長夜月(偽) 作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?
仙舟羅浮に不法入国し、景元将軍との話し合いの末なんやかんやで雑用をこなすことでお咎め無しとなった後の事。太卜様こと符玄からのお願いで、いつもの様に仕事をサボっている青雀を職場に連れていくように頼まれていた。
青雀と言えば、仕事をサボる常習犯にして帝垣美玉牌の流行の発端。帝垣美玉とはつまるところ中国麻雀と同一だろう。言ってしまえば、彼女は重度の雀鬼だ。
そこから考えるに、彼女のサボりパターンは二つ。牌をうつか本を読むかの二択である。そして大体は、麻雀仲間と麻雀をしているだろう。
青雀の頑張りのお陰か、羅浮には複数の帝垣美玉を行う為の雀卓が設置されている。しかし、街のそこらじゅうにある訳でもないので、その配置さえ覚えているのなら虱潰しに探して見つける事が可能となるだろう。
問題は、私はその卓の位置を微塵も覚えていない事だが。
しかし、どうやら私はツイてるらしい。何処だろなと何となく探していたら、元気に帝垣美玉を嗜む青雀を発見出来た。
「見付けたよ青雀」
「んん? その声は我が友三月なのか? どうしてあなたがここに……まさか、太卜様が私を探して?」
「ふふ、そういう事。盛り上がってるとこ悪いけど、大人しく仕事に戻ろっか」
これで素直に戻ってくれるのが一番だが、相手は青雀――サボる事だけは決してサボらないとまで言わしめる、生粋のサボり魔。その上で仕事を勤務時間以内には終わらせる爪を隠した鷹。
「悪いけど、今良い所だから無理」
と、案の定断られてしまった。ではこの対局が終わるまでと待ってみれば、そのまま続けて次の試合へ移行しようとしているではないか。
「なら青雀、私と勝負しない?」
「勝負? あなた帝垣美玉牌出来たっけ?」
「残念ながら、帝垣美玉に関してはルールが分からないんだよね。でも、普通の麻雀なら出来るよ」
「へぇ、面白いね。良いよ、やろっか……三人もそれでいい?」
雀仲間達の了承を得て、私は青雀の対面に座る。イカサマなどを防ぐ為、近くの店で買ってきた通常の麻雀牌を麻雀のルール通りに混ぜて山を作っていく。
「いざ尋常に――」
「――勝負!」
サボりの青雀を職場へと連れ戻す為の、麻雀バトルが始まった。ちなみにこの時脳内アナクサゴラスとケリュドラは、サボりの片棒を担いでるじゃないかと呆れた声を出していた。うるさいな、良いじゃないか。勝てば連れ戻せるのだからチャラだよ。
「チー!」
上家の捨てた牌を広い作り上げた順子を卓の右手前へと寄せ、自らの手の中の不要牌を川へと捨てる。
「チー!」
「チー!」
「チー!」
その行為を都合四回、計四つの順子がこれで作られた。
「嘘でしょあなた、勝つ気あるの?」
「勝つさ」
「でもなのか、それじゃあ点数が……!」
「青雀、麻雀の必勝法を教えてあげるよ。どんなカス和了でも、圧倒的な速度で他の追随を許さず和了続ける……そうすれば、勝つのは私一人だよ」
「凄い、なんかいつものあなたと違って賢そうな雰囲気だったのに、言ってる事は凄い馬鹿」
「さあ、私の頭単騎待ちに勝てるかな……?」
本当は両面待ちにして早上がりするつもりだったのに、私の手牌は一生デュラハンだった。でもこれで地獄の単騎待ち……ギャンブル特有のヒリつきを味わえる……!
「あ、ツモです」
「この程度はコラテラルダメージ」
普通に下家にツモられてしまった。ダマテン七対子に負けるなんて運が無かった……。
『ルールは大体理解したが、打ち方が下手過ぎないか? もっと賢く出来るだろ』
うるさいなカイザー、プレイヤーは私なんだから黙って見てなよ。
次の局は、静かな立ち上がりだった。
パチ、パチと牌を置く音だけが響き、まさに真剣勝負の様相を呈していた。
「うーん……まぁこれでいいか。立直」
対面の青雀が立直を宣言し、卓の中央に千点棒を置く。上家は冷静に現物を切り、そのまま私の手順となる。
青雀の捨牌、上家と下家の川から考えられる山の残りとそれぞれの手牌……そこから考えるに、意外と安牌は多い。
「いいや、ここで安直に安牌を捨てるのは甘えだね」
敢えて危険地帯へと飛び込み、安牌を切り拓く開拓の精神。私もナナシビト達に倣ってこの卓を開拓してみせよう!
「あ、ロン。立直ドラドラ断幺九平和で満貫12000点だね」
「嘘でしょ、私の四暗刻が消された……!?」
「思いっきりロマン砲じゃん。しかも3シャンテンでかなり遠いし」
あ、有り得ない……一撃で沈めてやろうと作っていた私の役満が、こんなしょうもない和了に潰されるなんて。
『普通に痛手じゃないか? 普通に鳴いて対々和にした方が早くて安全だっただろ』
うるさいなカイザー、お行儀良い麻雀なんてつまらないんだよ。
『だが、もはや持ち点は僅かばかりじゃないか。ここから勝てるのか?』
愚問だね。さっき宣言したじゃないか……勝つさ!
次の局は、激動の対局となる。何せ私はもう後には引けない背水の陣。流石は青雀、プロ雀士……まさかこの私をここまで追い詰めるとは思わなかった。全くやるじゃないか、最近の雀士にしては(※自業自得です)。
だが、勝負は始まる前に決まっているものだ。そう、私の勝利は最初から揺るがない! 特に何も仕込みとかしてないけど。
「震え慄くと良いよ、青雀」
「へぇ、随分と良い手なの? その川を見るに、まぁ分かり易いけど」
「ふっ……オープンリーチ!」
私は声高に宣言し、対子となっていた白を川に捨てる。そして自らの手牌を公開する。
オープンリーチ、それは自らの手牌全てを公開する防御力0の構え。ローカルルールによって、それをする事で和了の点数を増やす事が出来たりするらしいのだが、残念ながらこの対局は至って通常のルール。つまり、ただの捨て身戦法……だが、事ここに至ってはもはや何の意味もない。
「嘘、国士無双の和了を投げ捨てて十三面待ちに移行するの!? 嘘でしょあなた、何処までバカなの?」
「一撃で沈めてあげるよ青雀、そして仕事に戻るの」
「嫌だね絶対に。なら私もオープンリーチ!」
そう宣言し公開された青雀の手牌、その役は――
「四暗刻単騎……手牌情報の開示によるツモ運の底上げ、どうやら本気みたいだね」
僅か東三局で、勝負が決まるハイスピードゲーム。もはや私と青雀は互いに防御をかなぐり捨て、殺るか殺られるかの果たし合い状態となった。いや普通に考えて青雀は公開する必要無いじゃん、ロン和了の可能性投げ捨てちゃってるじゃん……国士無双十三面待ちとは話が違うよ? こっちは川から役がバレバレだけど、四暗刻単騎は待ちは狭いがロン和了の可能性だって残ってる。
というかダブル役満対決なんてしてたら上家と下家が普通にカス和了で流すだろいい加減にしろ!
「三月、こんな所に居たのね。青雀は見付けたかしら……何してるの?」
生きるか死ぬかの緊張感が漂う中、恐らく青雀がもっとも聞きたくなかったであろう声が聞こえてきた。
「こんにちわ、太卜様。見ての通り、あなたの部下を仕事に連れ戻す為の真剣勝負の最中だよ」
本気の符玄は銀河を超える。小さな体に大きな野望★ と広告された、太卜司の偉い人にしてフォフォが出るまでの耐久環境キャラ。ついでに青雀の上司にして今回の私の依頼主たる少女、符玄がそこに居た。
「三月、私がなんて頼んだか覚えてるかしら?」
腕を組み、静かに聞いてくる彼女であったがその眉はヒクヒクと動いている。
「勿論、青雀を連れ戻せ……だよね?」
「ええそうよ、連れ戻せと言ったのよ。決して青雀と遊んでこいなんて言っていないのよ……それで、あなたは一体何をしてるのかしら?」
「勿論、青雀を連れ戻す為の真剣勝負だよ」
話しながらも手は止めない。私と青雀を含めた四人の殺し合いは過度な緊張感を保ったまま進んでいく。
「連れ戻す為に遊んだら本末転倒でしょうが!」
「黙っててロリっ子! 今は私と青雀の殺し合いしてるんだから!」
「ろ、ロリっ子? 三月あなた……」
「さあ、ツモりなよ青雀。私と貴方、どちらかが死ぬまで終わらない……決着をつけよう」
ニヤリと笑い、青雀は牌をツモる。まずは盲牌でその内容を確かめ、何かを確信したのか不敵な笑みを浮かべた。
「やった! 和了!」
卓に叩きつけられたのは青雀の待ち牌だった四の筒子。その瞬間、爆発的な衝撃波が発生し私は為す術なくそれに飲まれた(※偽夜月のイメージです)。
「う、うわあああああああああああああ!!」
こうして私は勝負に敗北し、符玄からの依頼も失敗し、青雀は符玄に強制連行された。
え、勝負を持ちかけた時点で負けてるって? それはそう。まぁいいじゃないか、三千年ぶりの娯楽なのだから。
この後景元将軍は呆れ、カイザーが将軍の対局相手として存分にその腕を振るう事で赦しを得た。
ちなみにピノコニーを訪れた際、偽夜月一行は折り紙の小鳥バトルをしました。順位は以下の通りです。
1位カイザー 無難に勝利
2位アナクサゴラス カイザー相手に惜敗
3位キュレネ 普通に上手かった
4位ヘレクトラ スラーダ飲みながらやってた
5位偽夜月 普通に下手
ホタルは強過ぎるから夢に侵入するとファミリーにバレちゃうらしいけど、偽夜月は侵入と同時に侵食で誤魔化せちゃうので好き放題出来るね。いくら待ってもピノコニー補完編が始まらなくて困惑した偽夜月はいる。