【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第十四章 -Departure-
第四百七話 決戦までの予定


12月31日(木)

早朝――EP社・研究区画

 

 綾時との戦闘を終えて移動した湊は、研究所に帰ると待機していたシャロンに右腕の手術を依頼した。

 決着がついた時点でソフィアが連絡を入れ、手術の用意をさせていたので待ち時間はほとんど無い。

 ただ、パッと見では一切の怪我がないというのに、服は破れて血に染まり、場所によっては焦げた痕まである事から、彼が相当な無茶をしたことを察したシャロンから手術後に小言があった。

 

「アンタさぁ。そろそろ自分の身を労る事も覚えなよぉ? 私らじゃこういうサポートとか無気力症患者の保護くらいしか出来ないのは分かってるけど、別にアンタの事を心配してない訳じゃないんだからさぁ」

 

 手袋外してゴミ箱に捨て、手術着を脱ぎながらシャロンは手術台から身体を起こす青年に声をかける。

 今回は肩関節から先の右腕の骨を外して、右腕一本丸ごと交換する大手術だった。

 EP社製の簡易補整器の指輪を付け、影時間であろうと対応可能なスタッフを用意していたので、湊の担当医であり幹部でもあるシャロンがいれば突然腕の移植手術をすると言われようと人員的には何の問題もない。

 しかし、月の欠片という未知の素材を骨格として利用した新しい腕を作った事を聞いてはいたが、一流の医者を集めても中々に難しい移植手術を研究所に戻る直前に言われてはスタッフも困惑する。

 湊であればある程度は自前の免疫機能と肉体修復機能で問題ないとは言え、手術に参加するスタッフたちは自分たちの組織のトップに万が一の事態が起これば大変だと重責を感じる。

 加えて、普通の人間であれば何度も死んでいるであろうダメージを負い。大量の血を失った話を聞いてしまえば、いくら相手が湊でも時間を置いてから手術すべきだとスタッフらが思っても無理はない。

 まぁ、そんな彼らの思いを無視して湊はすぐに始めるように指示を出し、毒や薬が効かない体質なせいで麻酔無しで手術を決行した訳だが、三時間ほどで無事に移植を終えた湊はツクヨミの回復スキルで手術跡を消して腕の動きを確かめながら言葉を返した。

 

「まぁ、そういう事も考えておこう」

「素直な返事はいいけど、ちゃんと行動も伴ってくれないとねぇ。歳取ったら分かるけど、二十歳を過ぎたら五歳単位で衰えを自覚し始めるわよ?」

 

 シャロン自身もまだ三十歳ほどで十分に若いのだが、医者だからこそ二十歳頃との違いを明確に理解出来ているのだろう。

 昔は数日徹夜するぐらい問題なかったのに、今では気持ちは保っても身体が付いていかなくなる事をシャロンは丁寧に説明した。

 周りにいるスタッフたちも彼女の言葉に同意するように頷いている事から、大人たちにとっては非常に共感出来ることで彼らも実際に経験しているようだ。

 もっとも、湊は久遠の安寧との戦いで肉体的を二十歳頃まで強制的に成長させている。

 それから何度も時流操作で他の者より圧縮した時間を過してきたので、五年くらいは経っているはずなのだが、彼女たちのいう衰えは一切感じていない。

 むしろ、肉体の全盛期を常に更新し続けているくらいなので、受け取ったタオルで身体を拭きながら湊は自分には共感出来そうにない話だと返す。

 

「……不老の俺には関係の無い話だな。それに影時間の決着まであと一月だ。それが済めば時間も取れるようになる。身体を労るのはそれからでいい」

「ホントに狡い身体よねぇ。お伽噺とかだと太陽がダメだとか水がダメって弱点があるはずなのに、そういうのも無いんでしょ?」

「不老の話なのに吸血鬼のイメージに引っ張られすぎだ。というか、吸血鬼も鬼の字が入っているが百鬼家は日本の鬼で、鬼の一族というのもあくまで他の奴らが呼び始めた名前だからな。伝承の中で真実から遠ざかった存在と実在した神の子孫を同列に語られても困る」

 

 シャロンの不老のイメージは吸血鬼などの所謂妖怪と呼ばれる者たちのようで、物語に出てくるそういった存在は強大な力を持つ反面倒すための弱点が付きものだ。

 湊にはそれらの持つ弱点が存在しないと聞いてはいるものの、鬼の一族と呼ばれている事から何かしらの弱点が実はあるんじゃないかと思ったらしい。

 実際のところ百鬼家にも弱点は存在した。それは九頭龍家に危害を加えられない事、九頭龍家の命に従う事、九頭龍家の人間を守る事。

 あくまで鬼側が一方的に立てた誓約なので、九頭龍家に力があるわけではないのだが、それらがあった事で鬼たちの行動が縛られていた事は事実。

 けれど、湊は混血で生まれた事で血の呪縛から解放され、九頭龍家という唯一の弱点も克服した。

 混血になった時点で始祖と同じ力を取り戻しているので、正確には鬼でも龍でもなく現人神に分類すべきだが、そういった細かな話はどうでもいいと湊は部屋を出て着替えを用意していたソフィアと合流しつつシャロンとの話を続ける。

 

「俺の事はいいが現在の病床数はどうなっている?」

「まだ半分以上余裕はあるけど、今のペースで無気力症患者が増えたら一月が限度ってところかしら。まぁ、その頃には終わってるみたいだし? 最悪、研究所の宿泊所を臨時に使えばもう半月は持つかもってところねぇ」

 

 無気力症患者は今も増え続けている。そのペースは無気力症が流行り始めたとされている四月頃の十倍以上で、範囲も都内から全国に拡がり、さらには海外でも確認されているという。

 影時間は日本時間の午前零時を基準に

 分類上は精神病のはずなのだが、海外のニュースでは脳機能の一部が麻痺するような感染症ではないかとも言われ始めていた。

 そういった誤解については医療シェア世界トップのEP社と、その傘下に一時的に収まっている桐条グループがこれまでの研究データを公開する事で、肉体的には何の異常も無い事を伝えている。

 どこよりも無気力症について研究していると思いながらも、桐条グループはこれまで自分たちの暗部に繋がる情報を広めないために、幹部を除けば情報部やエルゴ研の流れを汲むラボの人間などにしか影時間の存在を伝えていなかった。

 しかし、今はEP社の傘下になった事で外部の協力者を得て、EP社経由でも対処出来るようになっている。

 情報さえ公開出来ればグループ傘下の病院以外でも適切な処置が可能になり、病床の圧迫という問題を除けば混乱は比較的抑える事が出来た。

 もっとも、いくら対処が可能になっても患者が増え続ければいずれ限界も来る。

 湊は桐条グループの病院だけではキャパシティが足りないと判断し、久遠の安寧の幹部たちから奪った私財を投入して馬鹿げた大きさの病院を作ったつもりだった。

 それだというのに、今のペースで患者が増えれば決着の付く一月後まで保つのがやっとらしい。

 別にシャドウの影響を甘く見ていた訳ではない。ただ、どうして流されやすい人間というものはいるようで、世間が暗い雰囲気になっているせいでつられてしまった者が多数いたようだ。

 

「……人の弱さを甘く見ていたかな。面倒な事だ」

「強くても迷惑を掛ける人間もいるし。どっちもどっちだと思うわぁ」

「確かにな。力を持ったせいで桐条グループは馬鹿な行為に走ったし。人自体がろくなものじゃないと思うべきだな」

「訂正するのも面倒だからそれでいいわぁ。んじゃ、私は疲れたから休むわね。アンタも休みなさいよぉ」

 

 シャロンはお前の事だと言いたかったが、夜中からずっと難しい手術をして疲れたのか欠伸を漏らす。

 本日の彼女は遅番なので午後まで寝られる事もあり、一足先に休むからと通路を曲がって研究所内の私室の方へ去って行った。

 湊とソフィアはそれを見送ってから再び通路を直進し、今後の予定について話し合う。

 

「湊様、契約はどうなりましたか?」

「ああ。ちゃんと達成になっていた。これで残るは第二と第四の契約だけだ」

「では、実質一つですね。命の答えを見つける、何とも哲学的な問題です」

 

 湊が四人の女性と結んだ契約も、残るは二つとなっていた。

 チドリとの契約は玖美奈と理が襲撃してきた日に自分の命をチドリに与えて蘇生させた事で達成となり、アイギスとの契約も昨夜の戦いでデスを上回った事で達成扱いとなった。

 残っている契約はエリザベスとマーガレットとそれぞれ結んだ物であるが、エリザベスの契約は契約を果たすまで死なないという物なので、マーガレットと結んだ命の答えを見つけるという契約さえ果たせば自動で達成になる。

 デスが封印されていた事でここまでずれ込んでしまったが、どうにか影時間の問題を片付けるまでに全ての契約を果たせそうな事に湊は安堵する。

 全ての契約を果たせばもうベルベットルームへ行けなくなるのか。それとも、鍵は自分の物だからと遊びに行くことも可能なのか。

 今度ベルベットルームに行った時にでも聞いているかと考えながら、湊も一眠りするためソフィアと共に自分たちの私室へと戻るのだった。

 

 

昼――巌戸台分寮

 

 湊と綾時の戦いから一夜が明け、皆も精神的に疲れた事もあって話し合いは昼からとなった。

 友達同士であった二人が命を奪い合うような戦いをしている姿を見た時には、死力を尽くしてでも止めなければと思ったものだが、邪魔するなと追い払われた時にどうあっても止める事など出来ないと再び己の無力を嘆く結果に終わってしまった。

 それも当然で、湊と綾時は十年前の決着を付けるために本気で戦っていた。

 友達同士が殺し合うなんて間違っているなどと、そんな普通の感情で止めようとしていた七歌たちとは戦いに対する決意の度合いが違ったのだ。

 

「改めて、昨日はごめんね。あの戦いは僕にとっても湊にとっても必要なものだったんだ。だから、間違っていたとは思わない。だけど、心配させた事は確かだからもう一度しっかりと謝罪させて欲しい」

「話は有里のペルソナとソフィアから聞いた。二人は十年共にいたんだ。私たちには分からない君たちなりに納得した上での戦いだったのだと思う。ただ、流石にもう一度というのは勘弁して欲しい。次に何かあれば相談してくれ」

 

 ソファーに座った綾時が皆に頭を下げれば、苦笑しながら美鶴がそこまでの謝罪はもういいと頭を上げさせる。

 昨日の夜、今もここにいない湊だけは右腕の移植手術があるからと帰ってしまったが、他の者たちはアイギスらと同じ形で人間になった綾時の復帰祝いにラーメンを食べに行った。

 その道中で綾時は全員に深く頭を下げて謝罪し、自分も一緒にニュクスと戦わせて欲しいと伝えた。

 他の者たちからすれば復帰した時点でそういうものだと認識していたのだが、綾時は変なところで真面目らしく、改めて宣言して皆に受け入れてもらってから復帰するものだと思っていたらしい。

 昨日既に謝っているというのに、再び謝ってきた少年に全員が苦笑すると、戦った理由などはいいからこれからの事について話そうと七歌が先を促す。

 

「それよりも、ニュクスとの戦いについて話そうよ。綾時君と八雲君が勝てる相手じゃないって言ったきりだから、いつ来るのかとか、どこにいけば戦えるのかとか、そういう情報が一つもないんだ。まぁ、相手が月だって事だけはあの日に聞いたから知ってるけど。まさか、ロケットで戦いに行けとは言わないでしょ?」

 

 七歌たちもニュクスが月だという事だけは聞いている。

 というのも、綾時が自分の正体を明かした日に、湊が昔ゆかりと七歌にニュクスの事を話しただろうと伝えてきて、あの日の冗談がまさかの真実だったと知ったのだ。

 勿論、なんでそんな大事な事を冗談の体で話すのかとゆかりは激昂した。

 本当なんだと言われてもきっと信じなかったと思うが、それでもあんな言い方をしておいて、前にちゃんと言っただろうと言われてもふざけるなとしか返せない。

 綾時もあの日の事を思い出したのか小さく笑い。そうだねと少し考えてから口を開いた。

 

「えっと、これから話すのは皆がデスを殺さない事を選んだ場合はこうだったと思って聞いて欲しい。というのも、湊は僕からデスとしての力を切り離したけど、デスというのは僕を含めて一つの存在だったんだ。そこから僕が離れた事で影響が出ないとは言い切れない」

「まぁ、オレたちからすれば何の予定も知らなかった訳だし。多少ズレても問題ないだろ」

「順平はそれで良いかもしれないけど、私たちは戦いに出る準備とかあるんだよ? 準備が出来てなくて戦えませんでしたは困るから、出来れば最短の方を教えて欲しいかな」

 

 綾時は自分とデスを一つの存在として認識していたが、湊は力と人格は別物として認識出来ていたようで、人格と力の繋がりを断ってデスの宣告者としての力だけを影時間へと還した。

 だが、綾時の人格の分だけデスから力が減っていると捉えることも出来るので、その影響から数日から下手をすれば数週間の誤差が出る事も考えられる。

 順平は綾時に気を遣って大丈夫だと言ったが、作戦を考える七歌はいつまでには準備を終えておく必要があるかを重視して教えて欲しいと頼んだ。

 少女と視線を合わせた綾時は勿論と深く頷き、真剣な表情になると作戦室の壁にあったカレンダーを持って来て全員に見せながら話す。

 

「最初に言っておくと僕の分だけ力が減っているとすれば、伸びる事はあっても短くなる事は無い。殺していれば数ヶ月延びただろうけど、デスの中から一人分のシャドウが離れた程度なら誤差は数日くらいだと思う」

「綾時さんのペルソナは強力なものだと思いましたが、それでもシャドウ一体分の力の減りなのですか?」

「実際のところ、シャドウの王であるデスからすれば一体も五体も誤差なんだ。確かにメサイアは強いとは思うけど、それでも湊のセイヴァーや无窮のような神クラスじゃない。単体でデスに勝てないペルソナの分くらいは数日もかからず回復出来るよ」

 

 人間になった綾時はペルソナが死神“タナトス”から審判“メサイア”に変化した。

 正体を明かす前ほどの圧倒的な強さは感じないが、それでも七歌たちより強いだろうと思えるだけの存在感を放っていた。

 その分だけの力を失っていてもデスにはほとんど影響がないとなると、ニュクスの前哨戦であるはずのデスの相手も厳しいのではと思ってしまう。

 綾時がアイギスの質問に答えた事で一同がやや引き攣った表情をすれば、そのタイミングで部屋の扉が開いて両腕が健在の湊が現われた。

 

「……一応言っておくと綾時の力は月の欠片でブーストされた上で変化したものだ。仮に通常の黄昏の羽根をコアにして生体ボディに入れていれば、五月頃のお前たち程度の力しかなかっただろう」

「あ、月の欠片っていうのは僕が貰ったあの結晶の事ね。月の表面が薄く剥がれた物が黄昏の羽根で、月を砕いて採取した岩や石が月の欠片なんだ。羽根みたいに力を増幅させ合ったりは出来ないけど、単体で出せる力の補整と増幅機能は桁外れだからね」

 

 湊の持つ結合した羽根のような共鳴する事で増幅させ合うという特殊な力はないが、月の欠片は大量のニュクスの力を宿した単体で桁違いの高出力が出る増幅器である。

 デスの力を失ってボロボロになった綾時を戦えるようにするには、それほど貴重な物が必要だった訳だが、湊は月から帰還する際にちゃっかり塊で数百キロ分持って帰っている。

 自分の新しい腕の骨格に利用するくらいなので、掌に収まる程度の小さな石を一つ使うくらいはどうって事なかった。

 黄昏の羽根と月の欠片の説明を聞いた者たちも理解したようで頷けば、話を戻すよと綾時が決戦の日を告げる。

 

「さて、話を戻すけどニュクスが地球に降臨するのは恐らく一月の末日だと思う。思ったより無気力症の拡がりが早いんだ。だから、その分、人々に呼ばれて現われるニュクスの降臨も早くなると思う」

「なるほど、一月あればコンディションを整えるには十分だな」

「バカヤロウ。それまでに今より力を付ける必要があんだぞ。お前は美紀を切ったやつと戦いたいんだろうが、思惑通りにいくとは思えねぇ。下手すると向こうのワイルド使いとタイマンの可能性もあるんだぞ」

 

 七歌たちも色々と作戦を考えているが、自分たちの望むとおりの組み合わせで戦えるとは思えない。

 ストレガたちはニュクスの降臨を望んでいるので、それを阻もうとする七歌たちを何としてでも排除する気でいるはず。

 となると、一番怖いのは分断されたところで相手の最大戦力である二人のワイルド使いをぶつけられる事になる。

 七歌や綾時、一撃の出力だけで言えばチドリも何とか渡り合えるが、他の者たちはペルソナが進化して尚二人がかりでもやや厳しいくらいだ。

 真田が暢気な事を言っていたので、荒垣がそれを指摘すれば、個人ではまだ相手出来ない自覚のある者たちの視線が俯く。

 けれど、そうやって全体の雰囲気が暗くなりそうなところで、綾時の隣に立ったままの湊が口を挟んだ。

 

「……いや、あいつらは俺が押さえる。恐らくあいつは今も俺を殺したいはずだ。なら、望み通り相手をして終わらせてくる」

 

 断言した湊の瞳は非常に落ち着いた色をしている。

 既に一度二人を相手取って勝っているため、湊ならばもう一度やっても何とかなりそうではある。

 ただ、長谷川沙織という偽名を使っていた幾月玖美奈と仲の良かった七歌が、両者に戦って欲しくないという思いも僅かに滲ませて“終わらせてくる”という言葉の意味を問うた。

 

「八雲君は、沙織たちを殺すつもりなの?」

「……どうかな。相手次第ってところだ」

「そっか。じゃあ、八雲君も納得出来る方を選んでね」

 

 質問に答えた湊の言葉にはこれまでにない穏やかさを感じた。

 十年前の戦いに決着を付けた影響なのか、ここ最近の湊と今の湊は明らかに雰囲気が違っている。

 他の者たちもそれを感じたのか、今の湊ならば殺さずとも何らかの形で決着を付けられるだろうと不思議な安心感を覚えた。

 湊と理の関係が非常に複雑な物であることは知っている。

 本気で殺し合いを演じた湊と綾時の関係に匹敵するほど難しい問題だ。

 その分、他の者がどうこうして解決出来るものでもないため、彼らの決着は彼ら自身の手でつけて貰う事に決めて、話の続きを促すように皆の視線が再び綾時に集まった。

 

「期限はさっき言った通り。そして、ニュクスに会う方法だけど、相手は当日にタルタロスの頂上へ降りてくる。だから、君たちはその日にストレガや完全体になったデスを倒してニュクスに会わなければならない」

 

 タルタロスの頂上など空を飛べる湊以外のメンバーは見たことがない。

 そもそも、雲より高い奈落の塔に本当に頂上など存在するのかと思っていたくらいだ。

 けれど、デスだった綾時がそう言うからには、間違いなくニュクスは塔の頂上に降りてくるのだろう。

 数日の誤差がある可能性もあるが、期日と場所を聞いたからには全員がそれに向けて動き始めるしかない。

 まだまだ不安はあるが全員で頑張って行こうと七歌が声をかけ、ノリの悪い湊を除く他メンバーたちはしっかりと返事をして気合いをいれあった。

 

 


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