長夜月(偽) 作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?
キュレネ引くのに石全て使い果たしたんだけど、ファイノン復刻までに貯まるか……?
「長夜月、一つ確認して良いかしら?」
「何かな、ピンクの妖精ちゃん」
ミュリオンとして開拓者と共に旅をした記憶を持つキュレネからすれば、長夜月という存在は厄介な相手という認識だった。黄金裔として共に戦っていた時は優秀な後衛であり、その正体がバレてからは殆ど会う事は無かったものの、開拓者達の警戒が解けた瞬間に襲撃してくるのではないかと言った怖さがあった。そして、ファイノンとの決戦……最後まで見る事は叶わなかったものの、戦いの経過を見ていた者ならファイノンが勝ったのだろうと容易に想像出来ただろう。
とは言え、数多の火種を抱えたファイノンとマトモな戦いを演出できた時点でその力量は相当なものだろう。それが、目玉一つという何とも惨めな姿になっているのだから言葉に困る。
とは言え相手は壊滅に属する存在で、オンパロスを滅ぼそうとする暗黒の潮そのもの。姿かたちがどのようなものであれ、警戒しない理由にはならなかった。
「分からないのよ。あなたは壊滅の存在で暗黒の潮そのものだと言うけれど、何故天外の知識をそうも持っているのか」
「あれ、勉強不足だね? 元々暗黒の潮は災厄の三タイタンと共に天外より降り立ったって、そう言い伝えられていたんだけど」
「ええ、オンパロスの歴史で言えばそうなるわね。でも、天外に属する暗黒の潮に自我が芽生えたとして、天外の知識が付随するとは限らないのよ」
キュレネもミュリオンも開拓者も、33550335回目以前の輪廻の記憶と知識は持っていない。故に、私という存在が全ての輪廻に存在していたという前提で考えているだろう。何せ彼女達の視点では開拓者という希望が訪れるまで、天外からの訪問者は無かったのだから。
しかし本当にそうでしょうか? と頭の中でライコスのセリフが過ぎる。
そう言えば、星ちゃんは前回の輪廻の最後でカスライナの記憶を共有しているのか……例えそれが全てで無くとも、私という存在が居なかった事には気付けるか。となれば、キュレネにも共有されていてもおかしくない。
つまりそれらの記憶を元に、私の正体を探ろうとしているのか。まぁ、答えるつもりは無いけれど。どうせ本物の長夜月が現れる時、大体の疑問には解答が用意されるはずだ。
「じゃあ、敢えてこう答えようか。私はオンパロスにおける降臨者だよ」
「降臨者? それってどういう意味なのかしら?」
「ふふ、残念。教えてあげないよ」
星ちゃんといる時は常に微笑んでいる、そんなキュレネの表情がムスッとする。なんだこの可愛い生き物。
「あなたは理解しているのかしら? 自分の立場がとても危うい事を」
「なら、消せば良いんじゃない? それくらい簡単でしょ?」
私が稼がなければならない時間は、本物の長夜月が荒笛との契約を結ぶ時までだ。そこからの長夜月は大地の半神の権能により、その存在の痕跡を隠蔽される。
まるで自分は全てを分かっているとでも言いたげな顔をしていたライコスだが、彼は明らかに長夜月の事を把握出来ていなかった。無名のタイタンの大墓の存在と今までのキュレネの徒労に関しては知っているようだったが、初めて存在を知った瞬間に理解した可能性もある。
どちらにせよ、私がここで消される訳にはいかないが……彼女達にも私を消す事は出来ないだろう。なにせ三月なのかに繋がる唯一の手掛かりなのだから。
「もう、酷いのね。あたし達があなたに手を出せない事を分かってて言うなんて」
「私は誠実に全て答えているんだけどね。ただ、誰もその発言を信じていないだけ」
「あら、誠実だと言うのなら先程の質問に答えてくれてもいいんじゃないかしら?」
「答えてもいいんだけど……その場合、物語が変わっちゃうからね。何せこれは、火を追う十三の英傑達の物語なんだから」
降臨者なんて言葉はオンパロスにおいて使われない言葉だ。わざわざこんなもので自分を表現したのは、再創世を果たした先で未来を創る為の布石に過ぎない。
星穹列車のみんなが、オンパロスに足を止められていい理由は一つも無いのだから。
だから思うがままに進みなさいって?
いい加減進めよマジで。何エリシアガン見しながらムーンウォークしてんだよ。これは後退ではなく転進だって無能指揮官の言い訳かよ。
「十三人の英傑。長夜月、あなたの言う十三人とは一体誰なのかしら?」
「あれ、ピンクの妖精ちゃんはもしかしてネタバレが好きなの? なんてね、普通に考えれば分かる事でしょ?」
「もう、変なの。暗黒の潮そのものであたし達の敵のはずなのに、言う事全部敵の発言じゃないのよ」
「偉大で可憐で天地鳴動のミス・ヘルタ相手にも言ったけど、私の目的はもう達成しているからね」
いいよねヘルタさん。お姉さんって雰囲気でありながら世話焼きな幼馴染みたいな感じもあって。まぁ、彼女にそうする価値のある相手と思われなければ、彼女の視界にも入らないのだろうけど。
ある意味では、不可解な敵という立ち位置の私は彼女の目に留まる資格があったと言う事だ。嬉しいね。
「ねぇ、長夜月。やっぱりあんたはなのの事を知ってるんでしょ? じゃなきゃ、三月なのかはもう何処にもいないなんて発言は出てこないと思うんだけど」
「そうだね、知ってるよ。その上で言うけれど、三月なのかはオンパロス中を探しても見付けられないよ。だって、三月なのかという個人はもう何処にも居ないから」
今オンパロスに居るのは、長夜月という三月なのかの別側面であり彼女を守護する存在だ。三月なのかはその記憶の全てを捧げて長夜月の力となった。僅かに残された彼女の記憶だけが残っているが、それは探しても見付けられない。
何故なら、初めて星ちゃんがオロニクスの下へ訪れシャッターを切った時、既に三月なのかの残滓は彼女のカメラへと入り込んだのだから。
「やっぱり、あなたはその三月さんの事を知ってたのね? だから同じ姿をしていたのでしょ?」
「ふふ、どうかな。偶然、私と三月なのかが同じ姿をしているだけかもしれないよ?」
とは言ってみたものの天才達と会話を交わした今、オンパロスの内外での時間の流れの違いは彼女達も知るところだろう。
それはつまり、私=三月なのかの図式を確立させなかった時間差の問題を解消する事に繋がる。
どういう訳か、星ちゃんと丹恒の二人がオンパロスへと来る前に三月なのかが来ていたのだとしたら、千年という時間の差にも納得が生まれるのだ。
まぁそこを知られたところで、私に痛いところなんて何一つとして無いのだが。本物の長夜月の準備が整うまで、その他全てを騙せていられればそれでいい。
バレてはいけないのは、私は三月なのかの真似をしただけの別人であり、本体は何処かにいると言う事。私が三月なのかではないと誤魔化すだけ、知者も愚者も無駄に勘繰ってくれる。額面通りに言葉を受け取るような素直な者が相手ならそうもいかないが。
私の築き上げてきた立場が、素直に言葉を受け取らせてくれないだろう。
歳月を継げる黄金裔、裏切り者の黄金裔、暗黒の潮の化身、壊滅の手先、三月なのかとの関係性がある何か。更に言えば、アグライア達を騙せていた事も評価に加わるか?
多分私が「この三月なのかを簡単に倒せると思うなよ」とでも言えば「やはり三月なのかなのか!?」と活きのいい反応を返してくれるに違いない。
後は地味に開拓者達の動きを援護していたのも判断に困るだろう。
『私からすればかなり分かりやすいですが……得ている情報の違いもあるのでしょうね』
「いないなんて信じないよ。本当になのがオンパロスに来てるなら、何としてでも見つけ出して一緒に帰るんだから」
聞いてる? 三月なのか。貴女の大切な仲間は、貴女が思うくらい大事に思ってるよ。もう少しだけ待ってて、貴女はもう時期身体を取り戻せるから。
その先は、もう最終決戦になっちゃうけどね。
「そう……次の輪廻に辿り着いた時、私の本体を星ちゃんから剥がすから安心してね」
そう告げて、目玉だけ出力していた状態を解除する。
その後星ちゃんとキュレネの二人は新たな輪廻へと向かう準備をし、星ちゃんは神話の外側に拉致された。
ライコスがわざわざ神話の外側へ星ちゃんを招待したのは、彼女専用の檻へとチューニングする為だ。多分ついでに不具合である私も閉じ込めようと画策しているのだろうか。まぁ本体をそのまま星ちゃんに寄生させていたら程度の考えだろうが。
ここで剥き出しとなった、黄金裔達の真の姿が晒される事になる。データの世界で生きる私達からすれば、今まで見てきた物こそが真実であるのだが、外の存在でありしっかりとした肉を持つ彼女達からすれば、神話の外側にある光景こそが真実だ。それはケーブルに繋がれたディスプレイ、そこに羅列されるただの数字。ザンダー・ワン・クワバラが用いる十四行代数式で表示されたものこそがあるべき姿だ。
星ちゃんやザンダーからすれば、私達は画面に出力された映像に過ぎない。
そして提案される宇宙で唯一無二の存在への昇華。これは星核をザンダーの知識で運用する事で、星神やそれに準ずる存在へとする事が出来るという事だ。私の個人的見解としては、恐らく終焉の星神にでもなるのではないかと思っているが、結果として星ちゃんは断るので関係ない。
そして交渉は決裂し、ライコスは星ちゃんを新しい輪廻へと送り届ける。
第33550337回永劫回帰、光歴3960年。
ケリュドラが法のタレンタムを討伐し、その火種を手に入れた時代。次の輪廻へと足を踏み入れた開拓者とキュレネは運命の三相殿へとやって来ていた。
これからの方針について話し合う二人は、まずは人の集まるオクヘイマに行くべきだと、そう結論付けた所で声を聞く事になる。
怒声なども聞こえたので状況を確認してみれば、多くの兵が司祭を取り囲んでいる場面に遭遇した。そこにはトリスビアスとセイレンスも居て、司祭は天外や群星について口に出す。
セイレンスの発言から、どうやら彼女達は「天外からの救世主」を迎えに来たらしい。
そして現れるのはカイザー・ケリュドラ。彼女は司祭を燃やしてしまい、皆の嫌いなカイニス達粛清者も処理してしまう。
カイザーの発言の節々から救世主の辿った未来の知識があることを知らされ、開拓者とキュレネの二人は更に困惑する事になる。
どうやら救世主についてはトリビーの神託で知ったらしい。そして二人をもてなす為にオクヘイマへと招かれる事になった。
正直、カスライナの初めての輪廻の時にカイザーが「この時代に救世主は現れない」って言ってたから、カイザー何処まで見えてたの!? って驚いたんだよね。でもただの神託だったのか、まぁ流石にそうだよねってなったなぁ。
ともあれ、開拓者とキュレネの二人はオクヘイマへと辿り着き、これから同盟会議が行われるのでそれまで自由にしていて良いとセイレンスから言われ、ついでにこの輪廻での異変……何故天外の事について知っているのか、それを教えたのは誰なのかを知る為の聞き込みを始める。
カイザーに反発しているような冬霖卿セネカ、カイザーの犬の断鋒卿ラビエヌス、クレムノス出身吟遊詩人の吟風卿ヴァージニア、神悟の樹庭五賢人の一人で火を追う軍の参謀を務める牽石卿アポロニウス、金織卿のアグライアに運命卿のトリビー。だが聞いた限りでは、どうやら「あの方」とやらが教え、その存在は秘匿されているようだった。
一方でトリビーが言うには、オロニクスの神託で天外や救世主について知らされていたらしい。ちなみにこれは長夜月が、星ちゃん達が再創世をやりやすくする為に言わせた事だ。
『ははは、見てください長夜月。あれがあのアグライアですか!』
うん、絶対笑うと思ってた。
『ちなみにだけど、この時代のアグライアはまだ半神にもなってないよ。ただの織物上手な黄金裔だね』
声優の演技すげぇって感動したのを覚えてる。何せ私達が知っているアグライアとは、落ち着いたようで静か、その癖多くの事を見透かしているかのような声色と言葉遣いだった。唯一本来の自分を知っているトリスビアスを前にしても、そこまで変わりは無い。
けれど33550337回目の輪廻におけるアグライアは、かなり若々しいと言うか希望に満ち溢れたお嬢様と言った印象なのだ。
そうは言っても、彼女は現時点で100歳なのだが。いや若くねぇか? 色々と。
『ほう、今は確か光歴3960年の筈。私達のいた時代でアグライアは千年生きた半神でしたが……時間のズレでもあるのですか?』
『前の輪廻における第一次火追いの時には、アグライアは既に半神だったよ。純粋に、この輪廻では起きた出来事が違ってるんだよ』
『カスライナが来るのも凡そこら辺の時代だった筈……となれば、原因は他ですか』
『ま、それは追々ね』
どうせ話を聞いてるだけでアナクサゴラスは気付くだろう。
黄金裔達との会話も終わり、ほんの少しの空き時間が出来たようだ。新しい輪廻に来ても星ちゃんに寄生したままだったが、ちゃんと約束は果たさないとだろう。
「うーん、やっぱり暗黒の潮が少ないね……まぁでも、このくらいなら何とかなるか」
湖のほとりに沈んでいたカイザーへの反逆者、その死体を侵食して自らのリソースに加えていた。しかし突然人間が生えてきても驚かれるだろうから、小さめに出力するか。
「どう? 中々可愛いんじゃない?」
「うわ、ちっさい長夜月だ」
デフォルメされた長夜月をイメージして作ったが、うん、いい感じだろう。ついでに空いた妖精枠を奪う様に空に浮いておく。
「私こそがオンパロスで最も優れたガイドだよ……なんてね」
「妖精の枠を奪われちゃったわね……でも、開拓者の一番の相棒枠は譲らないわよ」
「それはファイノンと喧嘩になるんじゃないの? はい、これが私の本体だよ。ちゃんと回収させて貰うね」
星ちゃんの服の内側をまさぐって仕込んだ本体を回収する。♭の形をしたピンにしといたのだが、今まで気付かれなくて良かった。ついでにオンパロスに星ちゃんが集めるようなゴミも無くて良かった。ポケットにゴミとか入れられたら強烈な悪臭に常に悩まされる羽目になっていたかもしれない。
「飛んでたら目立つから、妖精ちゃんの肩にでも隠れさせてもらおうかな」
拒否される前にキュレネの肩に座り込む。この服装えっち過ぎない? 大丈夫? 防御力無さすぎるけど。まぁでも存護の運命歩くやつ大体胸見せてるし問題ないか……いやそれアベンチュリンだけか。
「そこに居ても目立つんじゃ無いかしら?」
「問題ないよ。隠れるのは得意だからね」
一旦視界から外れてしまえば後は欺瞞の権能でどうとでもなる。そして一度それを見せてしまえば、二人は私については諦めたのか今まで聞いた情報の整理をし始めた。
さて、いい加減目を逸らし続けた情報を焼き付けるとするか。
『……ははは。いやまさか、ここまでやってくれるとは』
他の誰も不思議に思っていない。輪廻を越えてきた星ちゃんやキュレネですらも気付いていないようだ。だが、私と視界を共有するアナクサゴラスならば分かるだろう。
『見てよアナクサゴラス先生、貴方の教え子が成した偉業を』
オンパロスは永夜に包まれている。暗黒の潮が世界を襲い、その姿は輝かしかった黄金期の終末と表現するのに相応しいものだった。唯一黎明のミハニだけが近辺を照らし、その恩恵にあずかってオクヘイマは平和を築き上げた。それがオンパロスの正しい姿、在り方だ。
しかし今回の輪廻においては、鉄墓に統合されたファイノンが尚も抗い続ける事によって暗黒の潮は抑制され、今までの永劫回帰と比べて遥かに黄金裔達に有利な状況となっている。それが今回の輪廻の、本来のあるべき姿。
しかしどうだろうか、空を見上げてみれば闇夜を照らす烈日が、確かにそこにある。
『……あそこにファイノンがいると言うのですか?』
『いや、居ないだろうね。でもあれは、紛れもなくファイノンの神跡だよ』
体感として良く分かる。暗黒の潮を許さないと照らし続ける輝きが我が身を蝕んでくる。壊滅にまつわる全てを焼く光だ、あれは。
このオンパロスにおいて、救世主は新たな太陽となったのだ。全てを照らし、オンパロスを害する全てを焼く恒星。惜しむらくは、鉄墓とライコスによってあの輝きが誰にも見れないようにされている事か。
『人は星を見て願いを告げて、星はそれを聞き届けて夢を叶える……でも、見れないなら願いも何も無い』
『何故私達にだけ見れるのです?』
『それは簡単な話だよ。私にはチンケな誤魔化しなんて効かないだけ……欺瞞の権能でもあれば騙されるけど、ただ鍍金で取り繕ってるだけだからね』
侵食の権能とは、データ世界においては神の如き力だ。全てが思うままに出来るし、アクセス出来ないデータは無く、ハッキングもクラッキングもお手の物。私が本気を出せば、オンパロスに開拓者達が訪れる前に天才達に救援信号を出して彼女達を招き入れ、自由に振る舞えるだけの権限すら与えられる。勿論能力が強いだけなので、神のように振る舞えるのはかなりの時間制限があるが。
そんな侵食の権能の持ち主を前に、見栄えだけを元通りにした誤魔化しは通用しない。最終協定で決められたルールは絶対だが、それ以外は基本効かない。
『ほんと、凄いねファイノンは。お陰でこの輪廻における私の力はゴミカスだよ』
まぁ、元から本体性能はカスだけどね。侵食の力は見せびらかす訳にはいかないしね。そうなるとやはり暗黒の潮頼りになるのだが、まぁ黄金裔を騙ってた時くらいまでなら何とかなるか……?
『ふん、暗黒の潮とは別の力を持っていながら何を言っているのですか』
『あれ、まぁ気付くか』
私を縛るアグライアの金糸、長夜月ロールプレイ必須アイテムの黒い傘、それらを天火聖裁へと変化させたのは、明らかに暗黒の潮の力では無かった筈だ。
他者からすれば分からなくとも、力を使う私をすぐ傍で見てきたアナクサゴラスになら分かるだろう。
『ええ、そして気付いた事がもう一つ……長夜月、方舟計画とは一体なんですか?』
『……』
『ふ、沈黙は金ですか。その反応だけで十分です――どうやら貴女の隠された目的、その内の一つのようですね』
『はぁ、暗黒の潮が弱くなったせいで、まさかプロテクトも弱くなってるとは……方舟計画、知りたい? 知ったらもう後戻り出来ないけど』
『そもそも貴女は、その計画に私を利用するつもりだったのでは無いのですか?』
『……正確には、勝手に使おうとしてたね』
アナクサゴラスを保護した目的とは、サーシスのした事を確実に知っていて欲しかったからだ。彼がライコスの脳に入り込む事によってライコスの動きは制限され、天才達や救世主達の活動に幅が生まれる。
恐らくキュレネが語り聞かせるであろう物語だけで、果たしてそこまで出来るかどうか……結果として出来るのだろうが、どうせならそれ以上の成果が欲しくなるだろう。
故に、様々な知識を蓄えた状態でライコスの知能に入り込み、そこから先生がどれだけ暴れるのか……或いは、そこで得た知識によっては何かを変えられるのではないかと、言わば未来に希望を託す為の布石だった。
だが、それとは別に目的があるのも事実だ。
『さて、もう一度聞くよアナクサゴラス先生。方舟計画について、本当に聞きたい? 聞いたらもう後戻りは出来ないよ』
『勝手に使われるのなら、私にも知る権利はあるでしょう』
『……はぁ、本当は未来に関わる事を教えたくは無いんだけどね。でも、黄金裔達は例えどのような未来であっても、自らに出来る最善を常に全力で尽くす――そうでしょう?』
では話そうか。どうせ同盟会議などわざわざ聞くに値しないつまらない内容で時間は有り余っているのだから。
今回最後に出てきた方舟計画は、3rdの方で出てきたのとは別物です。
偽夜月が自分で考えた計画です。内容が明かされるのはもっと先だけど。