを相手に負ける事は無いと思うのが自然じゃないかしら?」

 

「まぁ、それもそうかもね」

 

「どうやら長夜月と呼ばれるソレは暗黒の潮と同一のようですね」

 

「どうするの? お子ちゃま。敵にまんまと色々な情報を与えてしまった事になるけれど」

 

「あれ? もしかして星ちゃん、こんな弱っちい女の子を殺すつもり? 酷いね、私にはもう何も出来ないのに」

 

「白々しいね。あなたが暗黒の潮と同一存在である以上、ライコスの手下である事には変わらないでしょ?」

 

「ライコス、ライコスね。どうやら彼の背景にはまだ辿り着けてないんだ? まぁ仕方ないよね、天才に求められてる仕事はあまりにも多いんだから」

 

「なにそれ、皮肉のつもり? 私達の会話を聞いていたのなら候補が絞り込めてる事は分かってる筈だよね……ああ、そういうこと」

 

「この会話はそろそろやめておこうか、偉大なミス・ヘルタ。少なくともここだって情報の観点から安全って訳じゃないからね」

 

「待って、聞きたい事がある」

 

 多分ライコスに完全に裏切ってるってバレてるんだろうなーと思いながら会話をしていると、そんな待ったが星ちゃんから掛かった。

 

「どうしたの? 星ちゃん。三月なのかって子はもう何処にも居ないけど」

 

「それはどういう意味……じゃなくて、星神全てが宇宙を滅ぼす事しか能がないって、どういう事なの?」

 

 私とファイノンの戦いの最中、ぶち撒けた私の本音をしっかりと聞いていたらしい。まぁそんな事考えるまでもなく、行き着く先は殺生院……じゃなかった。まぁ、答えてあげるか。

 

「それはあくまで極論だけどね。でも分かり易いところで答えようか。例えば星ちゃんがあまり良く思っていない壊滅、これはテルミヌスの予言にある四つの終末、その一つにあるね。じゃあ、どうして壊滅が終焉を招くか知ってる?」

 

「エントロピーの増大、その先にある宇宙の熱的死だね」

 

 多分知らないだろうな、という事なのかヘルタから回答があった。

 

「そう。壊滅活動の果てにあるのがそれだね。じゃあ逆に、開拓の果てにあるのはなんだと思う?」

 

 え、開拓? とかなり意外そうな間抜け面を星ちゃんがしてくれる。うーん、千年生きてきた甲斐があったな。

 

「答えはエントロピーの減少だよ。だから結果として壊滅と開拓、そして均衡によって釣り合いが取られて宇宙は滅ぼされずに済んでるの」

 

 エントロピーの減少自体は滅亡の運命に至らない。あくまで熱的死の延命手段に過ぎないからだ。しかし開拓の本質もまた、良きものとして捉えられる訳では無い。

 

 壊滅勢力が、開拓は必ず何かに火を付けると言っていた。未知を開拓し、繋がりを得る為に手を掴む。ああ、素晴らしいとも。

 しかしそれは、新たな火種を産む事にもなりかねない。元より知能生命体なんてものは、どう足掻いても争いから抜け出せない。もし仮にそんな未来を拒絶するのなら、徹底的に管理された秩序の世界にでもする必要がある。

 それはそれで地獄だが。

 

「星神も運命も、結局は宇宙の法則で、極端に行き着けば全ては滅亡が待ってる。とは言え、基本的に終焉を招く運命は四つだけどね」

 

 だからこれは、あくまでも自分の考えでしかない。そもそも星神なんて自らの運命をただ遂行するだけの極端な存在なのだから、言ってしまえば色々な物を無理矢理自分達の規則に当て嵌めてしまう傍迷惑な奴等なのだ。

 

「まぁ滅亡は言い過ぎだけど、不朽とか豊穣の事を考えれば如何に星神がゴミなのかは分かって貰えると思うけど」

 

 アレらのやる事は滅亡とは真逆、終わりのない地獄だ。

 

「不朽や豊穣が不死身の軍団を作り上げて巡狩がそれを滅ぼし続け、壊滅と開拓でエントロピーの増減をし続け、知恵と記憶が開いた全てを神秘が隠し続け、存護が我関せずでひたすら城壁を築いて虚無が片っ端から呑み込み続ける。星神なんて物が運営している以上、星神やその使令如何の塵芥達なんていつか消えてなくなる。だから、極論だけど星神共は滅亡させるしか能がないって言ったんだ……まぁ、そうはならない為の終焉だろうけどね――て言うか、正直星神がどうこうとかどうでも良いの。あれは全てファイノンを焚き付ける為の発言だし」

 

 結局のところ、必要なのは何に怒っているかだ。私は星神共全てに怒っていると、お前らなんかいらねぇんだよと叫んだだけだ。それは紛れもなく本音だし、そこに理路整然とした理由なんて不要だ。

 

 気に食わないから殺す、それだけで良いのだ。

 

「へぇ、暗黒の潮なんてオンパロスの中だけの存在のくせに、随分詳しいんだね? もしかしてテルミヌスの予言、四つの終焉についても詳しいのかな?」

 

「ふふ、ミス・ヘルタに答えられる程では無いけどね?」

 

 熱的死、ビッグリップ、ビッグクランチ、真空崩壊。この四つが崩壊ユニバースでは無い観測次元の宇宙の終焉、その四つの説だ。そしてそれぞれ当て嵌めれば、壊滅と虚無と調和と均衡……もっとも、ここに虚数エネルギーが加わる事でどう変わるかは不明だが。

 

「さて、天才達との通信も時間が無さそうだから、貴方達を安心させる情報を二つあげるよ。勿論これを聞いてどう判断するかは任せるけれど……一つ、私の目的は既に達した。カスライナという烈日が昇る事こそが私の目的だった以上、もう何かをする必要が無い。そして二つ、次の輪廻において私の力はかなり制限される。これは暗黒の潮が殆ど活動出来ないことに由来する」

 

 何かを言いたそうにしている四名だったが、誰も何も言えなかった。

 まぁ彼女達も判断に困るだろう。何せ敵とされている筈の私が、何か敵対的な行動を取る訳でも無くただお喋りしているだけなのだから。

 

 無論、私がライコスの手先であると思われてしまえばそれまでだが……そこは私の誠実さが伝わる事を期待するしか無いだろう。

 

「ヘルタさん、残念ながら通信時間の限界が迫っています」

 

「良い? 救世主様。その暗黒の潮に決して気を許さず、怪しい行動を取ったのならすぐに対処する事……ただ、その子は三月なのかに繋がる手掛かりにもなり得るから、判断は慎重にね」

 

 ミス・ヘルタのその言葉を最後に、通信限界が訪れ彼女達のホログラムが消えた。




今回のお話のキュレネ・ミュリオン関連は完全に推測入ってます。
実際3.4でのセリフを見る感じミュリオンは消えちゃってるんだけど、しかし本当にそうでしょうか?って頭の中のライコスが言うんだ……。

あと明日いよいよアプデなんで楽しみですね。この物語の結末もストーリー次第で変わるのじゃ……元々考えてた本筋より更に良く出来たら嬉しいね。
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