【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第百十九話 復学

2月10日(土)

午前――月光館学園・2-B教室

 

 静まり返った教室の中に、筆記具を走らせる音とプリントの擦れる音だけが響く。

 今日は期末テスト最終日、さらに科目も最後の一つという事で、否が応にも生徒らの意気込みは最高潮に達するというものだ。

 これが終われば来週にはテストの返却と順位の貼り出し、寮生活をしている者はさらに保護者への結果の送付などのイベントも控えているが、テスト期間独特の重苦しい緊張感漂う空気がなくなれば、その程度のイベントは多少落ち込むだけで大した苦でもない。

 そして、ある者は残り時間を気にしながら必死に記憶を辿って答えを思い出そうとし、またある者は諦めて夢の世界へ旅立ちながら、鳴り響くチャイムと共に終了の時を迎えた。

 

「そこまで! 出席番号が若いのが上に来るように後ろから前に送ってこい」

 

 監督官を務めていた男性教師が指示を出し、生徒たちは言われた通りに答案用紙を各列の先頭に送る。

 送られてきた答案は出席番号順になるよう回収し、ちゃんと順番が合っているか、名前が書かれているかを確認してファイルに挿むと、教師は日直の生徒に視線を向けた。

 

「起立、気を付け、礼」

『ありがとうございました』

「おう、お疲れさん。すぐホームルームになるからトイレに行くやつ以外は教室から出ないようにな」

 

 テストが終わった解放感に笑みを漏らしている生徒たちに、笑いかけながら教師が去っていく。生徒らは席を立って仲の良い者たち同士で集まり、テストの出来や放課後の予定について話し合っている。

 チドリも前の席にいる風花から先ほど受けた社会科の問題について尋ねられ、相手と同じ答えを書いた事を報告して担任が来るまでの時間を潰す。

 

「今回は結構出来た感じかなぁ。有里君も無事って分かって勉強も集中できたし」

「……それはそれ、これはこれじゃない?」

「え、でもチドリちゃんも結構気にして、前まであんまり勉強出来てないみたいだったけど……」

「私は一度も順位を落としてないもの。結果が全てを証明してるでしょ」

 

 二年生になってからトップの湊がいなかったことで、上位陣の順位は一つずつ上がる形になった。

 一位は美紀、二位はチドリ、三位は今まで四位に付けていた他のクラスの女子だが、二位と三位の間には二十点近い差があるので、実質二人の独走状態である。

 テストの度に美紀とチドリの差は変動するが、順位が入れ替わったり、同点で両者が一位になったこともあるので、二人の学力にほとんど差はないと思っていい。

 湊が行方不明でも順位は落とさずに維持し続け、今回の期末も無事に終えたので、結果を見れば自分はなんら動揺などしていなかったとチドリは返した。

 相手の言葉を受けた風花はそうなのだろうかと首を傾げたい気もしたけれど、ここで何かを言えば三倍以上になって返ってくるため、愛想笑いを浮かべてお茶を濁す作戦を取る。

 そうして、しばらく話していれば予鈴が鳴ったことで、トイレに行っていた者たちも戻ってきて席に着く。

 あとはホームルームで連絡事項を聞けば今日は終わりだ。部活動によっては今日の放課後から再開する部もあるらしいが、美術工芸部はわりと緩い部活なので、テストが終わった日は好き好きに過ごすため休みとなっている。

 テスト自体はそれほど苦に想っていないチドリも、こなすべき作業が終わったという点では開放感を求めていた。

 故に、さっさと来てホームルームを終わって欲しいと、未だに姿を見せない佐久間に心の中で愚痴をこぼした。

 

「やぁやぁ、遅れてごっめーん!」

 

 いつになったら来るのだろう。そう思いながら予鈴が鳴って二分ほど過ぎたとき、ファイルと筆箱を持った佐久間が笑いながら教室に入ってきた。

 普段は黒いビジネススーツにカーディガンなどを合わせて着ているが、冬だと流石に寒いのかゆったりとしたタートルネックのニットとスカートを合わせ、柔らかい雰囲気と共に健康的な色気を感じさせて男子たちの目を引いている。

 だが、続けて教室に入ってきた者がいたことで、生徒たちの視線は佐久間からそちらの人物へと強制的に移された。

 

「へっへーん、サプライズだよ! なんと、月曜日から有里君も復学していたのだ! でも、有里君がいたら皆はテストに集中できないからね。彼だけ別室でテストを受けてようやく皆の前にお披露目という訳なのです」

 

 教卓の横まで進んで佐久間の隣に立つ湊を教室中の生徒らの視線が射抜く。

 腰よりも長く伸ばされた艶やかな青髪、輝くような金色の左眼と右眼を覆う半月状の黒い眼帯、トレードマークとなった黒いマフラーを巻き、服装はフード付きのオリーブドラフ色のコートを着た私服姿だが、久しぶりに見た生徒たちが何よりも驚いたのはその身長についてだ。

 

(デカっ!?)

 

 留学前は佐久間と変わらないくらいか少し大きい程度だったというのに、横に並んだ佐久間の身長は湊の肩より少し高いくらいになっている。

 首と頭の分だけ湊の方が高いのだから、その憂いを帯びた美しい相貌と共に本当に同じ中学二年生かと疑わずにはいられない。

 湊を見て驚いている生徒らを眺め、サプライズが見事に成功した事を確信した佐久間は、満面の笑みで湊と腕を組みつつ一同に話しかける。

 

「ねー、驚くよね。外国で生活してると身体の大きさも外国の人みたいになるのかな?」

「……俺の父親は一八〇近くあったからな。単純に遺伝だろう」

「なるほど、遺伝子が仕事したんだね! センセー的にはこれくらいの身長差はむしろOKだから、有里君も安心していいからね!」

 

 生徒の前で急に何を口走っているのかと言いたくなるが、全身から桃色のオーラを出している佐久間とは対照的に、青年はコートのポケットに手を入れたまま冷めた表情をしているので、誰も佐久間の発言に突っ込みを入れたりはしない。

 それよりも、湊が何故私服なのかや右眼の眼帯についての方が気になるのだ。佐久間に任せていては話しが進まない。そう思った女子生徒の一人が手を上げた。

 

「先生、有里君に質問してもいいですか?」

「いいよー。でも、有里君が疲れちゃうから全員で三つだけね。相談の時間は一分、さぁ、皆で質問を考えよう!」

 

 佐久間が開始だと手を叩けば、生徒たちは席の近い者らと色々と話し合い、教室中がざわめきに包まれる。

 その間、湊は左手に持っていた紙袋の一つから各列の先頭にお土産の小物を配布して、それを受け取った者たちは笑顔で礼を言っている。

 復学したばかりの湊がクラスメイトと仲良く出来ている様子に佐久間も満足して頷き、設定した一分はあっという間に過ぎ去った。

 配布したお土産も全員に行き亘り。湊が佐久間の隣に戻ってきたところで、司会役の佐久間が生徒らに尋ねる。

 

「じゃあ、最初の質問いってみよーか」

「はい! 恋人はいますか? また、留学中にはいましたか?」

「……両方ノーだ。付き合う気がないから断っていた」

 

 湊の答えに大勢の女子が安堵の息を吐く。その中にいくらか男子の声が混じっていた気もするが御愛嬌だ。何せ、ほとんどの男子は外国でも告白自体はされていたのかと嫉妬を覚えていたのだから。

 

「次、二つ目の質問!」

「失礼だけど、右眼はどうしたのか教えて貰えますか?」

 

 一つ目の質問を終えたことで佐久間が次に移るよう進めれば、ずっと気になっていた眼帯についての質問が飛んできた。

 別に他人の怪我などどうでもいいだろうに、何をそんなに気にしているのか。心の中でその様に考えて湊は淡々と答える。

 

「普通に怪我だぞ。雪の積もった森で熊に襲われて人を庇ったときに抉られた」

「うえ、よく右眼だけで済んだね。その熊さんはどうなったの?」

 

 予想の斜め上をいった答えに教室中がざわつくも、青年と腕を組んだままの佐久間が困ったような表情でありながら、本当はあまり気にしていないだろうという軽いノリで尋ねているせいで一同の気が削がれる。

 しかし、相手も相手で一般からはずれた思考をしているのか、右眼を抉ってきた熊の末路を何でもない事のように正直に話す。

 

「両腕と頭を斬り飛ばして殺してやった。先に喧嘩を売ってきたのは向こうだからな」

「おっとぉ、まさかの白兵戦だったかー。でも、今度からは猟銃とか使った方がいいよ? じゃないと危ないしさ」

『先生、突っ込みそこじゃないです』

 

 普段は服の中にしまっている熊の爪のネックレスを湊は取り出して見せ、爪の大きさから熊がとんでもないサイズだった事に驚きつつ、佐久間は呑気にアドバイスをする。

 だが、今度からなどとまた熊に遭う前提でアドバイスするのもおかしいが、それよりも相手の言葉が真実なら負傷した状態の白兵戦で熊に勝てている事にまず突っ込むべきだ。

 このとき、教室中の心は間違いなく一つになっていた。

 

「はい、最後!」

 

 けれど、言われた佐久間はどこがおかしかったか分からないようで、首を一度傾げるとすぐに流して最後の質問を述べよと言う。

 元から人の話を聞くタイプではないが、ホームルームを終えて自由になりたいからと言って重要な突っ込みどころを流すのは如何なものか。

 だが、テストを終えた事で早く自由になりたいのは生徒も同じ。よって、最後の質問としてとても普通の問いが投げられた。

 

「留学先で一番印象に残った国と、その国のどこが良かったかを教えてください」

「……フランスの田舎かな。自然が豊かで人も温かかった。老後はああいった場所で穏やかに暮らすのもいいだろう。まぁ、若い人間が観光でいくならドイツやスイスの方がいいかもしれない」

「有里君も普通に若い人間だよね?」

「お前より十も若いはずだが?」

「見た目的にはお似合いだから大丈夫、大丈夫」

 

 年齢の話しをされても佐久間はニヘラと笑って、外見的には歳の差を感じないので問題ないと返す。

 この場合、佐久間が特別若いという訳ではなく、湊の方が中学生とは思えないほど大人びている、悪くいえば老けているからこそ釣り合いが取れているのだ。

 いまの湊は肉体的には十八、十九歳といったところで、そこに同年代とは比べ物にならないほどの修羅場を潜ってきたことで纏った空気が足され、既に成人を迎えている雰囲気を醸し出している。

 よって、間近で肌の艶を見るでもしなければ、下手をすれば佐久間より湊の方が年上に見られる可能性すらあった。

 

「ってことで、質問はこれくらいでしゅーりょー! 来週からは普通の授業に戻るから、各教科の問題用紙も忘れずに持って来てね。日直さん、挨拶!」

「起立、気を付け、礼!」

『ありがとうございました』

 

 最後の質問に湊が答えたことで質問タイムは終了だ。佐久間が終わりの挨拶を日直の生徒に頼み、生徒らが起立して締めの挨拶を行うと、今学年最後のテストからようやく全員が解放されたのだった。

 

***

 

 ホームルームを終えると生徒たちは教室を出てゆき、皆が思い思いの放課後を過ごしに向かった。

 ずっと湊にべったりかと思われた佐久間も、実はこの一週間ほどは教室に訪れないようにしていた湊と放課後ひっそりと会っていたので、いまさらべったりする必要もないと素直に職員室に帰って行った。

 生徒たちはやっとテストから解放されたが、教師たちはむしろこれからが本番なのだ。何十人、何百人分という答案用紙の採点を行い。それらを各生徒の成績としてつけて、三学期の通信簿の方に反映させなければならない。

 成績を付ける作業が遅れると、成績や素行で割り振るようにしている来年度のクラス分けの作業が遅れてしまう。

 湊らが入学した年には、問題児や天才児を同じ天才に任せればいいとしていたが、この二年で湊とチドリは見た目が派手なだけで素行はそれほど問題ないという結果が出ている。

 クラスに成績優秀者がいれば担任の査定にも影響が出るため、一クラスだけ異常に成績優秀者が集まっていたものを分解するとなれば、どの生徒のいるクラスを担任として受け持つか教師側も荒れそうである。

 よって、来年度のクラス分けと担当教師の会議をしっかりと行うために、校長や教頭は採点と成績記入をなるべく早く終えて欲しいと教師陣に頼んでいた。

 その事を生徒で知っているのは、経営に関わっている美鶴と、別室でテストを受けて早く解き終わった際に試験官の採点作業を手伝っていた湊だけである。

 本来ならば生徒にそんな物を手伝わせては不味いのだが、試験官は別学年の教師であり、湊が他人の成績をばらすこともないだろうという信頼によって手伝いは実現していた。

 そして、手伝いをした本人は約束通り誰にも漏らすことなく放課後を迎え、部活メンバーと共に一階の購買近くでたむろっていた。

 チドリは何度か見ているのでいい加減慣れてきていたが、数ヶ月ぶりに会った他の少女たちは、青年のあまりの変化に慣れない様子である。

 

「有里君、すごく大きくなったねー」

「……山岸は縮んだな」

「ち、縮んでないよう!」

 

 現在、風花の身長は一五〇センチでまだ成長は止まっていない。けれど、湊からみれば以前よりも小さく見えたので正直な感想を述べたのだが、言われた方はあまり成長してないが縮んではいないと驚きつつ反論した。

 他の女子たちは風花のそんな反応に笑いながら、改めて湊の全身を眺めてそれぞれの感想を漏らす。

 

「身長が伸びたこともありますけど、随分と顔付きが大人になりましたね。成長することで薄れると思っていた女性的な部分も残っている事には驚きましたけど」

「まぁ、遺伝子が混ざっているからな。完全に消すのは無理だろう」

 

 以前の湊はまだ歳相応の幼さを残していた。しかし、帰ってきた湊は本当に大人びていて、同学年の中では大人っぽいと言われる美紀でさえ、相手が知り合いでなければ同い年だと信じられない確信がある。

 さらに、成長すれば普通にルックスの整った美男子になると思っていたのだが、どういう訳か湊は美形であり美人なまま成長しており、所作のところどころに気品があることもあって思わず見惚れてしまいそうだった。

 勿論、だからといって相手に恋心を抱いたりはしないが、それでも美しさに憧れる少女としては、例え相手が男であったとしても羨む気持ちはあった。

 しかし、全ての女子が羨望の眼差しを彼に向けるかというとそんな事はなく、成長した湊の姿を眺めていたゆかりは素直に見て思った疑問を相手にぶつけた。

 

「ってか、髪伸びてるけど切らないの? ぶっちゃけ邪魔じゃない?」

「……そこまで邪魔ではないな。一応、伸ばしたままにしている理由もあるし」

「なに、恋愛のジンクス的な理由?」

 

 入学したときには肩にかかる程度だったが、それから湊が髪を短くしている場面を一度も見たことがない。

 留学する際は腰に届くくらいの長さだったが、常人よりも速く伸びることから逆算すると地面についているはずなので、腰を越えた程度ということは長さを調整するために切っていると思われる。

 よって、相手が長くしている理由があるのなら、それは恋愛などのジンクスを気にしてのことかとゆかりは悪戯っぽい笑みを浮かべ尋ねた。

 訊かれた青年はすぐには答えず、自分の髪に触れながらどこか遠い目をして言葉を返す。

 

「いや、イリス……ああ、留学中の同行者が俺の長い髪が好きだったんだ。多分、短くしても似合うと言ってくるんだろうが、よく洗ったり梳いたりして貰っていたこともあって、一度は切ったんだが伸びてきて何となくそのままにしてる」

「あ、その、ゴメン。軽く言ったりして」

 

 流石のゆかりも遠い目で話す湊の言葉を聞いて茶化す事は出来なかった。

 同行者が事故に巻き込まれて死んだ事は聞いている。湊がその事に複雑な感情を抱いてまだ処理しきれていないようだとチドリも話していた。

 あまり物事に執着しないような湊が、わざわざ相手が好きだったからと髪を伸ばしたままにしていることからも、チドリの話していた事は真実であり、彼は相手の死をまだ引き摺っているのだろう。

 ゆかり自身も父親の死をまだ引き摺ったままなので、そういった他人に気安く踏み込んで欲しくないデリケートな部分を自分が侵してしまったことを後悔した。

 しかし、触れていた髪から手を放してゆかりを見た湊は、普段通りのどこかアンニュイな表情で返してくる。

 

「別に気にしてない。他にも髪が長いと母さんに似ているらしくて、喜ぶ人がいるっていう理由もある。まぁ、邪魔なときは縛ったり纏めたりするから問題ない」

「そうなんだ。あ、じゃあ、いま結んであげよっか。見てて邪魔くさいし」

「……お前、少しは言葉を選べよ」

 

 ゆかりは先ほどの事を反省したらしいが、湊に対しては普段より口が悪くなるのか色々と酷かった。

 謝ってすぐそれかと湊が非難の目を向けるも、ゆかりは気にした様子もなく購買のおばちゃんに空いている椅子を借りて湊をそこへ座らせる。

 女子たちが羨む艶やかな青髪は、本当にどうやって手入れをすればここまで綺麗になるのかと、羨ましいを超えて妬ましいという気持ちをゆかりに抱かせた。

 とはいえ、自分から髪を結ぶと言っておいて嫉妬で八つ当たりする訳にもいかない。気を取り直して鞄からブラシを取り出し、髪を梳いてからどのような髪型にしてやろうかと考え始める。

 

「んー、やっぱり最低でもアップにしたいよね。うなじらへんが見えてないとスッキリしないし」

「あ、お団子ヘアとかどうかな? マーガレットとかも上品っぽくていいけど」

「……普通にしてくれ」

 

 湊の髪型に悩むゆかりに風花が楽しそうにアイデアを出す。その傍らでは美紀とチドリもヘアピンやヘアスプレーを鞄から出して真剣に考えているようなので、湊はとりあえず遊ばないで欲しいと頼んだ。

 なにせ、五人は帰る前に購買でジュースを飲みながら雑談をしていたのだが、場所が靴箱に近いせいで湊に気付いた生徒が何人も騒いでいる。

 そんな場所でおかしな髪型にされれば変な噂が広まりかねないので、うなじが見えるような髪型でも構わないから目立つ髪型にはしないで欲しかった。

 結局、ヘアピンなどもなるべく使わないようにして欲しいという要望を加えた事で、ポニーテールを巻いてアレンジしたアップにする方向で話は決まった。

 一歩間違えれば若いキャバ嬢のような髪型だが、そこは育ちの良さと纏う気品によってカバーされ、随分とスッキリしたと髪を結ったゆかりも満足げに頷いている。

 彼女の頑張りを見ていた他の三人も小さくパチパチと手を叩いて仕上がりを褒めた。

 椅子を貸してくれた購買のおばさんも美人さんになったと褒めてくれたことで、湊としては色々と複雑な気持ちでありがとうという言葉と共に椅子を返す。

 そうして、髪も結ったことでこの後はどうするか話し合おうとしかけたとき、

 

「ちょっと、そこの人、何勝手に校舎に入ってきてるんですか! ちゃんと許可証なり取ってますか?」

 

 腕に生徒会の腕章を付けた一人の生徒が歩み寄ってきた。

 だが、言われた湊たちは相手が誰かも知らなければ、ここには生徒しかいないので何を言われているのかも分からない。

 全員が不思議そうな顔をしていると、湊の前まで来た真面目そうな男子は目付きを鋭くして再び言葉をぶつけてくる。

 

「だから、貴方ですよ。生徒の知り合いでも許可証を取って貰う必要があるんですけど、取ってないなら事務室で貰ってくるか校舎から出て行ってください」

「……ここの生徒だが?」

「はぁ? なら、なんで制服着てないんですか。っていうか、ピアスにチョーカーってアクセサリー類は中等部の校則じゃ禁止されてるんですよ! あとカラコンもヘアカラーも禁止!」

 

 湊はマフラーも標準装備の私服姿だが、左耳にピアス、首にチョーカー、服の中には熊の爪のネックレス等々のアクセサリーを身に付けている。

 それらはとてもよく似合っているのだが、華美な装飾品は禁止という中等部の校則には違反しており、男子は湊の金色の瞳とチドリの赤い髪についても事情を知らないようで普通の色にしてこいと注意をしてくる。

 湊の眼とチドリの髪の色が自前であることなど湊らの学年では常識だ。プリンス・ミナトを通じて上級生にも事情は伝わっている筈なので、本気で知らない様子から察するに相手は一年生の後輩なのだろう。

 一年生の中にも湊の事を知っている者はいるが、それは初等部から上がってきたものであり、中等部から入ってきた者は学校見学の日に湊が休みだったことで知らなくとも無理はない。

 よって、湊とチドリを除く女子らは、事情を知らないらしい相手に心の中で苦笑しつつ、湊がどのような反応を見せるのか見守った。

 すると、湊はコートのポケットに手を入れながらつまらなそうにシレッと事実と嘘を混ぜて来る。

 

「……そうか、ろくに学校に来ていなかったからアクセサリーが駄目とは知らなかったな」

「制服着用の義務くらいは分かるでしょうが!」

「久しぶりに着ようと思ったらサイズが合わなくなっていてな」

「嘘を吐くならもっとマシな嘘を吐けー!」

 

 あまりに湊が適当な態度で相手をしてくることで、男子は湊の発言を嘘だと思ったらしく肩を震わせながら怒鳴ってきた。

 しかし、悲しいことに男子は小さかった。一年生という事を含めても、もうすぐに二年生になるこの時期に風花と変わらない程度しかないのだ。

 そんな生徒が必死に怒ってもまるで迫力など感じられず、湊はとても冷めた表情で見下ろしながら口を開く。

 

「……少し待っておけ」

 

 ただ一言だけ言い残し、湊はコートとマフラーをチドリに預けると、教室に現れたときから持っていた紙袋を持って校舎の方へ去って行った。

 受け取ったチドリはサイズの合わないコートを勝手に着てマフラーを巻いているが、少しすると制服姿になった湊が現れた事で誰も突っ込まずに終わる。

 そして、久しぶりに見た湊の制服姿に女子らは思わず苦笑した。七分丈ほどしかない袖の短いジャケットに、腰パン状態にしなければ丈の足りないズボン、誰がどうみてもサイズが合っていない事は明らかだった。

 

「なんだか、制服を着崩している有里君って新鮮ですね」

「確かにね。なんか、他の腰パンは微妙だけど有里君のはしょうがないって点で許せるわ。ていうか、着れなくなってたから私服だったのね」

「まぁな。というか、前に欲しがっていたから雪広先輩にあげる予定だったんだが、またクリーニングに持っていかないといけなくなった。人を嘘吐きと決めつけてきた生徒会役員のせいで……まったく、生徒の言葉も信じないとは」

 

 言いながら湊はチドリが巻いているマフラーに手を伸ばし、煙管を取り出し咥えると下級生の男子を冷たい目で見つめる。

 その瞳には軽蔑の色が混じっており、見つめられた男子は相手が本当の事を言っていたこともあって怯みかけるが、湊が何を咥えているのか理解したことで再び大きな声を出してきた。

 

「ちょっ、あんた、堂々と何吸ってるんですか! 普通に停学ものですよ!」

「あ、ホントだ。それは流石に駄目だって、身体にも悪いし。てか、君って喫煙の習慣とかあったの?」

 

 湊があまりに堂々としているせいで気付くのが遅れたが、しっかりと物を認識したことでゆかりが眉を顰めて湊の口から煙管を引っこ抜いた。

 だが、携帯灰皿など持っておらず、ついでに言えば煙管などどのように処理していいのか分からない。

 よって、手に持ったまま困った様子を見せていたゆかりから湊は奪い返すと、ペン回しのように左手で遊ばせながら相手の問いに答える。

 

「これは煙管の形をしているだけで煙草じゃない。教師にもちゃんと説明して理解して貰っているから停学にはならないな。まぁ、また嘘だと決めつけられては敵わないから証拠を見せよう」

「んむっ!?」

 

 証拠を見せると言った湊は遊んでいた手を止めるなり、傍にいた風花の口に煙管を突っ込んだ。

 完全に油断して傍観者になっていたことで、突然の事態に驚いて離れようとするも、後頭部を押さえられた状態で煙管を口に入れられているので逃げる事が出来ない。

 押さえられた状態で無理矢理に口に突っ込まれている風花は若干涙目になり、それを冷めた目で見つめて拘束したままでいる湊は、まわりからは小さな女の子を大人の男が虐めているようにしか見えない。

 あまりに悪過ぎるその絵面に気付いた他のメンバーが湊を止めさせようとしたとき、涙目だったはずの風花に変化が起きる。

 

「あれ? んー、メロンソーダ味?」

「……正解」

 

 風花は急に不思議そうな顔をしたかと思えば、湊を見上げて合っているか確認を取った。

 事情の飲み込めないまわりの人間にすれば何の話しだと思うところだが、湊が手を放しても風花は自分で持ちながら不思議そうに煙管を吸っているので、怪訝な表情を浮かべてゆかりが相手に問いかける。

 

「えっと、風花? それ吸って大丈夫なの?」

「うん。最初は驚いたけど、これ本当に煙草じゃないの。なんかメロンソーダの味がする霧っていうか煙みたいなのが入ってて美味しいよ?」

「メロンソーダ?」

 

 見た目は明らかに煙管なので、それとメロンソーダ味を上手く結びつける事が出来ない。

 そう思って難しい表情で見ていれば風花が渡して来たので、ゆかりも恐る恐る咥えて吸ってみた。

 すると、風花の言っていた通り、冷たいメロンソーダ味の煙のような物が喉を潤してくる。爽やかな香りと共に炭酸のシュワシュワとした感触もあり、ゆかりも美味しいと感じながら隣の美紀に渡しつつ感想を述べる。

 

「……本当だ。シュワシュワするメロンソーダ味のなんかが入ってる。これって何なの?」

「飲み物の味を付けられる喉用の加湿機みたいなものだ。飴やガムに近い感覚で水分補給も出来ると思って貰っても構わない」

「前から思っていたんですけど、有里君って色々と変わったものを持ってますよね。そういうのってどこで見つけてくるんですか?」

「そういうのを取り扱っている知り合いがいるんだ。まぁ、機会があれば会わせてやるさ」

 

 ゆかりに続いて体験した美紀も驚いた顔をしてからしっかり味わうと、それで満足したのかチドリに渡そうとした。

 けれど、チドリは既に知っていたことで拒否したため、そのまま持ち主に返せば湊は煙管を咥え直して男子に向き直る。

 

「さぁ、誤解も解けたところで解散といこうか。帰っていいぞ下級生」

「いや、何にも解決してないでしょうが! 制服は新しいのを買って、アクセサリーは外す。あとそっちの人も髪の色をちゃんと黒に戻してきてください」

「……これ地毛だし、生まれつき髪は茶色で黒かった事なんてないけど」

「俺の眼も自前だな。幼い頃の治療の副作用で色が変わったんだ。ちゃんと医者の診断書も提出して学校に事情を話してある」

 

 一年生のときにはそれで校長や教頭が揃って謝罪に来る事態に発展した。勿論、それはしっかりと教師全員で情報を共有していなかった学校側が悪いのだが、生徒にまで伝える義務はないので、一年生の男子が知らなくても無理はない。

 案の定、湊の話を信じていない相手は呆れた様子で言葉を返してくる。

 

「そんな副作用なんて聞いた事ないですよ。というか、そういった目立つ格好されていると他の生徒にも迷惑がかかるんです。一人が問題行動を起こして月光館学園の生徒全体が風評被害を受けたら責任取れるんですか?」

「……さぁな。学校から黙認されている以上、そのときは庇ってくれるんじゃないか?」

「随分と無責任なこと言いますね。学校に来てなかったらしいですけど、テストもまとも受けてないんじゃないですか?」

「よくわかったな。一学期の中間から二学期の期末まで全教科最低得点で見事に最下位だ」

「開き直ることじゃないです!」

 

 湊が言っている事は嘘ではない。そもそもテストを受けていないのだから、全て〇点で最下位と捉える事も出来る。

 もっとも、学校に留学の許可を取っていたので、その間のテストを受けておらずとも〇点で成績を付けられる訳ではない。

 しかし、それらの事情を知らずに言葉通りの意味で捉えてしまっている男子は、堂々と最下位だと言ってきた湊に軽蔑するような視線を向けると、続けて冷めた目を傍にいた美紀に向けて話しかけてきた。

 

「そちらの方は二年主席の真田先輩ですよね。貴女みたいな模範生がどうしてこういった人と付き合いがあるのか不思議です」

「私は別に自分を模範生であるとは思っていませんが、ちゃんと相手の人柄を見て判断しています。確かにチドリさんも有里君も見た目は派手かもしれません。ですが、人柄も知らずに偏見で判断していると損しますよ」

「損ってどういう風にですか? 別に僕はこの人と関わらなくても問題なく学校生活を送れますけど」

 

 友人を軽く見られたことで美紀が静かな怒りを秘めた真剣な口調で注意するも、相手は完全に舐めきっているのか嘲る様に吐き捨てる。

 女子ばかりとはいえ、上級生五人が固まっている場に一人で注意にこれる度胸もすごいが、男子は自分が正しい事を言っているからこそ、これだけ自信たっぷりに言い切れるのだろう。

 そうして、あまりに失礼な物言いに、部活メンバーらが男子に対して僅かに不穏な空気を発し始めたとき、ずっと男子を観察していた湊が相手に話しかけた。

 

「……下級生、学校生活において生徒の出来を判断する最も簡単な物は何だと思う?」

「下級生って呼ばないでください。生徒会庶務、1-Aの木戸 武蔵(きど むさし)です。それで、生徒の出来を判断する物でしたっけ? まぁ、普通に考えれば成績じゃないんですか。ていっても、貴方は今まで最下位だったんでしょ。なら、一番不出来な生徒じゃないですか」

「ちょっと、君っ」

 

 いくら親しくないとはいえ、流石に先輩に対してその口の利き方はどうなのだと、ゆかりが木戸を諌めようとするも湊が肩を掴んでそれを止める。

 あんな失礼な事を言われて何故止めるのか。そう言いたげにゆかりが湊に抗議の視線を送ると、湊は真っ直ぐ木戸を見たまま言葉を返す。

 

「今までがそうだったからと言って今回もそうだとは限らないな。一年間に学んだ事をどれだけ覚えているかを確かめる集大成のテストだ。一学期の中間や期末よりも、そこで優秀な成績を残した者の方が優れているとは思わないか?」

「確かにそうですけど、なら今回のテストでは最下位じゃない自信でもあるんですか?」

「ああ、授業はろくに受けてないがそれなりに解けたつもりでいる」

「根拠のない自信ですね。じゃあ、勝負でもします? 学年は違うようですけど順位でなら公平な勝負になると思いますが?」

 

 今まで最下位だった者がそれなりに解けたと言ったところでたかが知れている。加えて、彼は真面目そうな雰囲気の通り、期末に向けてしっかりと勉強していたのか、自分が順位で負ける事はないという自信が滲み出ていた。

 ゆかりとチドリは、相手のその見下したような発言と生意気な表情に怒りを覚え睨みつけているが、勝負を持ちかけられた湊は冷静に淡々と相手の申し出を受けた。

 

「そうだな。では、俺が勝ったら自分の目が節穴だったと認めて貰おうか」

「なら、僕が勝ったら校則通りの服装にしてその長い髪も切って貰いましょうかね。ついでに校内ではその煙管も吸わないでください」

「随分と注文が多いな。それなら、こっちも一つだけ足しておこう。お前が負ければ俺はお前の上司が無能であったと思わせてもらう。自分のことも満足に出来ないやつを役員として使っているんだからな。これは十分に問題と言えるだろ?」

 

 無能な部下を使っている上司も同じく無能である。こんな物は完全な言いがかりでしかないが、相手にとっては効果覿面なようで驚きに目を見開き、すぐに声を荒げて言い返して来た。

 

「なっ、会長は関係ないじゃないですか!」

「だが、自ら望んで高い役職に就いている人間は責任も同時に負うんだよ。自己管理出来ていないのは部下本人の責任だが、それを一年も見過ごして来たのなら上の管理責任を問わざるを得ない」

 

 本人の責任とは別に、上司ならば部下の状況も把握して問題があれば対処すべき。その点については反論できないのか、木戸が黙れば湊は薄い笑みを浮かべてさらに続ける。

 

「別にこの時期になってリコールする訳じゃない。単純にお前の上司もお前と一緒で人を見る目がないと思わせて貰うだけだ。勝手に思っていればいいのにわざわざ確認するんだから誠実な対応だと思うがな」

 

 そう、湊はこれといって美鶴に対して何かの行動を起こすつもりはない。今話題に出したのも、単純に相手を煽るためだけに上司にまで言及しただけだ。

 相手は何か言いたそうにしながら必死に抑えているので、彼にとって美鶴はそれなりに特別な存在なのだろう。

 ならば、目論見は成功したと内心でほくそ笑んで、湊は正式に勝負するのか相手の答えを待った。

 堪えるように拳を握って睨みつけてきていた木戸は、少しすると感情を抑えて冷静なように振る舞いながら口を開く。

 

「貴方の名前は? 名前を聞いておかないと確認出来ません」

「2-Bの有里湊だ。掲示は来週の金曜日の放課後にして貰っておくから、そのときまで確認しなくていいぞ」

「有里先輩ですね。そういう勝手な事も今後はしないで貰いますから、ちゃんと来週の金曜に学校に来ておいてくださいね。それじゃあ、失礼します」

 

 それだけ言うと相手は礼をして校舎の方へ去って行った。

 基本的な部分では真面目でいい子なのだろうが、随分と視野が狭く感情的になりやすい印象を持つ。

 そんな子どもっぽい後輩の遠ざかってゆく背中を見つめ、ゆかりは隣にいる青年にわざわざ勝負する必要などあったのかと尋ねる。

 

「あんなの勝手に約束して良かったの? ていうか、あの子って成績いいのかな?」

「さぁな。別に興味もないしどうでもいい」

 

 それなりに自信ありげだったことから、相手の成績は悪くはないはずだ。けれど、どうせ来週の金曜日には結果が出るのだから、気にするだけ無駄だと湊は切り捨てた。

 だが、さらに続けて淡々と語られた言葉にチドリを除く全員が驚愕する。

 

「それと今さらだが、お前らよく俺が咥えてた煙管を回して吸えたな。もう少し男子との距離感を意識した方がいいと思うぞ」

『っ!?』

 

 完全に意識していなかったが、指摘を受けたことでゆかり・風花・美紀の三名の顔が真っ赤に染まった。

 中でもダイレクトに二次接触を行った風花は耳まで赤く染まり、このままではのぼせて倒れてしまうのではないかと心配になってくるほどだ。

 湊が言わなければ意識する事もなかったというのに、どうして最後の最後で爆弾を落としてくるのか。言われた一同は、久しぶりに再会した青年の無意識に周囲を巻き込むトラブルメーカー気質に僅かな懐かしさを覚え、それ以上に再び騒がしい毎日が帰ってくる事に対して頭を痛めるのだった。

 

 

 




湊の異能解説:其の一

・ペルソナ能力(ワイルド、複数同時召喚)
 心の鎧であるペルソナを具現化し操る能力。ワイルドの素質を持つ湊は愚者から世界及び宇宙までの全アルカナのペルソナを扱う事が出来る。
 さらに複数同時召喚という希少な才能を有していることで、作中ではただ一人ペルソナを複数体同時に召喚して操ることが可能。 
 影時間やペルソナに対して高い親和性を持っている事で、ペルソナの身体の一部や武器だけを呼び出す“部分顕現”や、高同調状態で呼び出す事でペルソナと共に飛ぶ事が出来る。
 しかし、高同調状態はペルソナとの繋がりが強くなるためペルソナが受けたダメージのフィードバックが大きくなる欠点がある。高同調状態は他のペルソナ使いも訓練によって使用可能な能力だが、自分とペルソナの境界をなくしてペルソナ化してしまう完全同調は、悪魔やペルソナにシャドウといった存在に近い古い神の血と肉体を受け継いでいる名切りの血筋の人間しか出来ない。
 湊の持つ自我持ちのペルソナたちは“半顕現状態”といって、実体を持たない半透明の霊体で現れることが出来る。この状態では戦闘能力は一切なく物に触れる事も出来ないが、他の者からは姿が見えない上に召喚時よりも格段に消費エネルギーが少ないので話をするだけならば効率が良い。ただし、湊の傍からあまり離れ過ぎると消えてしまう事に加え、本当に幽霊のような状態なので強い霊感を持っている者なら一般人でも視えてしまう。


・ミックスレイド
 複数同時召喚出来る者の奥義であり、ペルソナ同士の力を融合させて特殊なスキルを発動させる事が出来る。発動するスキルはペルソナの強さや、掛け合わせるペルソナの数によって威力が変わる。


・直死の魔眼
 瀕死状態になり、デスの器になったことで“死”を理解した湊が手に入れたモノの死の概念を捉える魔眼。発動中は眼が蒼くなる。
 魔眼自体は九頭龍家の一級四爪守護龍憑き以上ならば誰でも手に入れることが出来るが、その中でもずば抜けて希少な能力であり、“死の線”と呼ばれるモノに視える赤い光の傷をなぞる事で対象に死を発現させることが出来る。
 全ての存在は生まれた瞬間から概念的な死を内包しているので、生き物だけでなく無機物やペルソナにシャドウといったモノに対しても有効。ただし、ペルソナやシャドウを完全に殺してしまうと元の持ち主の心が壊れて一生影人間になるため、湊は傷を作りダメージを蓄積させることで顕現状態の解除だけを行っている。
 死の線を視え辛くすることは可能だが、線に対する攻撃はガード不可能なので、攻撃を受ける側は自分には視えない線のない部分で攻撃をガードするしかない。また、切られた傷は既に殺されているため治癒も治療も出来ない。 
 

・デスの恩恵
 死を司るシャドウを身に宿していることで、自身の生命力を使用して蘇生や高速治癒を行う事が出来る。しかし、蘇生や治癒にも限度があり。脳を破壊されれば蘇生は出来ず、失った四肢を生やすことなども出来ない。
 もっとも、臓器類は抜かれたり潰されても新たに作り出す事や治す事が出来るので、心臓を破壊されても痛みはあるが問題はない。
 身体を上下に分断された場合も、くっつければファルロスが上手く治してくれるので、臓器以外の肉体はパーツの欠損がない場合、基本的に治るものと考えてよい。

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