【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百十四話 神の天敵

――時計塔・四階

 

 先頭をゆく青年が走りながら一枚のカードを砕く。

 渦巻く光の中から白銀の毛並みを持つ聖獣が現われ、通路を埋め尽くすほどの雷を放つ。

 青年へと向かってきていたシャドウらは雷に灼かれ消滅し、最奥にいた狩人も防御態勢を取ったのだろうがコートから白い蒸気を立てて身体が半分壁に埋まっていた。

 射線上にいる複数のシャドウを倒しながら、最凶のシャドウである刈り取る者に明確なダメージを与えるほどの力を褒めるべきか。通路の床や壁を融解させるほどの威力を持つ雷を防いで見せた敵の力に驚愕するべきか。

 彼に遅れて追いついてきた者たちは、帯電状態の聖獣の傍らに立ち敵を睨んでいる青年に声をかける。

 

「八雲さんっ、あまり先行しないでください! 分断される可能性があります!」

 

 ここまで上ってくる間に倒したシャドウの数は百や二百ではない。

 そのほとんどを湊一人で倒しているが、階層が上がるにつれて敵の強さと数が増しており、刈り取る者の出現数も飛躍的に増えているのだ。

 湊の力ならば刈り取る者を相手にしても負けはしないにしても、塔の天辺でクロノスの片割れが待っている以上、今のペースで敵を倒し続けるのは危険。

 刈り取る者の狙いが湊に集中している事もあって、おそらくクロノスはシャドウたちに湊を優先して倒すように命令していると思われる。

 ここで他のメンバーと分断され、湊だけ多数の刈り取る者を相手に戦う事になれば玲の救出に支障が出るかもしれない。

 故に、他の者たちがフォロー出来る距離を保って欲しいとアイギスが言えば、青年は彼女の声がまるで耳に届いていないかのように床を蹴って敵へと進む。

 

「ああ、もうっ」

 

 他の者たちからはブレて見えるほど加速し、麒麟と併走しながら刈り取る者に近付いた湊は黒い鬼の腕を振り下ろし、壁ごと敵を粉砕する。

 その背後では麒麟が嘶き落雷を引き起こして、周辺にいたシャドウたちを一掃したようだ。

 電撃属性に対して耐性を持っているシャドウもいるだろうに、どれほどの力を込めてスキルを放っているのか。

 まるで言うことを聞いてくれない青年にアイギスが苛立ちを募らせていれば、融解して赤くなっていた壁や床をプシュケイの氷結スキルで冷ましていたメティスが声をかけた。

 

「姉さん、今の兄さんに言っても無駄です。戦闘が増えるにつれ、余計に阿眞根に近付いているみたいですから」

 

 瞳の色こそ再び魔眼の蒼に戻っているが、彼の放つ気配や空気が徐々に変わっている事には全員が気付いている。

 それが湊が人から神に変ずる予兆である事や、変化した“阿眞根”がベアトリーチェと別の存在だという事はよく分かっていないようだが、月光館学園側の者たちはベアトリーチェの力で自身の時を逆行させた湊が蛇神“无窮”を完全に呼び出した場に遭遇した。

 今の湊の放つ、張り詰めたような気配は、无窮が周囲に重圧を撒き散らしていたあの世界が終わる寸前の空気に近い物がある。

 

「阿眞根……また、ドイツの時のような姿になるんでしょうか……」

「それはないと思います。姉さんがドイツで見たのは器慣らしで、神降ろしを想定したレベルのエネルギーに身体を慣すためのものでした。まぁ、兄さんの中に眠る黒い感情が茨木童子の想定を超えていたので、危うく肉体が消滅するところだったようですけど」

 

 アイギスが阿眞根と聞いて思い出すのはドイツで力を暴走させていたときの姿だ。

 全身から光を放っていた青年の背から翼のように光の触手が伸び、彼の感情に呼応して破壊の限りを尽くしていた。

 周囲から受けた攻撃全てを叩き落とし、武器でありながら鎧の役目も果たしていた。

 あんなものをこの世界で展開されると流石に逃げ場がなく。湊の目を覚まそうにも触手を突破出来るほどの攻撃力も機動力もない。

 しかし、あれはあくまで器慣らしの仮顕現でしかなく、完全体の阿眞根としての姿や力はもっと別の物だとメティスは説明した。

 それを聞いたアイギスはそうなのかと納得したようだが、ならば、以前自分たちが転移したトーキョーで見たものがそれかとチドリが尋ねる。

 

「なら、私たちが全力を見せてって言った時に見たのがそれかしら? 瞳だけ銀色になって身体が光を纏っていたんだけど」

「そうですね。中身がベアトリーチェさんに変わっていたんじゃなければそうだと思います。よく似た状態に人格だけ切り替わるってのがあるので」

 

 湊の肉体のままで瞳が銀色になることがあるが、その際、湊を主人格としながら人間性が欠落したものが阿眞根となっている。

 ただ単に人格がベアトリーチェに切り替わっていても瞳の色が変わり、さらには神としての神威を纏っているので紛らわしいが、阿眞根とベアトリーチェでは後者の方が人間味がある。

 自分の半身である湊の事をよく気に掛けているため、下手をすると湊よりも人間らしいのではと思われるのが現在のベアトリーチェだ。

 チドリたちが遭遇した時期ではまだベアトリーチェは今ほど人間らしさを得ていなかったので、人格だけ切り替わっていても区別はつかないが、恐らく阿眞根だろうとメティスが答えればチドリはそうかと頷いた。

 あの時の湊は、先日无窮の召喚が行なわれた時並みに対処しようがないと感じた。

 エリザベスたちと言葉を交わしたと聞いているので、判断力や知性はしっかりと残っていると思われる。

 ただし、顕現時に湊が定めた目的を完遂するために阿眞根は現われるので、その目的を阻むような真似をすれば即座に排除しようとしてくるだろう。

 言葉は通じるが会話は成立しない。これは阿眞根と邂逅したエリザベスの言葉だが、まさにその通りの存在と言えた。

 周りでメティスたちの会話を聞いていた他の者らは、厄介な事態になりそうな気配がしていることで思わず顔を顰めている。

 けれど、善だけはまだ湊の事が気になっているのか、通路を抜けた先でシャドウたちを殺している青年に瞳を向け、メティスらの話は理解したが納得しきれない部分があると口にしてくる。

 

「だが、やはりおかしい。確かに湊の力は脅威だが、現われるシャドウもこれまでとは比べものにならない強さを持っている。それがあぁも容易く屠られるとなれば、何かしらの理由が存在するとしか思えない」

 

 両手に刀と中華剣を持った湊がシャドウを細切れにし、相手が靄になって消滅する間に次へと迫って刀を振り下ろすと敵の身体を両断した。

 容易く斬っているように見えるが、おそらくは魔眼で視えている死の線を斬って切断しているのだろう。

 だが、もしも魔眼を使っていないとすれば、確かに今の湊が見せる強さは異常に映る。

 いくら湊が強くなろうと敵にも耐久力や防御力というものが存在し、相性によっては名刀の斬撃を受けようと弾く者もいる。

 一方、湊の使う武器はどれも十分に業物と呼べる物ばかりで、そこに本人の技量が合わされば武器の性能は十二分に引き出されている事は分かる。

 だが、この両者がぶつかったときどちらに軍配が上がるかといえば、普通ならば相性通りに敵が耐えて終わるはずなのだ。

 刀で切れないなら鈍器で、鈍器も効かないのであれば魔法で、そうやってあらゆる手段を使いこなすのが湊の真骨頂であるため、最終的には湊が勝つという結果に変わりはない。

 しかし、今の湊は相性を無視して敵を倒せてしまっている。湊だけでなく彼の召喚するペルソナでもゴリ押しに近い形の勝利を収めているのを見れば、善でなくとも不思議に思ってもしょうがない。

 とはいえ、ここにいる者たちは全員湊の本気や手札の全てを知っている訳ではない。

 ずっと一緒にいた綾時でも知らない領域があるのだから、他の者にすれば知らないことの方が多いくらいだろう。

 だからこそ、分かる範囲で今の湊の強さについて考えてみた真田は、黒幕の用意した敵が湊にとってカモでしかなかったのではと予想を話す。

 

「相性の問題ではないのか? 山岸が言うには有里にはアナライズが通らない。そのため、黒幕のやつも上手く対策を取れないんじゃないのか?」

「……数多の力を使いこなす技量は確かに認めるが、湊は相性を無視した攻撃も放っている。流石に無効や吸収持ちは他の攻撃で対処しているものの、耐性程度であれば無視しているのを何度か見た」

 

 そういった可能性は善も考えていたが、流石に相性を無視して戦い続けているのを見ていれば、敵側に問題がある訳ではないと理解出来る。

 ならばと他の者たちも考えてみれば、相性を完全に無視出来る魔眼を使ったのではと千枝が思い付いた事を口にした。

 

「なら、魔眼だっけ? ほら、そういう相性を無視出来る攻撃が出来るんじゃない?」

「兄さんの魔眼は概念ごと殺したりも出来ますが、地味に制限が多いですよ。もっと言えば、万能属性とかでもなきゃ相性は無視出来ませんし」

 

 確かに直死の魔眼ならば相性も防御も無視出来ると説明していた。

 けれど、それを使うには魔眼の持ち主が接近し、視えている死の線を己の身体や武器で切りつける必要があるのだ。

 視えている線を狙ってペルソナのスキルを当てた場合、対象に死を発現させることは出来ず純粋にスキルのダメージのみが通る。

 その辺りの詳しい話をメティスが説明すれば、話を聞いていた者たちは彼の魔眼は優れた体術を持っているからこそ使いこなせる代物だと理解したようだ。

 もっとも、これで湊が敵との相性を無視し続けられている理由が分からなくなった訳だが、一人で考え込んでいた善はメティスの言葉からヒントを得たらしくハッとした表情で顔を上げた。

 

「……いや、そうか。それならば可能性はある」

「おいおい、なんか分かったのか?」

「確証はないが仮説としてなら思い付いたものがある」

 

 今の会話のどこに気付く要素があったのか。不思議そうに善を見る花村。

 だが、相手の視線を受け止めている善は、万能属性がヒントになったのだと仮説を話し始めた。

 

「万能属性が最初から相性を無視出来るように、今の湊はここにいるシャドウたちに対して優位に立てる特性を持っているのかもしれない」

「優位に立てる特性って、ここのシャドウって特殊なのか?」

「ここのシャドウは私が学校を作ってから生じたものだ。ある意味でクロノスの眷属と言える。それに優位となれば神殺しの特性を持っている可能性が出てきた」

 

 ダンジョンにいるシャドウは元の世界のものとは微妙に異なる。

 ここが世界の狭間にポツンと存在する浮島のような世界だからこそ、その存在を維持するために依り代を必要としていた。

 その依り代となったのが学校を作り出したクロノスである。

 依り代になった事でシャドウへの命令権を手にしたクロノスだが、シャドウたちはクロノスの恩恵でほんの僅かにクロノスの性質を得ていた。

 性質を得たところでなんら力に変化はないが、神に対して何らかの逸話などを持っている存在と戦うときには影響が出ることも考えられる。

 そのため、善は湊が神殺しの特性を持っていると判断したのだが、最近になって神と呼ばれる存在が実在すると聞いたゆかりは半信半疑のようで、湊の生家に詳しい七歌に意見を求めた。

 

「七歌、有里君の実家って神様とか殺してたの?」

「うーむ。妖怪退治的な事はしてたから、その延長と言えばそうかもしれないけど……言って私ら龍神の子孫だからね。戦闘系ではないけどポテンシャルはあると思う」

「ポテンシャルって……えらく曖昧だなぁ」

 

 神殺しの逸話は流石に名切りにも九頭龍家にも残ってはいない。

 そういった存在は遙か昔に人の前から姿を消しているため、二つの家が力を持ってから跋扈していたのは妖しの類いなのだ。

 恨み辛みや人の欲望を糧に生まれてきた妖しは、性質を考えると綾時のような高位のシャドウや善のような概念から生まれた神格に近い。

 それらを龍の命令で屠ってきたならば、名切りには怪異殺しの特性が伝わっている可能性は十分にあった。

 ただ、名切りがそういった仕事をしていたのは千年近くも前の事。

 そんなものが正常に機能するかは不明であり、もっと言うと日本の怪異ばかりを殺してきた者に、西洋の文化と思われる存在を殺す特性が効くとは思えない。

 善の言っている事が間違いだとは思わないが、意見としては弱いのではと話が振り出しに戻る。

 こうして他の者たちが考えている間も湊はシャドウへ向かって行き、呼び出したタナトスが紫色の雷で周囲を薙ぎ払うと最後は雷を収束させてレーザーのように撃っている。

 あそこまで簡単に敵を殺すことが出来れば楽しいのだろうなと七歌が暢気に思っていれば、湊の戦いをジッと見つめていた美鶴が口を開いた。

 

「……善、君は自分の正体がクロノスだと言っていたが、それはギリシャ神話の存在か?」

「ああ。本物ではないが人々の想いや願いが集まり近しい存在として生まれたものだ」

「想いや願い……それはイメージによって能力などが変わると言うことか?」

「どういった能力を持って生まれるか、という話で言えばそうだ。死神や時の神としての側面が強いが、もしも死者に有無を言わせず冥府に連れて行くというイメージが集まっていれば、剛力など肉体面での能力を持っていた可能性はある」

 

 あくまで善は時の神クロノスとしてのアバターを得て生まれただけの神だ。

 そこに死神など他の属性を合わさっているので、ギリシャ神話に語られるクロノスとは別物でしかない。

 自分がいつから存在するのか。自分以外にも同じような役目を与えられた存在はいるのか。

 詳しい情報を善自身は持っていないものの、おそらく地域単位で似たような者らがいるのではと彼は思っている。

 そういった話が役に立つのかと思って善が話せば、顎に手を当てて考え込んでいた美鶴が再び質問してきた。

 

「善、しつこいかもしれないが君は本当にギリシャ神話の時の神として生まれたのか?」

「ああ。私も神話についての知識は多少持っているが、自分の事は時の神クロノスとして認識している」

「そうか。……なら、そこに同名の存在の属性が混ざっている可能性は?」

「同名の存在……?」

 

 美鶴の質問の意図が分からず善が首を傾げる。

 どうやら彼の持つ神話の知識は穴が多いらしく、時の神と同名の神がいる事を知らないらしい。

 そして、善と同じように神話系の知識を持っていない順平も、先ほどから何の話をしているんだと説明を求めた。

 

「えっと、桐条先輩は何の話をしてるんすか?」

「簡単に言うとギリシャ神話にはクロノス神は二柱いるんだ。片方は善が言っていた時の神、そしてもう一方は古い神々の王とされた大地の神だ」

 

 ギリシャ神話にもいくつかの神話サイクルが存在するが、大地の神クロノスは原初の神々の一柱と言える存在だ。

 時代を考えれば時の神よりも先に生まれており、その力も大地の神の方が圧倒的に強かった。

 

「両者は全くの別物で綴りなどが異なるんだが、現地でもよく間違われたり混同されていたらしい。そして、先ほど善から人々のイメージで能力が変わると聞いて思ったんだ。もしや、大地の神の性質も混じっているのではと」

 

 だが、名前が同じせいで二つの神を同一の存在としてみたり、逸話が混ざって伝わることも多々あった。

 神話が作られた現地ですらこれなのだから、日本や周辺の国でも詳しい者以外は両者を同じ神と認識している者も居るかもしれない。

 その影響で善にも大地の神の性質が混ざっている可能性は確かにあるが、順平と同じように神話の知識に明るくない真田が性質が混ざれば何かあるのかと聞いた。

 

「大地の神の性質が混ざってたら何かあるのか?」

「あぁ、時の神と違ってそちらには明確な天敵がいるんだ。雷を己の武器とした神々の王“ゼウス”という天敵がな」

 

 そう答えた美鶴の視線を追えば、そこにはタナトスの雷で敵を薙ぎ払う湊の姿があった。

 先ほどまで麒麟でも電撃属性のスキルを多用していたので、ペルソナを変えてからも同じ属性を使っているのを見ると、美鶴が口にした雷を武器とした神々の王の存在を意識してしまう。

 だが、他の者たちがまさかと頭を過ぎった考えを否定しようとしたとき、美鶴の言葉を聞いてから湊を見ていた善が驚愕に目を見開いていた。

 

「っ…………そういう、事か」

「何か分かったのか?」

「あぁ。先ほどの推測は当たっている。確かに私には混同されたイメージによって大地の神の性質もある。そして、確かにいたんだ。この世界を閉じる前に、どこからか流れ着いた“ゼウス”が」

 

 どこか震えたように話す善は、自分で記憶を封じる前にその存在と会っていた。

 それが来たのは七歌たちの時代からでもなく、鳴上たちの時代からでもない。

 もっといえば、そもそもこの世界の存在ですらない。

 

「自分の記憶を封じる前に、私はゼウスがこの世界に入ってこれないよう閉め出した。世界を閉じてしまえば相手は介入してくる事が出来ない。だからこそ、そこでもう大丈夫だと安心していた。だが、相手はこの世界のすぐ外で未だに待っていたらしいな。世界の境界を破壊出来る湊が現われるまでずっと」

 

 閉め出した側にすれば相手の諦めの悪さに笑うしかない。

 元々、この世界を目的地にしていた訳でもないのだろうが、ゼウスの名を冠している以上、クロノスがここにいると知って狙っていたらしい。

 

「クロノスとしてなら最悪と言っていい事態だ。最もその力を持ってはいけない存在に力が渡ってしまった」

「では、今の八雲さんはゼウスの支配下にあるのですか?」

「違う。彼を見て分かった。あれの精神を支配することなど不可能だ。だが、湊は確かにゼウスの力を得ている。ならば考えられる事は一つ。彼はゼウスを取り込んだんだ」

 

 クロノスが恐れた敵の力を我が物としていた青年。

 どうして彼がシャドウらを容易く殺せていたのかもこれで理解出来た。

 世界と世界の狭間を渡ってきた彼は、閉め出されていたゼウスと出会って相手を取り込み、そうしてから平然と次元の壁を破壊してこの世界に侵入したのだろう。

 これまでは力をセーブして自分の力だけを使っていたが、黒幕がクロノスと分かったからこそ今はゼウスの力も解放しているに違いない。

 ペルソナとして取り込んだのか、それとも蛇神に喰わせて性質だけ得たのかは分からない。

 だが、クロノスを相手にするにあたって、これ以上の切り札は存在しない。

 湊の中に感じていた別の気配。そして、湊に抱いた底知れぬ恐怖の正体を善はようやく理解した。

 

「君がこの世界に来たとき、既に私の運命は決まっていたんだな……」

 

 怒りのままに彼がその力を振るうのであれば、己と半身が生き残ることはあり得ない。クロノスにとってゼウスはまさしく天敵なのだから。

 そう。自分が死ぬという運命は変えられない。ならば、せめて玲に何かを伝えてから死ぬことにしよう。

 そう考えた善は敵を殺しつづける彼の背中を追いながら少女に伝える言葉を考えるのだった。

 

 

 




補足説明

 湊が取り込んでいるゼウスは、ペルソナQにおいてエリザベスの依頼をこなすことで戦えた裏ボスと同一のもの。
 ゲーム内では宝珠を集めて世界に小さな穴を空けて呼び込んだが、本作では湊が世界の外からやってきたため、その時点で湊とゼウスは出会って戦闘になり勝者が敗者を取り込んでいる。

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