長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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毎回誤字修正ありがとうございます。感想も返信こそしてないもののしっかりと目を通しています。

虚空万象くんはいつストーリーで出てくるんですかね?


この列車って一体何なんだろうね?

 その日、オンパロスの空に極光が迸った。

 天外よりの来訪者、開拓の運命に属し星海を旅し続ける者達の、その一派。二人を載せた列車の一両がオンパロスへと降臨し、穹を翔ける途中の出来事だった。

 

 紛争のタイタン「天罰の矛」ニカドリー。二つ名となった一つの都市国家すら滅ぼせる攻撃が列車へと直撃し、撃墜された。

 

 多くのオンパロス住民は、きっと何が起きたのかを理解していないだろう。天外の存在は、エーグルの怒りに触れない為に隠匿され、タイタンの詳細については語られた神話でのみ認識しているのだから。

 

 何とか無事だった開拓の二人は探索の為に外に出て、そしてファイノンとトリビーと出会い、ほんの少しオンパロスについての説明がなされた。

 彼等は彼等でここ、ヤヌサポリスに残ろうとする司祭達をオクヘイマへと連れて行く為の説得に訪れており、現在の暗黒の潮の被害やニカドリーによる侵攻を説明し、ついには彼等をオクヘイマへと連れ出せる事になった。

 

 その一連の流れを、観察していた私は安堵の息を吐く。

 一先ず、列車が撃墜されようとも無事なようで安心出来た。現状、開拓者は死んでいて記憶のみで独立して行動しているとされているが、恐らくこの時点で記憶の使令の影響を受けていたのかもしれない。

 

 全てが計算され尽くされた、薄氷の上で成り立つ救世。これが綴り手によるロマンチックな物語、ということか。

 

 と、後方保護者面で一人頷いていた私だったが、一人が似合う爽やかカスラナ顔がこちらにやって来るのが見て取れた。

 

 まるで何も知らない頃のケビンみたいな顔してるけど、この時点で大分辿った道筋は重たいんだよねファイノン。

 

「やあ、長夜月さん。今はヤヌサポリスに居たんだね」

 

「こんばんわ、救世ちゃん。オロニクスが居るといっても、黄金裔もいなくて彼等だけじゃ危険でしょ?」

 

「なるほど、皆を守ってくれてたんだね。助かるよ」

 

「オクヘイマに居なくても、黄金裔として為すべき使命は一日たりとも忘れた事は無いよ」

 

 どうやら列車組とトリビーは先程の授業の続きをしているようだ。難民達が避難の為の準備をしている最中の空き時間、少しでも現地の事を知ろうとしているらしい。

 

「ああ、彼等かい? どうやら天外からやって来たらしくてね。トリビー先生と相談してオクヘイマまで一緒に行く事にしたんだ。神託には無い出来事でもあるし、アグライアの判断も仰ぎたい。どうやら彼等も危険な人物では無さそうだし、協力を出来るなら互いに協力をすべきだしね」

 

「今オクヘイマを取り仕切っているのはアグライアだし、判断を仰ぐのは当然だね。でも、天外からの客人で、神託に無い出来事ともなれば、少し荒っぽい手段を取る可能性がある事には注意した方が良いかもね」

 

「確かに。アグライアも優しい人だけど、同じだけ聖都の人々を守る為に尽力してるからね」

 

「それで? 救世ちゃん。私に何か用があったのかな?」

 

「はは、世間話は嫌いだったかな? 長夜月さん。もしそうだったのならすまない。丁度話題に出てたアグライアからの伝言だよ……放浪の旅は終わりだ、オクヘイマに戻って来い……とね」

 

 まさかアグライアに呼び出されるとは、正直思っていなかった。

 「浪漫」の半神アグライア。彼女の金糸は敵を縛り、オクヘイマを守護し、そして他者の嘘を見抜く事が出来る。元老院と呼ばれるアンチ火追い達の暗躍や企み、妨害などの対策としてオクヘイマじゅうに糸を張り巡らせ、都市の全てを監視している。

 視力を失う代わりに目以外で世界を見る手段を手に入れ、守護者として立ち、人々の監視をするその在り方は、人ではなく神の視座であり彼女の人間性を徐々に失わせていった。

 

 カイザーケリュドラの後を継いだ彼女は、全ての黄金裔に指示を出せるリーダーとも言える存在である。

 

「ふふ、金織ちゃんは面白い事を言うね。まるで元々私はオクヘイマに属してたみたいな言い方だ」

 

「あれ、違ったのかい? 僕の認識では、敢えて聖都の外で暗黒の潮と戦ってくれている黄金裔だったんだけど」

 

「そこに間違いは無いよ、救世ちゃん。ただ、私は一度もオクヘイマに足を踏み入れた事が無いだけ。ヤヌサポリスですら、実は初めて来たんだよね」

 

「なるほどね。最近ニカドリーの動きが活発になってきたから、いよいよ聖都の護りを固めたいんじゃないかな?」

 

「それが主目的ではあるだろうね……ただ、金織ちゃんの目的がそれだけとは思えないけど。まぁいいよ、折角会えたんだし一緒に向かおうか」

 

「心強いよ。ここからオクヘイマまでの道中だって何があるか分からないからね」

 

 アグライアの目的はなんだろうか。ニカドリーを討伐するのに人手が欲しい、と言うのなら分かる。けれど、このタイミングで呼び寄せる理由は何だろうか。時期の問題で、開拓者達が現れる前にはそれをファイノン達に伝えていた事になる。

 

 何かしらの目的、と言うよりも先の事を考えての事かもしれない。

 

 暫くファイノンと世間話をしていると、大地獣キャラバンの出発準備が終わったようだ。ここからオクヘイマまで、列車組と難民達を護衛する事になる。

 ファイノンとトリビーが気を利かせたらしく、私を紹介しようと声を掛けたのだろう。こちらを見た二人は、まるで時が止まったかのように硬直した。

 

 余談ではあるが、崩壊スターレイルというゲームにおいて主人公となる開拓者は、ゲーム開始時に性別を選ぶ事が出来る。男ならば穹で、女ならば星。そして目の前にいる開拓者は女性……つまり星ちゃんであった。

 この瞬間、穹ホタ界隈、穹キャス界隈、丹ヒア界隈の脳みそが破壊される事が確定した。正確にはもっと多くのカップリングがあるが、まぁ開拓者の性別がどちらであろうが列車組の絆に勝るものは無いので誤差の範疇か。

 

「なの、イメチェンしたの? 色変えでオリジナル発言は悪しき文化だよ」

 

 いきなりとんでも発言が出てきて、思わず笑ってしまいそうになる。開拓者の奇行を微笑ましく眺めていたホタルの気持ちが少し分かってしまった。

 

「なの? 一体誰と勘違いしてるのか分からないけど、自己紹介しておこうか。初めまして、私の名前は長夜月。救世ちゃんや聖女ちゃんと同じく黄金裔の一人だよ。よろしくね」

 

 私は三月なのかとは違うんだよ、と印象付ける為に薄く微笑んでみせると、星ちゃんと丹恒の二人はこそこそと話し始めた。

 自己紹介した人の目の前で内緒話をするのはどうなのか、と思わずにはいられないが、まぁ彼等の中でも混乱があるだろうから仕方ないか。

 

「どうしたの? なの。何か悪い物でも食べた?」

 

「変な事を聞くね。最近悪い物を食べた記憶はないけれど」

 

「すまない、こいつの発言がおかしいのはいつもの事だ。ところで、初めてこいつと出会った時、俺達が何をしようとしたか知っているか?」

 

 人工呼吸、ですかねぇ。脈拍と呼吸も確認せずにいきなりやろうとするのだから凄いものだ。

 それにしても、本人確認の質問が本物長夜月の時と比べて随分と簡単だ。違う人物だと分かってはいるけど聞かずにはいられなかった、といった心情だろうか?

 

「なんだろうね……いきなり頭をバットで殴ったとか?」

 

 私の返答を受けた丹恒の表情は、一瞬の間に落胆と寂寥感と疑念等を混ぜ合わせたような、複雑な姿を見せた。

 

「変な事を聞いたな、すまない。俺の名前は丹恒、こっちは星だ。ファイノン達から聞いているかもしれないが、俺達は天外――オンパロスの外からやって来たんだ」

 

「聞いてるよ。もしかしたら色々勝手が違くて困るだろうけど、基本的に黄金裔の誰かに頼っておけば解決すると思うよ」

 

「ああ、これから迷惑をかける事になると思う」

 

「私の名前は銀河打者!」

 

「銀河打者星? 大分面白い名前してるんだね」

 

「人の名前をいじるなんて最低!」

 

 うーん、この星ちゃん。三つある選択肢の三つ目を毎回選んでそう……つまり平常運転か。これ、アグライアからの尋問の時に平気で三回嘘つくんじゃないかな?

 

「はは、随分と仲良くなったみたいだね」

 

 人の良さそうな顔で爽やか救世主が近付いてくるが、この男。実は列車組の二人をしっかりと警戒しているのだ。

 

「安心して良いよ、救世ちゃん。君が目を光らせていなくても、私と聖女ちゃんがいるんだから」

 

「そうだね。でも長夜月さんやトリビー先生ばかりにも頼っていられないよ」

 

「ファイノンはその二人と知り合って長いのか?」

 

「数百年って所かな。長夜月さんとトリビー先生と付き合いが長いのは、これから行く聖都にいるアグライアじゃないかな?」

 

「あたちたちの付き合いの長さで言えば、千年くらいになるかちら」

 

「あの頃のトリスビアスはほとんど欠けてなかったね」

 

 おお、星ちゃんが凄い驚いた表情をしてる。分かるよ、その気持ち。基本的に黄金裔は普通の年若い見た目をしているし、トリスビアスの分け見達は幼子のそれだもの。実年齢と釣り合って無いから脳がバグるんだろうね。

 しかし、そうか……もう千年にもなるのか。極力影響を与えない様にと陰でひっそりと生きてきたつもりだし、精神が摩耗したのも感じるが、随分と長く生きてきたものだ。

 

「つまり千年前から長夜月は生きていたのか」

 

「そうなるね。貴方達の知り合いとは別人だって確信出来たかな?」

 

「ああ。流石に別れて数日の仲間が千年も放浪していたとは考えにくい」

 

 そもそも列車組の認識では、三月なのかはオンパロスに近付くにつれ謎の体調不良に襲われ、同行出来ないからとカメラを託して休んでいた筈だ。彼等の主観で見れば、別れた仲間がどうしてか違う雰囲気で自分達よりも先にオンパロスに来ており、しかも千年経過している事になる。その辻褄合わせが出来る推論はあるだろうが、丹恒が言ったように考えにくい。

 

 彼等が事実に辿り着くには、オンパロスの謎をある程度解き明かす必要がある。しかもそれは、外部から観測して得られる情報であり、二人の天才の協力を得られて初めて入手出来るものだ。

 

「随分と仲が良いんだね? 言葉の端々から心配している気持ちが感じ取れるよ……オンパロスに来る時にはぐれたの?」

 

「いや、三月は一緒には来られなかったんだ。だからこそ、俺達は三月に似ている長夜月を見て驚いてしまった」

 

「ふふ。もしかしたらその三月ちゃんと私は並行同位体なのかもね」

 

 私の発言に、丹恒は何かを考え込んだ。そして私は失言したと地味に焦る。

 やばくない? 並行同位体とか俯瞰視点とか少なくとも天外の知識有してないと出てこない言葉じゃない? 何とかなるか?

 カスライナと対面した時レベルで冷や汗が流れてきたので、何かを聞かれる前に誤魔化しを入れておこう。

 

「情報収集も大事だろうけど、そろそろ休息を取っても良いんじゃないかな?」

 

 実際ニカドリーに撃墜されて、深淵でその眷属と戦ってさらにオンパロスの情報収集を続けていただろう。激動過ぎて疲れているだろうし休んで良いんだ……もう、休め。

 

 そうさせて貰おうか、と休憩をしに行った二人を見て、私の頭の中では現場猫がヨシ! とポーズを取っていた。勝ったなガハハ!

 

「その三月ちゃんにも会ってみたいかちら。どれだけ月ちゃんに似てるのか気になっちゃう」

 

「同じ顔をした人が二人並んでいたら混乱しちゃいそうだ」

 

「まぁ、その三月ちゃんは一緒には来られなかったって言ってたし、きっと会える事は無いんだろうね」

 

 

 

 大地獣キャラバンの旅路は順調に進み、オクヘイマの全容が見えてきた。どうやらニカドリーが襲撃しているらしく、オクヘイマのあちこちから戦火の痕跡が見て取れた。

 

 異変に気付いた丹恒が未だ眠る星ちゃんを起こし、落下してくる瓦礫をトリビーがオロニクスの神跡で戻し、ニカドリーの眷属から市民を守るべくファイノンと私は飛び出した。

 

 列車組や黄金裔からすれば容易い雑魚であっても、市民からすれば紛争の脅威そのもの。終末世界を象徴するように神に祈りを捧げるだけで抵抗の一つも見せない市民など、中々オンパロスという世界を表現している様子を眺めつつ戦いながら進んでいけば、やられそうになっている山の民ハートヌスの姿があった。

 

 しかし、この場にはクレムノスの王子がいる。敢えてニカドリーと対決しない場所に配置されたモーディスは、市民を守り紛争を撃退しろという命令を、要は敵を倒せば被害受ける市民も減るやろ? の精神でひたすら敵をボコしていた。

 

 モーディスとファイノンが軽口の応酬をしているのを聞きながら思考を回すが、やはりオクヘイマでは水の中にいるような不自由さを感じる。元々大した事ない戦闘力は変わらなくとも、暗黒の潮を操れないのは大きなマイナスだろう。

 最大火力を誇る自爆海月アタックも、暗黒の潮の影響下に有るか無いかで生成速度に大きな違いがある。

 もっとも、オクヘイマで戦う事など今回が最後だと思われるので、まぁ影響は無いと言えるのだが。

 

「もういい……内輪揉めをしている場合では無い、今。まだ退いてない……狂王。奴を阻止しろ、黄金裔……」

 

 ファイノンとモーディスとの剣呑な会話を断ち切るように、ハートヌスが言葉を挟む。

 

「ふん……ニカドリーは雲石の天宮にいる。アグライアが俺にこれ以上手出しをするなと言ったんだ。さあ行け「救世主」よ」

 

 その場をハートヌスとモーディスに任せ、私達は雲石市場の方へと進む。ここにもニカドリーの眷属達は入り込んでいたが、どれも地に伏し動きを止めている。

 

「ファイノン様、長夜月様。それから来訪者のおふたり。ようこそ、オクヘイマへ」

 

「君の足音が聞こえた瞬間、僕の英雄叙事詩は始まる前に終わってしまうのかと思ったよ――キャストリスさん」

 

 暗澹たる手、キャストリス。死のタイタンであるタナトスの片割れであり、前期の黄金裔の同一個体。双子の片割れを捧げる事で突破出来る試練において、自らを犠牲に妹のボリュシアをタナトスとし、再創世の後に妹が様々な犠牲を払う事で生み出した存在。その特殊な生まれから、タナトスの死を司る権能を有している黄金裔だ。

 その特殊性からか、タイタンの言葉を理解出来る貴重な存在でもあり、近付くもの全ての命を奪ってしまうせいで誰かと触れ合う事が出来ない悲しき人生を送っている。

 一応侵食の権能を用いれば、私はキャストリスと触れ合える唯一となり得たが、その立場は開拓者である必要がある。

 

「お久しぶりですね、長夜月様。まさか貴方とオクヘイマでお会いする事が出来るとは思いませんでした」

 

「久しぶりだね、納棺ちゃん。私もここを手伝おうか?」

 

「いいえ、その必要はありません。御三方と同じく私に付いてきて下さい」

 

 キャストリスの放つ死の気配に、ニカドリーの眷属達は近付く事が出来ず、通り道が出来る。中には退く事の無い強い兵士もいるが、造物ごときで止められるメンバーでは無かった。

 

「さあ、ともに英雄になる時が来た!」

 

 ヤーヌスの隠れ道を使う事で雲石の天宮まで飛べば、かつて味わったものとは随分と劣化したニカドリーの威圧感が漂っていた。

 こうして開拓者達にとっては初めてとなるタイタンとの戦いが幕を開けた。




キュレネ、戦闘時はエリシア化していいからホタルみたいにフィールドでは今までのキュレネで居てくれるといいなー
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