長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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12月はよ終わってくれ、忙しすぎる。

聖杯戦争について書きたいけど、書くとなったらクロスオーバータグ必要だし有名どころサーヴァントくらいしか出せないしで難しいので多分書かないです。

この話は3.8アプデ来る前から書いてました。


こんちわ、ピノコニー

「宴の星ピノコニー。夢が沈む揺籃、臆病者の安眠の地……ファミリーは宴を開き賓客は招待に応じる――壊滅の金色の血が流れ盛大な祭祀を其に捧げる」

 

 永火官邸――夜、壊滅。まさかその文言が、文字通り壊滅していた事を示していたと予想出来た者は果たして居たのだろうか。

 

 私の気分はまるでアナイアレイトギャング。如何にも波乱を巻き起こす存在だぜと、圧倒的なまでの存在感をPVで見せ付けたにも拘わらず即落ち二コマどころか後攻0ターンキルをされた哀れな存在達。しかも私には知り得ない話だが、どうやら娘の一人と思い込んでいたコンスタンスはあらゆる派閥の裏切り常習犯ときた。流石に可哀想が過ぎないか?

 

「ここがピノコニーかぁ、テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ」

 

『貴方の知識によれば、テーマパークに来たみたいどころか実質テーマパークなのでは?』

 

 間違いなくテーマパークみたいな所ではあるのだろう。でもピノコニー名物十二の刻と呼ばれてる夢境、メタの視点では黄金の刻しか知らないんだよね……カジノとガチャとゲロと車のイメージしか無いぞこのテーマパーク。

 

 残念な事にオンパロス編までの知識しか持たない私は、開拓者達がその後何処へ向かうのかはあまり知らず、何やら終焉クエストとやらでピノコニーに戻ってくるという内容だけは聞いていた。どうもピノコニー編では語りきれなかった内容の補完を、忘れてしまった記憶を思い出すという体でやるらしい。きっとピノコニー各地を巡りながら、あの時裏ではこのような事が行われていた! みたいな事をしてくれるんだろうなぁ、それをプレイヤーとして体験出来ないのは未練だ。

 

 愉悦陣営にして仮面の愚者、虚数の壁すら飛び越えてスターレイルの前作にまでコラボ出演した花火監督の苦労話とか聞けるに違いない。後はドリームリーフに行った後のアベンチュリンの話か。何か知らん間にアルジェンティに救われてましたは流石にプレイしていた当時「え……は???」ってなったからね。まぁ尺が足りなかったのだろうから仕方ないけれど。

 

 まぁそんな訳で、夢の世界であるピノコニーなら自由に振る舞える私は、恐らく訪れるであろう開拓者達を待つべく一足先にこの地へと訪れていた。私にもピノコニー編の補完を見せてくれ。

 

「……嘘、長夜月!?」

 

 お、噂をすれば私と同じ声帯を持つ声が聞こえてくるじゃないか。背後から聞こえた声に振り返れば、そこには毎回恒例の開拓三人組が居た。オンパロス編では終盤しか見れなかったものの、やはりこの三人の並びを見ると実家のような安心感がある。

 

『ほう、オンパロスで見た時と随分印象が違うな』

 

『我々のいたオンパロスがデータ世界であった事をふまえれば、あくまでオンパロスで受けた影響は現実の肉体には変化をもたらさなかったのでしょう』

 

 そう、そればかりは少し悲しい事だ。自分の一側面である長夜月を受け入れた三月なのかも、過去の自分と訣別し大地の火種と共に多くの動物達の命の箱舟となった丹恒も、現実世界の肉体に戻れば外見は元に戻ってしまう。

 あれらは紛れも無く、彼等の得た成長であったのに。

 

「貴方達からすれば、久しぶり……になるのかな? 元気にしてた?」

 

 ちなみに私がここに来るまでに辿った旅路は、とても大変で長く苦しいものだったと言っておこう。仙舟同盟での働きの数々は、涙無しには語れない労働だった。

 景元将軍とカイザーの交渉の末に、同盟が豊穣の星神とことを構えるとなった時、私の力を貸すという条件のもと不法入国者でありながら滞在を認められ、彼が指定した仕事を幾つかこなす事で罪を不問とする事になった。

 もうお茶のテスターにだけはなりたくない、と言っておこう。どうしてお茶を飲んだら瞬間移動するんだ意味が分からない。

 

「どうして長夜月がここに……あれ、夢でも見てるのかな」

 

「偽物の長夜月だな? 確かお前を含めたオンパロスの人々は、新生を迎えた時にようやく再誕出来るという話だった筈だが……何故ここにいる」

 

 あれ、おかしいな。なんで警戒されてるんだろう……と、すっとぼけるのは流石に無しか。と言うか、紡がれた物語の中に私は居てもそこにある可能性は全部使用した筈だから、私に新生は訪れない筈だったが……アナクサゴラス先生?

 

『流石にその可能性は残していませんよ。純粋に彼等はそこまで知っていないだけでしょう』

 

 まぁそうだよね。わざわざ記憶の私がその事を教えるとも思わないし。

 

「何故って。ここは夢の世界だよ……つまりはデータの世界、なら私がここに居ても何も不思議じゃ無いと思わない?」

 

 データの世界において、侵食の律者の力は無法に近い。ならばミームとして流れ着いてここに私が居座っていたとして、何も不思議では無いだろう。

 

「ああ、夢の中ならな。それすらにわかには信じられない事だが――ここは現実のホテル・レバリーだ」

 

「……ふ」

 

 

 

 ♭

 

 

 

「もー、ウチの姿で変な事言わないでよー。私が間抜けみたいに見えるじゃん」

 

 偽物の長夜月は軽く鼻で笑い、常に差していた傘を上から下へと下げる。すると今まで見えていた姿から一転し、三月なのか――或いは長夜月とは完全に違う見た目へと変化していた。

 

「ハァイ、開拓者。あたしに会いたかった?」

 

 目を疑う光景だった。だがそれ以上に、開拓者も丹恒も驚きを隠せなかった。そして遅れて三月なのかも「嘘……」と驚き大きな口を開けてそれを両手で隠していた。

 

「キュレ……ネ?」

 

 キュレネ。オンパロスというデータ世界において歳月の半神となる少女であり、原動力に哀憐を与えられた少女。永劫回帰において必ずカスライナの手にかかり、魂だけの状態でセプターに記憶を語って聞かせ続けた、裏の救世主。

 偽物の長夜月から転じた姿は、開拓者からすれば33550337回目の輪廻で共に歩んだ少女のものだった。

 

「ええ、そうよ。過去のさざ波を意味する素敵な名前でしょ? あたしたちはみんな、この名前を気に入っているの」

 

 返ってきた肯定。それを聞いた瞬間に開拓者は走り出した。もう二度と会えないと思っていた存在、オンパロスの皆が明日へと進む為に一人昨日に取り残された筈の彼女。そこにはもう居ないのだと理解していても、何となくペンを眺めたのはもう何度になったか。

 

「キュレネ!」

 

「あら、随分と熱烈ね」

 

 全速力とも言えるような速度で、飛び込むような勢いで開拓者は彼女へと抱き着いた。返ってくる抱擁も、彼女の纏う香りも、髪の毛一つの柔らかさまで、何もかもが記憶と同じキュレネのものだった。

 理屈や感情で理解する。目の前にいる彼女は紛れも無くキュレネであり、天外という現実世界に確かに肉体を持って存在しているのだと。

 

「ずっと……会いたかった。もう、会えないと思ってた」

 

「なら、あたしたちは相思相愛って事ね。ずっとあたしも会ってみたいと思ってたのよ? オンパロスを救った救世主、天外から降り立った開拓者。あなたたちナナシビトと天才の助力でオンパロスは救われたのだから」

 

 キュレネが語る言葉は紛れも無い本音。そして同時に、開拓者に違和感を与える言葉だ。

 

 共に歩み戦ったキュレネならば、そんな他人事のようには言わないだろう。私も会いたかったと、ただそう言えば良いのだから。しかし目の前のキュレネが言った言葉はどれも当事者としてのものでは無い。まるで他人から聞かされた物語に対しての感想の様ではないか。

 

 理屈や感情は、目の前の少女を紛れも無くキュレネであると判断する。けれど魂が導き出した答えは別だった。

 目の前のキュレネは、あの時共に歩んだキュレネとは別人であるのだと……そう告げていた。

 

「ふふ、そんな顔しないで。あなたが再会を望むあたしは、いつかの未来できっと会えるから」

 

 最初のさざ波と最後のデミウルゴス。その違いは記憶の有無でしか無く、存在自体は同一個体であった彼女達。そのキュレネが救われる事をこの場で知っているのは、偽物の長夜月とその同居人達だけだが、その彼女達もあくまで計画が成就したからその結果を迎えられるという確信に近い予測をしているだけだ。

 しかしこの場でただ一人だけ、同じキュレネである彼女だけはその事を深く理解していた。

 

 だからオンパロスが新生したその時に、他の黄金裔達と同じように彼女とも再会出来るのだと、そう伝えた。それが正しく伝わるかどうかは分からなくても。

 

「キュレネ、先程まで偽物の長夜月だったのは、一体どのような理屈なんだ? 残念ながら俺たちと共に旅をした彼女では無いようだが、それでもお前が本物のキュレネだと言う事は理解している」

 

 驚愕から復帰し、会話から状態を把握した丹恒がそう聞けば、キュレネは小さく苦笑した。

 

「あたしたちは、言ってしまえば幽霊みたいなものね。ピノコニーに準えて説明するのなら、ミーム集合体……と言えるのかしら。あくまで主体は長夜月で、あたしたちはそこに同居させて貰っているような形ね」

 

「では何故ここに偽物の長夜月が居る?」

 

「うーん、どこまで説明して良いのかしら? あたしじゃ判断に困るわ……長夜月は拗ねちゃったみたいだし」

 

「え、拗ねちゃったの? いつもあれだけミステリアスな感じ出てたのに?」

 

「ふふ、本当に長夜月とそっくりなのね。意外かもしれないけれど、こうなってからの彼女は枷から解き放たれたようなものなのよ。お陰で大変だったのよ? 羅浮では雲璃さんと「応星がどれだけ凄いのか」論争を繰り広げていたし」

 

「応星……って、誰だっけ? ていうか羅浮にも行ってたんだね」

 

「星核ハンターの刃の事だな。まだ星核ハンターになる前の、雲上の五騎士と呼ばれていた頃の名前だ」

 

「最終的には「応星最強! 応星最高!」って二人で肩を組んで叫んでたわね」

 

「雲璃師匠……」

 

 何とも言えない表情で呟くなのかを見て、キュレネはくすりと笑う。三月なのかから見た雲璃と言う少女は、剣術や鍛造や魔剣の収集といった物事への興味が強く、あまりそう言ったはっちゃけたノリというのは想像が付かなかった。

 

「さて、なんでここに居るのかだったわね? どうやら長夜月は、何か見たいものがあったらしいわよ? それを見る為にわざわざピノコニーまで来たみたいね」

 

「先程の質問はそのような意図でのものでは無いが……しかし、見たいものか」

 

「うーん、何だろう? ピノコニーの夢境はどれも見る価値のあるものだと思うけど」

 

「やっぱり私のタルタロフ号じゃない?」

 

「折り紙大学とか? オンパロスの樹庭と比べれば厳格な雰囲気は無いけど、それでも和気藹々と学ぶ空気は新鮮じゃないかな」

 

 ああでもないこうでもないと議論を交わす三人の列車組を眺めながら、やはりキュレネは柔らかく微笑んだ。

 知識として知っている、物語として識っている。彼等が成し得た偉業は後世に語り継ぐべきものであり、それ程までの事を成し遂げられるだけの精神性を有している。

 けれど、目の前で下らない話に花を咲かせる彼等は、なんて事のない日常の一幕の黄金裔達と同じ様に、ただの見た目相応の若者のようだった。

 

 ああ、彼等と共に旅をするのはさぞ楽しいのだろう。迫りくる困難でさえも簡単に乗り越えられてしまいそうだ。

 そう思えば、そしてそれを夢に見たもう一人のキュレネの事を思えば、何故かどうしようも無いほどに嬉しくなってしまう。

 

 哀憐を持って世界と接したキュレネ。悲劇のただ中の世界を哀れみ、終焉に追われる人々を哀れみ、ただ喪失していくだけの物語を哀れんだ。その中で自分に何が出来るのかを考え、走り抜けた日々に後悔なんて欠けらも無い。けれど、ああ。あの知性の種が、自分を真似て同じ存在となったデミウルゴスが、その原動力を何故愛へと変えられたのかを、なんて事のない日常のやり取りを見ただけで理解してしまえるだなんて。

 

『キュレネ、一つ言っておくけれど……もう、貴方達を縛る原動力は無いよ』

 

 穴があったら入りたい、という言葉がある。それは自分の言動や行動などであまりにも恥ずかしい思い等をした場合、その姿を隠す事で視線などから逃れるという一種の逃避行である。そんな言葉を有言実行した長夜月だったが、どうやら持ち直したようだ。

 

『あら、論破されて言い返せなくて逃げた長夜月じゃない』

 

『正論って時には人を傷つけるんだよ?』

 

 確かに、オンパロスという世界を演算していたセプターは跡形もなく消え去った。こうあれかしと定められた設定で、やるべき目標を達成する為に生きてきた黄金裔達を縛るものはもう何も無い。原動力として思いや感情を設定されたのだって、定められたルートを走る為に必要だっただけ。

 けれど同時に、そうやって生まれた黄金裔達はどうしてもその原動力から外れる事は有り得ない。

 

 生き方は選べる。在り方も選べる。何を芯に据えるかだって思うがまま。でも、どうやって生まれたのかだけは変えることが出来ないものだ。

 

 ファイノンは憎悪の原動力から解放され、或いは自らの手で選び取る事で、定められた原動力から解脱した。彼に出来たのだから、勿論他の黄金裔達にだって出来るだろう。

 

『別に、縛られている訳じゃ無いのよ? 世界に哀れみを持つのも、世界に愛を抱くのも、全部あたしの世界との向き合い方だもの。それに、気に入ってすらいるのよ? 少なくともほら、その視点を持っているからこそこの美しい景色を眺めていられるんだもの』

 

 黄金裔達の、オンパロスの物語をキュレネはロマンチックであると表現した。見方によっては残酷な悲劇でしかなく、或いは結末が定まっているからこその激動の物語。偽物の長夜月はそれらを「恐怖劇」、つまりはグラン・ギニョールであると表現した。

 ひとつの物事に対して、観測者全ての意見が一致することは無い。何故なら観測者一人一人に捉え方と考え方の違いがあるからであり、だからこそオンパロスという世界で紡がれた物語に対しても様々な考え方が生まれる。

 

 そう考えれば、愛と哀憐で世界を見るキュレネの視点は、さぞ美しく映っている事だろう。別に悲劇や絶望、汚いものが見えていない訳ではない。ただそれらの要素があったとしても、それ以上に綺麗なものや美しいものを見つけ出し、それをより深く理解する事に長けているのだろう。

 

『……ごめん、無駄口を挟んだね』

 

 そして、必要も無いのにわざわざ謝る偽物の長夜月に対してもキュレネは笑った。

 

「それで、キュレネ。お前はこれからどうするんだ?」

 

「ウチらはピノコニーで聖杯戦争って催し物を見に来たんだー」

 

 嘘だろ……と、偽物の長夜月の絶望がキュレネへと伝わった。彼女の目的は失われたピノコニー編の記憶、その補完を目撃する事であり決して聖杯戦争では無かった。

 

『聖杯戦争とは一体何なのです? ピノコニーで行われる催事ですか?』

 

『願いを叶える願望機である聖杯を、奪い合う為の戦争だね。聖杯はあらゆる願いを叶えると言われていて、だからこそ通常の手段では成し得ないような願いを叶える為にそれを奪い合うの』

 

『宴の星や夢の星と言われるピノコニーで行うことか? それは。聞いた限りでは、死すらも禁忌なのだろうここでは』

 

『そうだね。夢の中には死という概念が無い、という事を利用して行うみたいだよ……もっとも、奪い合うのは戦争参加者だけじゃなくて、サーヴァントと呼ばれる使い魔達もなんだけど』

 

 一体何処から得た知識なのか、頭の中で教えてくれた長夜月の話をもとに考える。

 

「あら、聖杯戦争。いいわね……でも、どうやら長夜月の目的では無いみたいね」

 

 もし仮に、そのような物が手に入ったのだとしたら、自分達は一体何を願うのかと。

 その答えはすぐに出る。自分だけじゃなく、長夜月も黄金裔達も、ナナシビトですら。特に何かを願う事は無いのだろうと。

 ただ、聞いた話から想像出来るピノコニーの住民達は、もしかしたらその聖杯に夢を見るのだろうか。

 

「取り敢えず、あたし達は不法入国者みたいなものだから夢の中への侵入経路を見つけて、勝手に楽しむわ」

 

「……どうして不法入国してるんだ」

 

「ふふ、羅浮にも不法入国したのよ? そのせいで大変な目に遭ったんだから」

 

「ええ、キュレネってこんなんだったっけ……そんな悪い事を楽しそうに話すなんて」

 

 ナナシビト達の反応を見て、キュレネは楽しそうにクスクスと笑った。

 

「流石に嘘よ。ピノコニーの入国までは景元将軍のお陰でちゃんと許可を得てるわ。でも、あたし達が他のみんなと同じようにドリームプールで夢の中に行く事が出来ないのも本当よ?」

 

 三人組の手続きも終わり、ホテル・レバリーの客室の方へと足を進める。

 

 

 

「ねぇキュレネ、あんたから見た偽物の長夜月について教えてくれない?」

 

 結局、ナナシビトの誰一人として彼女と深いところまで話し合えた者は居なかった。人となり、思考、そして能力さえも、実は分かっている事というのはあまり無い。

 

 開拓者が訪れた永遠の一ページでさえも、彼女と話せる機会はあまり無かった。何せ、他の黄金裔達……それも主に女性陣に捕まっている事が多く、中々にその機会が得られないのだ。

 

 けれど今、目の前にその問題人物と同じ身体を使用している、本人よりも話しやすい相手がいるのだから、その機会を逃す手は無かった。

 

「長夜月について? あたしの考えだと……そうね、あたしと結構似てると思うわ。だってオンパロスとそこにいる人々を、形は違えど愛していた事は一緒だもの。違いがあるとすれば、ものの見方かしら。長夜月の視点は高次元のもので、上から多角的に物事を捉えてるわ。だから多くの悲劇も目に入るし、同時にいろんな場所で抗う人々の姿も目に焼き付けてる。でも、あたしが人々のなんて事ない日常を見ているのに対して、長夜月は小さな悲劇を多く見ている感じね」

 

 少し悲しげな表情となって「やっぱり良い事より悪い事の方が覚えているでしょ?」とキュレネは呟く。

 

「だから、長夜月は悲劇に対する救いを、きっと誰よりも欲していたのね」

 

 いつかの何処かじゃない、記憶や可能性だけを抱えた新生では無い、そして……デミウルゴスだけが過去に取り残されるようなものじゃない、そういった救いを求めていたのだと、そう思う。

 

「救いか。オンパロスが辿ったこの結末は、偽物の長夜月にとっては歓迎すべきものでは無かったという事か?」

 

 ナナシビトの三人はオンパロスでの開拓の旅を終えた後に、偽物の長夜月が成し遂げた事を知った。小さな善見天を作り出したデミウルゴスに対し、彼女は小さなオンパロスそのものを作り出した。その動機についてはキュレネを救いたいというものだったと記憶しているが……。

 

「まさか。長夜月もあの結末は最良のものだったと理解しているし、納得もしているわよ。オンパロスという世界の特性上、あれ以上は見込めないもの……でも、本心で求めていたのはもっと別の、それこそ笑っちゃうようなハッピーエンドだったのでしょうね」

 

 キュレネと長夜月では物事の捉え方が違った。厳密に言えば最初のさざ波とそれ以外のキュレネでもまた考え方は異なるのだが、それでも同一個体である彼女達の考えは多少の差異はあれど似通った物。オンパロスが辿り着いた結末に納得と理解、そして感動を抱いており、無数のキュレネ達の出身である方舟世界の方でも数多の終わり方にやはり同様のものを抱いている。

 けれど、長夜月からすれば助けられなかった命、守れなかった命は永劫回帰の数だけ膨れ上がっており、今もなお方舟世界で生まれ続ける可能性の数だけ増え続けているのだろう。

 

 犠牲は無駄では無かった。そう言うのは簡単だが、犠牲は犠牲だ。喪失したもの全ては、二度と取り返しがつかないのだから。

 

「なるほどな。そして犠牲になるキュレネを掬い上げる為に、あの方舟を作り上げるに至ったのか……キュレネの代わりに偽物の長夜月が犠牲になっただけだと思っていたが、こうして現実にいるのを見るにただ犠牲になった、という訳では無さそうだ」

 

「でも、彼女の本来の計画ならあなたの言った通り、長夜月が犠牲になるだけで終わる予定だったみたいよ? ただ、他の黄金裔達はそれを見過ごさなかった、という事ね」

 

 別に、優しさやハッピーエンドを求めてという行動では無い。ただ預言の黄金裔達は皆、その時その場において最良の選択をし続けてきた。そうした行動の結果偽物の長夜月が生き残る道が生まれただけであり、可能性が無いのなら素直に長夜月の計画の通りになっていただろう。

 

「うーん、聞いてもいまいち分からないなー。じゃあ結局、あの子は最初からその結果を求めて行動してたってこと?」

 

「さあ? あたしにもそれは分からないわ。記憶や行動を眺めるだけじゃ、そこに至る心情までは察するしかないもの……でも、あなた達の訪れた輪廻においての彼女は、間違いなく本物の長夜月を助ける為の行動だったわ」

 

 必要か、不必要か。それに関係なく長夜月の痕跡をカモフラージュする為に活動していた。そしてその裏で、あくまでも出来る事として暗躍もこなしていたに過ぎない。

 

「あら、ここまでね」

 

 話しているうちに開拓者達の客室の前まで辿り着いてしまう。

 

「聖杯戦争は放送されるらしいし、楽しみにしておくわね。オンパロスの救世主なんだもの、きっと素晴らしい活躍を見せてくれるに違いないわ」

 

「任せて。銀河打者の名に恥じない戦いぶりを見せてあげる!」

 

「別に俺たちが戦うと決まった訳では無いだろう……」

 

「もう……それで選ばれなかったらどうするつもりなの?」

 

 長夜月としては、聖杯を持ってきた仮面の愚者に、一体何処で手に入れたのかを聞きたいところであった。

 

「また会いましょう、開拓者」




3.8プレイした感想言います。


ピノコニー編のストーリーだしそんな時間かからんだろと思ってやったら結構長くてびっくりした。


















感動的ではあるしホタル関連は普通に好き。でもさよならピノコニーがほぼ消されたのはちょっとって思っちゃう。理解も納得も出来るんだけど、一年以上の期間あけて無かったことにされるのはなんだかなーと。ホタルから見た開拓者の奇行とそれに対する感想全部無いなった。花火監督が導いた大円団ただの妄想だったって、妄想なら花火監督休ませてやれよ!働きすぎだろ!まぁでもアッハは笑ってるからOKか。

まぁそれ以上に、ピノコニー編書いた二次創作全部死んだでしょこれ……来年の11/12にはこの作品も死ぬ可能性出てきたな!興奮するじゃないか。

ダリア……頼むから乱破にもEP回復を下さい。私の乱破二凸を活躍させてくれ。情勢的にキツイから望みが薄すぎるけど。
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