【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百四十六話 錬金術師の祖

影時間――港区

 

 獅子型のシャドウが飛びかかってくるのに合せ、ラビリスは戦斧を振るって敵を屠る。

 続けてマーヤ数体が集まってくると、後退しながらアリアドネの赤い糸で形作った闘牛の突進で蹴散らした。

 けれど、息をつく暇もなく上空から数体の鳥型シャドウが襲いかかってきた。

 

「アオーンッ!!」

 

 ラビリスがそれに狙いをつけて戦斧の銃機構を使おうとすれば、コロマルの呼び出したケルベロスが間に入って炎で敵を飲み込む。

 離れていても熱気を感じるほどの高温だ。直撃を受ければ無事に済む訳がない。

 ケルベロスが炎を止めるとそこに敵の姿はなく、横から襲いかかってきた騎士型のシャドウの攻撃を躱し、コロマルが敵の身体を足場に接近すると喉元を切り裂いて一撃離脱する。

 タフな相手はそれだけでは倒れなかったが、順平が連撃とばかりに大剣で切りつければ黒い靄になって消滅した。

 黒い騎士を倒せば今度は巨大なカブトムシが空を飛びながら三体やって来る。

 狙いを付けたチドリのヘカテーが風の刃を放ち、敵が落下してきたところにラビリスが戦斧で攻撃を加える。

 

「くそっ、どんだけいるんだよ!?」

 

 いくら倒しても減らぬシャドウに、首の汗を手で拭った順平が悪態を吐く。

 アイギスがこの場を離れてから少しして、シャドウの大軍が押し寄せてきた。

 ストレガたちがあげた信号弾のようなものがトリガーで、よくもまぁこんなに集まったものだという数が地上と空の二面からやってきた。

 空は既にシャドウで出来た黒い雲に覆われて月も見えず、地上部隊とでも言えばいいのか、どこからか走ってきたシャドウたちで道路は埋め尽くされている。

 チドリたちは何とか背中合わせのように戦って自分たちの居場所を確保しているが、全ての敵を倒しきる前に体力と精神力が切れるのは明らか。

 新たにやってきたテーブル型のシャドウをヘルメスの炎弾で焼き、道化師型のシャドウたちをヘカテーの氷槍で貫いてゆく。

 三人と一匹は近くに固まる事で一度に襲ってくる敵の数をコントロールし、お互いにフォローする事で大きな怪我を負うことなく済んでいる。

 しかし、全くダメージを負っていない訳ではなく、それぞれ僅かながら擦り傷や切り傷から出血もしていた。

 

「アイギスたちからの救援はまだなのか?!」

「タルタロスの方からもシャドウの反応を感じるわ。向こうも同じ状況かも知れないわねっ」

 

 近付いて来たマーヤをハンドアックスで切り飛ばしながらチドリは答える。

 別働隊がシャドウを誘導させるものを持っていたのだから、本隊が同一の装備を持っていてもおかしくない。

 単純な強さならば一度死んだチドリがトップだが、向こうにはアイギスも含めペルソナが進化した者が四人に加えてワイルドの七歌もいる。

 タルタロスからシャドウが溢れてくるとすれば面倒だが、そう簡単に落ちることはないだろう。

 ただ、七歌たちもこちらと同じように多数のシャドウに足止めされているとすれば、向こうも撤退すら厳しい状況だと思われる。

 そんな状態で応援に駆けつけることなど出来るはずもない。

 どうにかこの場から逃げる方法はないかとチドリが敵を倒しながら頭を働かせていれば、高速で接近する強大なシャドウ反応を感知した。

 その反応には覚えがある。以前、ゆかりたちが特別課外活動部に前、美鶴たちだけが在籍していたときに真田が重傷を負わされた大型シャドウだ。

 

「アルカナシャドウ級の強いやつがくる!」

 

 叫ぶように警戒を促しながら、チドリが敵のやってくる方へと視線を向ける。

 高層ビルの横を黒い翼を広げて通り過ぎ、真っ直ぐチドリたちの許を目指して接近してくるそれは、片腕が刀のような形状をした異形のシャドウ。

 古来より語られる悪魔の姿に酷似したシャドウに、チドリが呼び出したヘカテーは瞬時に繰り出せる最大の威力で熱線を放つ。

 間にいた鳥型シャドウたちは溶けるように消滅し、レーザーのように真っ直ぐ進んだ攻撃はしっかりと悪魔型シャドウへ到達する。

 刑死者のアルカナシャドウを屠った時ほどの威力はないが、直撃したなら刈り取る者だろうと無事に済むはずがない。

 

「攻撃を切り裂いてるっ!?」

 

 だが、悪魔型シャドウは刀のような形状をした右手を前に掲げ、ヘカテーの放った熱線を切り裂きながら進んでいた。

 火炎無効の耐性を持っているのか、それとも異常なタフネスと切れ味で耐えられているのか。

 どちらにせよ明らかに通常のシャドウとは異なる強さを持つ相手が来るのは拙い。

 炎でダメなら氷で対処しようと氷刃の弾幕を放とうとすれば、別の方向から巨大なペルソナ反応を感知する。

 全長三〇メートル。巨大な蛇の足を持つ赤銅色の肌をした男性型ペルソナ“テュポーン”。

 厄介な敵がやってくるタイミングに合わせて攻撃を仕掛けて来た事に、敵の性格の悪さを感じる。

 

「チドリちゃん、ストレガも来おった!」

「分かってる! けど、悪魔型シャドウももう来るのよ!」

 

 反応の強さで言えば悪魔型シャドウの方が上。

 つまり、純粋なレベルで言えばシャドウの方が脅威と言える。

 しかし、テュポーンはその大きさ自体が武器であり、生半可な事ではその拳一つであっても止めることが出来ない。

 近くのビルの屋上に現われたテュポーンは、悪魔型シャドウとほぼ同時になるように攻撃を仕掛けてくるらしい。

 ならばとチドリが氷刃の弾幕の範囲を狭め、悪魔型シャドウの接近を遅らせてタイミングを外そうとする。

 だが、悪魔型シャドウが甲高い奇声を上げながら氷刃を無視して突っ込んできた。

 

「おい、でかいやつもくるぞ!」

 

 悪魔型シャドウが止まらずやってくると分かったのか、テュポーンも拳を引き絞りながら構わずやってくる。

 あんなものが来れば道路に拳を叩き込むだけでチドリたちの陣形は崩れる。

 シャドウも、敵のペルソナも、どちらも無視出来ないが止める手段が思い浮かばない。

 相手との距離は二〇〇メートルも残っていない。どうする。どうすればいい。仲間の危機に対しての焦りが少女の思考を邪魔した。

 すると、その時チドリの身体から水色の光が立ち上る。

 彼女はヘカテーを召喚していない。一体何がと頭上に視線を送れば、既に力を溜めたタナトスが悪魔型シャドウに向けて紫電を放った。

 ヘカテーの放った熱線よりも細いが、籠められたエネルギーが桁違いなのは雰囲気で理解出来た。

 敵もそれに気付いたのかすぐに回避行動に移って接近が一時的に止まる。

 続けて、タナトスは剣を持って飛び立つとテュポーンの拳にそれをぶつけ、お互いに大きく後方へと吹き飛んでゆく。

 五倍以上の体格差があって尚、互角のパワーを持っているのかと純粋にその強さに少女は感心する。

 

「ありがとう、八雲……」

 

 後退したタナトスは空中でブレーキを掛けるように停止すると、再びテュポーンに向けて飛び出し攻撃を仕掛ける。

 弾かれただけのテュポーンも余裕があるらしく、フィジカルと潜在値で互いに規格外なペルソナが戦いを始めた。

 優先度の高い脅威をタナトスが抑えてくれているなら、残るもう一体と他のシャドウをチドリたちで相手すればいい。

 悪魔型シャドウもタナトスがテュポーンに掛かりきりだと分かると、再度向かってきているのが見える。

 

「タナトスがテュポーンを抑えてる間にあいつを倒す」

「分かった。けど、あいつ前に湊君がアザゼルで戦ったやつやろ? アルカナシャドウより厄介やな」

 

 ラビリスも相手と同一種のシャドウがいた事を覚えていたらしく、速い上に知能が高いから厄介だと苦い顔をする。

 話している間も、テーブル型シャドウやマーヤの群れがやって来ており、そんな者たちの相手をしながらアルカナシャドウ級を倒すなど無謀に近い。

 それでもせめて逃げるにしてもこの包囲網を離脱するだけの隙を作る必要がある。

 エネルギー残量を気にしながらも、ここで一度周りを一掃しようとヘカテーが周囲に強力な電撃を飛ばす。

 電撃を耐えた相手や、効いていない様子の敵を順平とコロマルですぐに攻撃。

 二人が遊撃に出れば、ラビリス一人でチドリの背面を守る形になっているため負担は大きいが、悪魔型シャドウを倒すにはチドリが一度フリーになる必要がある。

 そうして、仲間のおかげでチドリの手が僅かな時間だけあけば、先ほどよりも力を溜めた一撃を準備してやってくる悪魔型シャドウに狙いを定める。

 単発では回避される可能性があるが、弾幕だと攻めきれないかもしれない。

 だから、彼女はその間を狙うことにした。

 

「ヘカテー、撃って!」

 

 大きな紫色の光の玉を作っていたヘカテーが杖を振るった。

 すると、紫色の光の玉は六条の光線となって悪魔型シャドウへと向かって行く。

 一撃としては先ほどの熱線よりも劣るものの、力を溜めた分だけ差はそれほどない。

 それを敵を包囲するため六条放つことで、チドリは外すことと威力不足二つのリスクを回避しようとした。

 悪魔型シャドウも切り払うのは難しいと考えたのだろう。咄嗟に避けようとしたが、僅かに広がるように配置した光は敵の身体を掠める。

 一撃当たれば体勢も僅かに崩れる。そこへ先ほどと同程度ではあるが追撃を放ち、崩れた体勢では対処出来なかったのか悪魔型シャドウはその速さが徒となって自ら光線へと飛ぶ込む形になった。

 

「ナイス、チドリちゃんっ」

 

 タナトスがテュポーンを抑えているうちに何とか強敵の排除に成功する。

 それを見ていたラビリスは短くチドリを褒めて、正面にいるカブトムシ型のシャドウを切りつけた。

 強敵が一体減れば少しは余裕も出る。

 チドリはタナトスを援護してテュポーンを倒そうと思った時、

 

「あぶねぇっ!!」

 

 そう叫んだ順平にチドリは突き飛ばされた。

 硬い道路に不完全な受け身で倒れる事を避けるため、咄嗟にだがチドリは受け身を取る体勢で倒れてゆく。

 ただ、一体何がと倒れていく間に自分が先ほどまでいた場所を見れば、自分を突き飛ばした順平の腹部から黒い刃が突き出ていた。

 見れば、それは今にも消えゆこうとしていた先ほどの悪魔型シャドウの腕だ。

 あの攻撃を受けても即座には消滅せず、身体の一部だけでも飛ばして攻撃してきたらしい。

 順平の腹部を背中側から貫いた刃はシャドウ本体が消滅した事で消えてゆく。

 瞬間、順平の傷口を塞ぐものがなくなり、真っ赤たちが溢れ出した。

 

「ワンッ!!」

「順平君っ!?」

 

 仲間が倒れたことに気付いてコロマルとラビリスも声をあげる。

 だが、シャドウに囲まれている状態で駆け寄る訳にもいかず、二人は心配しながらもシャドウと戦い続ける。

 唯一人シャドウと戦っていない状態のチドリが順平の所へ行けば、順平は青い顔で少しだけ笑っていた。

 

「あー……マジいてぇ。けど、間に合って、よかったわ……」

「なんで、こんな……」

「ほら、まぁ、有里と約束、したからな……」

 

 チドリを頼む。その約束を果たすために順平はチドリをずっと気に掛けていた。

 以前、夏頃に彼女に相談し、適当ながらも助言を貰った事に恩を感じていたというのもある。

 だが、何よりも彼が恐れたのは、仲間がまた死んでしまう事だった。

 チドリが死んだ時、最も傍にいたのは順平だった。

 死んでいく彼女に何も出来ず、蘇生はされたが代わりに湊が命を落とした。

 もしも、自分が敵の攻撃に気付いてフォロー出来ていれば、チドリは死なず湊が命を捧げる必要もなかった。

 その思いがずっと胸の奥にあったからこそ、今度こそ仲間を死なせないと彼は動くことが出来た。

 

「あなたが、それで死んじゃ意味ないでしょ」

「ほんと、な。けど、すげーねむい、わ……」

 

 血を失って意識が朦朧としているのか、順平は目を閉じて力なく話す。

 チドリが手で押さえても血は流れ続け、このままでは順平は間違いなく死ぬ。

 だが、治療しようにもこの場に回復魔法を使える者はいない。

 全てはチドリの油断が招いた事。腕一本、本体が消滅し、そこまで反応が小さくなると探知するのも難しいのだが、少女がしっかりと敵から目を離さなければ避けられたかもしれない。

 無論、一方に集中しすぎれば他の方向からシャドウが襲ってくるため、一方ばかりに気を割いてもいられないのだが、自分を庇って順平が死にそうになっている状況で考えても意味はない。

 

「チドリちゃん、順平君は?!」

 

 ラビリスも順平が血を流しながら倒れた事は見ていた。

 だからこそ、怪我の程度が知りたいのだろうが、知ったところでこの場に治療出来る人間はいない。

 聞いた本人もその事は分かっているのだろうが、仲間が無事かどうか気になって戦えないのは困るため、チドリは意識を集中させながら答えた。

 

「このままだと死ぬ。でも、助けるわ。絶対に……」

 

 回復魔法は使えない。

 背中から腹部まで貫通している重傷。

 だが、まだ生きている。

 それならチドリにも助ける方法はあった。

 

「……ごめんなさい。色々と付き合わせて。八雲との約束は十分果たしてくれたわ。だから、あなたは生きなさい」

 

 言いながら順平の傷口に当てたチドリの手から蛍火色の光が溢れ出す。

 戦いながら彼女たちの方を見ていたラビリスは、それが何を意味しているのかすぐに分かった。

 

「アカン、チドリちゃん! それじゃあチドリちゃんも!」

 

 その光は湊が為した反魂の術と同一のもの。

 つまり、今チドリの手から溢れているのは命の光。

 彼女も同じように生命力の放出が出来るとは聞いていたが、その力は湊には及ばない。

 しかし、即死だったチドリの時と異なり、順平は血を失っているが生きていて傷を塞ぐだけで何とか助かるかもしれない。

 チドリはその可能性に賭けて、順平の命を繋ぐために自分の命を分け与えた。

 光を与えるにつれてチドリの顔から血の気が失せてゆく。体温も低下し、呼吸も弱々しくなっていくが、分け与えられた順平の方は傷が塞がって顔色が良くなっていた。

 相手を助けられたことにチドリは安堵する。

 もしかすると、湊も自分を助けた時には同じように思ったのだろうか。

 そんな事を想いながらチドリは静かに倒れた。

 

 ***

 

 自分が戦場のど真ん中にいる事を思い出し、順平は意識を取り戻すとすぐに起き上がった。

 

「敵はっ!?」

 

 見ればまだラビリスとコロマルは戦っており、タナトスも身体から淡い光を漏れ出しながらもシャドウを屠りつつテュポーンの相手をしていた。

 仲間が戦っているのに気を失うなんて情けない。そう思って自分もすぐに戦おうとしたとき、足下に少女が倒れているのが見えた。

 

「は? ……え?」

 

 どうして少女が倒れているのかと順平は考える。

 顔の血色が悪く、暗いこともあって死んでいるようにも見えてしまう。

 心配しながらも怖々触れてみれば、相手の身体は常人よりも冷たくなっていた。

 氷のように冷たい訳ではない。ただ、明らかに体温が低いことだけは断言出来る。

 どうして、意識を失った自分の傍でそんな彼女が倒れているのか。

 違式を失う直前の事を思い出そうとし、はっとして彼は血で汚れたシャツに触れた。

 

「傷が、塞がってる……」

 

 この場にいる仲間で回復魔法が使える者はいない。

 死んだように倒れているチドリ、塞がった自分の傷。

 そして、消耗したはずの力が自分の内から溢れそうなほど回復している。

 あの日の夜のこと、進化したチドリの力、それらを見ていた順平は何があったのかを理解してしまった。

 

「な、んで、なんで弱いやつ助けて倒れてんだよ……。普通、どう考えても、強いお前の方が生き残るべきじゃねーか!」

 

 自分のせいで仲間が倒れた。その事を考えるだけで怖さに震えて動けなくなる。

 しかし、そんな意思とは逆に順平は溢れそうな力に全身が熱くなっているのを感じていた。

 一人倒れても、まだまだ敵はやってくる。空は覆われ、道路は遙か先まで蠢く敵で地面が見えない。

 ただ平和のために化け物と戦っていただけなのに、自分たちと同じ人間がその邪魔をして自分たちを殺そうとしている。

 これでは何のために戦っていたのか分からない。

 

「チクショウ、なんで、なんでだよっ!!」

 

 召喚器を抜いて順平はそれをこめかみに当てる。

 全身が燃えるように熱い。怒りだけではない。少女が残した力が順平の中で暴れているのだ。

 ならば、共に暴れよう。理不尽に屈するつもりはない。

 足掻いて、生き残って、そして、チドリを病院へと連れて行く。

 だから力を貸せと新たに目覚めた力を呼んだ。

 

「来い、トリスメギストス!!」

 

 暴れる炎と共に現われたのは、ヘルメスと酷似した全身を赤と金の鎧で覆った男性型のペルソナ。

 鳥を思わせるヘルムの嘴の所には、赤い宝石、賢者の石が咥えられている。

 錬金術の祖、偉大なる賢者。そう語られる存在は彼の持つ“魔術師”のアルカナに相応しいと言えるだろう。

 召喚して尚、奥底から力が溢れてくるのを感じた順平は、まずはお前だと邪魔なテュポーンに狙いを付ける。

 

「死にてぇなら一人で死ね! オレたちの邪魔をすんじゃねー!!」

 

 トリスメギストスの咥える賢者の石に光が集まり、その頭上に光球が現われる。

 元々、炎の力を持っていた順平に、同じく元は炎の力を持っていたチドリの力が合わさって生まれたのがトリスメギストスだ。

 ならば、当然、その力は炎に特化している。

 赤を超えて、白に近い輝きを持った高温の炎は、順平が定めた狙い通りに光線となって放たれる。

 交戦してたタナトスは咄嗟に避け、巨体が災いして素早く動けないテュポーンは直撃した。

 テュポーンは自らも火を吐く嵐の化身とされ、炎にも耐性を持っていたが、タナトスとの戦闘に加え、大幅に強化されたトリスメギストスの炎の威力が耐久力を上回り消滅してゆく。

 テュポーンは強力なペルソナ故に、一度の消滅で消耗するエネルギーが激しい。

 そう何度も呼び出せる存在ではないため、しばらくは休んでいることだろう。

 

「まだだ。こんなところで終われねぇ。絶対に生き残ってやるっ」

 

 自分たちが倒れている間も守って戦ってくれていたラビリスとコロマルはかなり消耗している。

 タナトスも身体から光が漏れ出していつ完全に消えるか分からない。

 順平も傷は塞がったが失った血は戻っていない。

 そして、チドリは体温も下がり始め、いつ死んでもおかしくない。

 仲間の応援も期待出来ず、状況はまさに絶望的。

 しかし、絶対に諦めてだけはやるものかと順平はシャドウたちと戦った。

 


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