長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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意外と評価付いてて驚きのあまりライコスワンパンしちゃった。

誤字修正ありがとうございます。あったけぇぜ……。


いるだけで被ダメ40%増加を相手に与える猫

 さて、何とかライコスの警戒を乗り切った私ではあるが、現状は特に変わらず何も分かっていないと言うのが本音だ。

 

 いつかも纏めたが、オンパロスとは言ってしまえばワールドシミュレーションであり、開拓者達が訪れるのは最高の黄金裔達による再創世中に起きている永劫回帰の内、その33550336回目の途中である。

 恐らく三月なのかが訪れたのも同じ輪廻の途中なのだろうが、その詳しい時系列については仄めかされる程度しかされておらず、正確な日時は把握出来ないのだ。

 三月なのかが孤独に彷徨ったのが97日とされているが、そこから長夜月に変わりどれだけの時を過ごしたのかは分からない。

 だからこそ、まずは人の生息する土地へと向かいどの程度の時期なのかを把握する必要があるのだが――

 

「忘れちゃならないのは、最終協定だよね」

 

 法のタレンタムが敷いているとされるオンパロスのルール、しかしそれはセプターにおける最終協定と呼ばれるルールでもあり、そのルールには管理者であるライコスすら逆らう事は出来ないのだ。

 

 明確にタレンタムの法は示されていないが、オンパロスという土地にはプレイヤー視点でもいくつかのルールがある事は散見される。

 

 例えばカイザーをチビとのたまった輩は極刑であったり、カイザーに敵対したものは斬首であったり、カイザーより身長の高いものがカイザーより低い位置に頭を下げれば死刑であったりと。思い出そうとしたらケリュドラの事しか出てこないな……。

 

 それとは別に、黎明のミハニもルールに当てはまるのだろう。あれに照らされた周囲のみ昼であり、その他の範囲は永夜に包まれていると言う設定であったが、あれには暗黒の潮を退けるという効力もあったはずだ。

 だからこそオクヘイマは人類最後の砦となっていて、それを維持していたセファリアの嘘が無くなった瞬間に滅びが訪れた。

 

 重要なのは、暗黒の潮がミハニの照らす範囲へは近付かない事だ。決して入り込めない、なんて事は無いけれど、あれが照らされている限り聖都は安泰であり平和で居られるという事だ。勿論聖都の護りはアグライアの金糸こそが主ではあるだろうが、暗黒の潮に呑み込まれたという事はついぞ無かったのだ。

 

 つまりそれが、タレンタムの敷いたルールであるとするならば、暗黒の潮の化身である私はミハニの照らす範囲ではあまり力を振るえないだろう。

 

「時系列を確認する上で分かりやすいのはヤヌサポリスだけど」

 

 そこに民がいるのなら列車組到達前、いないのならオクヘイマへニカドリーが攻め込むといった時系列になるが、暗黒の潮がどの程度の範囲を呑み込んだのかはあまり理解出来ていない。

 

 化身なのに不思議だね?

 

「ともあれ足で確認するしか無いね。その過程で色々見て回りつつ、私自身も黄金裔の一人として活動しようか」

 

 暗黒の潮の役割とは世界にかける圧そのものだ。再創世を黄金裔達に促す為の脅威であり、全てを呑み込んでしまっても何の意味も無いのだ。

 無論、ただのプログラムでしかない暗黒の潮が意図して浸食の進退を変更する事は無く、護りが消えれば呑み込むだけではあるのだが……あくまでも、鉄墓を完成させる為の舞台装置なのだ。

 

 ライコスの目を誤魔化しつつ本懐を遂げる為には、暗黒の潮の化身として振る舞う必要がある。つまりは再創世を促し成し遂げさせるように行動を起こさねばならない。

 

 ならば簡単、黄金裔として活動すれば良い。

 

 黄金裔として火追いをサポートしつつ、開拓の影響や予期せぬエラーで躊躇うような事があれば、暗黒の潮としてオンパロスを危機に陥れれば良い。

 

 私の本懐としても、33550336回目の輪廻で開拓者達にオンパロスと黄金裔達を知ってもらい、33550337回目の輪廻で世負いの責務を担って貰わなければならない。

 

 そうと決まればいざ行こうヤヌサポリス。下手にオロニクスに接触出来ない以上時系列の確認を終えたらエリュシオンでも探そうか。俺達は何度だってエリシアに会いに戻ってきてしまうからな!

 

 

 

 ♭

 

 

 

 えー、結論から言いましょうか。

 

 大体トリスビアスが千の断片に分裂したくらいの時系列でした。もう少ししたらセネオスがエーグルとタイマン張るんかなぁ。

 そこから始まるカイザー最強時代。お前もケリュドラ最高と言いなさい。元老院の胃と生命がお亡くなりになられる黄金期が始まるのだ。

 

 まぁそんな事はさておき、オクヘイマには近付かないようにしつつカイザーの半神になる試練に巻き込まれない様に、遠征を手伝ったり手伝わなかったりと活動していたのだが、一つ重大な事に気付いてしまったのだ。

 

 この時代、既に黎明のミハニはその光を失っているのだ。

 

 今でも変わらずにピカピカ光って辺りを昼にしている球体だが、あの明かりを保たせているのは詭術の権能、つまりは嘘なのだ。

 誰もが信じる嘘は本当になると言う、詐欺師が使えば無双出来る様なその権能で、オンパロスの住民全てを騙しているのが詭術の半神であるサフェルだ。

 

 分かるだろうか、この危うさが。

 

 「シーフ」バトルズという存在になり世界を騙しているザグレウスと、詭術の半神であるサフェル。その二人以外に真実を正しく認識している者がいる場合、半神の権能は効力を発揮出来ないのだ。

 

 つまり、異分子である私がいるだけで黎明のミハニは光を失ってしまうというワケ。マジでヤバい状態なのだ、いやホントに。

 

 なるべく認識せず、意識から外すようにはしているが、いつ嘘が暴かれてしまうかは分からない。であるならば、私という爆弾を無害化する必要が出てくるのだ。

 

 無理じゃんって? それはそう。本物が忘却の力で完全に記憶を消してくれていればまだ良かったのだろうが、あの時点では長夜月もオンパロスの事を詳しく分かってはいなかっただろう。

 

 もしかしたら自分がいくら真相を知っていたとしても何の影響も与えないかもしれないが、不確定要素は早急に潰すべきである。

 

 そして、なんと私には自らを無害化する方法が存在する。実に簡単な解決策と言えるだろう。

 騙される側に居られないのなら、騙す側に居れば良い。

 

 

 

「あれ〜、どうしてこんな所にいるのかな? 臆病者の黄金裔がさ」

 

 中々際どいような衣装を着た、猫の耳と尻尾を持つ少女が、少しばかり棘を持った声色で問いかける。ドロスの英雄、詭術の半神、或いは百万回死んだ猫。彼女を指し示す異名は何個かあるが、その掴み所の無いような口調や態度で勘違いされがちだが、黄金裔の使命の為に孤独に戦い続ける英傑である。

 そんな彼女――サフェルの視線の先にいるのは、青みがかった銀髪に赤い瞳、不思議と言うよりも不気味な雰囲気を持つ黄金裔、長夜月だった。

 

 長夜月は、雨も降っていないのに差している傘から赤い瞳を向けて、クスリと笑う。

 

「こんばんわ、猫ちゃん。こんな所で会うだなんて奇遇だね? こんな廃墟にはもう漁るような宝も無いと思うけど」

 

 雪の舞い散る都市エイジリア。死のタイタンであるタナトスを崇め、タナトスの影に覆われる事こそが幸福であると考える元宗教国家。しかしながらその有様は無惨なもので、今ではただの残骸が寄り集うだけの廃墟とも呼べるもの。

 既に暗黒の潮に呑まれ、本来ならば来る事すら叶わないだろう都市へとサフェルが来た理由は単純で、まだ漁る事が出来る内に宝を漁る為。もうじき完全に暗黒の潮に呑まれて残骸すら残らなくなる事を考えればむしろ来るのが遅過ぎたくらいだ。

 

 もっともこの地に宝があるとするならば、それは黄金裔の一人であるキャストリスくらいのものだろうが。

 或いは彼女が抱きしめ続けた住民達の、その思い出こそが宝物と評すべきものかもしれないが。

 

 ともあれ、何か価値のある物があるだろうかだなんて期待はほぼ抱かずに、一応探しに来ただけであったのが……まさかここで長夜月と会うとは、流石の半神も考えてはいなかった。

 

「まぁ期待はしてないよ? でも、実際に目で確かめてみないとお宝の有無は分からないでしょ? それで、あんたこそどうしてこんな所にいるのかな?」

 

 臆病者と呼びはしたが、実際目の前の黄金裔については正確に測れていなかった。モネータの討伐時、押し寄せる暗黒の潮との戦い。人々を未来に導く黄金裔として確かに彼女は戦ってきた同志であり、彼女もまた火を追う英傑であると言えるだろう。しかし、決してオクヘイマには近付かず、カイザー・ケリュドラと轡を並べる事も無かった。

 タレンタム、ファジェイナ、ジョーリア。黄金裔であるならば、この三柱の討伐の為に尽力すべきなのに。

 サフェル自身オクヘイマから離れなければならない理由があった為知らない事だが、長夜月はカイザーの軍に加わる事は無かったものの要所要所の戦いには加わっていた。しかし、それを知らないサフェルには人の噂でしか事実を知る術は無く、結果として長夜月の認識は聖都に近寄らずフラフラとしているよく分からない存在へとなっていた。

 

 とは言えまさか、暗黒の潮の影響下である都市にいるとは流石に思わなかったが。

 

「黄金裔の使命はタイタンを討ち取り火種を返還するだけじゃない。迫り来る暗黒の潮の脅威に立ち向かう事も重要……でも、現状どの程度侵食されているのかを把握していなければ、どこが危険なのかを判断出来ないでしょう?」

 

「だから見て回ってるって? ここはもう呑まれかけてるんだから、気にするべきは波打ち際なんじゃない?」

 

 既に命の痕跡すら無いけれど、それでも暗黒の潮の造物はいない訳では無い。普通に考えれば、半神でも無い黄金裔が一人で歩き回るには十二分に危険地帯だ。

 仮にクレムノスの王子様であったとしても、長期間滞在するのは看過できないだろう。

 

 勿論、現在進行形で暗黒の潮に襲われている地域の方が危険度で言えば高いけれど。

 

 ともあれ、武闘派に分類されないであろう彼女が一人で危険地帯を彷徨いていると言うのは、疑うつもりはなくとも怪しいのだ。

 

「そう怖い顔で睨まないでよ、猫ちゃん。貴方がそうしてオクヘイマ以外をフラフラしているように、私も都市の外で活動をしているだけでしょう? 別に私がやる事が周辺国家の状況把握だけな訳も無いのだし」

 

「じゃあ一体何をしてんのさ。あんたオクヘイマどころかヤヌサポリスにも近付いてないでしょ」

 

「まぁ別に隠す事でも無いし共有しようか。12のタイタンの内、既に火種が返還されたのは6柱。ヤーヌス、モネータ、ザグレウス、タレンタム、ファジェイナ、ジョーリア。丁度半分だね」

 

 正確に言えば、火種を返還してはいるもののザグレウスは生き残っている。けれどそれは、半神であるサフェルとザグレウス自身しか知らない事。アグライアとは別種の、何もかもを見透かしていそうな目をした長夜月とは言えど、流石にその事は知らないだろう……もしくは、知っていて敢えて騙されているのか。

 そんな嫌な予感が一瞬過ぎるがすぐに否定する。嘘が嘘であると知られていれば、その瞬間にザグレウスの権能は効力を失うのだから。

 

「そして、サーシスは樹庭に、ニカドリーはクレムノスに、エーグルは空に、オロニクスはヤヌサポリスに、ケファレは元老院……でも、タナトスだけは位置が分かってない」

 

 死を司るタイタンであるタナトスは、確かに行方が分かっていない。ステュクスが流れ、エイジリアで崇められ、キャストリスと言うタナトスの祝福のような能力を持つ存在がいるにも拘わらず、誰も分かっていないのだ。

 

「つまり、その手掛かりを探してたって?」

 

「残念ながら成果は無いけどね。ニカドリーにでも聞いた方が早いかもしれないね」

 

「なるほどね。まぁ頑張って、あたしも程々に探したら離れるからさ」

 

 

 

 上手く騙せたようだ。詭術の半神を相手によく騙せたもんだと自分を褒めてあげたい。

 勿論こんな所に居た理由に関しては真っ赤な嘘である。何故ならサフェルがここに来そうだったから先回りしただけなのだから。私の目的はサフェルと接触する事、その一点のみだった。

 

 侵食の権能。それが暗黒の潮の化身である私が持つ能力だ。記憶の力も忘却の力も無い偽物の私だが、この力のお陰で今があると言っても過言では無い。

 元は壊滅の力や暗黒の潮が持つ、他生物や造物を別のものに作り替えてしまう能力であり、あくまでそれを分かりやすく、自分なりに使えるようにしたのが「侵食」だ。

 この力は現実世界ではヴォイドレンジャーを作る程度にしか効力を発揮しないだろうが、ことデータ世界では話が変わってくる。

 自身も世界も全てがプログラムによって成り立っているこの世界において、侵食とはハッキングのようなものに近い。これでとある世界の律者と呼ばれる存在並に力を持っていた場合、ライコスやセプターと主導権の奪い合いまで出来る可能性がある。

 ただ力を持っているだけの私であったとしても、ある程度干渉し書き換える事を可能としているのだ。

 

 私はサフェルに近付き、侵食の力で彼女の内部データへと干渉。ザグレウスの神権に当たる部分を参照し自らのデータに書き加える。器の問題や、源となる火種が無い事から半神程の力を得る事は叶わないが、劣化コピー程度の力までなら行使する事が可能になった。

 

 これで、侵食でオンパロス自体を欺いて騙し騙しやる必要も無くなり、この嘘には私も噛んでいると誤認させるだけで済むようになった。

 

 でもそれサフェルとザグレウスが知らないから嘘だって分かるじゃん? そんな事も分からないのかよばーか。だって? 残念ながら、通るんだなこれが。

 

 無知なのだから、真実も嘘もありはしない。

 

 私が書き換えた真実のみがそこにあり、その事をそもそもその二人は知らないだけなのだ。

 

 無知の知でもされない限りバレないだろう。独力で辿り着けそうなアナクサゴラスはサフェルと接触する機会がほぼ無さそうだし、金糸で嘘を見抜けるアグライアとはそもそも会うつもりも無し。

 

 つまりこれで黎明のミハニ問題は解決という事だ! わっはっは。

 

「……結局、エリュシオンは見付けられなかった」

 

 一体何処にあったのだろうか、ファイノンとキュレネの故郷は。暗黒の潮に襲われ、カスライナが手ずからキュレネの命を奪いに行っている事から、地続きで存在しては居るはずなのだが……。

 

「進みなさい、って事なのかな」

 

 まぁ気ままな旅も手伝いもエリュシオン探しもそろそろおしまいだろう。いい加減に暗黒の潮としての仕事をしなければ。

 

「尊敬するよ、ゴーナウス。狂気に陥りかけながらも抵抗を続けてるんだから。でも、それももうおしまい」

 

 いい加減にニカドリーを狂気に染め上げなければならないだろう。後数百年もすれば、救世主がやってきて討つ事になる紛争のタイタンだが、一足先に沈めに行こうか。

 

「もうすぐ貴方にも夜が来る」




長夜月、キャストリス、ヒアンシー。この3人で全ての高難易度を破壊します。

でも高難易度やる時大体キャストリスは完全な力を発揮出来ないのだ……ヒアンシーか長夜月が別パに行っちゃうからね。
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