宮城にとって二年になってからの高校生活は充実したものとなった。
赤石がクラスメイト達のいじめから八谷を救った一件。
赤石がクラスメイトにして恩人でもあった
前世にて好きなシーンを肉眼で見ることができて満足していた。
無論、好きなシーンの全てを目撃できるわけではなかった。
文化祭にて赤石が一時喧嘩していた八谷と仲直りするシーンなど当事者だけの空間で繰り広げられる展開については基本見ることはできなかった。
それらを全て見るとなれば常に彼らの動向を逐一追わなければならず、完全にストーカーの状態となってしまう。
赤石や他に好きなキャラクター達から嫌われ疎まれる真似だけはするまい、と宮城は自然に傍観することのできるイベントを楽しんでいた。
そして、二年の秋に体育祭を迎えた。
宮城にとっては自身の計画を成し遂げるための、大事な日でもあった。
最終プログラムのリレーにて赤石、櫻井のいる二組の
「今の言葉、撤回しろよ」
「……」
櫻井が新井と付き合いのある大学生、
この当時の櫻井は幼馴染である
水城と同じく櫻井の幼馴染であり、かねがね櫻井に好意を寄せていた新井は二人の交際に衝撃を受け、その現実から逃避するようにクラスメイトの
新井の活躍を観覧席から見ていた山田および友人の大学生達が新井のことを「チョロい」と形容したことに怒った櫻井が山田に前言撤回を求めている……というのが現在宮城の目の前で繰り広げられているシーンであった。
櫻井の怒りにも一理はある、と思う。
複数の異性と下心ありきで遊び倒している山田達大学生の行為も決して褒められたものではない。
まして山田も後の話にはなるがとある重犯罪に手を染めている。
そこだけを見れば心理的には櫻井の側を支持したくもなるだろう。
「由紀の気持ちを、なんだと思ってんだ、てめぇ!」
でもそれは、櫻井が罪を犯さないことが大前提だ。
櫻井は階段を降りようとした山田を押し、階段から転落させた。
山田は顔中に傷を作り、血まで流れていた。
原作を読んで知っていた場面だが、肉眼で見ると文字の形をした情報として受けるのとは比べるべくもない
「本当に、君はどうしようもない男だね」
山田が、櫻井に語る。
暴力で物事を解決しようとするガキに対して大人の余裕を見せたかったのだろうか。
櫻井にいくつか言葉を返した後、山田は服についた砂埃を払って
「君に、大きな天罰が下りますように」
と祈り、その場を立ち去っていった。
宮城は一部始終を手持ちのスマホで撮影していた。
撮り漏らしは、無い。櫻井のことは十分に認識できるほど鮮明に写し、櫻井が山田を階段から突き落とす瞬間もばっちりと捉えていた。
再生した動画の質に問題が無いことを確認した宮城は、ほくそ笑んだ。
基本ハイペースで行きます