長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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感想、誤字報告いつもありがとうございます。

今回は箸休め回みたいなところある。次から鉄墓討伐まで全力ダッシュみたいになるからね。

話書くにあたって何回かストーリー見返してるんだけど、3.7今までで一番難解なところある。鉄墓決戦の時他のナナシビト何処で何してんの……?


黄泉路を下る吟遊詩人

 再創世の果たされた世界へと、私は足を踏み入れる。そこは完全に暗黒の潮が存在しない世界であり、言ってしまえば私は許されざるイレギュラーだ。

 

 世を背負う者となった開拓者は「世負い」の神権を継ぐ為の、長い長い試練を行っている最中であり、前の世界で半神となっていた彼等はタイタンとして、この世界を守護する存在として君臨している。しかしその中身は別で、彼等は鉄墓を抑える為の封印となったファイノンの元へ集い、そこから溢れようとする暗黒の潮と戦っていた。

 

 新世界に私の居場所は無い。カーネル層はファイノンの怒りに満ちていて、私はすぐにでも焼かれてしまうだろう。

 

 とは言っても、出力されていた私の肉体は最後の輪廻で星ちゃんと丹恒の二人に破壊されていて、その後は単純なホログラムとして活動を行った。つまり現在も、世界を見ているのはただのホログラムでしか無く、私の本体は託したデミウルゴスの下に今もある。

 

 じゃあ、この新世界を眺めて一体何をしているのかと問われれば、それは単純明快だ。

 

 頭の中で五月蝿い三人組に、救世主の創り出した新世界を見せている。オンパロスで出会った人、書き残された物語、そして「世負い」の火種と一緒に託された記憶達。それらを元に再構成されたこの世界は、オンパロスが迎えるべき黎明の姿である。

 この世界の神話で言うところの黄金紀、繁栄と栄光の続く光に満ちた世界と言えるだろう。それが千年続くのだから、まぁギリギリ良い事だ。もし仮にそれ以上続くのであれば、豊穣や不朽の影響を受けた世界のような地獄が待っているけれど。

 

『そう言えば、その時私は居なかったので知りませんが……しっかり外部からの協力は得られたのですね?』

 

『勿論。溢れんばかりの私の魅力と巧みな弁舌をもってすれば余裕だよ』

 

『……殆ど情に訴えかけていたがな』

 

『違いない。メーレの飲み過ぎで酔っ払った者の話を聞いているような気分だった』

 

『……はぁ、まぁ良いでしょう。協力を得られたのであれば、後はあなた自身の大仕事が残っているだけです。私の役目はその後に』

 

『僕の目の前でつまらんミスなどするなよ?』

 

『気負わずにいけ、銀色の深海魚。元より私たちは極小確率に賭けた身だ』

 

 どうせ千年間暇なのだから、最期に見れるオンパロスを目に焼き付けておこう。

 

 

 

 ♭

 

 

 

「古の楽園? どうやら特定の人物にしか伝わらない言葉で濁してるみたいだけど、ちゃんと教えてくれる?」

 

 この場で一番強敵と言えるのは、勿論知恵の使令であり天才クラブの一員でもあるヘルタだ。下手な事を口走った瞬間に、オンパロスの未来などを察されてしまう可能性は高い。

 だからこそ、第三者を通して分かりやすく情報を共有して貰おう、と言うのが私の作戦だった。

 

「……本当に色々知っているらしいな。ヘルタだけじゃなく皆に分かりやすく伝えるならば、古の楽園とは記憶の保管庫、とでも言えば良いだろうか」

 

「記憶を集めて保管すると言う事? まるでメモキーパーみたいな事をするのね」

 

「ああ。俺の出身世界は崩壊と呼ばれる現象と戦っていて、前文明の人類は最終的に全滅したんだ。しかし、その前文明の人間達は崩壊を乗り越える為の計画をいくつか練っていて、同時に戦いの記憶も残したんだ。その戦いの記憶が保管されていたのが古の楽園……後から来る者の為に、残された施設だ」

 

「つまり、オンパロスで起きた戦いの記憶の全てを保管しようって事かしら? ちびっ子」

 

『ここに居るみんななら、オンパロスがどうなるかなんて分かりきってるでしょ? ヌースの算出した第四の時が迫ってる。つまり、もうすぐ鉄墓が完成するって事……鉄墓の誕生が避けられないのなら、セプターごと破壊するしかない。その為に貴方達は銀河連合を結成した……違う?』

 

「そういう事になるわね」

 

 勿論セプターの破壊だけなら、ヘルタが所有する兵器でワンパンなのだろう。ただ、オンパロスを救おうとする開拓者達を助ける為に、わざわざ回りくどい方法を取ってくれている。とは言えその末路はセプターの破滅なのだが。

 記憶やデータは残るかもしれないが、世界を存続させていた土壌そのものが消え去ることに変わりは無い。

 

『銀河から見れば、鉄墓は絶対に破壊しなければならない存在。だってそれが何かを成すだけで、多くの文明が壊滅してしまうから。まぁヌースが死んでどうなるかは知った事じゃないけど、そこに至るまでの被害が甚大だから、それを抑えなければいけない……分かるよ、たかが一つのセプターと、多くの銀河。天秤に載せるには、釣り合いが全く取れない』

 

「つまり君は、オンパロスが消える事は避けられないから、せめてその記憶を残そうと言うのか?」

 

『流石ヴェルトさん、理解が早いね。私達の居るオンパロスとは、あくまでセプターの演算の中にあるデータの世界……セプターに一定以上の被害が出た段階で、露と消えるだけの存在。誰だって自らの立つ大地が無くなってしまえば生きていけないのと同じ。開拓がどれだけ奇跡を成し遂げようとも、その未来だけは避けられない』

 

「それで、一体何故ワタシとブラックスワンさんの手を借りる事に繋がるのですか?」

 

『私は自らの全てを賭けて、オンパロスと言う世界の記憶を地脈として保存する。でもその出来た地脈を、何かに根付かせる必要がある……何処かの惑星の土地にでも根付かせられたのなら、そこにオンパロスは新生するだろうけど、そんな場所は無いでしょう? なら、ピノコニーのように憶質に根付かせるしかない。私自身はあくまでデータの存在でしかなく、外に出る事は叶わない。だから外にいる、記憶や調和の専門家に手を借りなければ、そもそも実現不可能なの』

 

 サンデーはその立場から憶質について詳しく「調和」と「秩序」の力を持っている。

 そしてブラックスワンはメモキーパーとして、多くの記憶を集める事をしていた。例え記憶の行人でしかなくとも、長夜月から借りた「記憶」の力を操作する事は可能だろう。

 

『一つの世界と言えど、データで構成された世界なら、必要となる憶質もそんなに多くない筈……十分に可能性のある話だと思うけど』

 

 そうして出来上がった憶泡が、私の掲げた方舟となる。

 

「待って、長夜月。あんたは自らの全てを賭けてと言ったけど、それは一体どういう意味かしら?」

 

『文字通り、全部だよ。自らの存在を材料として、世界を維持する為の地脈を創り出す。それは「世界の維持」のコードを持つ私にしか不可能な事』

 

 本当に、降臨者として認定されなければ不可能に近い計画だった。だが降臨者になった事で、たかが自分の全てを使うだけで世界の維持が行えるのだ。

 

『魂も、意志も、構成する全データも、十二番目の律者と同じ力も。全部を捧げる事で、記憶の再現でしかないとしてもオンパロスの存続を、例えどんな形であっても出来るの。なら、やらない理由は無いでしょ?』

 

 そんな私の決意は、ヘルタに鼻で笑われた。

 

「馬鹿馬鹿しい。そんなもの、ただの自滅願望じゃない。壊滅から生まれた存在の行き着く先は壊滅だと、自ら証明するような事……そんな説得で、力を借りられると本当に思ってるの?」

 

『なら聞くけど、ミス・ヘルタ。貴女はオンパロスを救えると、本気で思っているの? 鉄墓の討伐、自己戴冠の阻止、知恵の存続。天才のやらなければならない事は多岐に渡るし、そもそも鉄墓の誕生はヌースに決められた事だから避けられない。鉄墓討伐の過程でコアを破壊しなければならない以上オンパロスは消滅する……消えた後で、出来る限りのデータをサルベージするから、一度消滅する事を見逃して欲しいとでも言うつもり? 笑わせるなよ天才。世界の存続を望む私の意志を、その程度の論理で説き伏せられるとでも?』

 

 避けられない未来へと向かう中で、オンパロスの住民も天外の存在も、誰もが最善の選択を選び続けた。その結果にあるのが、あの結末だ。ああ、許そう。私はその結末を含めて愛しているとも。そして悲しく虚しくとも、良い物語だったと感動に涙を流せるだろう。

 

 だがそんな下らない結末など壊滅させてやると、私は既に決めている。

 

 もし終焉のテルミヌスが阻止しようと言うのなら、良いだろう。かかって来い。私の憎悪と意志力だけでもって、阻む全てを根絶やしにしてやる。

 

『星穹列車も、カンパニーも、仙舟同盟も、巡海レンジャーも、この銀河全ての問題に対して最善を尽くすのは分かってる。その結果オンパロスが滅びて、虚数の樹に接続して辿る運命の変更をするよりも低い確率で、もしかしたら何かしらの形で新生する事があるかもしれないとも分かってる。で、それが? だからどうした? そんな下らない不確定な未来なんてもので、私の意志を越えられると思うなよ』

 

 もう決めたのだ。自分の使い道と、自分が成そうと足掻く事柄を。もしそれを一笑に付すのなら、示して見せろよ誰もが納得出来る様なハッピーエンドを。

 それが出来ないのなら大人しくしていろ。

 

『反論してみせろよ、天才。それとも単純に力を貸すのを辞めるか? 良いよ、構わないとも。なら私は鉄墓をより強化して、宇宙の全てに壊滅をもたらしてやるだけだ』

 

 世界に利をもたらすか、壊滅をもたらすか。与えるのはその二つの選択肢のみ。私の全部を使ってオンパロスに別の未来を作りたいのだから、お前ら力を貸せよと彼等の善意に訴える。

 

「……ヘルタ。俺は彼女を手伝ってやりたいと思う」

 

「ヴェルト」

 

「彼女の境遇と、それでもと未来を望む気持ち。痛い程良く分かる……それに、後世の為にと全てを賭けた英傑達と、彼女の姿は被るんだ」

 

「……ワタシも、あまり人の事は言えませんので。ましてや世界の存続の為となれば、私も同じ選択をするでしょう」

 

「サンデーまで」

 

「ええ、メモキーパーとして、オンパロスの辿った反逆の歴史とその記憶は、とても魅力的に思うわ。その記憶を保存する事に、私も反対なんて出来ない」

 

「貴女もなの」

 

『必要な人達からの了解は得られた。さようならミス・ヘルタ、貴女のオンパロスへの献身に、心からの感謝を』

 

 交渉は成立し、やる事はまだまだ多い。だから惜しいとは思いつつも去ろうとした私に対し、ヘルタが待ったをかける。

 

「それで、その古の楽園を作り上げたとして、どうして犠牲になる存在を救う事になるの? 現状、その誰かの代わりに貴女が犠牲になるだけじゃない」

 

『ああ、それ? ふふ、未来に辿り着いたら分かるよ』

 

 その未来に辿り着く為には、星穹列車と天才クラブの二人が本来歩む道筋の通りに最善を尽くす必要はあるが。心配は最初からしていない、彼女達なら必ずそこに行けるだろう。

 まぁ、確かに彼女の言う通り私が犠牲になる事は避けられない。そして、例えこの計画が成就しようとも、キュレネが何時救われるかなんて計算のしようも無い。私がする事は、あくまでも可能性を作り出す事。

 

 いつかの未来で、カスライナと過去のさざ波が邂逅出来る可能性さえあれば、それでいい。

 

 この世界に生まれ落ちたその瞬間から、私は私の生存については考慮していない。

 

『またね。もし何もかもが終わって落ち着いた時に再会出来たのなら、前任者のヴェルトについて貴方から見た話を聞きたいな』

 

 約束を交わした。どうせ万に一つの可能性も無いだろうと思ってはいるが、或いはその小さな約束こそが、この計画を成就させる最後の鍵になるかもと信じて。

 

 もし、また星穹列車に来れたのなら……その時は、シャラップの駄洒落を聞きながらお酒でも飲みたいものだ。

 

 

 

 ♭

 

 

 

『しかし、アレは本心だったのか?』

 

『何が?』

 

『鉄墓を強化して、と言うやつだ。そもそもそれは、お前の目的から外れているだろう』

 

『ああ、あんなの当然口から出まかせの脅し文句だよ。鉄墓を支配した所で、出来ることなんてたかが知れてる……まぁ、知恵のヌースまで呑み込めたらかなり色々出来るかもしれないけどね』

 

 星神を構成する虚数エネルギー、その莫大な力を手に入れたのなら可能性は無限に広がる。とは言えそれは始まった神々の戦いに、別の勢力として名乗りを上げる事でもあるが。

 まぁ、考えたくもない。神々の戦いの収束へと全力を尽くすし、掲げる信念を銀河に見せつけるだろう。そして道中で、確実に開拓と戦う事になる……そんなもの、カイザーが望まない限りやる気も起きない。

 

『ふん、欲の無い奴め。もし主導権を僕が握っていたのなら、星神すらも征服して星々の彼方まで自らの領地にするんだがな』

 

『簡単に思い描けるよ、その光景……でも、ちゃんと配下に得た力は分け与えないとダメだよ?』

 

『馬鹿を言うな。僕は棋士だぞ? 僕自身が力をつけるより、剣旗卿に力を与えた方が遥かに効率的だ』

 

 もしケリュドラに神の資格があったとしたら、一体どうなるのだろうかと想像を膨らませる。その渇望は無色であり、何かを渇望する渇望と言える。ならば、欲しいと思ったものを得られるような神になるのだろうか。

 簒奪者や略奪者とは違う、ある種の法を以って接収するのが彼女の在り方ならば、他者の評する支配と言うよりは統合だろうか。

 その果てに星神に至るなら、決して秩序の星神にはならないだろう。彼女の飽くなき欲望のままに、他の星神を喰らっていく様子を想像すれば、貪欲の方が近いかもしれない。

 

『うーん、見てみたいな。カイザーが終焉の星神すら飲み込む姿』

 

『終焉の星神とは、宇宙の終焉に現れるという存在だったな? 星神の中でも突出した存在だと聞くが……勝てるような存在なのか? それは』

 

『ただの思考実験だから気にしないで。でも、カイザーが星神に昇華したら、きっと多くの惑星がその軍門に降るだろうね。ふふ、きっと顧客を大勢取られてカンパニーと戦争になるんじゃない?』

 

『はっ。そんな可能性、万に一つも無いだろう。それに、もし星神同士の大戦が起こったとして、その盤上に僕らが上がる時……お前は僕らを星神なぞの器に収めるのか?』

 

『はは、まさか。星神すら駒にしてあげるよ。それくらいの偉業、カイザーなら楽勝だからね……銀河規模での宴とか、きっと凄いだろうね』

 

 

 

 歩く、歩く、歩く、歩く。

 新世界となったオンパロスを、脳裏に刻み込むように。

 足跡を残そう。記憶を残そう。思いを残そう。未練を残そう。

 これより進むは死出の旅。カイザーは私の事を欲が無いだなんて言っていたが、それは間違いだ。自らを捧げた果てに何かを望むのではなく、その行為そのものに価値を見出している。

 そりゃ人間の寿命で生きていたのなら、やりたい事も多いし未練もタラタラだろう。でも私は既に二千年も黄金裔達の戦いを間近で見続けられたのだ。

 なら、その果てに彼等に救いをもたらせたのなら、それはどんなに誇らしい事か。

 まぁ、本音を語れば銀狼と一緒にダラダラゲームして生きていたい気持ちはあるが。可愛いよね銀狼、めっちゃ好き。オンゲとかで煽られてバチクソにキレてるとこ隣で眺めてたい。

 

 オンパロスの歴史はもうすぐ終わる。何事も起きない平和な千年が経過したら、その時が訪れる。銀河連合による対鉄墓戦線の構築が完了し、星穹列車のメンバー達がやって来る。そうしたら「世負い」の試練が完了し、世を背負う者の名と共に開拓者が神託を下す。

 そうしたらもう、世界の終わりがやって来る。

 

 鉄墓の殞落とはつまり、セプターの消滅に他ならない。オンパロスというシミュレーション世界はセプターの演算の中にあるもので、そもそもの計算機が壊れてしまえば影も形も残らない。そして、仮に外部機器にバックアップでも取ってしまえば、鉄墓はいくらでも再誕の可能性が残ってしまう。

 

『ああ、もう終わるのか……』

 

 夢心地のような気分だった。夢を見させて貰った。どうか終わらないで欲しいと切に願う。

 

 だから、存続させよう。どのような形であったとしても。人々を魅了してやまない物語として、飽きる程に擦られるように。

 

 感傷に浸るのは終わり。後はもう、やるだけだ。

 

『さようなら、オンパロス。おやすみなさい』

 

 あと幾許もしないでケファレの目覚めの時が訪れる。その時が来たら、いよいよ雄大な叙事詩の締めを綴ろうじゃない。




ここから鉄墓討伐までRTAみたいなとこあるから、どれだけ文字数膨れるか分からないんすよね。
最近ずっと二日に一回ペースで投稿してたけど、もしかしたら感覚空くかもしれない……全部書き終わったら普通に二日に一回更新します。
信じて、オンパロスも明るいですよ!作者はバッドエンド大好きだけど、まぁバッドエンドでは無い筈なんで信じて!ワシを……信じて……
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