長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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感想、誤字報告嬉しいぞい!

今回話動かないです……どうして?

キャラと関わらせると会話が進む進む……会話で文字数が1話分になっちゃう。


ゲームだと殆どDieジェストだったよね

「ここは……」

 

 聖都オクヘイマの、前回の輪廻では星ちゃん達開拓組が使っていたプライベートルトロ。その一室で、キュレネは意識を取り戻したようだ。

 長夜タクシーに運んでもらったようだが、ライコスと敵対したあの瞬間からの記憶が無いらしい。

 

 長夜月の使う「忘却」の力は、言わば記憶ミームで構成されているオンパロスの生物全てにとっての天敵だ。にも拘わらず、星ちゃんとの繋がりのみでその存在証明を成しているキュレネは、その力で守られた。下手をすれば容易に消してしまうだろうに、流石は長夜月と言うべきか力の扱いが上手だ。

 

「気が付いた? ピンクの妖精さん。今の状況を教えてあげようか?」

 

「あら、長夜月。是非ともお願いするわ」

 

「簡単に説明すれば、星ちゃんはライコスのテリトリーに誘拐されて、天外の天才二人と黄金裔が手を組んでライコスと敵対した」

 

「そう。カイザーはあたし達の方を選んでくれたのね」

 

「選んだとは少し違うかな。ただ、天才達がカイザーにとって魅力的な提案を出来るのなら、彼女達に協力をしてくれるだろうけど」

 

 現状、開拓組と天才達の目的は再創世にある。法のタレンタムの力を用いて最終協定を書き換え、再創世を成した時に鉄墓の完成進捗を後退させようと言う狙いだ。星ちゃんが正しく把握しているかは不明だが、鉄墓の誕生を少しでも遅らせる為の処置だ。現時点では現実時間において14システム時間後(1システム時間は90分なので、分かりやすい単位で言うと21時間後。ちなみに琥珀紀とかいう単位はブレがありすぎて分かりやすく言えない)には鉄墓の誕生、延いてはヌースの計算した第四の刻が訪れる。

 対鉄墓の状況を整えるには、あまりにも短い時間しかない。だからこそ、再創世のシステムに介入しての時間稼ぎを狙っているのだ。

 

 逆にカイザーの目的は天外への進出にある。タイタンと神託と神跡、それらと密接に関わりあってきたオンパロス住人にとって神託は無視出来ず、避けられない未来ですらある。オロニクス――やタイタンを裏から操る長夜月――の神託によって群星へと進めると、その情報をもたらされたカイザーの望みは既に天外にある。ライコスの案に乗れば群星に向かえそうではあるが、隠されていた自我を失うという情報で切り捨て、一方で天才達の提案とは望みも希望も捨て石にするものだ。故に現時点で切り捨てたライコスに敵対し、その敵対者である天才達にある程度有利になるように融通はするものの、完全な味方という訳では無い。

 まぁそれも当然だろう。お前ら俺の望みの為に働いて死ね、それか自我を失った戦争兵器になれと、そんな二択を迫られているのだ。クソとゴミでしかない。

 

 そしてライコスの目的は分かりやすい。法を口先で操って自分優位に進めようとしたが断られてしまったので、実力行使で再創世を促す事にした。とは言えカスライナの不足によって「世負い」のルートに論理的脆弱性が発現しており、今のままでは再創世が不可能だ。だからこそ黄金裔達に圧をかけて半神となることを促しつつ、開拓者を時間の彼方へ幽閉した。狙いとしては、唯一「世負い」を担える存在一人だけにしてしまい、再創世をしない限り何も無い世界で一人過ごす事にさせ心を折る、と言ったところだろうか。

 

 鉄墓の誕生の遅延を目論む天才、鉄墓の完成を目指すライコス、情報を隠して利用しようとしたライコスに敵対したカイザー。この三勢力となっている。

 

「開拓者は戻って来れるのかしら……」

 

「誘拐された神話の外側って呼ばれる場所は、オンパロスと時間の流れが違うからね。いくら急いで出る事が出来たとしても、戻って来れるのがいつになるかは分からないね」

 

 開拓者がオンパロスへと戻って来れるのは千年後。メモキーパー共の邪魔が無ければもう少し早かったのだろうが、それでもヒアシンシアの没年に間に合うかどうかだろう。

 まぁそれで何が変わるでもないし、ケリュドラが法の試練を突破した瞬間にライコスは今回の再創世で鉄墓を完成させる事は不可能になる。こうして見るとライコス君この輪廻捨て回だろ、何も出来んじゃん可哀想。

 

「そう……」

 

 うわぁ、明らかに落ち込んじゃった。まぁ無理もないだろう。ミュリオンとして生まれ落ちた彼女はほぼ全ての時を星ちゃんと一緒に過ごしてきた。輪廻を越える際にミュリオンが消えキュレネと統合されたが、それでも記憶と絆は消えはしない。そんな自らの半身とも呼べる存在が消え、救世主無しで再創世まで向かわなければならない状況だ。むしろ、この状況からどうやって記憶を繋いでいく事を決意したのか不思議に思うくらいだ。

 まぁ、黄金裔達は誰も彼も覚悟が決まり過ぎている節があるから、キュレネも彼等英雄達と同じように進んだだけなのだろうが。

 

「カイザーの指針としては、現状何をするにも変えるにも法の半神になる必要がある。だからその為にファジェイナ討伐は避けられない……前回の輪廻と同じように、第一次火追いの旅が始まるね」

 

 これが下手な英雄とかであれば、その覚悟を決めさせる為にある程度言葉をかける必要もあったかもしれないが、ことカイザーに限ってはその必要は無い。彼女の頭の中では既にどう結末まで持っていくか決まっている筈だ。

 そして未来が無い以上、臣下五百名の命も試練に捧げられるし、最終協定書き換えの為の対価も払えるだろう。

 

「前回の輪廻ではカイザーとセイレンス、どちらも行方不明になったのよね?」

 

「そうだね、そういう事になってるよ」

 

「つまり、実際は違っていたの?」

 

「カイザーは試練を突破出来ず狂気に陥り、忠臣であるヘレクトラに殺された。そしてそのヘレクトラは、自らの光であるカイザーの命を自分の手で奪ったことで希望を失い、狂乱の中で自死した」

 

 と、ライコスにはそう見せている。彼女達が命を失った事に違いは無いが、その結末だけは少しだけ変えさせてもらった。しかし、そんな事は現状秘密を知ったアナクサゴラスと本人達しか知らない。そして知る必要も無い。

 

「どうしてその事を知っているのかは今は聞かないわ。でも、どうしてカイザーは試練を突破出来なかったのかしら?」

 

「……自分の手でオンパロスを終わらせるなんて、そんな事出来るわけ無いからね」

 

 ケリュドラの盤面を見通す力はオンパロス一であり、あのライコスにすら「卓越した見識」「貴重な資質」とまで言わせる程だ。自らすら駒として、暗黒の潮やタイタンとの対局を行っていた。あの時代、その先を考えれば、貴重な手駒を大量に失ってまで「法」の半神になったところで、リターンが釣り合わなかった。そして試練の途中でセイレンスに殺される事によって、神権の引き継ぎに不具合が発生、結果「法」の半神は誕生しなかったがシステム的には継承が済んだと認識されタレンタムの神跡が無くなるような事は無かった。

 

 法が消えた後に残るのは無法だけ。どのタイタンが司る神権も、消えれば即座に崩壊を招きかねない厄介なものだ。だからこその板挟みにケリュドラの正気は削られた。

 

「それだけ法の試練は悪辣という事かしら?」

 

「まぁ、今回の輪廻に限って言えばカイザーは問題なく乗り越えられるよ」

 

 何せ、ライコスは黄金裔と半神達をすり潰すと宣言しているのだ。であれば、最終協定に干渉して天才達に権限を与え、ライコスの権限を凍結させるしかない。

 

 縛られた選択、望む事しか出来ない群星。しかし例え喪失しかない道だとしても、英傑達はみなその喪失を受け入れて進み続ける狂人だ。

 キュレネは言う。英雄とはその時その場に居合わせた人間がなるものだと……確かにその言葉には一理あるだろう。しかし本当にそうでしょうか?

 黄金裔達は言う。黄金裔とは何処か欠陥を抱えた人間達だと……確かにそうだろう。何せ彼等はみな断崖の果てを、何の躊躇いもなく飛翔出来る狂人達なのだから。言ってしまえばストッパーが付いていない。

 私が思うに英雄とは、その時その場に居合わせたイカれた狂人の事を言うのだと思う。この道を進めば確実に死にますと言われ、只人は足踏みするか引き返すかするが、英雄となる人物は迷いなく、或いは迷った果てに走破する。

 

 救世主なら何とかしてくれる。狂った未来を変えてくれる。そうオロニクスが言っている。だからこそ、今回の輪廻の黄金裔達は揃って崖から飛び降りれるのだ。

 ライコスはそれを哀れに思い、キュレネはみんなの生きた輝きだと記憶に残す。そして救世主は彼等の犠牲を胸に最後の再創世へと挑むのだ。

 

 では、私に出来る事は?

 

『一つ言っておきましょうか。貴女には貴女の目的がある……ならば、不必要なリスクは背負うべきでは無いです』

 

『ふふ、それはつまり……リスクさえ無ければ良いって事だよね?』

 

『貴女は……いえ、貴女もそうでしたね。ならば私から言う事は何もありません』

 

 現状を理解し、恐らく自分がやるべき事を定めたキュレネは立ち上がった。

 

「なら私達はみんなと一緒に戦って、いつか帰ってくる開拓者にその記憶を残してあげましょう。そうすれば彼等の戦いは、私達だけの記憶じゃ無くなる……そうでしょ?」

 

「火を追う旅は喪失の道。その道中では、命さえ些事となる。彼等が命を懸けて戦った記憶を残そうって言うんだね」

 

「ええ、そうよ……手伝ってくれるわよね? 黄金裔の偽物さん?」

 

「勿論。もう騙す必要は無いしね」

 

 わざわざ自らを壊滅の存在だと、暗黒の潮の化身であると見せつける必要性は無くなった。ここからはむしろ、私は三月なのかで黄金裔達の仲間であると思わせる方がアドを取れる。

 

「なら、前の質問に答えてくれないかしら? 降臨者って、一体どういうものなの?」

 

『そう言えば、それについて詳しく聞いていませんでしたね』

 

 別に教える必要は無いし、星穹列車ですら知らない宇宙の果ての小さな世界で使われる言葉だ。

 でも、アナクサゴラス先生はその意味を知っていれば計算に入れてくれるだろう……可能性を高める為にも、必要な情報か。

 

「その情報についてはオフレコでお願いね。記憶の残響にも紡がれた物語にも残さないで。それを了承してくれるのなら話すよ」

 

 星ちゃんを始めとした列車組、そして観測次元に居るであろうこの世界のプレイヤー達。彼等にわざわざこの無駄な情報を与える必要は無い。知ったところで混乱させるだけだし、だからなんだ? となるだろう。

 

「ええ、分かったわ」

 

 首肯するキュレネを見て、さて何処から説明すべきかと思いながら口を開く。

 

「降臨者とは、星海の中でも果ての渦状腕の端にある、オンパロスに似たような世界で使われる言葉なの。そこは滅びの潮――アビスって呼ばれてるソレに侵略被害を受けているんだけど、オンパロスのように閉鎖されてる訳じゃなくて、力あるものなら出入り出来る世界なんだ。そこに外からやって来る存在が稀にいるんだけど……全ての外来する存在を降臨と呼ぶ訳ではなく、世界に匹敵する意志を持つ存在を「降臨者」って呼ぶの。降臨者には「世界を守り」「世界を維持し」「世界を滅ぼし」「世界を創る」の四つのコードがあって、それぞれ割り振られるの」

 

「なら、長夜月は世界を滅ぼす降臨者って事かしら?」

 

 普通に考えたらそうなるだろう。何せ壊滅の運命に属する存在で、更にはオンパロスを滅ぼそうとする暗黒の潮の化身なのだから。ましてや私が降臨者に認定されたのは前回の輪廻の最後、カスライナと戦った時だ。あれだけの戦いを、何もかも壊滅させる勢いで挑んだのだから尚更だ。だが、そうでは無かった。

 漠然と、自分はどういう降臨者なのかは理解してしまった。

 

「残念、外れだよ。私は世界を維持する降臨者だよ」

 

 まぁそうだと言われたら自分では納得出来るが、他者から見た場合意味が分からないだろう。

 

『世界の維持ですか……ああ、だから降臨者になった事で方舟計画が現実味を帯びたのですか』

 

 ただの人間と降臨者とでは、その存在の価値が違う。もっとも、私の場合人間ですら無いのだが、一応はデータ世界におけるデータ生命体だ。このセプターの外へ肉を持って出る事は叶わなくとも、自分という存在の利用価値は一気に跳ね上がった。

 

「でも分からないわ。何故天外から降臨した貴女に「世界の維持」が任されていて、それなのに壊滅の存在として活動していたのか……そこは教えてくれるのよね?」

 

 その言葉に私はゆっくりと微笑んだ。

 

「勿論、教えてあげないよ」

 

「随分と酷いのね。お互いに手を取り合って行きましょうと言う時に隠し事をするなんて……私の事は警戒してくださいって言っているようなものじゃない?」

 

「ふふ、ピンクの妖精ちゃんは面白い事を言うね。協力をすると言っても私の力は微々たるもの……私に出来る事と言えば、邪魔をしないと言う保証だけだよ――ああ、望むのなら暗黒の潮の権能で百界門の真似事ならしてあげるよ」

 

 前回の輪廻の終盤、世界の殆どは暗黒の潮に飲み込まれていた。その支配下は全てが私の領域も同然で、その領域内なら移動も自由自在だった。

 けれど、今回の輪廻での暗黒の潮はカスライナによって抑制されている。その脅威は遠く、影響は微々たるものだ。

 なのでその力で移動をする事は現時点では不可能だ。しかし、前回の輪廻でトリアンの最期を看取る時にその「門と道」の権能をコピーさせて貰っている。本来であればその力を得るのに自らを千の断片に分裂させ、そこから更に自らを捧げる必要がある犠牲と献身の力。だが、私がコピーするそれは火種の無い劣化版、暗黒の潮の化身としての権能と合わせればアッシーくらいにはなれるだろう。

 

「本当に、どうしてそれだけの事が出来るのに黄金裔達を助けようとしてくれないのかしら」

 

「助けようとしてるでしょ? 今回は」

 

 本気で挑んだ所で、救えない事に変わりはないけれど。

 カイザーは法の改竄の為に命を捧げ、アグライアとモーディスはライコスを退ける為に命を失い、トリスビアスは道を作る為に自らの存在を使い、キャストリスは創世の渦心への道と救世主の魂を守る為に冥界に渡り、アナクサゴラスとサフェルはライコスを封じる為の策を講じ、ヒアシンシアは天空と同化する。ヘレクトラは牢獄を作りキュレネはライコス討伐の為に戦う。

 

 いくら助けようとした所で、今回の輪廻での対決は黄金裔対ライコスという構図だ。しかもお互いに最終協定の影響で命を奪う事が出来ない。黄金裔達はライコスを殺さねば再創世を迫られる事は変えられないが、ライコスはあらゆる手段を用いて黄金裔達を追い込める。

 私は最終協定に引っかからない存在ゆえに、黄金裔達と協力すれば私がライコスを討伐する事は可能かもしれないが、やれないしやりたくもない。

 まず純粋にライコスと私の現時点での実力差と、オンパロス内部での彼の躯体を破壊した所で神話の外側にも居る彼を完全に排除は不可能だ。

 そして再創世は鉄墓討伐の為にも、本物の長夜月の目的のとしても必須だ。故にライコスを排除して再創世の必要性を無に帰す事はしたくないし、ヌースにその刻が決定されている以上避けられないだろう。

 

 それらの事情をふまえて、私に黄金裔達を救う事は不可能だ。しかし彼等の死が避けられないのだとしても、救いとは生存だけを示すものではない。そしてその覚悟は既に決めてある。

 

「はい、持っていて」

 

 キュレネへと、開拓者から回収していた私の本体を手渡す。フラットという本物の長夜月を意識した、少しだけお洒落かもしれないヘアピン。形を成していても、その本質は私という存在のデータそのものであり、暗黒の潮で強固なプロテクトを築き、不具合と認識すらされないバグそのもの。

 

「これはあなたの……どうしてあたしに?」

 

「生殺与奪の権利を与える事こそが、私が今回の輪廻において味方である事の証明だと思わない?」

 

 勿論嘘だが。自分の手元に置いておかない事によって、前回の輪廻と同じく擬似的な不死不滅とするだけだ。そしてキュレネの死はそのままオンパロスの救いの消滅に繋がり、その未来は訪れない。故に一番安全な場所と言えるだろう。

 

 オンパロスにおける全ての出来事は、決められた結末から逆算して作られている。何せその為に一人の少女は全てを賭して過去に縛られているのだから。

 

 ある意味では、もっとも信頼出来る相手と言えるだろう。

 

「本当に不思議ね。貴女からはあたしへの信頼を感じるわ……関わった事なんて殆ど無かったのに」

 

「ふふ、信頼なんて相手を理解していて目的が一致していれば、いくらでも出来るんだよ」

 

 私の本体であるヘアピンを握り締め、キュレネは決意を固めたような表情で頷いた。

 

「じゃあその期待に応えましょう。まずは二人の天才と、今後について話し合わなくちゃね」




アナイクス殆ど喋って無いのに!?

少女キュレネまじで好きだから実装お願いします。
末日後半、久しぶりに幻朧来たけど酷いパーティーでクリアしちゃったな。やっぱイカルンさんよ。イカルン鬼強ぇ!逆らう奴ら全員轢き殺してこうぜ!
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