長夜月(偽)   作:四末説最後の一つは均衡ってマジ?

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土曜、日曜、祝日。それらをチェーンソーマンの力で消し去ります


レッツゴークレムノス

 この千年間、やる事が特に無い時は大体ぼーっと空を見上げていた。オクヘイマに来て一日も経っていないが、人々の暮らしなんかは一目見れば大体分かるし、下手に助力を求められるのも億劫なので、私はずっと空を見続けていた。

 黎明のミハニによって永遠の昼が続くオクヘイマだが、住んでいる人達はしっかりと時間感覚が刻まれている。夜が訪れなくとも、時間が来れば彼等は眠りに入る。夜時間に動いているのは見回りをする兵士や、彼等向けに営業をしている店の人くらいだろう。

 

 そうやって夜が明け、暫く経った頃にトリビーがやってきた。どうやらアグライアが黄金裔と列車の賓客達を呼んでいるらしい。石版と呼ばれる実質スマートフォンでやり取りをしている彼等だが、私はそれを持っていない為こうしてわざわざ呼びに来たのだと。

 

 いよいよニカドリー討伐に乗り出すようで、当然了承し集合場所に向かえば相変わらずファイノンとモーディスが軽口を叩きあっていた。

 とは言えそのノリも、アグライアの登場によって終わりを告げる。

 

「英雄たち、お静かに。トリアンから知らせが届きました。これによれば、私達の長年の努力が実り、ようやくクレムノスを覆っていた霧を払う事に成功し、その正確な位置が特定出来たとの事です」

 

「黄金裔が待ち望んでいた時が来ました。私達の使命は明らかです――それは、神託の奇跡を降臨させる為、凶暴な天罰の矛ニカドリーを討ち取り「紛争」の火種をオクヘイマに持ち帰ること」

 

「困難な道のりになりますので、全員の意見に耳を傾けてから遠征の人選を行いたいと思います。皆の心に考えがあるのなら、今それをお聞かせください」

 

「僕、エリュシオンのファイノンはニカドリー討伐に赴きたい。それから、異郷からやって来た二人の勇士を推薦させてくれ。彼らは僕と一緒にニカドリーの分身と戦った。その力に一片の疑いもないよ」

 

 私はオクヘイマで休んでいたいな、と相変わらずの星ちゃん節をかまし、丹恒がそれでは開拓とは呼べないな、とやんわり否定する。緊張感と言うものを何処かへ忘れてしまっているような立ち振る舞いは流石としか言えない。

 

「クレムノスのモーディス、喜んで出陣しよう。ニカドリーは長い歳月の中で摩耗し誇りを失った。だが、その力は依然として強大なままだ。勝ちたければ全軍で立ち向かうしかない」

 

「……私も同行したいと思います。死にゆく魂を導いて、少しでも皆さまの負担を減らす事が出来ればと」

 

「あなたの考えには賛同します。神性を全て失ったとはいえ、ニカドリーは軽視出来ない強敵。ですが、皆の命を一度の戦いに賭ける訳には行かないのもまた事実です。暗澹たる手は行方が分からず、晨昏の目は依然として大地を狙っている。サーシスとオロニクスは人間に対する敵意を示している訳ではありませんが……決して侮れない相手なのは間違いありません」

 

「聖都には二人の半神が残るとはいえ、他の全員を送り出すのはあまりにも危険な賭けです。ですので……キャストリス、あなたは聖都に残ってください。前線はあなたの居場所ではありません。戦場は真の戦士に任せるべきです」

 

 アグライアの説得に「……分かりました」とキャストリスは渋々納得する。ニカドリーの脅威を考えるならば、キャスの同行は許した方が良いだろうにアグライアは何を考えているのか。

 クレムノスに現在いるのはニカドリーの眷属だけで、ニカドリーの事を考えても確かに戦力は足りるのかもしれない。聖都に半神二人しか残らなかったら粛清者が動き出す可能性でも危惧していたのだろうか?

 

 それはそれとして、私も一応名乗りを上げておこうか。

 

「深淵の長夜月、微力ながら手伝うよ。恐らく全黄金裔の中で、一番深淵の歩き方を熟知しているからね……クレムノスの現状が分からない状況で、ガイドはいた方が良いでしょ?」

 

 アグライアからのリアクションは無い。どうやらキャストリスと違って特に問題は無さそうだ。

 

「二人の異郷の勇士に関しては……ファイノン、どちらか一人なら同行を許可します。二人の客人を一緒に前線へと送り出すのは、主人のすべき事では無いでしょう」

 

 アグライアの言葉に、ファイノンは数秒も考えずに返答する。

 

「彼女は何種類もの武器を使いこなしてたし、中でも炎の槍は何度も敵の攻撃を防いでいた。僕とモーディスはどっちも攻撃の方が得意だから、戦う事だけを考えると、彼女の方かな……どうだろう、一緒に来てくれるかい?」

 

 丹恒に耐久用装備を持たせれば良いじゃん、と星ちゃんは言うが「今はふざけている場合では無い」と丹恒に咎められた。割と本気で言ってそうな気もするが……付き合いの長い丹恒が思った方が本心なのだろう。

 

「勿論、君さえ良ければだけど。どうかな? アグライア。タイタンの討伐は僕達四人に任せてくれないか?」

 

 ファイノンの確認に、アグライアの視線はモーディスへと向く。

 

「……メデイモス、クレムノスはあなたの故郷。そしてあなたの一族はニカドリーの民でした――しかし、あなたは選んだ……オクヘイマの側につき、神託の為に身を捧げる事を。黄金裔の使命を最も重要な責務とする事を、ケファレの御神体に誓えますか?」

 

「ニカドリーが狂気に屈服した瞬間から、我が一族の神では無くなった。俺は人間の怒りを以って、神の権能を剥奪する。火種、それと空席になる神の座とやらについては……欲しければ持っていけ。神に取って代わる事などに興味は無い」

 

 その言葉を向けられるのは、救世主であるファイノン。恐らく半神の二人以外は、ファイノンこそが紛争を継ぐのだと本気で思っているのだろう。

 

「はは……寛大だね。だけど、情けをかけられるのは好きじゃない。ニカドリーの心臓にトドメを刺すのはこの僕だ」

 

 全員の決意が出揃った所で、アグライアが頷いた。

 

「では、遠征隊のメンバーはこれで決まりですね――エリュシオンのファイノン、クレムノスのモーディス、深淵の長夜月、そして……異郷からの客人。私――黄金裔、オクヘイマのアグライア、モネータの神権を継ぐ半神として、あなた達がこれから歩む道に祝福を。トリアンさんがクレムノスへの扉を開けてくれます。金糸が、あなた達の行路と帰途を導きますように」

 

 アグライアの激励を受け、クレムノスから帰還していたトリアンと会話をする。ファイノンから彼女達はオクヘイマきっての門職人だと紹介されるが、百界門を作れるのはヤーヌスの半神だけでは無いのか? と疑問に思う。ほぼ完璧に作れるのは――との紹介だったので、もしかしたらオロニクスの神跡のように、適性を持つ人間が複数揃って儀式か何かをすれば開けるのだろうか?

 オクヘイマに来たのもヤヌサポリスに行ったのも初めてだから実は分からないんだよね。

 

 ともあれ、星ちゃんは三月なのかのカメラを託され、開かれた百界門によってクレムノスへと移動した。

 

 

 

 辿り着いたのは、クレムノスでも精鋭達が集まっていた場所。モーディス曰く、かつてのままならば二十メートルも進めずすり潰されていたとの事。

 まだニカドリーを狂気に堕とそうとする前に、かのタイタンの状況を見ようとこっそり訪れた事がある。その時に見た戦士達の屈強さは、確かに凄まじいものを感じた。流石は孤軍となっても優秀な戦力として頼られるだけの存在だと、遠目ながら感心したものだ。だからこそ、王の翼アナクス率いる火器の時代クレムノスは結構見てみたいとも思うが……まぁ、アナクサゴラスがいるだけでそれはもう凄いんだろうな。

 

 ニカドリーの場所に向かうまでに、ファイノンはモーディスに勝負を持ちかける。どうやら敵の討伐数を競って、勝者がニカドリーへのトドメを刺す権利を得ると。もっともそれはファイノンの気遣いであり、モーディスが自らの故郷に思いを馳せる時間を与える為のもの。とは言え一対三では流石に理不尽だろう。という事で、二組に別れた彼等とは別行動をする事にした。

 意外と「まぁお前なら大丈夫か」みたいな態度で受け入れられた。深淵出身なんて嘯いたからだろうか?

 

 暗黒の潮のあるエリア――深淵と呼ばれる場所ならば、私は化身としての能力を十全に活かすことが出来る。暗黒の潮とは、世界も神も滅ぼす壊滅の方程式。つまりは暗黒の潮でオンパロスを滅ぼすという過程こそが、鉄墓に学習させる為のものであり、その滅亡を数多に繰り返す事で壊滅の方程式を学ばせ、壊滅の第一原因を究明させるのだ。

 飲み込み、侵食し、壊滅させる。或いは変質させる事こそが壊滅の権能、つまりは暗黒の潮の本質である。そしてそれはデータ世界におけるバグであり、目に見える情報は捉え方次第で千差万別となる。

 まぁ、つまりは。汚染された地域は私の支配下も同然であり、その構成情報は自由自在に書き換える事が可能なのだ。そしてこれは私の侵食の権能ではなく、暗黒の潮に備わる力である。クレムノスもそれなりに汚染されている以上、私にとって壁も吹き抜けも落雷降りしきる鎖の上も、全て等しく道となる訳で。道無き道を突き進めば救世主も開拓者も不死の王子も置き去りに、ニカドリーのいる場所まで辿り着いてしまう。

 

 深淵の歩き方に一日の長がある、だなんてアグライアに言ったけれど、まぁ私からすれば深淵こそがテリトリーな訳で……健全な黄金裔達の為のガイドは出来るけれど、その道は私がいる時にしか通れないという。

 

「……大分弱くなったね、ニカドリー。数百年前の貴方はまだ威圧感も凄かったのに」

 

 黄金裔すら怯ませる紛争のオーラは、確かに放たれている。影響を受けた相手は心を飲まれ、進む事さえ困難となる。しかしそれも、この程度では無かった。今ではもう、かつての恐ろしさは欠片も無い。

 

「これじゃあ完全体になったとしても、そこまで強くないんだろうね」

 

 当然強くはある。黄金裔一人では勝てないだろうし、モーディスが一人で戦い続けたとして何度も死ぬ結果になるだろう。しかし、全盛のタイタンとは破格だったのだ。ましてや紛争ともなれば尚更に。かつて戦った強敵が見ていられなくなると言うのは、中々に寂しく思うものだ。

 

 暫く待っていると、残りの三人が現れた。彼等は私を見て一瞬驚いたが、やはり謎の納得をされるだけに終わった。

 

「そう言えば、長夜月も何かしら特別な力があるの?」

 

 合流した星ちゃんが急に聞いてきた。ファイノン辺りに何かを聞いたのだろうか?

 

「急にどうしたの?」

 

「ファイノンが、モーディスには不死の力があるって言ってた。黄金裔には何かしら特別な力があるんだって」

 

「だから余計な事は言うなと言っただろ救世主」

 

「別に隠すほどの事でも無いだろ? 何せ力を合わせて戦う戦友になるんだから」

 

「ああ、なるほどね……」

 

 特別な力がある黄金裔は、果たしてどれだけ居るだろうか。私達は皆壊滅の血が流れており、そこから確かに強く特異な存在にはなっている。けれど、異能とも呼べるものを持つのは思い返すだけでも数人くらいだ。

 

 周囲一帯を蒸発させてしまえる程の熱量を秘めたファイノン、タナトスの廃棄データの影響を受けて擬似的な不死となったモーディス、種族的なものではあるが聞くものを酩酊させる歌を歌えるセイレンス、治癒の力が使えるヒアシンシア。後は実質タナトスの権能を使えるキャストリスか。

 金糸を操るアグライアや百界門を開けるトリスビアス、飛翔する幣を投げている間認識よりも速く動いて目的地まで移動可能なセファリアなども居るが、彼女達のその能力は全て半神となって得たもの。ケリュドラに関しては敵対者をチェスの駒にしてしまう描写こそあったが、法の火種自体は既に手に入れていた以上彼女自身の力だとは断言出来ない。ましてやアナクサゴラスなど地頭が良すぎるだけだ。

 決して黄金裔全員が特異な能力を持っている訳では無いだろう。セネオスなんてただ強かっただけだし。

 

「まぁ、一応私にもあるにはあるよ。これなんだけどね」

 

 そう言ってから、クレムノスの建物に残っていた土と植物を侵食し、海月へと変化させる。

 

「これ食べれるの?」

 

「食べたらドカンだね。海月として作ってるけど、実際は爆発物だから」

 

「聞いた話ではあるけど、長夜月さんは周囲のものを海月に変化させられるんだ。それは暗黒の潮も例外じゃなくて、だからこそ深淵の領域で活動を続けられたんだ」

 

「そういう事だね。ただ、タイタンの神権とかが絡んでる物は無理だよ。それこそクレムノスの建物だって、ニカドリーの所有物扱いだからどうしようも無いしね」

 

 嘘だけど。

 

「無駄話は終わりだ。俺達は一刻を争う状況で、ニカドリーに引導を渡しに来たんだ」

 

 話を切り上げ、モーディスが歩を進める。視界すら染め上げるようなニカドリーの威圧感を前に、彼の表情は一切の揺らぎすら見せない。

 同じ様に進んだファイノンは、ニカドリーの放つオーラを前に胸を抑えた。

 

「忘れるな、俺たちがここに立っているのは、お前がニカドリーを倒したいと切望しているからだ。覚悟とやらを見せてみろ」

 

「さすがに、いつもの戦いのように思うのは難しい。僕の使命、存在意義……僕は全てをここに賭けたんだ。お前だって忘れられないだろう? 一族の苦難……侵蝕された故郷を」

 

「当然だ。だが、俺はある武器を手に入れた――お前には理解出来ないだろうと思うがな。悔いも怒りも掌握し、その全てを研ぎ澄まして己が為に振るう……殺意、それがこの武器の名だ」

 

 お前には理解出来ない、か。完全な器たる黄金裔であるファイノンは、とある欠陥を抱えている。そしてその戦友たるモーディスは、その事をきっと理解しているのだろう。

 モーディスはしっかりと殺意を持っているのに、ファイノンはそれを持っていないのだ。カスライナであれば持っているが、ファイノンは未だ完成されてない。だからこそ、爽やか救世主で居られるのだろう。

 

 普通ならば、故郷を暗黒の潮に飲まれ、大切な幼馴染を黒衣の剣士に殺されたのなら、もっと私怨を抱えて動くものだ。けれど救世主たるファイノンは、人々の為だけに動く。紛争の試練で我を失う辺り、憎悪の塊であるが故に零か百しか無い男だ。

 

「はは……君は獣みたいな奴だな。でも今は、心の中に潜む獣に従うべきかもしれない」

 

「朽ち果てた神よ! 俺と相対し、終焉を迎えよ! 我はクレムノスの子、神託を受けし黄金裔――我が千の傷、百の命を以って、貴様の叙事詩に栄えある死を刻もう!」

 

 

 

 モーディスの啖呵を皮切りに、ニカドリーとの決戦が始まった。

 前衛三人後衛一人と、何ともバランスが悪いパーティーではあるのだが、流石は一騎当千の英傑達。拳で戦うモーディスが攻め、その陰となるように柔軟に立ち回るファイノン、そして二人に危険が及びそうになれば存護の祝福が宿った建創者の槍で星ちゃんが盾となる。元々本来ならば三人で戦うのだから、それだけでも十分に押し切れる。

 そこに隙を見て、私が海月を自爆特攻させる事で着実にダメージを重ねていく。とは言えガンガンいこうぜとばかりに攻め続ける三人がいるせいで、海月の自爆は威力を結構抑える必要が出てくるので活躍度合いで言えば私が一番働いていない。

 

 だがそれでも、弱体化したニカドリーは徐々に押されていき、やがてモーディスの拳によって膝を突いた。

 しかし、ここで何度敗北しようともそれはニカドリーの想定内である。戦士の魂達が天罰の鋒へと流れ込み、莫大なエネルギーを溜め込んでいる。ここでの勝敗に関わらず、ケファレの神体をそれで撃ち抜く算段のようだった。

 

「救世主、英雄になるチャンスをやる」

 

 モーディスがここに残りニカドリーに天罰の鋒を振るう暇を与えず牽制し続け、ファイノンと開拓者に二人の半神にこの事を伝えるように頼む。当然ファイノンは残ろうとするのだが――

 

「ここは私に任せて、救世ちゃん」

 

「お前も行け、長夜月」

 

「それはダメだよ王子ちゃん。貴方一人でもニカドリーの牽制は可能だと思うけど、撃たれたら一巻の終わりな以上万が一は潰さなきゃいけない」

 

 私の説得に舌打ちをしたモーディスは、好きにしろと言った。

 

「そういう訳だから、お願いね」

 

 星ちゃんの肩に手を置いて、目を合わせる。貴方達に全てを託すのだと、真摯に訴えかける。本心ではあるが本題では無く、星ちゃんの肩に触れた右手とは別に、左手で彼女の服の内側に仕込みをする。

 

 頷き走り去っていく二人を見て、モーディスは更なる決意表明を口にする。

 

「死に拒絶された者同士の戦い――世にこれ以上公平な勝負は無いだろう? まぁ、此方には一人余分がいるが……相手がタイタンであるのなら丁度いいハンデだろう」

 

「来い! 王座に就けなかった王と神格を失った神! 今ここで――天地が滅びるまで殺し合おうじゃないか!」

 

 瓦礫が退路を塞ぎ、二人の黄金裔と一人のタイタンの死闘を妨げるものはもはや何も無くなった。

 これより始まるのは、互いに命を捨て合う殺し合い。永遠にも続く修羅道の理だ。




実際偽夜月がいる世界線だとどんな掲示板になってるんだろうなぁって妄想したりしてる。
間違いなく考察勢の頭を悩ませるし、どうして実装しないんだってプレイヤーから思われてる。
実際偽夜月はプレイアブルになるどころかエネミーとして出ると思うんですけどねー!愉悦愉悦
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