長夜月(偽) 作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?
死のタイタンであるタナトス。恐ろしきはその死を与える権能であり、極端な話をすると死を否定出来る者さえいるのならあまり脅威では無いタイタンだ。
戦争の体現とも言えるようなニカドリーや、天の全てを支配するようなエーグルとは違う。あくまで生と死を司る権能を持つタイタンなのだから、戦闘力という面で見るとそこまででは無い。無論、神と人との圧倒的な差は当然あり、あくまでもニカドリーと比べればという枕詞はつく。
タナトスの行方をアナクサゴラスが解明し、その討伐に向かう人員はニカドリーの時と違って僅か三名。対タナトス決戦兵器とも言えるメデイモス、死の半神として冥界に留まる事になるキャストリス、死よりタナトスを呼び戻す儀式を執り行うアナクサゴラス。ついでに移動手段としてセファリアが働く事になる。しかもメデイモスは紛争の試練を無事に突破して、半神となっている。
少数精鋭ではあるが、十二分に勝率が約束された征伐でもある。たった三人はオクヘイマ中の歓声を浴びて古都スティコシアへと旅立った。
残された面々は和気藹々と勝利の報告を待つだけで良い――とはならなかった。
まず、カスライナとファイノン。顔を合わせる事となった同一人物。しかしファイノンからすれば、カスライナは因縁深い存在だ。何せエリュシオンを暗黒の潮と共に襲い、手に持った儀礼剣で幼馴染の命を奪ったのだから。憎悪と憤怒を抱き、同時に理由を問い質したい相手なのだ。
これからの行動を取れるように、カイザー主導の下情報共有が行われる事になった。議題はカスライナについて。仮面や黒衣を取り去れば、そこにあるのは砕けかけのファイノンの姿なのだ。事情を知るアナクサゴラスとレイとケリュドラ以外からすれば、興味の対象でもあるし知るべき情報源でもある。ついでにヒアシンシアからすれば重篤な患者とも言える。
レイを救世主と認め、彼に託すと決めたカスライナの口を閉ざす理由は最早無く、彼から語られるのは最初のカスライナとキュレネから始まった永劫回帰の事と、火追いを仕組み再創世を求める黒幕、そしてその果てに待つオンパロスの結末だった。
ケファレの預言に従って旅を続けてきた面々からすれば寝耳に水、よもやそれら全てが仕組まれた事であり、再創世を果たした先にも破滅が待っているとは大半は思っても居なかった。
「狼狽えるな。その様な姿は僕の配下として相応しくない」
「でもカイザー、これじゃああたちたちのちてきたすべてが意味の無い事になっちゃうわ」
「意味が無いだと? はっ、笑えんな。そもそもの話、僕は「法」の試練を受けた際にオンパロスの総てを知っている」
「つまり、永劫回帰が行われていた事も、再創世の果てに待つ事も知っていて、それでも火追いをしていたと……そう言いたいのですか?」
「ああ、そう言っている」
「じゃあカイザー、君はここからどうすべきかについても当然考えているんだね?」
「愚問だな。そんなもの法の半神となった時に既に終えている」
本来ならば動揺し、答えの無い問いに頭を悩ませるべき展開だ。しかし、この方舟世界においては優秀な指導者がずっと健在だ。アグライアやアナクサゴラスが居るだけでもより良い道を見付ける事は可能だが、そこに更にカイザーが居る。
そしてカイザーは、当然総てを知った時にこれから何をするかについても決めている。
「再創世の果てに鉄墓が完成し、僕たちはそれの養分となる。これはこの世界によって決められた末路であり、取れる選択肢はカスライナのように時間を稼ぐか諦めて鉄墓を完成させるか、敗北して破滅するかの三択だ」
絶望的な選択肢を提示するが、同時にだがと否定もする。
「そんな与えられただけの選択を、この僕がするとでも思うか? 実に下らない。運命に敗北する様を奴に見せつけるつもりか? 冗談じゃない。僕たちに求められているのはただ一つ、鉄墓に勝利する事だ」
どう足掻いても自分達に破滅の未来しか無いのなら、その原因を消してしまえば良い。単純明快で分かりやすい回答だが、同時にそれが如何に困難なのかは語るに及ばない。
「ですが、例え戦いの舞台を整えられたとして、私たちは自らの立つ世界そのものと戦うようなもの……」
「言い換えれば、自分達の神を殺す事だな。ならば簡単ではないか。何せ、僕たち黄金裔は永劫回帰の輪廻において、全てのタイタンを殺しているのだからな」
「しかしカイザー、それは詭弁です。私たちの討つべきであったタイタンと、話に聞く鉄墓とでは規模があまりにも違いすぎます」
「ほう? 金織卿はそう思うのか。ならば天霆卿、お前はどう思う?」
「無論、勝つだけだ」
「ククッ、そうだ。どの道それしか無いのだから、ならば我々はただ戦って勝つのみだ」
「けどカイザー、ならば教えて欲しい。僕はこの三千万を超える輪廻の中で、何度か君への面会を求め、そして協力して火追いにあたった事もある。だが手を取り合った輪廻で、共に道を探ってみても真の救世と呼べる結末へは辿り着けなかった。それなのに、今回は出来ると言うのかい?」
「ああ、出来る。カスライナ、お前と協力したのは全部で二千と八十七回だったか。それら全ての輪廻と、今回の輪廻……お前なら、違いが分かるだろう?」
「彼の存在だね」
天霆卿と、カイザーより二つ名を賜った英雄。レイこそが、今までの輪廻には居なかった変数である。どうしてこの様な存在が唐突に現れたのかは、カスライナには理解出来ていないが……それでもこの閉塞している現状を、打破出来るだけの可能性を持っているとは断言出来る。
「元々僕と剣旗卿の二人は、ケファレの預言とは違う特別な神託を持たされている。それはいつかどこかで、必ずオンパロスの未来を開拓出来る変数が現れると言うものだ」
「それは……初耳だね。トリビー先生は何か知っているのかい?」
「ううん、あたちたちも聞いた事もないち、神託を与えられるような存在に心当たりも無いよ」
「神託の相手はさして重要では無い。僕たちはそれを事実であると認識し、最初の輪廻から変数を待ち続けていた。無論、永劫回帰の中でカスライナが折れないようにする事も役割の一つではあったがな」
本来ならば、カスライナとケリュドラ達は殆ど交わる事の無い物語だ。元々ファイノンはケリュドラの時代には生まれておらず、彼女達と協力をした所でオンパロスに救いはもたらせなかった。故にカスライナはただ火種を集める為に、彼女達が舞台から退場する前に火種と共に命を奪うだけだった。
しかし、方舟世界においては少々異なる。百回程度の試行回数である程度の諦めをつけるカスライナに対し、わざわざケリュドラ側から接触しあらゆる可能性を検討していた。
それは全て、約束の時が訪れる前にカスライナの心が折れる事態を防ぐ為。永劫回帰を成り立たせるにはカスライナとキュレネ、その二人の力は前提条件なのだ。
カスライナと言う器を保たせる為に、アナクサゴラスやヒアシンシアとの協力をした事だって当然何度もある。
「そして、変数であるレイが今はいる。あまり具体的な説明をする事は出来ないが、変数と自滅因子には特別な力が宿っている……無論、それがあるから負け無しという訳では無い。だが、僕たちが戦いの舞台に立つ為には必要な力だと言える」
例えば今回の自滅因子である長夜月、彼女には世界の神を討てるだけの可能性が秘められている。誰を相手に、それをどう使うのかは当人の選択次第ではあり、彼女はそれを人体改造のように使用する。そして基本的には、真なる救世主である変数が戦いの舞台へ立てる様にする役割を担っている。
神と言う存在を分類するとしたら主に二つに分けられる。即ち覇道と求道。覇道は自らの理を敷いて他者にそれを強要する、星神に近い在り方だ。そしてその在り方は、世界や宇宙の支配者とも言えるような在り方でもある。
一方求道とは、自らの道だけを求める様なものであり、言ってしまえば他の理に干渉されない浮いた在り方であると言えるだろう。これを表現するとしたら、星神などの強大な存在とは違い、そもそも虚数の樹から外れた存在と言うべきだろうか。
レイの在り方は求道の方、不変の自己を以って自らの在り方を貫く存在だ。
仮に変数が覇道に属する者であったのならば、軍勢変生と呼ばれる自らの配下や仲間の力を底上げし、位階を引き上げる事が可能となって全員で他の神との対決に出向く事が出来た。或いは変数自体は覇道に属さなくとも、自滅因子が覇道資格者であったのならば足並みを揃えて戦う事が可能だった。
しかし長夜月も同じく求道の存在であった。故にこの場合、神たる存在と戦うとなった際に起こる事は単純だ。レイと長夜月と神との三つ巴、それも鉄墓と言う決められたラスボス相手ではなく、世界そのものと言える偽物の長夜月が相手であった場合敗北が決められている戦いとなる。仮に偽物の長夜月を討てたとて、待っているのは方舟世界の崩壊であり、覇道資格者でなければ成り代われない。食い破って外に出るのなら、彼女ごと呑み込める様な存在が必要になる。しかしレイも長夜月も、ただ相手に勝利する事しか出来はしない。
それを理解しているのはケリュドラとアナクサゴラスの二人のみ。だが同時に、仮にレイが方舟世界の核である偽物の長夜月と戦う事になった時、勝利した時に……どうなるのかは断言出来なかった。
レイには何か、有り得ない事すら引き起こしてしまいそうなだけの可能性があると思えてしまう。
「再創世を果たすのに全員の力が必要だ。そして空いた歳月のルートはカスライナ、お前に――正確にはお前に協力している儀礼剣に担ってもらう」
「……そうだね、彼女も共に勝利を得るべきだ。僕も火種こそ持っていても、歳月の半神になれる訳では無いからね」
「そして決まるべき鉄墓との決戦は、僕たち世界を作る新しいタイタン達で舞台を作り上げる事になるだろう。世負いは世界を担うとは言え、オンパロスという世界を作り上げるのは十二のタイタンだ」
「じゃあカイザー、アタシたちは全部天霆の坊やに任せるって事?」
「少し、違うな。僕たち全員で、天霆卿の背中を押すんだ」
「でもカイザー、教えて欲しい。仮に鉄墓を倒せたとして、その後はどうなるんだい?」
鉄墓とはセプターδme-13であり、同時にこのオンパロスを成り立たせている天体ニューロンである。仮に鉄墓を倒し勝利を得たとして、自分達の存在する世界が消滅するのならただの相打ちだ。
天外に広がるかもしれない知らない世界の為に、わざわざ鉄墓と言う脅威を討って消滅するのかと。彼等黄金裔達は、救世を成し遂げる為に断崖の果てを飛翔する覚悟を持った英雄達である。だがそれは、あくまで世界を救って新世界へと辿り着く為の行いだ。
そもそも全部が消えてしまうのなら、話は変わってくる。
「それについての心配は不要だ。俺達が倒すのはあくまでも鉄墓のコアだ……倒した後に、俺達は鉄墓の身体の主導権を得る――天外へと飛び出したいのか、或いは求めていた新世界を築き上げるのかは、各々の望む様にすると良い」
「そういう事らしい。まぁ、僕は当然外へ行くがな……カイザーの支配域を広げてやるとも」
そう言いながらも、この場ではカイザーだけが理解している。方舟世界には本来のオンパロスよりも救いがあるが、同時に世界の生存の目は欠片も無い事を。
鉄墓の討伐を成せば、あるのは永劫回帰のような世界のリセットだ。今まで積み上げた物語も、戦いも、記憶と記録だけを残して全てが消える。新しい歴史と新しい変数の為に、鉄墓の討伐という結果を積み上げる為に。
自分が消え去る事を許している訳ではない。そんな事では到底満たされない。だが同時に、ただ消されるだけの様な存在を自分は求めても居ない。
それらを覆せるだけの変数を生み出せなかった事、或いは変数以外でも世界から飛び出せるだけの優秀な駒……それらを作り出し、外に居る自らの手駒とする事。そう言うゲームとしてケリュドラは割り切っている。
そう考えると、ゲームに勝てない自分に価値は無い。ならばせめて役割を見事に果たし、同じ魂と経験と記憶で生み出される新しい自分が勝つ事を願うのみ。
どの道、天外を渇望した存在は偽物の長夜月を構成する記憶の一つとなり、その人格を表に出す事すら出来るのだ。残酷な世界ではあるが、やはり温情もある。
「さて、擦り合わせも済んだことだ。これからの話をするとしよう」
とは言うものの、カイザーの中で既に道筋と結末は定められている。エーグルを最後に回す都合上、ここからは人類に味方してくれていたタイタン達の回収だ。オロニクスを説得し、サーシスを納得させ、エーグルを討伐し世負いを引き継ぐ。
人々は一人と別れを告げ、その者だけが奇跡を目にすることになる。これぞまさしく運命……そんな預言を鼻で笑い飛ばし、全員で再創世を成し遂げる。後は完成する鉄墓に統合される新たなタイタン達を、逆にレイへと統合させる。黄金裔達は記憶だけの存在と成り果てるが、それでもタイタンである事に変わりない。世界と世界のぶつかり合いでレイの存在を保ち続け、戦いの舞台を成り立たせる。
つまりはお前達死んでくれと、真正面からカイザーが頼み込む。そしてその先に新世界があるのなら、黄金裔達は迷わずに進んで行ける。
当然の如く全員の了承を得て、この話し合いは終わりを迎える。
そしてタナトスの討伐部隊が戻ってくる前に、オロニクスを手中に収めるべくカスライナとレイがヤヌサポリスへと向かった。
オロニクスの説得は、呆気ない程簡単に終了した。
本来の歴史において、自分達タイタンが庇護すべき人類が突如として偽りの神託に踊らされ刃を向けてきた事、そしてそれによって同胞を喪っていた事。それらの事実に脅え震えていたものの、オロニクスのルーツである天父浮黎と同じ気配を持つ三月なのかを母上と呼称し、彼女に縋っていた。オンパロスを待ち受ける終焉よりも、自らや同胞の死を恐れ震える幼子のような存在であった為、人類の味方をするタイタンでありながら全面的に協力していた訳ではない。
しかし、この方舟世界においては違っていた。オロニクスは常にこの世界の記憶を感じており、カスライナの持つ儀礼剣の中に眠る自らの光景たる魂を感じ、そしてレイという変数がこの停滞を終わらせまた新たな黄金紀がやって来ると確信していた。
確かにこの自分は消えてなくなるかもしれない。けれど残された記憶と意思は再び永き繁栄の時を謳歌出来るのだと理解している。
二人の英雄と幾許かの会話を交わした後に、自らの心臓たる火種を讓渡してオロニクスは自らの生命に幕を引いた。
二人がオクヘイマに戻れば冥界に残ったキャストリスを除いたタナトス攻略隊も帰還しており、これで残すはケファレとエーグルのみとなった。
「カイザーの立てた作戦を伝えます。エーグルの攻略に向かうのはレイ、ファイノン、ヒアンシー、そして私となります」
「アグライア、まさか聖都の守りの要である君と一緒に行けるとは思わなかったよ。でも良いのかい? 共に行ける人数にはまだ余裕はある筈だ」
「メデイモスは既に連戦、紛争の半神とは言え全力を尽くすのに休養も必要不可欠です。カスライナ――もう一人のファイノンに関しては、そもそも戦える回数に制限があります。二人ともエーグル討伐という激しい戦いよりは、強大な聖都の守りの方が消耗を抑えられるでしょう。セイレンスに関してはカイザーの剣なので、カイザーが出向かなければ一緒には戦えず、ヒュポクリテスは戦闘要員ではありません」
「なるほど、戦えるメンバーで考えたらこれが最適になるんだね……でも、レイさんも連戦だけどそれは構わないのかい?」
「無論、問題ない。俺は所詮戦う事しか出来ん男だ。ならば期待されている役目を全力で全うし、未来への道筋を開くだけだ」
「はは、頼もしいね……行けるかい? ヒアンシーさん」
「何処までお力になれるかは分かりませんが、全力を尽くさせて頂きます」
「天空要塞への道を開く為には、天空の民の末裔であるヒアンシーの力が必要不可欠です。そして、長い間俗世と隔離されていた天空要塞がどうなっているのかは誰にも……いえ、カイザーを除いて分からないでしょう」
「つまり、治療要員は必要と言う事だ」
「そうだね、頼りにしてるよヒアンシーさん」
「お任せ下さい!」
祖霊とでも言うべきかつての天空の末裔達からの承認を得て、ヒアシンシアは天空要塞への入場券を獲得する。そうして渡った虹の先に待っていた要塞で再現されるのは、かつての晴れの民と雨の民の争い。エーグルを信仰する者としては、エーグルが恐れる暗闇を遠ざけるべく晴れに固定するのは正しい事だが、日照りで苦しむ地上の民を考えればそれを非難する雨の民も正しい。正しさと正しさの押し付け合い、それを見限りエーグル討伐を決めた最初の英雄セネオス。
そして地上に降り立ったヒアシンシアの祖先が、実は英雄でも何でもなく命欲しさに必死に許しを乞い見逃されただけと言う、語り継がれてきた英雄譚とは程遠い真実。
それら全てを理解しても尚、ヒアシンシアという少女の想いには一点の曇りもありはしなかった。
ただ医者として、苦しむ患者を助ける。世界を包み込む暖かな陽光になるのだと、エーグルと融合し人類を見限ったセネオスを前に二本の足で立つヒアシンシア。そして彼女を守るべく立ち塞がる三人の英雄。
「セネオス、貴様は最初の英雄として火を追う旅の狼煙を上げた。貴様のその戦果こそが人々に夢を見せたのだ……その行い、功績を俺は尊敬しよう。だが、貴様は一つ勘違いをしている。俺達に出来る事はただ障害を排除して道を切り拓く事のみだ。その背中に夢を見れるかどうかは後に続く者達次第、盲目的に神に縋るだけの者達に、選択肢を与えるようで結果として支柱を奪っただけだ」
タイタンの討伐。セネオスも後の時代の黄金裔達も掲げる目的は違わず、それをやり遂げるという事実も変わらない。では何故、セネオスと後世の黄金裔で違うかと言えばその理由はただ一つ、その後を見せられなかったからだ。
カイザーケリュドラは実に多くのタイタンを討伐した。本来の歴史において、ケリュドラが支配し後世に残したオクヘイマにおいて黄金裔とは基本的に英雄として持て囃されている。反乱分子として元老院や粛清者なども居たが、彼らは表立って非難する事は出来なかった。精々が、半神議会で苦言や提言をする程度であり、そこまで大きな混乱は招かなかった。
ケリュドラの整備した法の下、人々は信仰するタイタンを喪っても確かな生活を送れていたからだ。だから自分達の信仰するタイタンを討伐すると言われれば反発こそするものの、それ以上の賛同者とカイザーに付き従う配下達によって黙らされ、多くの人々は人生を謳歌した。
しかしセネオスは争いの原因を排除するだけであり、根本をどうこう出来なかった。天空の民達の争いは、あくまでもタイタンの為に晴れにし続けるか地上の民の為にも定期的に雨にすべきかという議題であり、争いの原因はエーグルであった。
しかしエーグルが暗闇を恐れた理由は暗黒の潮の襲来に起因しており、かのタイタンを落ち着けたいのなら暗黒の潮を排除するしかない。もしくは、争いを止めたかったのなら強烈なエーグル信仰を終わらせるしか無かった。
縋るべき神が居なくなれば目を覚ますだろう。そう思い行動を起こしてみれば、縋る対象を喪って混乱に陥った。そして溜まっていた不満から晴れの民と雨の民での殺し合いが発生し、もう止めようが無くなった。
「人間を見限って天罰を下す裁定者になる? 笑わせる。貴様はそもそも人間を理解していなかっただけだ。争いを止めたかったのならば、エーグルと融合した時点で新たな神として彼らを率いれば良かっただけの事……それが貴様の底だ」
落ちてくる空そのものと言えるエーグルとの戦いは、終始レイ達の優勢で進んだ。
アグライアが操る金糸でヒアシンシアを守り、ファイノンとレイが苛烈に攻める。エーグルが嵐を呼び雷鳴を轟かせようとも、その程度で足を止める英雄はここに居ない。ついには暗黒の潮とすら同化して憎悪を撒き散らすだけとなったエーグルだったが、ファイノンの灯した熱を陽光として暗雲をヒアシンシアが照らし、その後押しを受けた三者がそれぞれ刃を閃かせた。
こうしてエーグルの火種も手に入り、残すはケファレの火種だけとなる。
再創世は、もう目の前に迫っていた。
これは完全な余談なんだけど、いや基本的に前書き後書き無駄話しかしてないんだけど、本編最終決戦あたり書いてる時、学園の方の崩壊世界の歌姫めっちゃ聞いてた。
崩壊世界の歌姫も罪の天使も久し振りに凄い聞きたくなったんだよね……それ以上にスタレのnameless facesは聞いてるんだけど。聞くだけで泣ける