異世界転移、地雷持ち。 作:匿名
GWだから更新します。
多分続かない。
キノコって見た目ヤバいよな。
魔法の実験が上手くいき、もうそろそろでLv.1程度なら使えるようになるのではないかと期待が膨らんできた今日この頃。
平原での魔術実験の後は、普通に森の中層での活動を再開した。やはりこちらの方が稼ぎは大きいのだ。
そして森での活動中、何体かヴァイプ・ベアーを見つけてその全部を狩っている。森の浅瀬には全然出てこないが中層以降だと結構な数を見つけられた。まぁ【索敵】が優秀というのもある。
ヴァイプ・ベアーは如何せんデカい。マジックバッグのおかげで、一体狩ったら即帰還という事態にはならず、薬草などをいつも以上に集める事が出来ているが解体にも時間がかかる。おかげで収入はかなり上がったけれど。
今日は朝にギルドへ来ていて、掲示板の情報を確認していたのだ。その中にマジックキノコについて記載があった。
マジックキノコ。
食べると幻覚を見るキノコで、痛み止めの材料として有名でギルドでも買い取りをしている。倒れてから1、2年の木によく生えており、ヴァイプ・ベアーの好物で森林で採取をする際に、よく鉢合わせるらしい。
生まれて若い……傘が3センチ未満に価値は無く、逆に傘が10センチ以上になると希少価値が跳ね上がり、買い取り額も相応になるらしい。
そんな素晴らしいキノコが生えているとなれば手に入れない道理は無く、ギルドである程度情報収集を済ませた後、俺は森の中層付近までやってきていた。
マジックキノコは思いのほか早く見つかった。
見た目がヤバかった故の冒頭だ。
真っ白で茸が長く太い。
見るからに毒ですよという主張が強い。
「これがマジックキノコね……【鑑定】」
『マジックキノコ 麻酔薬の原料
傘の大きさが3センチ未満は価値がない、
10センチ以上は非常に価値がある 』
資料で見たとおりだ。
倒木にかなりの数が生えているが、その多くが3センチ未満で実際に取れそうなのは20個程だろうか? それでも10センチ級が一つ生えており、買い取り額が非常に楽しみになってくる。
倒木から生えている売れるキノコを回収し終わったら、目印だけを付けて別の場所に移動する。
というのも、先程話したヴァイプ・ベアーを何体か倒したという件。もしかしなくてもマジックキノコを狙ってきたのではないか?
キノコの旬は夏終わりから秋の始まりにかけて、ちょうど現在の気候がぴったりとあてはまる。この世界の季節についても地球と変わりなく、これから徐々に寒くなって冬が始まってくるのだとか。
話を戻してヴァイプ・ベアー。
マジックキノコ目当てでやってきていた彼らを、知らなかったとはいえ見つけた端から倒してきたので、運が良ければ手つかずのキノコたちが確保できる可能性が出てきたのだ。
マジックキノコの採取をして、合間に薬草類も回収。そのついでに最近よく見かけるようになったゴブリンの上位種であるホブゴブリンを討伐した。
◇
「それで、この数ですか?」
「はい。結構頑張りましたよ」
「それは…………そうでしょう。ここまで多いとなると、カウンターでは対応が難しいですね、裏に行きましょうソーマさん」
限界まで頑張って集めた今日の稼ぎ。
夜遅く、深夜まで受付とブラックここに極まれりな冒険者ギルドに帰還した俺は、いつもの受付嬢であるケトラ嬢へと素材を提出した。
あまりに数が多いため、ギルドの裏手にある倉庫のような場所に連れていかれたんだが。
「それにしても凄い量ですね。もしかしてマジックバッグですか?」
「その廉価版ですかね。『時間遅延』が付いてない分、安く買えました」
「あぁ。その日のうちに持って帰れれば、あまり関係ありませんからね」
そう言いながら、マジックバッグに詰め込んだ大量の薬草類やマジックキノコ、ホブゴブリンの魔石に討伐したヴァイプ・ベアーの毛皮などを放出していく。
「それにしても、マジックキノコがこんなに」
「ヴァイプ・ベアーが食すはずだったモノですからね。俺は数日、かなりの頻度でこいつらを倒してたんで、残ったのでしょう」
「なるほど。確かにソーマさんから買い取らせて頂いたヴァイプ・ベアーの素材は結構な数になりますね」
そして素材を出し切った後は、こちらで精査するとギルドのカウンターまで戻されて、手持ち無沙汰な状態になってしまった。
それにしてもマジックバッグ(偽)の影響はかなり大きい。普段なら体力の都合で抑えていた規定量以上まで採取して詰め込んでも、全く重さを感じないのだ。これなら気にするのは装備の重量だけで、限界まで素材を回収する事が出来るようになった。
生活の質を向上させる為に行った雑貨屋だったが思わぬ買い物が出来た。いや、冒険者活動も生活の一部なのだから、ある意味正しいのか。
「お待たせしました」
暇な時間を身体の中で魔力循環する訓練に充てて待っていたところ、ケトラ嬢は予想より早く戻ってきた。
「毎度のことですが間違った薬草や無駄な傷が無く、丁寧な採取や狩猟をしてもらってありがとうございます」
「いやいや、こちらも仕事ですから」
「冒険者の方々は、それが出来ない人も多いんですよ? っと失礼しました、今回の査定の結果が出ました」
【鑑定】先生が偉大過ぎて忘れていたが、普通に駆け出しぐらいの冒険者は、そういった知識を持っていることが少なかったり、戦闘でもヴァイプ・ベアーは脅威なのだ。
俺は一度戦った
「まず、ヴァイプ・ベアーの毛皮含めた素材ですね。ほとんど傷が無く、解体も丁寧でしたので18000レアになりました。次に薬草類。こちらも全て問題なく、量も多かったので14400レアです」
査定の書かれた書類を読み上げられる。
いいね、これだけでも一日分の稼ぎとしては申し分ないぐらいの成果は出ている。
「そして本命のマジックキノコですね。すごいことに傘が10センチを超えているモノが5つもありました。全体数も50近くありましたので合計で131000レアになります」
ふぁ!?
…………びっくりした~。
一気に桁が跳ね上がったぞ。
「あはは、驚かれますよね。ですが、傘が10センチを超えるモノは本当に希少で、それが今回は5つもありましたから。それだけでも7万レア近くありましたよ。そして残りのマジックキノコも全て規定値以上の大きさでしたので大体1000~1500レアです」
なるほど。確かに回収したマジックキノコは全部で50ぐらい。10個が7万で残りの40個で6万と換算すれば、あり得ない額では無い。
「あと、少し気になったのが魔石です。内包されている魔力量を鑑みるにホブゴブリンかと思われますが、こちらは逸れを討伐されたのですか?」
「いや、基本的には3~7くらいの群れだったよ。遠距離持ちが居なかったし、あの程度なら囲まれても十分に対応できるから」
「お見事です。その数の相手にして無傷で勝利出来るのでしたら、ランクアップをしても良いかもしれませんね」
ランクアップ!
冒険者登録した時が0で、魔物を討伐して魔石を回収出来たら1に上がって初めてルーキーと呼ばれる。
そしてランク2となればオークを単独で倒せるぐらいの力量であることが想定されているのだとか。
ホブゴブリン単体であればオーク以下なので当てはまらないが、複数体同時に相手して問題なく勝利を飾れるならオーク相手でも勝てるだろうという判断らしい。
それと納品系の依頼を結構な数、熟しているので、そこら辺の貢献もあるのかもしれない。
まぁ、ランク2は駆け出しと呼ばれて、調子に乗って死にやすいのもこの辺らしい。気を引き締めないとな。
「更新もこれで大丈夫ですね。さて、ホブゴブリンの魔石換金分も含めた全部を纏めた袋がこちら、合算で176600レアです」
大漁だ。
先日の買い物による出費の大半が賄われたんじゃないか? マジックキノコ様様だな。
ドサッとした重たい音を立てながら渡される大量の硬貨が入った袋。枚数で言えば金貨170枚ぐらいか、凄まじいな。
「お疲れ様でした。明日もよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしく頼む」
金貨がパンパンに詰まった袋を携えて宿に帰還した。
俺は、さっそく魔法も鍛練する。
もう少しでLv.1なら使えると思うのだよ。
筋トレや普通の鍛練は前世の頃からしてきたので特に苦は無かったのだが、数週間続けても進展、成長の兆しすら見えなかった魔法には少し飽きが入り始め、そんな中ようやく目途が立ち始めた。
一分一秒を惜しんでいられない。
◇
その日以降、キノコが生えやすい季節だということで、マジックキノコや売れば高値で売れる薬草類を中心に採取し始めた。
既に知ってる場所は粗方取り尽しており、残っているのも3センチ未満の無価値キノコだけだ。だから、中層でまだ行っていない色んな所を回ってきた。
安全マージンよりも世の中お金だぜぇ。
という冗談もほどほどに、中層の魔物、動物であれば群れで来られようと問題なく対処できており、ギルドの資料でも中層で活動できるなら、森の深奥に行かない限り問題ないと言われている。
実際、出てくるのはホブゴブリンの群れだったりヴァイプ・ベアーなどの俺一人でも十分に倒せる敵ばかりだ。だから、高値で買い取ってもらえるマジックキノコをコンスタントに手に入れ、初日程ではないが今までに比べたら凄まじい額の報酬を入手出来ている。
ついでに地図も作成しており、中層でも未開拓領域が広くあるペトラス以西の森の詳細を書き記している。どうやら高く売れる…………らしい。
ケトラ嬢の情報だ。おかげで【マッピング】というスキルが生えたのには驚いたけどね。
そうして今日もありがたいことに新しい倒木を発見し、マジックキノコを回収し終え、何体か魔物を狩って帰ろうかと考えていた時。
◇
「……ヴァイプ・ベアーより大きい奴は初めて見たぞ」
【索敵】の範囲内にヴァイプ・ベアーより少し強い反応を持つ存在を感知したのだ。あれ以上の強さを持つ生物とは対面したことが無かったので、これを機に確認してみようと接触を試みた。
「こいつは見るからに
見た目はずんぐりむっくりで体高数メートルはあるだろう大型の人型魔物で、手には棍棒を持っている。
それを最近レベルアップした【看破】で確認した。
『トロール 状態:正常 少し強い
知力が低く動きが鈍いが、攻撃力が高い
攻撃魔法に耐性有り 』
おっ、【看破】のレベルが2になったことで、ちょっとだけ情報が増えたな。しかも結構有用な事が書いてある。
幸い攻撃魔法なんて高度な技を持ってないので、関係なさそうではある。
さてさて、トロールですか。
【索敵】の反応を見るにそこまで脅威って訳でもなさそうだが、周囲に危なそうな反応も確認できないし、こいつと戦ってみるのも全然アリだな。
「お相手、願おうか?」
「ッ! ゴアアアアッ!!!」
俺が武器を構えると、トロールもそれを理解したのかしていないのか、こちらに向かって大きな叫び声をあげた。
そのままこちらへと走ってくるが…………走っているのか? ものすごく鈍重な動きで、のっしのっしと早歩きみたいになっているけど。
ちょっと様子を見ようかな。基本的に大振り一択な感じだけど油断は禁物だ。初見戦闘なら安全マージンはしっかり取ろう。
近づき距離が一定以上まで縮まると、トロールは持っていた大きな棍棒を振り上げて俺めがけて叩きつけてきた。
予想出来ていたし、想定以上に動きが鈍いので余裕をもって余波圏内からも逃れられた。
雑魚──いやいや、危ない危ない。相手は一応ヴァイプ・ベアーより強い敵、こんなところでフラグを立てたら回収されかねない。
…………でも攻撃魔法効かないらしいし、いい感じに魔法の練習台くらいにはなってくれそうだな。
「ゴアッ! ゴォアアア!!!」
そして相も変わらず、先程と同じようにのっそりのっそりとこちらに向かってくるトロール。その姿には、何かしらに意図があるようには見えない。
「知力が低いのは本当っぽいな」
両手でハルバードを握りしめ、今度はこちらから駆け出す。方向は棍棒を持つ手の反対側。
ここで持つ手をそのままに、相手に向かって棍棒を振り下ろすことは出来ない。何故なら動き回っているし、距離があるから。そんな動き回る敵に有効な攻撃手段は複数あるが、知力が低いのなら使う手は一択。
薙ぎ払い。
予想違わず、トロールは手に持った棍棒を勢いに乗せて横向きに振り払った。当然、分かり切っている攻撃なので問題なく躱す。
そして攻撃によって伸び切った腕に対して、ハルバードの斧頭部分で斬り付ける。
普通なら痛みで持った武器を手放してもおかしくは無いのだが、トロールは痛覚すら鈍いのか、血が流れたままの腕でもう一回逆向きに薙ぎ払ってくる。
ちょいと予想外。でも、全然許容範囲内。
横薙ぎのため、地面に叩きつけた際に発生するであろう余波を気にしなくていい分、回避距離が短くて済む。
「もう少し狙って斬ってみるか」
流石に武器を持った状態で、魔法の練習台にするにはちょっとリスクが高いので、積極的に狙って行こうと思う。
といってもすることは簡単。
先程と同じように武器の反対側に回るように移動すると、案の定全く同じような挙動で棍棒を振り払ってくる。
それに対しこちらも同じように躱して、今度は穂先を用いて上腕二頭筋と思われる箇所目掛けて突き刺し、下側の筋肉を斬り裂いていく。
そしてハルバードを縦軸にクルリと半回転させて、下向きだった斧頭を上向きにする。そのまま返す勢いで引き抜けば、動作に合わせ穂先で斬り付けた部分を寸分違わずに斧頭部分でより深く傷付ける。
前の攻撃と違い、斬りつけた箇所は腕の腱に相当する部分。それを深くまで傷付けたのだ。いくら感覚が鈍くとも身体の構造上、手に力が入らなくなる。
「ゴッ!?!?!」
ぬるりと手から棍棒が滑り落ちる。トロールは今の一撃でも痛覚を理解していないのか、自身の腕に力が入らなくなったのを分かっていない様子だ。
ふむ。そのまま固まっててくれ。
トロールの腕の腱を斬るためにハルバードを強く引き抜いたので、身体が武器の勢いに流されるのを感じる。
…………もうちょっと、どうにかならんかな。
このくらいの動きであれば前世では、斬り返してそのまま首バツンぐらいは出来たんだけど。
まぁそこは技量でカバーしますか。
流れる身体を無理に戻すことなく、
再度トロールと見合った状態は、ハルバードを片手で握り、反対の手を後ろに伸ばしているという、何とも不格好な体勢だ。
でも、しょうがない。
これから使う魔法は強烈すぎて、下手したら
…………トロールはしっかりと俺を見ているね。
ならば喰らうがいい、我が至高の一撃。
せーの。
「『
ペカー
…………擬音だけで見れば何とも言えないのだが、実際の光量は中々えげつない。
本来『光』は周囲を照らしたり、視界の先を明るくする魔法で、発動しようと思えば、頭の上だったり、ちょっと遠くに出来る。
のだが、俺にはそんな制御力は無いので掌からしか発動できない。これが不格好になった理由。
そんな軽く照らすしか効果の無い魔法を、魔力量の暴力で無制御に発動すればどうなるか。
答えは簡単。光源の一番近くにある手の平がチリチリとまではいかないが、普通に温まるぐらい熱量を持った極光が発生するのだ。
直視したら失明一直線だ。
俺を見ていたトロール、つまりはその奥で発したフラッシュバンモドキを諸に視たわけで。
「ゴォ゙ォ゙ッ゛!!! ガアァァ゙!!!」
腕を斬りつけたときとは比較にならないほどの苦しみ具合に喘いでいる模様。流石に鈍感なトロールでも痛いのだろうな。
自由に動く腕で両眼を抑えている。
よし、案山子の出来上がり。
申し訳ないけど、魔法の実験台になってください。
それから先は最早戦いではなかった。
俺がいい感じに練り上げた魔力で、『水噴射』を飛ばしたり*1、『加重』した石ころをぶん投げたり*2、『浄化』で相手を綺麗にしたり*3等、多くのことをした。
満足!
◇
ゲルグに帰還してギルドで換金を済ませる。
トロールは毛皮がかなり高価で売られ、内臓も一部が売れた。逆に肉はほぼ捨て値でしか売れなかった。
まぁ、その毛皮も魔法の練習で劣化したのでトロールから得られた稼ぎは、実をいうとかなり少ない。
ケトラ嬢が言うには、トロールはオークより少し強いとされ魔法への耐性も高いのに、買取額はオーク以下という冒険者からしても嫌われている魔物なんだとか。
マジックキノコの収入があってよかった。
ここ数日はいい感じに稼げているので、金が無いという状況ではない。
そもそも、貯蓄は100万レアを超えている。
まだ数日しか使ってないが、武具を新調するべきだろうか? 体力こそアレだが、筋力や速力は著しく成長している。肉体レベルのようなモノを上がっている実感があり、武具さえ整えれば森の深奥も夢じゃない。
魔法の方もトロールとの練習でかなりいいところまでいけた。後少し、多分異世界生活一ヶ月目が終わるのを目処にできるようになると思う。
生活のレベルも上がっており、自炊も多くするようになった。森で採ったハーブや買った香辛料を用いた現代再現料理は非常に美味だった。
このように余裕も出てきたし、そろそろ行ってもいいかも知れないと思っている場所がある。
神殿のことだ。
神を祀っている建物で、異世界らしく五大神がどうのこうのされている。邪神と名乗っていたあの存在が、世界で主流と言われている五大神の中に居るのかは分からないが。そも、そこまで詳しくない。
この世界では大半の人間は週に一回ぐらいのペースで、神殿に足を運ぶのだとか。別に信仰心があるわけでもなく、現世とは違い実在が証明されているので、不敬を買わないためとか、お願いを聞いてもらいたいから等、理由は様々。
日本人の、それも普通の学生はそういった宗教に疎く、そこまで気にしていなかったが、一回くらいは誰かしらの神殿に行った方が精神衛生上いいかも知れない。
よし、そうと決まれば明日から早速行動開始だ。
確かゲルグにはウェミスシア神とオーファー神の神殿があったはず。
別にどちらが良いとかは無いので、戦神と呼ばれているオーファー神の方を選ぶとしよう。