転生したはいいけどやっぱりガイコツだったので取り敢えず地底に住む。 作:ヘビーなしっぽ
かつてニンゲンは、友好関係にあったモンスターを恐れた。
その姿形を。能力を。関係を。
だからこそ、ニンゲンとモンスターは戦争になった。
あの、長い長い悪夢。
だが、モンスターだって、ニンゲンを恐れているのだ。
(なーんて。考えてみた所で無駄だな)
最後の回廊にて、サンズは暖かい陽光を浴びながら立っていた。
回廊には、コツ、コツ、とサンズ以外の何者かがやって来る音が聞こえている。
右手には、血に塗られた”ほんもののナイフ“。
首には、陽光に照らされ、光り輝く金色の”ハートのロケット“。
そして、トレードマークのしま模様のシャツ。
ニンゲンだ。
一歩。また一歩と、ニンゲンは着実にサンズの方に向かってきている。
横一文字に塞がれている目、口からは、生き物のソレを感じさせない。
つくづく怖えヤツだよな。
サンズは軽く笑いながら、そう思った。
それと同時に、ニンゲンはサンズの目の前までやって来て、足を止めた。
スゥ、とサンズは息を吸う。
「よう」
「忙しそうでなによりだな」
ニンゲンは声を発さない。発する器官がないのか、発する機能を持っていないのか…。
サンズはそんな事を思い始めるが、すぐに頭から掻き消す。そんな事、今考えるべきではないからだ。
「お前に聞きたい事がある」
サンズは言葉を紡ぐ。
「救いようの無い悪党でも。変われると思うか?」
「努力さえすれば…」
「誰でもいい人になれると思うか?」
サンズは、そこまで言って、懐かしいな。と思った。
この言葉は、元はパピルスが死に際にニンゲンに言った言葉だ。
気づいてるか? と、サンズが言外に言う。
ニンゲンは、やはり返事をしない。
だが、その代わりに、一歩。サンズの方に近づいた。
「へへへへ…」
サンズは、ニンゲンの一歩が何を示すのか理解していた。
“御託はいい。さっさと始めろ“…だろうな。
と軽く考えてから、サンズは再び言葉を発する。
「まあいい」
「質問を変えよう」
サンズの目から白目が消え、両目とも真っ暗闇になる。
サンズの心情を表している様な、回廊の光すらも呑み込んでしまいかねない底の無い漆黒だ。
「…お前。サイアクな目にあわされたいか?」
「それ以上近づけくと…」
「心の底からこうかいすることになるぜ?」
サンズは、目を黒くして言う。
それに対するニンゲンの返事は……。
一歩。前に進む事だった。
「仕方ないな」
「ゴメンよ。おばさん」
おばんさん…ね。
とサンズは自重気味に脳内で再生した。
ダジャレ好きで、サンズのサムイギャグに笑ってくれるパピルスの次に大事な存在。
ニンゲンが遺跡から、出て来たと言うことは…。おばさんも殺されているんだろうな。
サンズは、持ち前である理解力で直感的にそう感じていた。
「だから約束はキライなんだ」
トリエルへの懺悔も。もう済んだ。
とすれば、サンズがやる事など、もう一つしか残っていなかった。
暖かい陽光の差す回廊に、サンズの冷たく鋭い言葉が響き渡る。
「今日はステキな日だ」
小鳥達のさえずりが、サンズの耳に届いている。恐らくニンゲンにも聞こえている事だろう。
「花が咲いてる。小鳥達もさえずってる…」
「こんな日に、お前みたいなヤツは…」
じごくでもえてしまえばいい
目を黒くしたサンズが言った瞬間、サンズの攻撃が放たれた。
サンズは左腕を下方向に向けて振り、空中に跳び上がっていたニンゲンを無理矢理地面に叩き落とし、波状に配列した骨を通過させる。
ニンゲンが、骨を避け切る事ができずに呆然としているところに、サンズの追撃が入る。
最弱のサンズが持つ最強の武器…。ガスターブラスターだ。
四角形、バツマーク、四角形、そして、最大サイズを横一文字。
「ハハ…」
「いつも思ってたんだ」
「なんでみんな。最初に必殺技を使わないんだろうって」
攻撃を終えてから、サンズはそう口にする。
ニンゲンはと言うと、無造作に口に食べ物を突っ込み、サンズを睨んでいる。
サンズは、無言で次の攻撃を繰り出した。
その攻撃の途中で、いきなり、ブチ、と何かが千切れるような音が聞こえて、ニンゲンのタマシイが砕け散った。
「heh、一回目はオレの勝ちだな」
ニンゲンの亡骸を見ながら、サンズはそう言った。
「まあどうせ。全部無駄なんだろうけどな」
瞬間、世界から色が失せ、端々から粒子状になって全てが消し飛んでいく。
ロード。モンスターの恐るケツイの力の能力だ。
今サンズがニンゲンを殺したという事実さえ覆り、無かったことにされてしまう。
サンズは自重気味に笑いながら、粒子と化して何処かに消えていった。
サンズは相変わらず、回廊に立っていた。
ニンゲンが、向こうから苛立ちを隠さずに大股でズンズン進んでくる。
「よう」
サンズの目の前で立ち止まったニンゲンに、サンズはそう言った。
「どうだ?」
一回目と違うセリフに、ニンゲンは驚いた様だ。
「オレはなかなかのやり手だろ?」
再び、サンズは戦闘にモードを切り替える。
「今日はステキな日だ」
「花が咲いてる」
「小鳥達もさえずっt(ズドン!)」
と、字面では分からないだろうが、サンズは不意打ちで攻撃を仕掛けた。
ニンゲンは、またもや驚いた様だが、二度も同じ手を食うわけがない。
確実に避けて、サンズを睨んだ。
「えーと、そうそう。今日はステキな日だ」
「こんな日はのんびりしようぜ?」
そこまで言った瞬間、ニンゲンは手に握られたナイフをサンズに向けて振っていた。
「おっと、あぶないあぶない…」
「もしかして、大人しく喰らうと思ったのか?」
本家にないセリフが漏れてしまうが、まあこれは一種のAUなんだからいいだろう。
サンズは、次から次へと目まぐるしく攻撃を繰り出す。
「時空に大規模な歪みが発生しているらしい」
「時間の流れがメチャクチャに飛んで…止まって…また動いて…」
「へへへ…それってお前の仕業なんだろ?」
「お前には分からないんだろうな」
「ある日突然なんの前触れもなく…」
「なにもかもが
「それを知りながら生きていく気持ちなんて」
「オレはとっくに諦めた」
「もう地上に戻りたいと思うこともなくなった」
「だってもし戻れたって…」
「すぐにここに
「そんなだから」
「正直何をやってもやる気が出ない」
「ま、それも怠ける為の口実なのかもしれないけどな」
「自分でもよく分からないよ」
「ただ一つ分かるのは…この後何が起きるか知っている以上…」
「もう何もしないで見ている訳にはいかないってことさ」
サンズとニンゲンが、一進一退の激しい攻防を繰り返す中、サンズは笑顔を崩さず、淡々とニンゲンに言葉を投げかける。
「…ま、それはさておき」
サンズは、攻撃をするのをやめた。ニンゲンも、訝しむ様にしながらも、ナイフを一旦下ろす。
「お前、ホントに武器を振り回すの好きだな」
「…」
「なあ」
「お前、さっきは答えてくれなかったけど」
「オレには分かるよ」
「お前の中には、正義のココロのかけらがある」
ニンゲンの肩が、ぴくりと揺れた。
動揺している様だ。
サンズの、
「正しい事を望んだヤツの記憶があるはずだ」
「ひょっとしてオレ達…
「友達だったんじゃないのか?」
ニンゲンの体が、何かに堪えかねるかの様にプルプルと震え始めた。
「なあ、応えてくれよ」
「オレの言っていることの意味が分かるなら…」
「こんなのもう終わりにしようぜ?」
「武器を置いてくれよ。そしたら…」
「
サンズの名前が黄色くなる。
それは、サンズを見逃す事ができる証だった。
ニンゲンは、悩んでいる様だった。
FIGHTとMERCYを行き来している。
そして……。MERCYを選んだ。
サンズは、悪い笑みを浮かべるのをグッと堪えながら言う。
「…オレを見逃してくれるのか?」
「ありがとよ」
「苦しいだろ? 今までやってきた事を無駄にするなんて…」
「でも、オレが無駄にはしないぜ」
直後に、回廊いっぱいに骨が現れる。
無論ニンゲンも一緒くたに骨は回廊内をぐちゃぐちゃに掻き回し…。
いきなり、ブチ、と何かが千切れるような音が聞こえて、ニンゲンのタマシイが砕け散った。
「ハハ…バカだな」
サンズは、先程と同じ様にニンゲンの亡骸を見ながら、右手で顔を覆ってくつくつと、笑った。
「ま、こんな事しても、アイツの怒りを煽るだけだろうがな」
自重気味に言うサンズを、再び粒子の波が呑んだ。
そこから先は、割愛しよう。
サンズは、ニンゲンを殺し続けた。
何回も。何十回も。何百回も。
ニンゲンを殺して。殺して。殺して。
気が遠くなる程、殺し続けた。
(これじゃ、もうどっちが虐殺者か分からないな)
ザシュ!!!
回廊に一つの斬撃音が響き渡った。