【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第三百九十六話 少年の意地

12月19日(土)

影時間――タルタロス・230F

 

 黒いコートの裾をはためかせながら両手に二振りの刀を持った青年が走る。

 野生の狼に匹敵する速度を出していながら、ブーツで地面を蹴る音が一切しない異様な光景。

 そんな彼の走る通路の先には、宙に浮いたサイコロ型のシャドウ・運命“シルバーダイス”が三体待ち構えている。

 敵は全ての物理攻撃に対して無効耐性を持っており、他の魔法属性も光と闇以外は特に弱点も持っていない。

 タルタロスの高層エリアにいるだけあって、この辺りにいるシャドウはどれも似たような強さを持っているが、相手のステータスをアナライズで既に調べてある青年は敵の耐性を理解していながら構わず進む。

 すると、シャドウたちも接近してくる湊の存在に気付いたようで、半球状の頭部を向けて視界に捉えると、三体同時に力を溜めて通路の隙間を埋め合うようにギガントフィストを放って来た。

 以前見たアテナのゴッドハンドであれば一発で通路を埋め尽くしていたが、それの下位スキルであるギガントフィストは二回りほど小さいのでどうしても隙間が出来る。

 それをほとんど三体同時に放つ事で逃げ場がないよう工夫したらしい。

 エリアボスですらないただのシャドウが高度な知能を有している事は非常に驚くべき事だ。

 最上級スキルではないため発動も速く、同じ速度で発動しようと敵の攻撃は三発あるのでステータスに相当な開きがないと相殺しきれない。

 逃げ場のない通路で出会えば実に厄介な相手だと思うところだが、湊は瞳を蒼くすると迫る鈍色の拳に向けて連続で刀を振り下ろす。

 視界に映る赤白い光の疵に向け振り下ろした右手の刀で一つ目を霧散させ、左手の刀で二発目の側面にある疵を撫でるようにして掻き消す。そして、最後の三つ目に向けて振り下ろしていた右手の刀でそのまま突きを放ち。三発のスキルは全て消え去った。

 走る速度をほとんど緩めず、常人では視認不可能な速度で攻撃を放ったため、敵からすれば攻撃が相手と接触する直前にかき消えたように見えた事だろう。

 予想外、理解出来ない現象を前にしてシャドウの反応が遅れれば、湊がその間に距離を詰めて強く握り込んだ事で青白い光を纏った刀を振り下ろす。

 存在の寿命を殺すソレは一撃一撃が必殺。敵の無効耐性を完全に無視して瞬く間に三体のシャドウを屠った。

 敵がいた場所にはドロップしたパールだけが残っている。

 外に持ち出せばそれなりの価値を持つ宝石だが、青年にとっては大した価値を持たない石ころと変わらぬものだ。

 故に、湊はそれらを一瞥もせず新たな敵の許へと足を進める。

 

(……徐々に増えているな。タカヤたちもおかしな事を始めたようだし、世の中の人間は随分と手軽な救いを求めているらしい)

 

 次々と現われるシャドウたちを狩りながら湊は原因を思って内心で溜息を吐く。

 前回の話し合いから約一週間経っているが特別課外活動部やチドリたちは未だ悩んでいるのかタルタロスを訪れない。

 高等部では今日まで期末試験があるのも関係しているのかもしれないが、それはむしろ彼女たちに戦いから離れるための理由を与えているだけだ。

 全員が今のままではダメだと分かっている。

 これ以上は戦えないと穏やかな最後を求めるか、自分が死ぬという結末を聞かされて尚戦う意思を持てるか。

 彼女たちが考えるべきはそれだけだ。

 戦う理由に湊の事を考えるのはいいが、逃げない理由に彼の事を考えるべきではない。

 湊はそれが必要な事であれば親しい人間や友人であっても殺せる。

 心の内で何を思うかは別にして、英恵とチドリを人質に取られ『片方を殺せば、もう片方を生かす』と言われれば躊躇わずに銃口を向けて引き金を引けるのだ。

 だから、湊に友達を殺させたくないと考えるのはいい。しかし、綾時を殺させたくないから戦う事を選ぶというのは誰のためにもならない選択の放棄と言えた。

 

(……今日で期末考査も終わる。あいつらもそろそろ考える事に飽きた頃だろう。まぁ、どちらを選ぼうがどうでもいいが)

 

 感情の籠もらない冷たい瞳で牛人型のシャドウを見つめ、大振りな敵の腕を躱しながら背後に回り込み、湊は飛び上がって敵の頭を切り落とす。

 頭を失ったシャドウは黒い靄となって霧散して行くが、着地した湊は柱同士の間に壁がなく外を眺められるタルタロスの通路で欠けた月を見つめ立ち止まった。

 湊はあの日好きに選べばいいと言い残して立ち去った。

 その言葉があったからこそ、他の者たちは余計に悩む事になったのだろうが、どっちを選んでも構わないという湊の言葉は本心だった。

 何せ、彼女たちがどう思おうと湊自身はニュクスを倒すつもりでいるのだから。

 確かにニュクスは殺せない。普通にやればそもそも戦いのステージに立つ事すら出来ない。

 その点、湊はベアトリーチェの力を借りれば敵と対峙する事が可能だ。

 どうやれば勝てるのかなどの方法はまだ思い付いていないが、戦えるのなら可能性だけは残っている。

 他の者たちはそこについて来られない。まともに立っている事も出来ない人間など付いてきたところで邪魔でしかない。

 であれば、湊にすれば他の者たちがどちらを選ぼうが関係なかった。

 ニュクスが降臨する日まで記憶があろうが、全てを忘れてニュクス降臨の時期が延びようが、敵と対峙するのは自分だけなのだから。

 そうして、月を眺めていた湊は持っていた刀を腰の鞘に納めると、今日はこれくらいで良いだろうとタルタロスの縁に立って床を蹴って飛び出すとセイヴァーを呼び出した。

 彼の背後に現われた天使は、そのまま彼を支えると空中に開いたゲートを潜って転移する。

 蛍火色の火の粉が舞って消えれば、その場に青年がいた痕跡は残っていなかった。

 

 

放課後――月光館学園

 

 午前中の内に最後のテストが終わると、ホームルームで担任教師の鳥海が二、三連絡事項を述べて昼に解散となった。

 世間では無気力症が増えている。この学園の生徒も何人かそれで休んでおり、中等部では教師まで学校に来れなくなったのだとか。

 そんな話を聞いてもどこか上の空だった順平は、帰るために荷物をまとめているとふと視線を前の方の席に向ける。

 綾時が来なくなってから誰も座る事のない席はどこか寂しい印象を受ける。

 彼は親の仕事の都合で実家のある海外に一時的に戻っている事になっているが、それはあくまで湊がその様に手配したに過ぎない。

 自身の正体を明かした綾時は大晦日に答えを聞きにやって来ると言っていた。そして、その日の二十四時を迎えれば影時間に還りあちら側の存在に戻るのだとも。

 その期間は既に冬休みに入っている。部室はともかく各クラスの教室は施錠されているので、彼の席は冬休み明けには撤去される事だろう。

 確かにいたはずなのに、状況の変化でまるで最初からいなかったかのようになってしまうのはとても寂しく思えた。

 自分が忘れる側であれば何も気にする事はないだろう。無責任に思えるが忘れた以上はどうしようもない。

 しかし、自分がその忘れられる側であればどうだろうか。

 順平は無意識に“選択”の事を考えそうになって頭を振ると、荷物を詰め終わったリュックを背負って立ち上がる。

 すると、同じタイミングで立ち上がった友近が順平の方へ視線を向け、どこか開放感に溢れた笑顔を見せて声をかけてきた。

 

「おう、伊織。帰りにラーメン食っていかね? テストお疲れさま的な感じでさ」

「あー……そう、だな。帰ってもカップ麺だしどうせなら食ってくか」

 

 こんな時にまともに飯なんて食えるかと内心では思っている。

 ただ、人間は結構図太いようで二週間もあると気分は落ち込んだままでも食事は普通に食べられるようになっていた。

 友近に話した通り帰ってもどうせカップラーメンを食べるだけ。それならば、友達と一緒にラーメンを食べに行った方が気分も紛れる事だろう。

 了承した順平は友近と一緒に教室を出て階段を下りて生徒玄関を目指す。

 他のやつも誘うかと聞かれたが、よくつるんでいる宮本は部活解禁だからとすぐに部室へ行ったようなので、今日はこの二人だけで良いだろうという事になった。

 

「んで、伊織は今回どうだったよ?」

「ん? なにが?」

「テストに決まってるだろ。ちゃんと勉強したか?」

「……いや、今回はなんか集中出来なくてな。赤点回避がギリギリかもしれん」

 

 中等部や高等部一年の時は湊に勉強を教わって、何とか全体の真ん中辺りの順位になる事が出来ていた。

 そのおかげで彼に教わって以降はいくらかマシな成績をキープ出来ていたのだが、今回は湊に教わる事など出来ず、さらにまるで集中出来ていなかった事もあって提出課題をこなすのが精一杯だった。

 もっとも、昔の順平の事を知っていれば、提出課題を自主的に完成させるだけでもかなりの進歩と言える。

 転校してきたばかりの順平を知っている友近は、付き合いの長さもあって遠慮のない辛辣な言葉でツッコミを入れてきた。

 

「お前それ中間テストの時も似たような事言ってただろ。あんときは有里君のゴタゴタもあったから分かるけど、今回は何もなかったのに何してるんだよ?」

「うっせ。こっちも色々と考えるお年頃なんだよ」

「ばーか。十日もすれば年明けて、そしたら俺らも受験生だぞ? 伊織が進学か就職かは知らないけど、高卒にしたって桐条グループ傘下の進学校出身ならそこそこ良いとこもいけるんだ。ここで手を抜いたらしんどいのは自分だぞ」

 

 最近では大学進学も当たり前になってきており、大手や有名企業では四年制大学卒か短大卒を応募条件にしている場合もある。

 その点で言えば高卒就職はスタートからかなり不利なのだが、幸いな事に月光館学園は全国でも有数の有名進学私立として認識されていた。

 順平は中等部から所属していた事でエスカレーター式に進学出来ただけで、もし、高等部から入学しようとすれば十三倍を超える倍率の高難度入試を突破しなければならなかった。

 無論、毎年そんな馬鹿みたいな高倍率になっている訳ではない。

 順平たちが高等部に上がるときには世の中が“籠球皇子ブーム”で、湊が新入生代表として高等部に進学するという情報が流出していたため、ミーハーなファンや彼の宣伝効果を計算に入れて学歴狙いに入学しようとした者が押し寄せてしまっただけだ。

 実際、湊たちの一つ後輩に当たるその次の年は倍率八倍程度に落ち着いたため、今後も徐々に減少していくと思われる。

 だが、順平たちの学年は世の中に有里世代と認識されるのだから、就職するなら話題としてそれを活かし、進学するなら当然ながら自分で勉強を頑張っていくしかない。

 ふざけているようでキッチリと公私を分けるタイプの友近が言えば、順平はそんな未来の事なんて今考えてられないんだよなと心の中で苦笑し、階段を下りて一階に到着した。

 生徒玄関はこれから帰る生徒たちで溢れかえっており、自分たちの靴箱に辿り着くのも一苦労だ。

 けれど、ある程度は慣れているためか流れに逆らわずに進んでいけば、二年生の靴箱の置かれているエリアに近付いたところで目立つ青年の後ろ姿を発見する。

 あれから彼とは一度も言葉を交わしておらず、八つ当たりしてしまった事を謝らなければと思っていた順平はドクンと心臓が強く跳ねた錯覚を覚える。

 今、彼の周りには彼を慕う少女たちの姿はない。実に珍しい状況で話しかけるなら絶好のタイミングだ。

 順平も死への恐怖から余裕がなくなった事で八つ当たりしてしまっただけで、本気で彼に全ての責任を取れなどと思っていた訳ではない。

 アイギス本人も言っていたが、あくまで彼は被害者なのだ。

 全ての責任は桐条グループにあって、アイギスが彼を封印の器に使ったのは他に方法がなくての緊急措置。

 デスやニュクスの存在を知っていた事に関しては思うところもあるものの、デスである綾時が言っていた事が真実ならば、十年前の実験が行なわれた時点で滅びの訪れは決まっていた事になる。

 湊のせいじゃない。彼に責任はない。だから、謝らなければと震える足を無理矢理に動かし、傍にいるはずの友近の声が遠くなっていき、近付いていった順平は靴を履き替えている湊に声をかけた。

 

「あ、有里!」

 

 声が震えて上ずってしまうも、何とかちゃんと名前を呼べた事に順平はまず安堵する。

 それなりの音量で声をかけたので聞こえているはずだが、湊は靴をしっかりと履き替えてからゆっくりと振り返った。

 相手の顔を見て順平はまたあの瞳だという考えが頭を過ぎる。

 日本人だけでなく世界でも珍しいであろう不思議な輝きを持つ金色の瞳。

 どこか吸い込まれそうになる感覚を覚えるそれからは、やはり何の感情も読み取る事が出来ない。

 何も映していない訳ではないのだろう。けれど、順平はそこに感情に由来する熱が一切感じられなかった。

 今の湊が向けてくる瞳に比べれば、機械であるカメラの方が“人に作られた”という事でまだ熱を感じる。

 そう。彼の瞳は冷たいのだ。自分に対して欠片の関心もなく、そこにいて何をしようが気にしていない。

 存在を知覚していながら認知していないかのような違和感。彼の瞳を見ていると不安になってくるのは、きっと自分の存在を否定されている気分になるからだろう。

 心の奥深くで濁った感情が湧き上がりそうになるのを押さえつけながら、順平はこちらを見ている青年に改めて声をかけた。

 

「えっと、その、この前の事なんだけど……や、八つ当たりして悪かった。別に、本当はお前を責めるつもりじゃなかったんだ。ただ、余裕がなくて、そんでお前に当たっちまった。本当に悪かった」

「……そうか」

 

 伝えたい事はしっかり伝えて順平は深く頭を下げる。

 周りには大勢の生徒たちがいて、ただでさえ目立つ湊に頭を下げているせいで余計に目立っているだろうが順平は気にしない。

 いや、そんな周りの目など気にしていられる余裕がないと言った方が正しいのだが、頭を下げたままの順平から謝罪の言葉を受けた青年は、短い言葉を残してその場から立ち去ってしまった。

 雰囲気からすれば謝罪を受け入れてくれたようだが、実際に彼と相対していた順平が感じた印象は全く異なっている。

 そうして、去って行った彼の背中を見つめていれば、突然の行動に驚いていた友近がやってきて順平の肩を掴んだ。

 

「お前、また何かしたのか? 有里君に迷惑かけるのもいい加減にしとけよ。終いには殴られるぞ」

「……正直、その方がいいぜ。あいつ、欠片もこっち見てなかっただろ」

「はぁ? お前が謝って、なんか分からないけど許してくれてたっぽかっただろ?」

 

 友近からすれば湊は普段通りに寛容な態度で許してくれていたように思えた。

 だが、実際に彼と話した順平からすれば、そもそも彼は何の感情も自分に向けていなかったように思えた。

 自分の知り合いは勿論の事、赤の他人とだっていざこざがあれば僅かながらでも感情に波が起きるはず。

 順平などこの一週間は湊への罪悪感、言ってしまった自分への自己嫌悪、そして滅びに対する恐怖でずっと頭を悩ませていた。

 湊も湊できっと自分に言われた事を気にして、押し付けられた責任を果たそうとしているに違いないと思っていたのに、先ほどの会話だけでそうではなかったと察した。

 

「……“どうでもいい”か」

 

 度々彼が口にしていた言葉を思い出す。

 彼の心の内を表わす言葉として最も適しているのは恐らくこれだ。

 最初から湊は誰の事も見ていない。あの日の話し合いでも話の輪に加わらないでいる事が気になったが、今ならそれも当然のように思えてしまう。

 立場が異なるからそうなったのか、それとも役割に徹して目的を果たす機械であろうとしているのか。

 もしも後者であれば、死に怯える形だろうと“自由”のある自分の方がずっとマシだと順平は考える。

 彼の今までを見てきた大人たちは、湊はずっとチドリやアイギスのために生きていると言っていた。

 他人のために自分の命を躊躇わず使うような人間だ。蘇り戻ってきた今もきっとそこは変わっていない。

 何とかしろと順平が言ったとき、彼は分かっていると答えた。

 つまりはそういう事なのだろう。

 

「……オレたちがどっちを選ぼうと関係ないってか」

 

 湊は少女たちに願われようと目的のためには止まらない。

 どんな手段を使っても、何を犠牲にしてでも、彼は滅びを回避して少女たちの命を存続させるつもりだ。

 そこまで他人のために頑張れる事を順平は素直にすごいと思う。ただ、彼以外には絶対に出来ないとも確信出来る。

 何せ湊のそれは人としての生き方ではない。そも、自分の生に一切の執着を持っていない。

 死んで目的が達成出来るなら躊躇いなく死に、生き続ける事で目的が叶うなら禁忌に手を染めてでも生き続けるだろう。

 人の環から外れた存在だからこそ、彼は他人に忘れられようとも目的のため動き続ける気でいる。

 デスを殺しても影時間に関する記憶が世界中の人間から消えるだけで、ニュクスの降臨自体は後に起きる。

 記憶を失わない湊はそうなった時、きっと一人でも戦うつもりだ。

 他の者が一緒だろうと、自分一人だろうと彼の選択は変わらない。

 だから、湊はどっちを選ぼうと構わないと言ったのだと順平は理解した。

 

「……一人でかっこつけてんじゃねぇよ、クソッ」

 

 思わず靴箱に拳をぶつけて順平は言葉を吐き捨てる。

 ああも覚悟の決まった姿を見てしまうと、いつまでも悩んでいる自分が酷く惨めに思えてくるのだ。

 死にたくないなら抗うしかない。最初からそんな事は分かっていた。

 仲間たちだってそれはきっと同じだが、自分が死ぬと言われてそう簡単に吹っ切れる者などほぼいないだろう。

 おかしいのはあちらで、悩んでいる自分たちの方が正常なのは間違いない。

 ただ、どれだけ悩んだって根底にあるのは“死にたくない”“仲間や友達を死なせたくない”という思いなのは変わらない。

 このままでは綾時の言った通りの結末にしかならないと分かっている以上、無駄であろうと結末を変えるため足掻いてやる覚悟を順平も決める。

 残る時間は限られているため、こうしてはいられないと靴を履き替えた順平は後ろにいる友近に向かって大きな声で呼びかけた。

 

「いくぞ、ともちー! 今日は景気付けに大食いチャレンジだっ!!」

「いや、はがくれ行こうぜ。大食いってあれ一歩間違えたら豚の餌だろ」

「ちょっ、オレの決意をいきなり挫こうとすんなよ!?」

 

 急にハイテンションで大食いチャレンジの店に行こうと言われても、友近はラーメン好きでそれなりの拘りを持っている。

 そんな彼からすれば大食いチャレンジは邪道。あれはラーメンの味を楽しむための物ではなく、腹に入ればいいと思っているか、チャレンジする自分が大好きな人間が楽しむだけのものだ。

 故に、そんなものには参加しない。今日ははがくれと決めているんだと友近は順平の言葉を無視して駅へ向かって行く。

 その後を追っていく順平は必死に友近を説得しようとして撃沈するも、その表情には先ほどまでの暗さは一切残っていなかった。

 


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