好きと言わせてくれない   作:布団は友達

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Radianが……レイディアンが実装だって?
書くっきゃねぇなァ!!?


番外編:我の奥さん(仮)とか洒落にならん

 

 

 

 ――『いつかの記憶』

 

 

 

 side:とあるオペレーター

 

 

 

「はい。おいで、Lycoris」

 

「い、嫌だ! 我はこの絵本を、アーミヤやそなたにも脅かされぬ原初の世界をあの子らに届けるのだッッ!」

 

 今日も今日とて、この光景だ。

 新たに執筆した絵本を手に意気揚々と子供たちの場所へ赴いたサルカズのオペレーターLycorisさんだったが、その思考や行動を読み切った我らが隊長Radianが行く手を阻むように読み聞かせの時間を楽しみにしている子供の待つ遊戯室前にて両腕を広げて待っていた。

 小柄な隊長と、大柄なLycorisさん。

 対照的すぎる体格故に際立つ……本来なら見下ろす筈の後者が絵本を胸に抱いて小さく床に蹲り、駄々を捏ねている醜態とそれを窘める前者の母のような有様に。

 

 Lycorisさんの絵本は刺激的だ。

 内容は子供たちから程々に好評を得ている。

 興味本位で覗いた教育部門の職員からはイマイチとされたが、実はこれらがアーミヤさんや隊長の添削を経た末の残りカスのような姿であると知って皆が原本を求めた。

 そして……一同に衝撃が走った。

 明らかに児童向けではない内容、しかも面白い。

 

 結果、原本はそのままロドス内のみで閲覧可能な書籍としてオペレーター達を湧かせている。

 この状況に本人は。

 

『我が描いたのは幼心を踊らせる噺であり、そなたらに遊興を齎したつもりはないのだが!?』

 

『Lycorisさん。面白かったので、次の話も楽しみにしてますねっ』

 

『ふ、アーミヤよ。そう思うのならば、次から添削にも手心を』

 

『嫌……でしたか?』

 

『んなワケないじゃんCEOってばホントしょうがないんだから我がそなたの厳しさを愛の鞭と心得ないとか永遠に無いし我も喜んでますので問題無ァしッッ!!』

 

 因みに駄々を捏ねたらCEOを呼べば、どうにかなる。

 これもロドス内の常識だ。

 そして、もしCEOやケルシー先生が不在ならもう彼を止められる最後の砦は隊長しかいない。

 

 現に、目の前では隊長にじりじりと躙り寄られて壁際までLycorisさんが後退している。

 

「Lycorisは、約束を守れない悪い子なのかな?」

 

「ええい、我を童扱いしよって。これでもこの身は数十年は生きたサルカズの勇士なるぞ!」

 

「いい大人なんだね。じゃあ、守れるよね」

 

「う、うぅ……やだぁ……!!」

 

 半泣きになりながら、Lycorisさんが震える手で絵本を差し出した。

 にこにこと笑顔を浮かべながら、隊長が内容に目を通す。

 その様子を周囲で作業中のオペレーター達が密かに見守る。

 いつも通りなら、この後に優しい声でLycorisさんにとっての死刑宣告さながらの問題点指摘と諭すように強く改善要求を求める文句が始まる。

 そのやり取りが、ここでの日常風景……の筈だった。

 

 しばらくして、異変は起きた。

 

 隊長から「えっ」と当惑の声が小さく上がる。

 何事かと、もはや聞き耳を立てていた事を隠さないで全員が勢いよく振り返った。

 Lycorisさんも小首を傾げる。

 よく見れば……隊長の顔が真っ赤だった。

 

「レ、Radianさん!?」

 

「隊長! Lycorisさん、何したんですか!?」

 

 皆が駆け寄り、問題の絵本を覗き込む。

 まだ物語の中盤へと差し掛かる部分……どうやら、辺境の町で生活を営む夫婦の話のようだ。

 登場人物は、元傭兵の町医者リコリスと妻のレイディアン。

 …………ん?

 

 皆で何度も一ページを読み返す。

 そして、ゆっくりと内容を咀嚼してから各々が近くにあった清掃用モップや何でも手に持てる物を携えてLycorisさんへと近付き――。

 

「なに隊長口説いてんだコラァ!!」

 

「いっつも添削されてる腹癒せにしては過剰な反撃ですよ!!」

 

「この朴念仁ナハツェーラーァ!!」

 

「我悪くないもん!!?」

 

 全員でこの惚けたクソボケサルカズを成敗していると、咳払いが一つ聞こえた。

 どうやら、隊長が動揺から復帰したらしい。

 未だ赤らんだ頬と緊張で睫毛を震わせている様子だが、話せる状態ではあるらしい。

 

 俺達が手を止めたのを機に、さっと包囲網を抜けたLycorisさんが床に額を擦りつけて許しを乞う。

 

「す、すまぬ! つい悪戯心で……我の絵本は添削されてありのままとは程遠い姿に殺がれるにも関わらず、最近我らを夫婦と誂う連中とそれを強く咎めぬそなたに意趣返しがしたいと思って……」

 

「そう、なんだね」

 

「と、登場人物以外でそれは無いぞ!? 他は誓って我なりに童心に刺さる噺を仕上げたつもりだ!!」

 

 隊長が再び絵本に目を通す。

 暫くして、パタリと本を閉じるとLycorisさんへ返した。

 

「今回は、このまま通していいよ」

 

「えっ、ほ、ホントに? 後で実は部屋を出たら待ち構えるそなたと士爵とアーミヤに散々叱られた後、Miseryから一撃を頂戴するという折檻を予定しておらんか?」

 

 普段苦しめられている審査が呆気なく通過できたとあり、逆に不安を煽られて再確認するLycorisさんに隊長の意見は変わらない。

 背後から襲われる事を警戒するような素振りで何度も振り返りながら、Lycorisさんが遊戯室へと入って行った。

 

「隊長、良いんですか?」

 

「……びっくりしただけだよ、本当に」

 

「どうしますか。後で本当にケルシー先生とアーミヤさんも呼びますか」

 

「ううん。呼ぶのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んげッッ!! 我が姫!?」

 

 読み聞かせを終えて、ホッコリの満足した様子で部屋を出てきたLycorisさんは、待ち構えていた意外な人物に奇声を上げる。

 隊長が呼びつけたのは、ケルシー先生でもアーミヤさんでもない。

 

「ほら、絵本見せなよ。あたし忙しいから」

 

 冷たい目で、冷たい声で促すクロージャさん。

 そう、Lycorisさんの意中の人だった。

 いつもの明るく騒々しい彼女の姿は何処へやら、今にも素っ首を刎ねる死神の大鎌を携えた処刑人さながらの気迫。

 呼んだ張本人たる俺たちですら、Lycorisさんを不憫に思うほど空気は重かった。

 

「いやッ、こ、これはだな姫……つ、つい出来心というので浮気ではなくて、つまり、その、我の純粋だった創作意欲に日頃の鬱積が滲んで微かに濁ってしまった末の作品なのだ。これを我が本意と思われるのは心外であって」

 

「良・い・か・ら。…………出しなよ」

 

「ハイ」

 

 己の無力を悟ったサルカズの蚊の鳴くような声だった。

 力なく差し出された本は引ったくるような乱暴さで奪われ、クロージャさんは近くにあった椅子に腰掛けて読み始める。

 足を組んで、背もたれに肩肘を乗せ、半目で紙面を睥睨するように読む……うっわ、態度悪ぅ……。

 

 本当に内容に目を通したかと思われる読了時間だった。

 早々に本を閉じたクロージャさんは、力なく項垂れるLycorisさんの角の間に本を叩き込み、無言で立ち去った。

 

 遠ざかる足音、沈黙。

 空気が、重い。

 真っ白になって微動だにしないLycorisさんに、誰もが謝罪か慰めの言葉をかけようかオロオロ悩んでいると、クロージャさんの去った方向から何やら困惑した様子のScoutさんが現れる。

 

「な、なあ。さっき大泣きしながら走ってLancet−2に縋り付くクロージャを見たんだが……この気絶してる哀れな兄弟が何か関係してるのか?」

 

 Scoutさんの言う通り、Lycorisさんは気絶していた。

 放っておいたら、明日には本当に死んでるかもしれない。

 悪者成敗、にしてはやりすぎた感が否めない結末に誰もが口を噤む。

 因みに、この事態を引き起こした張本人のRadianさんは……何故かニッコニコの笑顔だ。

 

 あれ、普段の隊長ならここで流石に良心が傷ついている筈なのだが。

 

 隊長はLycorisさんに近付くと、屈み込んで顔を覗き込む。

 

 

 

「こんな悪戯する悪い子は、次に同じ事をしたら本と同じように医者になって私もお嫁さんにして貰うからね?」 

 

 

 

 聞こえている筈のない相手への脅し文句は、平時の隊長からは想像だにしない底冷えした声音だった。

 

 後に、この本はロドス内のデータで年齢制限はあるものの誰でも閲覧できるいつもの本とは異なり、ケルシー先生の判断によってCEOやエリートオペレーター、何故かワルファリンさん以外には決して読めない幻の一冊となったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゔああああん!! なんだよアイツ、あたし以外に興味無いって言ってたクセにぃ゛!! 永遠の愛を捧げるとか浮気しないって言ってたグセにいいい!!」

 

「そこまで言ってたか……?」

 

 因みに、クロージャさんは翌日Lycorisさんから普段通り口説かれるまでずっと泣き喚いていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




衝動書き終了。
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