【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第百九十六話 戦いの訪れ

4月9日(木)

朝――月光館学園

 

 七歌の作戦室強襲というハプニングから一夜明けた翌日。ゆかりは寝不足で怠そうな足取りのまま学校に登校してきた。

 影時間が明けた後、自分たちの部屋に戻ろうとしたゆかりと美鶴は、私室の扉が撤去された上に部屋の中を写すようにビデオカメラがセッティングされている事に気付いた。

 犯人は七歌確定ではあるものの、自分たちがしていたことを考えれば、相手はただやり返してきただけなので強く言うことは出来ず。さらにカメラに触ったら先の件で訴訟だと書かれた紙も張られていたので、いい気分ではないがしばらくはしょうがないと受け入れることにした。

 しかし、七歌の本当の復讐はそこからで、午前二時頃からおよそ一時間おきに大音量の目覚まし時計が様々な場所で鳴り響いたのだ。

 一つ目は美鶴のベッドの下、二つ目はゆかりの机の下、三つ目は女子フロア談話スペースの椅子の下など、隠された場所はバラバラだが部屋の扉がないのでどこで鳴っても二人の耳に届いてしまい、少し寝ては起こされるせいで寝不足になっていた。

 また、三つ目の目覚ましを止めてようやく少し眠れると思われたときも、日課のランニングのために六時前に起きてきた七歌が、背中に木刀を担いで廊下で準備運動を兼ねたラジオ体操を始めるという暴挙に出たことで、結局まともに寝られずに登校時間が来てしまい。ゆかりは昼休みに櫛名田の部屋のベッドで仮眠させて貰おうと思いながら学校へやってきた。

 すると、生徒玄関のところで駐車場の方から歩いてきた湊と遭遇し、疲れてはいるが朝から会えて少し嬉しかったことで笑顔を浮かべた。

 

「おはよ、今日は一人なんだ?」

「ラビリスが朝練だったからな」

「そっか」

 

 違うクラスになってしまうことに慣れたのか、今ではこうやって朝偶然会うだけで喜べる自分の単純さにゆかりは苦笑する。

 靴を履き替えていた湊はそれを見て不思議そうにしているが、彼が気にすることではないので、何でも無いとだけ告げて彼女は購買に向かう。

 今朝は寝不足とストレスのせいで頭が働かず、七歌のカメラから死角の位置で着替える必要があったなど、ボケボケ状態では学校の準備にも少々手こずった。そのため朝食など摂る余裕もなかったことで、学校に来てからパンくらいは食べておこうと思った次第である。

 もっとも、食欲はないので菓子パン一つとペットボトルの紅茶で済ますが、買い終わって後ろで待ってくれていた湊と一緒に教室へ向かおうとしたとき、横から凄まじい速度で両者の間に割り込む者がいた。

 

「うわっ!?」

 

 急に何かが目の前に来たことで驚いたゆかりは数歩下がるが、距離が空いて相手を見る余裕が出来たことで視線を向ければ、割り込んできた人物が件の七歌であると認識する。

 どうして相手が割り込んできたのかは不明だが、その瞳は明らかに怒りを表わしており、背中に湊を庇うようにして壁になった彼女は、キッと鋭い視線でゆかりを睨みながら口を開いた。

 

「すみませんがうちの八雲君に近付かないで貰えます? 岳羽さんみたいな人が傍にいると、八雲君の教育上良くないので」

「は、はぁ? だから、彼は有里湊でそんな名前じゃないんだけど? それに近付かないでって意味分からないし」

 

 昨日の今日なので七歌が敵意剥き出しなのは分かるが、怒っている理由が湊に近付いていたからとなると意味が分からなくなる。

 そも、彼女は転校初日から何故か湊を八雲君と呼んでいるが、ゆかりたちは彼の名前が有里湊だと知っている。免許証にもそのように書かれているし、学生証にもはっきりと記載されているので間違いない。

 だというのに、彼女は自分が間違っているとは微塵も思っていないようで、ゆかりの言葉を無視して湊の方へ振り返るなり、ゆかりの危険性について熱く語り出した。

 

「八雲君、この人に近付いたらダメ。美鶴さんとグルになって寮の私室を盗撮するような人間だから危ないよ。幾月とかいうオッサンと揃って女子の盗撮映像売ってるんだから」

「なっ、ち、違うからね? 誤解だからっ」

 

 盗撮は確かにしていたが、その映像を売ったりなどしていない。

 理事長である幾月の名前まで出てきたことで信憑性が増し、近くで自分たちを見ている生徒から余計な噂が広まってしまうと困るため、ゆかりは必死に彼女の言葉を否定した。

 もっとも、ゆかり自身は長い付き合いの中で湊がこういった話を簡単に信じるとは思っていない。彼はどういう訳か他人の嘘を高確率で見抜くので、裏家業で培った何かしらの勘なのか、今回の話もそれによって真贋を見抜いてくれるはず。

 そう考えて少しばかり安心していたのだが、湊にゆかりの危険性を熱弁していた七歌が急に振り返り、ゆかりと視線を合わせるなり敵意の籠もった言葉をぶつけてきた。

 

「岳羽さんは元カノでしょ。現在は他人なんだから八雲君に付きまとわないで」

「別れた後も交友を続けるかどうかは私たちの勝手じゃない。ていうか、貴女の方こそなんなのよ。有里君のこと変な名前で呼んだり訳わかんないこと色々言って」

 

 確かに元カノで現在は他人かも知れないが、部活仲間で友人だとゆかりは思っている。

 それは他人ではあっても赤の他人ではないので、誰と勘違いしているのか不明だが、転校してきたばかりのくせにお前こそ湊に付きまとうなと言い返した。

 すると、相手は変な名前呼ばわりはやめろと言いつつ放っていた怒りのオーラを僅かに弱め。そのまま自分の腰に右手を当てると、

 

「自分はふりかけみたいな名前のくせに、菖蒲おばさまが付けた由緒正しい名前を変とか言わないでくれる? それに私は八雲君の血縁者。父親同士が兄弟の従姉弟であり姉だよ」

 

 己と湊の関係について高らかに宣言した。

 瞬間、周囲の空気が固まる。言われて二人を見比べると、生まれ持った品の良さなど共通点が感じられ、さらに言えば顔つきが似て無くもない。

 美人度で言えば湊に軍配が上がるし、髪や瞳の色も違うので簡単には信じられないが、七歌があまりにはっきりと告げたことで一部の者が本当にそうなのかなと信じかけたとき、今まで黙っていた湊が薄く笑って口を開いてきた。

 

「……俺の周りは自称姉が多くて困るな。たまには妹が来ればいいのにと思えるくらいの余裕が出てきた」

「まだ完全に記憶戻ってないの? ほらほら、実家が隣で一緒によく遊んだ七歌だよ? 英恵おばさまのことを思い出してるなら分かるはずなんだけど」

「俺は一人っ子だしお前なんて知らない。岳羽の言った通り対人関係に口出しされる覚えはないしな。分かったら妄言はそこまでにしておけ」

 

 湊に義妹好きという属性はないが、姉ポジションを狙ってくる者は過去にもいたので、たまには逆パターンで来てもいいんだぞと軽い冗句を飛ばす。

 それに対して七歌は未だに記憶喪失で自分のことは思い出せていないのかとガッカリしながら、それでもゆかりのような人間と関わると碌な事にならないと湊のためを思って忠告した。

 

「私の事を思い出せてないのは分かったけど、それでも岳羽さんと関わるのはダメ! 八雲君は有名人になったんだから、こういう非常識な盗撮魔と一緒にいたら変な写真撮られるよ」

「……話はよく分からないが、岳羽の盗撮癖は前からだぞ。人の寝顔を勝手に撮って、携帯のプライベートモードの待ち受けにしているくらいだし」

 

 言われたゆかりは寝顔隠し撮りが本人にバレていたことに驚き視線を泳がす。

 彼女の携帯には携帯側面にあるボタンを押すことで起動出来るプライベートモードが存在し、そちらは通常とは違う待ち受け画面が設定できた。通常モードとの違いはアイコンの並び換えが出来たり、お気に入りページへのショートカットがボタン一つで出来るくらいなので、通常モードの方に慣れていれば大して恩恵はないが、こっそりと撮った彼氏の綺麗な寝顔写真を待ち受けにして癒やされていたので気付かれていたとなると恥ずかしさしかない。

 ゆかりが視線を泳がせながら頬を染めて言い訳を考えている間、そちらを放置しておくことにした湊は、さらに続けて自分の盗撮被害への考えを七歌に語る。

 

「だが、俺の隠し撮りに関しては今更だ。街中を歩いていても撮られることがあるからな。撮ったやつ全員にいちいち消させていたらいくらあっても時間が足りない」

「むぅ……。八雲君が言うならいいけどさ。岳羽さん、あんまり八雲君の周りを彷徨かないでね。はっきり言って迷惑だから。それじゃあ、八雲君も授業頑張ってね。バイバイ」

 

 湊があまりに寛容だったことで、これ以上言っても今は無駄と判断したのか七歌は湊にだけ笑顔を向けて去って行く。

 その際、キッと鋭い視線でゆかりを牽制することも忘れないのは流石の一言だが、後に残されたゆかりは会ったばかりの相手が自分の元カレの血縁者を自称して来たりで色々と混乱していた。

 

「なんなのよ、もう……」

「ま、あれはあれで誰かと勘違いして俺を心配してるんだろ。俺のことについてはどうでもいいが、相手の態度は元を辿れば岳羽たちが悪いんだから、自分たちの行いの報いとしてしばらくは我慢しろ」

「えっとぉ……どういう事か分かってたりする?」

「……さぁな」

 

 事情を詳しく知らないはずの青年が的を射た発言をしてきたことで、ゆかりは思わずドキリと心臓を跳ねさせる。

 彼は桐条を憎んでいるので巌戸台分寮についても知っていそうだが、被験体にされていた彼が今も影時間に関わっているかどうかは不明だ。蓋をしていたい辛い記憶だと思っている可能性もあるため、これ以上聞くのは躊躇われた少女は話を切り上げると、彼の言葉を真摯に受け止め教室へ移動することにした。

 

 

影時間――巌戸台分寮

 

 学校も終わり帰ってきたゆかりは、影時間になると昨日までと同じく寮の作戦室に来て、今日の七歌の様子を語り、美鶴や幾月に自分は話も聞いて貰えない状態だと改めて言った。

 彼女たちのいる作戦室の扉やモニターは既に新しい物に交換されて直っており、七歌の言いつけを守って彼女の部屋からはカメラも撤去されている。

 故に、いま彼女が何をしているのかは分からないが、きっと武器を持ったまま起きているのだろうと予想しながら、幾月は持ってきたアタッシュケースを開いて二人にみせた。

 

「ふーむ、岳羽君の会話に応じてくれないとなると、やっぱり桐条君に任せるしかないみたいだね。せっかくこうして彼女用の召喚器も用意したんだが」

「彼女は召喚器を使わずに呼び出せるようですが、消耗と成功率を考えれば召喚器の有無は大きいです。こちらについて貰えなくても、影時間に勝手に動くのなら自衛手段として持っておかせた方がいいかと」

 

 ペルソナは己の心の力を具現化させた物なので、集中さえ出来れば呼び出すのに召喚器は必要ない。

 ただ、召喚器の補助効果はかなりのもので、召喚に慣れていない者でも召喚成功率を飛躍的に高め、さらに召喚をスムーズにさせることで精神力の消費を抑える事も出来る。召喚器を使わずに呼び出した際に消費する分のエネルギーがあれば、召喚器を使うだけで三回はペルソナを呼び出せるのだ。

 七歌が特別課外活動部に入るかどうかはともかく、勝手に動き回ってシャドウに襲われては大変なので、最低でも召喚器を渡して自分の身を守れるようにさせなくてはならない。

 その事を美鶴が伝えれば幾月も同意するように頷き、彼の手にある召喚器をどうやって渡すか話し合おうとしたとき、コンソールから呼び出し音が鳴り響き外に出ていた真田から通信が入ってきた。

 

《美鶴、応答してくれっ》

「どうした明彦?」

 

 声の調子がいつもと違う。様子がおかしい相手に美鶴は怪訝な表情をして応答すれば、真田の持っている通信機から何かが暴れるような音が届いて、すぐに彼の声も返ってくる。

 

《シャドウが現われた。だが、いつものやつとは違う。見たらお前も驚くぞ!》

「言っている場合か! 今はどういう状況だ? 助けは必要なのか?」

《フッ、今まさに追われている状況だ。もう少しでそっちに着く。雑魚も一緒に湧いているから、そちらでも戦闘準備をしておいてくれ》

 

 それだけ言うと通信は切れてしまった。普段見ない強敵に追われながらも笑っていられる余裕があるのは良いことだが、非構成員の七歌がいるここへ敵を連れて戻ってきてしまうのは非常に拙い。

 組織の活動をどこか遊びのように捉えている真田に思わず呆れつつ、美鶴は右手を額に当てて数度頭を振ると思考を切り替えた。

 

「理事長、今の通信の通りです。私はこれから明彦と共にシャドウ討伐に当たります」

「あ、ああ、分かった。くれぐれも気をつけて」

「岳羽、君は七歌の護衛だ。彼女の召喚器も一緒に持って行き、事情を話して避難してくれ。もしも戦闘になったときは君が彼女を守るんだ」

「え、あの……はい、分かりました」

 

 実戦経験のないゆかりはお前が守れと言われて不安な顔をする。相手は今まさに険悪な状態にある七歌だ。そんな彼女に事情を説明して避難して貰い、さらに緊急時には一度も成功していないペルソナの召喚を行って戦わなくてはならない。

 そのことを思うと不安で仕方が無いが、美鶴はこれからもっと危険な前線に出るのだ。適性を見いだされペルソナ使いの組織に所属していながら、自分以上に危険な任務にあたる者に対して、自分には出来ませんと我が儘を言うことは出来ず、ゆかりも幾月から七歌の召喚器を受け取ると部屋を後にした。

 

***

 

 本日の影時間が始まってから七歌は何やら胸騒ぎのような物を感じていた。

 悪意や敵意ではないが、何か強い意思を持った存在が近付いてきている。先日のシャドウと似たような存在であるならば、自分の身を守るために戦わなくてはならない。

 美鶴たちが対処にあたる可能性もあるが、相手の実力も構成員の数も把握していないので、七歌は彼女たちを信じずに自分の身は自分で守ろうと考えていた。

 寝間着から私服に着替え、練習用で鉄芯の入った重い薙刀を手に取る。実家から持ってきたお守りのペンダントが服の中にあることを確認し、準備は出来たと部屋を出ようとしたとき、部屋の扉をノックする音が響いた。

 

《ゴメン、起きてる? ていうか、緊急事態だから起きて欲しいんだけど!》

 

 聞こえてきたのはゆかりの声。緊急事態ということだが、七歌は自分が感じている存在についての事だろうかと予想しながら、嫌々ではあるものの扉を開いて相手と口をきく。

 

「なに?」

「あ、良かった。起きてた。っていうか、なんで武器持ってるの?」

「なんでって何か来るからだけど?」

 

 七歌が既に武装していた事にゆかりは驚いている。昨日の事があったので警戒して武器を持っていると思ったのか、一歩引いて表情を強張らせていたゆかりであったが、少女から武器を持っていた理由を聞くとすぐに冷静さを取り戻している。

 

「あなた、シャドウの気配が分かるの?」

「気配は分からないけど、何か強い意志みたいなのを持った存在が近付いてきてるのは分かるよ。明確にこっちに意識を向けてる感じだし」

 

 シャドウの気配というものは分からない。ある程度まで近付けば何かがいるというのは雰囲気で分かるが、もしここから駅前まで探知してみろと言われても七歌には出来ない。

 ただ、いま近付いてきている者はここを目指して進んでいる。さらに理由は分からないが七歌は自分も標的になっている気がしていた。

 人は自分に視線や感情が向けられると気付きやすくなる。相手がシャドウであってもそれは変わらず、狙われているのならせめて戦いやすい状況を作っておこうと七歌は考えていた訳だが、ゆかりは相手に心の準備が出来ているのなら説明する手間も省けると、幾月から預かり持ってきた召喚器を渡してきた。

 

「分かってるなら話が早いや。これ、あなた用の召喚器。弾は出ないよ。頭に当てて引き金を引けばペルソナが呼べるの。使った方が呼び出しやすくなるから持ってて」

 

 言いながらゆかりは銃口を天井に向けて数度引き金を引いて見せる。弾が入っていないことは確認して貰えたはずなので、そのまま七歌に召喚器とホルスターを渡せば、若干疑いつつも七歌はそれを受け取ってホルスターのベルトを腰に巻いた。

 ペルソナの召喚が不安定だった彼女にすれば。補助のための道具があれば余計に戦える。既に覚悟は決めているので、装備も整ったのなら後は戦う場所を選ぶだけだ。

 薙刀を持ったまま部屋を出た彼女は、戦いやすそうな場所はあそこしかないと目星を付けて移動を始める。すると、相手の目的地を分かっていないゆかりが慌てて静止の声をかける。

 

「あ、ちょっと、どこ行くの?」

「どこって屋上だよ。道路より広いし敵が来ても見やすい分戦えるから」

 

 てっきり逃げるとばかり思っていたゆかりにすれば驚きの発言だ。戦いなど現代社会で生きる学生とは無縁のもの。だというのに、七歌は既に意思を固めた強い眼差しで屋上を目指そうとしている。

 相手を止めたいが誰に何を言われようと七歌は言うことを聞かないだろう。それこそ、八雲君とやらと同一視している湊が彼女に命令しないかぎり。

 ゆかりが何も言わないことで話はそれだけかと会話を終了した七歌が再び進み始めれば、彼女を一人で行かせる訳にはいかないゆかりも心の中で冗談でしょと運命を呪いつつその後を追った。

 

***

 

 真田から通信を受けた美鶴は寮から少し離れた場所で真田と落ち合い、そのまま湧いていたシャドウの討伐に当たっていた。

 どれも大した強さではないが数が多い。レイピアを敵の仮面に突き刺し霧散させ、横から来ようとした者にはブーツで蹴りを入れて距離を取らせる。

 

「ポリデュークス!」

 

 そんな彼女の傍にいた真田は怪我をした脇腹を片手で押さえつつ、召喚器を使って己のペルソナを呼び出し、広範囲に雷を放つことで雑魚を一掃した。

 まだ敵は残っているが囲まれることを防いだ二人は一度集まり、周囲に気を配りながら敵について言葉を交わす。

 

「明彦、お前の言っていたすごいやつとやらがいないようだが?」

「ああ、来るまでは追われていたんだが、いつの間にか雑魚だけになっているな」

 

 周囲にいる敵はマーヤばかり。多いと言っても五十体もいないので、広範囲スキルと近接格闘を合わせて戦えば持久戦になっても勝てるはずだった。

 しかし、真田の話ではこれまで見たこともない敵がいたはず。そいつがどの個体を言っているのか分からないが、少なくとも今現在は姿を見せていなかった。

 美鶴がその事を尋ねれば真田も自分を追っていた相手がいないことを認め、ではどこへ行ったのかと近付いてきた敵を切り伏せながら美鶴は真田に問いかけた。

 

「逃げた可能性は?」

「その可能性は低い。ここへ来る途中にウチの学校の二年を見つけてな。適性者候補のようで状況を話すと次第に落ち着いていった」

 

 美鶴が敵を切り伏せている間に、真田も反対から来た二体の敵をコンビネーションパンチで牽制してから、止めにペルソナの拳をお見舞いして霧散させる。

 そうして改めて会話が出来る状態になれば、再び集まり美鶴が召喚したペンテシレアに真田の回復をさせながら話を続けた。

 

「それは喜ばしい事だが、それと逃げた可能性がないことがどう繋がるんだ?」

「そいつを男子寮に送る途中で敵と遭遇したんだ。やつは適性を持つ俺たちを明確に狙っていた。それが分かったからより適性の高い俺が囮になって二年を逃がせた訳だが、おかげで肋骨をやられた」

 

 ずっと脇腹を庇っていたので美鶴も相手が怪我をしているとは思っていたが、骨折となると自分のペルソナでは治しきれないと応急処置以外は諦める。

 ただ、新たな適性者候補が見つかったというのは朗報だと喜びかけたところで、敵がより強い適性の者を狙うという部分が引っかかり、美鶴は最悪の可能性に到った。

 

「なるほど……いや、待て。だとすると、そいつは寮へ向かったかもしれない!」

「なに? 寮には岳羽と転校生しかいないだろう」

「七歌が力に目覚めたのは私と同時期だ。本人の話では不安定ながら召喚器の補助無しに召喚も成功させている。適性の高さで言えば私たちよりも上かもしれない」

「なんだとっ!?」

 

 目覚めた時期が適性の高さに直結する訳ではないが、数年前に召喚を成功させている七歌ならば美鶴や真田と同じだけの適性を持っていてもおかしくない。

 いや、桐条グループの確認している中で最も高い適性を持った有里湊の血縁者となれば、特殊な血筋もあって美鶴たち以上の適性を持っている可能性の方が高いくらいだ。

 七歌について詳しく知らない真田はそこまで分かっていないだろうが、それでも妹の同級生である女子たちが危ないと聞き。思考を切り替えると鋭い視線で周囲の敵を睨んで、ここをすぐに突破することを選ぶ。

 

「急ぐぞ、美鶴!」

「わかっている!」

 

 こんな事ならば七歌とゆかりも一緒に寮の近くで迎撃に当たっていればと、美鶴は自分の判断を悔やまずにはいられない。

 自分たちが向かうまでに最悪の結末を迎えることも考え、すぐにそれを振り払うと目の前の敵を倒すことに集中した。

 

***

 

 屋上にやってきた七歌は、屋上に向かって吹いてくる生温い風に髪を揺らしながら敵を待っていた。すぐ後ろには怯えた様子のゆかりがキョロキョロと周囲を見渡しているが、向かってくる大きな気配は正面から感じるので、敵が来るのが前方からなのは確定していた。

 待ち始めてどれくらいの時間が経っただろう。三分か、それとも五分か。時計が止まっているせいで時間は分からないが、少し待ったと思える程度の時間が経過したころにそれは現われた。

 

「ひぃっ!?」

 

 ピチャピチャと水音のような物が聞こえていたと思えば、屋上の縁に巨大な黒い手がかかり下から青い仮面が現われた。

 それがずっと感じていた気配でありやってきた敵の正体だが、実戦経験がないのか七歌の後ろでゆかりが肩をびくりと揺らして表情を引き攣らせている。

 七歌自身も敵に対して一切の恐怖を感じていない訳ではないものの、既に敵が目の前にいて怖がってばかりもいられない。震えて立ち止まっていれば自分が死ぬのだから。

 

「……怖いなら邪魔だから下に戻ってなよ。守って戦うほどの余裕なんてないだろうし」

「な、なんでそんなに冷静なのよ。目の前に敵がいるんだよ!?」

 

 敵は複数の腕で身体が形成された化け物。全ての腕が一ヶ所で繋がっており、そこか仮面を持っている腕を切れば倒せるのだろうかと七歌は予想する。

 少女が戦う前に相手を分析している間に屋上に上がってきた敵は、今まで何も持っていなかった手に西洋剣を出現させ、それを見た七歌は近付けば八つ裂きだなと他人事のように考えていた。

 相手も既に戦う準備は出来ている。ならば、こちらも動くしかないと召喚器を手にした七歌は、そのまま召喚器をこめかみに当てながらゆかりの問いに答えた。

 

「分かってるじゃん。目の前に敵がいるから、だから覚悟を決めるしかないんだよ! ペルソナァ!」

 

 これではまるで自殺のようだ。そう思いながらも七歌は今までよりも遙かにクリアな思考で召喚を成功させる。

 受け取った召喚器は中に何かが入っているようで、グリップから青い光が漏れているが、その何かによって七歌はより強い死のイメージを感じることが出来た。

 それで召喚が簡単になったということは、ペルソナの召喚は死を具体的にイメージすればするほど容易になり力も増すに違いない。

 ならば、戦わなければ死ぬ今の状況はこれ以上ないほどに力を発揮できるはず。現われたエウリュディケと確かな繋がりを感じて、七歌は彼女に攻撃を命じた。

 

「お願いエウリュディケ! マハガル!」

 

 丈の長い白いキトンを身に纏ったエウリュディケは、手をかざすと髪を揺らしながら広範囲に暴風を巻き起こす。

 風はそのまま敵へと向かい、動き出そうとした敵を押し返すことには成功したが、以前、街中で遭った敵のように一撃で消し去るには至らなかった。

 見たところダメージも軽微、これでは持久戦になってしまいそうだと考えながら、七歌はエウリュディケが消える前に武器を持って横に駆け出す。

 あのままその場に残っていれば、馬鹿みたいにぼけっと立って戦いを見ているゆかりを巻き込むと考えての判断だ。

 敵も何もしていないゆかりより、ペルソナという戦闘力を持った七歌を敵と定めたようで追ってきた。その間にゆかりは反対側に逃げているが戦力にならないので気にしない。

 ただ、七歌の武器は鉄芯が入っているとはいえ、木で出来ている刃のない薙刀なので格闘でのダメージは見込めない。だとすれば、やはりペルソナ頼みの戦法しかないかと思ったところで、敵が腕だけを伸ばして切りかかってきた。

 

「なっ、延長コードみたいにぃ!」

 

 軽口を叩いているようだが、これは素の性格によるものだ。真っ直ぐ狙いを定めて伸ばされた腕は剣を持っているので、七歌は大きく回避する事よりも最小限の回避といなす事に目的を絞ってタイミングを計る。

 第一の腕が来るまで三秒、そう読んだ三秒後に本当に腕はやってきて、動き出していた七歌は横に振るった薙刀で剣の側面を叩いて受け流す。

 さらに第二の腕が来るまで二秒、そちらの読みも見事に当たり、やや上から来たものは身体を捻ったままサイドステップで躱して、相手が地面を切りつけたところを七歌も上から叩き付けるように切りつけ攻撃した。

 手首を狙ったことが上手く働いたのか、それで相手は第二の腕で持っていた武器を取り落としたが、薙刀でそれを遠くに弾いてから距離を取った七歌は、やはり刃のない武器では瞬間的なダメージしか与えられないと苦い表情を浮かべた。

 

(特別硬い訳じゃない。ただ、こっちの攻撃力が弱いんだ)

 

 深紅の瞳で敵を睨んでいた七歌は、三本に数を増やして再び迫ってきた腕を切り払い、跳んで、躱してゆく。

 相手の速度が増してかなりギリギリではあるが、攻撃の軌道を読んでいるためもう少しまでなら対処も可能だ。けれど、それは相手の攻撃を七歌が捌き続けるだけで決定打のない泥仕合になる事を意味する。

 ペルソナのスキルを使ったところで、最初の一撃と同じ結果に終わるのならほとんど意味が無い。

 それでも、ただ防戦一方になるのは御免だと七歌は薙刀を片手持ちに切り替え、空いた手で召喚器を使った。

 

「エウリュディケ、ガル!」

 

 呼び出したペルソナが風弾を放てば、敵は数本の腕を使ってそれをガードした。

 相手の攻撃が止まれば移動する余裕が出来る。七歌はその場を離脱し、相手と一定の距離を保ったまま屋上を移動する。

 すると、ガードを解いた相手は、七歌との戦いが長引くと考えたのか、突然方向転換し屋上の隅に移動していたゆかりの方を見た。

 

「まずいっ」

 

 七歌が見ている前で、方向転換した敵はそのままゆかりを目指して移動し始めた。敵の接近に驚いている相手は、顔を恐怖で引き攣らせながら逃げようとしている。

 けれど、相手が屋上の真ん中辺りにいたことで、敵の攻撃を避けるでもしなければ逃げ道などない。

 あっという間に角に追い込まれたゆかりは、青い顔をして召喚器を持っているが、どうしてだかそれを使ってペルソナを召喚していない。

 硬い床を蹴って急いで敵に近付く七歌は、もしや、死の恐怖が勝って召喚が出来ないのかと考えるが、剣を持った相手が目の前で腕を振り上げても、まだそんな事を言っている相手が信じられなかった。

 

「エウリュディケ、お願い!」

 

 再びペルソナを呼び出し、敵の背中側に風弾を当てて僅かな時間を稼ぐ。

 そして、今ここでやらなければ死ぬというのに、いつまで甘えているんだと怒りのまま叫んだ。

 

「“死”にたくなければ“死ぬ気”で戦え! 岳羽ゆかり!」

 

 恐怖で固まっていたゆかりは、その声でハッとした表情を浮かべる。

 何もしなければ死ぬ、だが、死の恐怖に打ち勝って死ぬ気で戦えばまだ可能性はあった。

 自分はまだ死ねない。そんな思いを表わすように彼女の瞳に力が宿る。震える両手で持った召喚器を額に当てると、恐怖に打ち勝つように叫びながら引き金を引いた。

 

「あああぁぁぁっ!!」

 

 そして、静かな影時間の屋上に、パリン、と硝子の割れるような音が響いた。

 

「……やればできるじゃん」

 

 土壇場にならないと覚悟を決めれない甘ったれだが及第点ではある。そんな風にほっと安堵の息を吐いた七歌の視線の先には、風を纏って現われたゆかりのペルソナ、恋愛“イオ”が敵を吹き飛ばす姿が映った。

 牛の頭骨型の椅子に座った女性型のペルソナであるイオは、七歌のエウリュディケと同じ疾風属性スキルを持っているらしい。

 力に目覚めたばかりでゆかりのペルソナも決定打を持たないが、戦力が増えたことで出来ることもあると、七歌はゆかりに指示を送った。

 

「私が隙を作るからその間にこっちに来て! エウリュディケ、上から潰して!」

 

 敵越しに見えるゆかりが頷いたことを確認して、七歌はペルソナを上空へ飛ばす。それを敵が視線で追っていたので好都合とばかりにアイコンタクトでゆかりに移動を開始させ、同時にエウリュディケには上空から真下の敵に向かって暴風を放つよう命令した。

 相手は複数の腕を足のように使うタコのような移動法だ。ならば、正面や後方から来た攻撃は支える腕と進む腕で負担を分散して耐えられても、上からの攻撃では等負荷になるので踏ん張るしかない。

 そう考えた七歌の読みは当たり、相手がその場に押さえつけられている間にゆかりが七歌の元へとやってきた。

 強敵を前にお互い決定打を持たない以上、これまでの確執を忘れて共同戦線を張らなければ死ぬのは確実。故に、七歌はゆかりの瞳をジッと見つめて拳を突き出した。

 それを見たゆかりは七歌の意外な行動に一瞬キョトンとするが、すぐに口元を歪ませ普段の勝ち気な雰囲気で自分の拳を当てて返す。

 

「作戦はあるの?」

「属性が同じだから、挟み打ちで潰すか切り刻むくらいかな。ああ、切り刻むときは風を薄く薄くするように心掛けて放ってね」

 

 これまで七歌はガルを風弾として放っていたが、かまいたちのような使い方も可能ではあった。

 ただ、普通に放つよりも当たり判定が狭くなるため、剣で防がれることも考えると使いどころが難しかったのだ。

 けれど、共同戦線を張った今ならば多方面から同時に攻撃を放ち、片方が外してももう一人が攻撃を当てにいける。

 召喚に成功したばかりのゆかりの技術に僅かな不安が残るが、それでも自分たちに出来るのはそれくらいだと、七歌は合図を送ってゆかりと同時にペルソナを召喚した。

 

『ペルソナ!』

 

 呼び出された二体のペルソナが左右に分かれる。敵は一瞬どちらを狙おうか迷った様だが、呼び出した本人を狙えばいいと気付いて七歌たちに剣を持った腕を伸ばしてきた。

 それを確認した七歌は薙刀を構えてゆかりの前に出ると、作戦は続行だと背中で語ってペルソナを目標地点まで移動させる。

 敵の攻撃が来るまであと数メートル、上手く捌かねば自分もゆかりも終わりだと分かっている少女は、呼吸を整えるとカッと目を見開いて武器を振るった。

 右足狙いの剣を横薙ぎで弾く、そのまま勢いを利用して裏拳の要領で腹狙いの剣を切り上げ、続けてきた左脇腹狙いの剣を石突きで叩いて逸らす。最初に弾いた剣が再び戻ってこようとする瞬間に手首を狙ってローキックをかまし、相手が落とした剣を空中で弾いて二つ目の腕に突き刺した。

 これら全てが僅か数秒の間に行われた事で、後ろで見ていたゆかりは目を丸くしているが、相手が美鶴に湊に最も近い人物と評されていた事を思い出したらしく、味方で本当に頼もしいと小さく笑った。

 

「いけるよ!」

「わかった!」

 

 七歌が敵の攻撃を防いでいる間に準備は終わった。敵を挟み打ちに出来るポジションに移動していたペルソナたちは、ギリギリまで力を研ぎ澄ましてスキルを放てるよう待機していた。

 召喚に成功したばかりのゆかりはそう何度もペルソナを呼べない。そのため、最初の一発が最大のチャンスだからと七歌たちは全力を初撃に掛けようと考えていたのだ。

 溜めたスキルの余波か、二体の女性型ペルソナが髪を激しく揺らし、それがいつでもいけるといっているようで頼もしく感じる。

 再びアイコンタクトでタイミングを計った二人は、同時に口を開き攻撃の解放を命令した。

 

『いっけぇぇぇっ!!』

 

 瞬間、限界まで鋭さを増した風の刃が次々とシャドウを襲った。

 伸ばした腕は無数の風で刻まれ、一際大きな刃が脆くなった部分を切断していく。これは不味いと逃げようとするも、召喚者を襲っていた腕を排除するとペルソナは今度はシャドウ自身に狙いを変えて、逃がさないとばかりに左右から風の刃を放ち続けて本体の仮面や腕にも傷を作っていく。

 溜めていただけあって効果時間も長く、強敵を前に絶対にここで仕留めると心が決まっているからか二人のペルソナは本来以上の力を発揮していた。同じ力を持っていた事で相乗効果が生まれた事も強さの一因だろう。

 そうして、二人が精神力が空になるまでスキルを放ち続ければ、胴体でもあった腕をバラバラに切断されもはや動けない状態となった敵が残っていた。

 傷口から血が流れるように黒い靄が漏れ出しているので、相手は放っておいても直に消えるだろう。それを確認した二人は全力を出し切った事で疲労の色を見せながらも、顔には清々しさすら感じる笑顔を浮かべて再び拳をぶつけ合った。

 そして、二人がそうやって勝利の余韻に浸っていると、

 

「無事か二人とも!」

 

 屋上の扉が開いて肩で息をしている美鶴と真田が現われた。二人が危険だと思って全力で駆けつけてくれたようだが、屋上の真ん中辺りでくたくたになって座り込んでいる二人と、数メートル離れた場所で消えていっているシャドウを見て、美鶴たちも二人がやりきった事を察したようだった。

 真田の方は後輩の女子二人が自分に怪我を負わせた強敵を倒したと知ってつまらなそうだが、美鶴の方はまだ召喚にも成功していなかったゆかりが七歌と力を合わせて戦いきったと知って、心配しつつもそれ以上に嬉しそうな微笑を浮かべて二人の元へ近付いていく。

 だが、それが彼女たちの犯した過ちだった。敵が完全に消滅していないにもかかわらず、もう消えるからと気を抜いた瞬間を敵も見逃さなかった。

 

「っ、岳羽、転校生、避けろ!」

 

 最初にそれに気付いたのは美鶴の後ろに続いていた真田だった。

 釣り上げられた魚のようにビチビチと跳ねていた腕が、近くに落ちていた剣の一つを取って、せめて最期に一太刀とばかりに座っていた七歌たちに向けて投げたのだ。

 疲労感で動けなくなっていた七歌たちも、完全に油断していた美鶴も、反応が遅れて対処できない。真っ先に気付いた真田がペルソナを呼び出そうと召喚器を抜くも、額に当てて引き金を引いている間に剣は二人に到達する。

 止めも刺さずに最後の最後で油断した彼女たちのミスだが、こんな結末はあんまりだと悔しさを感じながら二人の少女が瞳を閉じかけたとき、

 

「カストール!」

 

 くぐもった男の声が屋上に響き、少女たちを守るように黒いペルソナが現われた。

 少女らを狙って投げられた剣は、ペルソナの跨がる馬の額から伸びる穂先に弾かれ地面に落ちる。そして、直近の脅威がなくなると黒いペルソナは跳び上がって、屋上の床を割るほどの威力でシャドウの仮面を踏み抜いた。

 本体である仮面が破壊された事でシャドウは今度こそ完全に消えてゆく。それと同時に少女らを守ったペルソナも消えていくが、美鶴と真田は非常階段のところに立つフルフェイスのヘルメットで顔を隠した黒いロングコートの男に釘付けになっていた。

 男はシャドウが消えるのを確認するなり脅威は排除したとばかりに、美鶴たちが声を掛ける間もなく非常階段を降りていってしまう。

 

「待て! シンジっ……ぐっ」

 

 真田はそれを追おうとしたが、脇腹が痛むようで追うことは叶わなかった。

 男の去っていった方角を複雑そうに見つめる美鶴や、動けない自分に悔しそうにする真田など、戦いの終わりとしてはスッキリしない部分もある。

 シャドウを相手に必死に戦った少女らにとっても、最後の最後で美味しいところを持っていかれたような気もするが、今度こそ本当に戦いが終わったと確信できた事で、二人はそのままその場に寝転がると疲労がピークに達したことで意識を手放していった。

 

 


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