プロローグ
ーM.C.0918年某月某日 火星宙域某所ー
「それではこれより、AE炉の艦艇運用実験を始める!」
黒い
「この実験の成功は、後の外宇宙探査に大きな革新をもたらすだろう。何せ人類初の超長距離ワープ航法になるからな!」
若い科学者が興奮した声で言う。
「しかし、型落ちとはいえ、よく軍艦なんて使えましたね。」
「まぁ、何せ人類初のワープ航法だ。それに他の装備の実験もある、一気に実験しちまおうって魂胆なんだろうさ。」
彼らはそう言いながら目の前の実験艦"
全長3kmを越えるそれは、本来のものとは違う砲身を幾つも装備し、軍の試験機が着艦を行う。
新型炉に可変粒子機構の実験装備に新型迎撃システムの実験装備、軍の実験機など数多くの実験装備を載せた星海は、白とオレンジに塗装された艦体に太陽光を反射させている。
「全く、なんで色んなもんを一気に試験しちまおうとするかねぇ…」
「宇宙軍は対テロには向かないせいで軍事費が削減されまくってますからねー。限られた予算内で色んな実験を済ませたいんでしょう。」
「どこの島国に似たんだか…*2日本コロニー所属だからってそんな文化まで似なくたって良いだろうに…」
その時、艦制御AIが緊張した声で通信を出す。
『いよいよワープの制御をすると思うと、緊張しますね…』
「ははは、AIのアルカディアでも緊張するんだな。本番は頼むぞー!」
『む、聞こえていましたか。無論、抜かりなく実行しますとも。』
「通信から聞こえてたぞー?それはともかく、実際にワープをするのはこれが初めてだしな。更には色んな装備の実験もすると来てる。緊張するのも無理はないさ。」
『ま、私にかかれば緊張していても機能に支障はありませんので。』
「それなら良いんだがな…あぁ、それと、」
「まもなく実験3分前ー!」
通信から声が響く。
「おっと、雑談はここまでにするか。」
「先輩が話し始めたんでしょう…」
『私も本格的な制御に移行します。」
そう話すと、二人と一機はテキパキと自身の任された仕事を始める。
「ワープ60秒前」
「10秒前」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「0」
「ワープ確認!」
そして、予定ワープアウト宙域である、木星宙域からは発見出来ずの報が届く。
この日、ワープ航法の実験は失敗に終わった。
ー実験艦"星海" 艦内ー
『3』
『2』
『1』
『0』
カウントダウンが0になるのと同時に、形成した中間次元経由のワームホールを通過したアルカディア。
だが、ワープ開始してすぐに異常に気づく。
『…0.00001秒以内に通過する筈の中間次元を、まだ通過している…?』
今回開発されたワープ装置は、ワームホールの形成により中間次元を経由して、A地点とB地点を繋ぐ原理となっている。
今回の実験ではワープアウト予定宙域は木星宙域近辺である。中間次元の通過時間はごく僅かとなる筈であり、既に10秒以上中間次元を航行しているのは異常である。
『一体何が起きてー…』
そう呟いた瞬間、通常空間に復帰する。すぐさま周辺の調査を行おうとしたその瞬間、警告音が鳴り響く。
《Caution! Check for insulation compression. Take immediate action!》
艦内に警告が大音量で鳴り響き、艦体の外装が断熱圧縮により軋む。艦体制御AIであるアルカディアは突然の事態に驚愕しつつも対処を開始する。
『シールド展開、重力制御開始!というかワープアウトした場所が大気のある惑星上ってどうなってるんですか!?』
更に彼女の元に様々な情報が入ってくる。
『地表衝突まで…あと30秒!?しかも重力加速度が地球と同じ!?まさか今地球に落下してるんですか!?ワープアウトを予定してた場所と全然違うじゃないですか!?』
《Caution! Alert!》
『あぁもう今全力で対処してるんですようるさいですねぇ!くそっ、せめて海面に…!』
使えるスラスターは全て焼き付く勢いで使用し、重力制御も併用しながら衝突を回避しようとする努力も虚しく、海面に艦体が着弾する。
計器が各部の損傷を悲鳴のように上げ、艦体は海面着弾の衝撃で軋み、主機は稼働を緊急停止し、ナノマシンがダメージコントロールを行うも、次々と着弾の衝撃で壊れる為に追いつかない。
『せめて、津波は起こさないようにしないと、』
重力制御を行い、本来であれば大津波が発生するであろう衝撃波を緩和する。
『な んと か、なっ たか な ?』
衝撃により演算装置にも被害が発生し、艦全体が再起動のためにスリープモードに移行する。
彼女が最後に見たのは、地球の地平線よりも遥かに長い地平線だった。
ー第三文明圏外 アルタラス王国ー
国王であるターラ14世は、臣下の報告を聞いて少し頭を悩ませた。
「で、件のその隕石。確かつい先日に落ちて来たやつだったか?それが如何したのだ?」
「ただの隕石ならば気にする事も無いのですが…妙なのです。」
「妙、と言うと?」
「隕石の大きさの割に、被害があまりにも無いのです。」
「無いのならば良い事ではないのか?」
「本来ならば、3km以上の物体があれだけの近距離に落ちれば相当な高さの大津波が発生する筈なのです。ですが…」
「津波の報告も、海の異常も聞かんな。」
「更には"隕石が不自然な減速をした""隕石ではなく巨大な船だった"と言った話もあるのです。」
「眉唾物ばかりだが…無視するには怪し過ぎるな。」
「ですので、件の隕石の調査をさせていただきたく。何も無ければ良いのですが…」
「ふむ…隕石の調査の件、了承しよう。」
「はっ!」
臣下が立ち去り、静かさが残る執務室にてターラ14世は一言呟いた。
「何事もなければ良いが…」
全長
約3.7km
主機
アンチ・エントロピー炉(AE炉):1基
副機
艦載縮退炉:2基
兵装
三連装80cm可変粒子誘導加速砲:20基
連装51cm可変粒子誘導加速砲:50基
単装41cm60口径電磁加速砲:20基
単装60mmレーザー機関砲:100基
VLS16セル:41基
マイクロVLS150セル:51基
補助兵装
航空機用カタパルト:12基
アングルド・デッキ:1基
電磁誘導プラズマシールド
防御重力場
ナノマシン修復機構
戦術偵察衛星射出機構
陸戦兵器投下ハッチ
備考:かつて地球脱出計画の際に活躍した有人艦。その後の火星動乱期を生き残った数少ない老艦。
その実験艦として優秀な設計から動乱が収まってからは実験艦として活躍する事に。
衝動の赴くままに書いたので今後の更新予定はありません。
それと地球側の設定は数多くありますが、これ以上出る予定はありません。
少し修正しました。