赤石の敵達に報いを与えるという宮城の計画は、大成功に終わった。
櫻井は卒業式の後に退学させることができた。
本音を言えば刑務所送りまで確定させたかったが、原作においてどうにも親か誰かに事件を揉み消されている気配が、櫻井にはあった。
そんな相手にあまり強く干渉するのは分が悪かったのと、宮城が原作を今まで追ってきた展開から推測するに、櫻井はどの道将来ろくな末路を辿らない、という予感がした。
だから宮城がやるのは霧島に便乗して櫻井を退学させるまでに留めた。
鳥飼も櫻井と同じく退学の上、警察沙汰にさせることに成功した。
奴とて立派な犯罪者だ。原作においては被害者たる赤石が周囲の圧力もあって不本意に許してしまい、鳥飼もそれ以上の悪事は働かない気配があったため、司法で裁かれることはないと宮城は踏んでいた。
宮城が転生したこの世界ではそうはさせじと、鳥飼が警察のお世話になるよう奔走した。
暮石は、赤石との関係を破綻させ、赤石と同じ目に遭わせることができた。
櫻井や鳥飼よりも遥かに憎たらしかったこの悪鬼を駆逐すべく、宮城はこの計画を立てた。
原作通りの展開となれば、赤石はもはやどういう結末を辿るかわからなかった。
原作だと主人公がハッピーエンドを迎えるか不明瞭な世界観だけに、宮城は不安でならなかった。
櫻井や鳥飼の件をしくじったとしても、暮石だけは全力で排除することを宮城は念頭に置いていた。
一方で、宮城は思う。
ここは、やはり原作とは違う世界なのだろう。
宮城が本格的に干渉する前は原作と同じ展開になっていったが、干渉した後は自ら意図したこととはいえ、原作の展開からある程度外れることになった。
卒業直前で赤石に許されて卒業式にもちゃんと出席していた暮石と鳥飼は、卒業式に一切その姿を現さなかった。
その後の卒業旅行にしても原作では上麦が赤石に暮石と鳥飼を誘っていいか許可を求める場面があり、この世界でも上麦より赤石、須田、宮城へ卒業旅行の話が出たが、上麦は暮石と鳥飼のことに一言も触れなかった。
前にも触れた通り、仮に原作と全く同じ展開を辿ったとしてもここが原作と同一の世界である保証など、全くない。
むしろ前世、もとい宮城の生きていた世界で宮城は半死半生の状態であり、その宮城が見ている長い夢の世界だとした方がまだ自然にも思える。
何せ、宮城の計画は穴だらけだった。
霧島は取引を守り暮石と鳥飼の件に干渉しなかったが、奴がそれを反故にする可能性はあった。
櫻井の退学は校長がこちらの意見を取り入れてくれたから成立したものの、校長が何かしらの理由で処分を見送っていればこれ以上宮城には何もできなかった。
鳥飼は宮城の脅迫に屈したが、鳥飼も同様に宮城の脅迫を録音していればこちらの優位は揺らいでいた。
暮石は予想外にすんなりと身を引いたが、あのまま論戦を続けていれば結果はもうどう転ぶのか知れたものではなかった。もっとも、暮石の場合は失敗したらそのときこそ遠慮なく殺そうとも思っていたが。
そもそも、原作通りに事が運ぶことが前提の時点で、原作と異なる展開を辿っていれば全ては御破算になっていたザルの計画だった。
所詮は原作を愛読していただけの素人に、抜かりのない緻密な計画など立てられるはずもなかったのだ。
それでも、全ては宮城の計画通りに推移していった。
宮城の望む通りに、展開は歪んでいった。
宮城の夢の世界であれば、宮城の望む通りになっても、おかしくないんじゃないかと思った。
しかし、今の宮城にはこの世界の正体なんてどうでもよかった。
転生した世界だろうと夢の世界だろうと、せっかく自分が好きな作品にそっくりな舞台へ来た以上、目一杯楽しもうと思った。
宮城は、そんな楽天家だった。
卒業旅行初日の夜。
原作では、赤石に好意を寄せていた高梨が、告白を決行する日。
偶然にも一歩先に告白を仕掛けた暮石に高梨が先を越された場面。
宮城は、赤石にスマホでメッセージを送る。
『お前の部屋に遊びに行っていいか』
赤石から、返信が来た。
『これから外に出るから統貴しかいないぞ』
『待て、早まるな。考え直せ』
『自殺しに行くわけじゃない。星を見に行くだけだ』
『何だそうか。あまり遅くならないうちに帰るんですよ』
『母親か』
そんなやり取りを交わした後、宮城は別の相手にメッセージを送った。
『赤石が星を見に外に出る、てよ。黙って赤石の元へ行って驚かしたら面白いんじゃないか』
八谷、上麦、船頭の三人に個別のダイレクトメッセージで宛てたものだった。
この卒業旅行に、暮石は来ていない。
このまま行けば高梨は赤石に告白し、多分交際が成立するであろう。
別に高梨が嫌いなわけじゃないが、どうせならあの三人が介入するような展開も見てみたい、と宮城は三人を焚きつけた。
宮城が八谷、上麦、船頭に赤石との関係を促すのは、この世界に来てこれが初めてだった。
あの三人は、果たしてどう動くのか。
赤石の元へ向かうか、それとも何もせず部屋に留まるか。
後は当人達に任せればいい、と宮城は傍観することにした。
これにて完結とさせて頂きます。
ここまでご愛読頂きまして、どうもありがとうございます。
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