ラブコメの主人公を評価する前に   作:冴木甲士

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第12話 卒業について

 原作においては、好きな人が嫌いな人と仲良くしていた場合の心境や行動が、しばしば取り沙汰されている。

 赤石と櫻井・鳥飼は「敵」と形容しても差し支えないほどに互いを嫌っており、この三人に関する上記の描写が顕著だった。

 赤石は八谷に対して櫻井と仲良くしていたことが耐えられないという理由で告白を袖にしてしばらく疎遠となり、また上麦に対して鳥飼の幼馴染だという理由で修了式以後に一時的に断交していた。

 櫻井は八谷をはじめ自身の取り巻きの誰かが赤石と仲良くする度に赤石を攻撃し、鳥飼は自身の幼馴染の何人かと赤石を離間するために例の凶行に走った。

 

 それゆえ、赤石はその辺りの機微には敏感でもあった。

 

 今自分のクラスの教室にて、暮石は赤石に謝ってまた自分との交流を再開しようと持ち掛けている。

 宮城はそんな暮石を心底憎み、赤石に代わって暮石と論戦している。

 

 元より暮石を修了式の件で許すつもりなど、赤石にはなかった。

 本気で助けてほしかったときに自分を信じず「気持ち悪い」と言って突き放した時の記憶は、今でも鮮明に残っている。

 

 それに加えて今ここで暮石を許してしまえば、宮城は赤石と縁を切るかもしれなかった。

 暮石のことをどうしようもなく嫌っている宮城が、自分の元を離れてしまうかもしれなかった。

 

 要は宮城と暮石、どっちを取るかだった。

 そして、今の赤石にとって、どちらを選ぶか決まりきっていた。

 

「暮石、俺にもう関わるな。消えろ」

 

 赤石は、暮石との縁を正真正銘、断ち切った。

 そのときの赤石の心情を、宮城は知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 暮石は、不登校になった。

 赤石との関係修復が失敗に終わり、なおかつクラス内で友達だったはずの相手から突然縁を切られ、後ろ指を差されながら孤立する生活に暮石は耐えきれなかった。

 

 もしこの学校に鳥飼がいたら、もっと状況はマシだっただろう。

 鳥飼が全ての罪を一身に背負うつもりで、暮石を庇護してきただろう。

 

 そんな真似を宮城が、許すわけなかった。

 宮城にとって最も始末したい人間は暮石であり、鳥飼への攻撃については最悪失敗してもそこまで気にすることはなかった。

 だが暮石だけは、できるだけ徹底的に苦痛を味わわせてやりたかった。

 

 だから、鳥飼を先に退学させた。

 鳥飼が学校の生徒でなくなれば、校内で不遇を囲う暮石を守れるはずなど、到底なかった。

 鳥飼など宮城にすれば、真打ちの暮石に対する前座に過ぎない雑魚だった。

 

 暮石と鳥飼の幼馴染である上麦には、悪いことをした。

 上麦が塞ぎ込んでいた時期もあったが、それでも赤石との縁を選び、赤石達と楽しい日々を過ごすうちに、上麦は少しずつ元気を取り戻していった。

 上麦も、遅かれ早かれこうなることは、心のどこかで覚悟していたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 そして日々は過ぎ、赤石達三年の卒業式。

 原作と違い、暮石も鳥飼も参加していなかった。

 一方、原作と同じく、ある事件が霧島の手で引き起こされた。

 

『まさに今、君たちにとんでもない秘密を暴露したよぉ。リアルタイムでまさに今、さ』

 

 痛快。

 実に痛快。

 

 宮城は、スマホに送られてきた「櫻井聡助の歴史」を見て笑いをこらえていた。

 

 平たく言えば、高校時代の櫻井の人物史。

 一人の人間がここまでのことをやらかせるのか、と呆れるような櫻井の行状がずらりと並んでいた。

 そして、原作には無かった項目が、新たに付け足されていた。

 

『櫻井聡助は体育祭で、観客の大学生を階段の上から突き落とした』

 

 赤石への病院での暴行、女子銭湯への侵入に並びしっかりと生徒達の耳目を集めていた。

 

 ちなみに宮城が赤石達とともに打ち上げ会場のことで打ち合わせる中。

 

「僕はね、聡助。君のことが昔っから、嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで、嫌いで仕方なかったよ」

 

「三年間我慢し続けた僕が三年間の末、君を地獄に叩き落とす。そんなの、最高じゃないかぁ」

 

 櫻井は霧島と対峙し、その陰で櫻井を追及する女子生徒達が一部始終を動画に撮影していた。

 その折に、

 

「聡助が体育祭で大学生を階段から突き落とした時の動画」

 

 霧島は宮城に渡された動画を再生させていた。

 原作では偽物の証拠を披露していたが、ここでは本物の証拠がばっちりと櫻井および物陰で見ていた生徒達に、見せつけられていた。

 

 原作と差異が出たシーンであった。

 

 

 

 

 

 

 宮城の計画は、仕上げに入っていた。

 

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