【完結】PERSONA3 Re;venger   作:清良 要

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第四百八話 大晦日の過ごし方

夜――巌戸台分寮

 

 十年前の決着をつける湊との戦いによって、綾時は敗北してデスの力を失いながらも、アイギスら姉妹と同じく生体ボディを手に入れて人間として生まれ変わることが出来た。

 彼本来の力であるデスとしての権能のほとんどを失い。戦闘の負傷もあって、ただのシャドウへと変じた彼の状態は非常に不安定だったが、湊が宇宙で手に入れた月の欠片によって存在を補強することで七歌たちと同等以上の力を残す事に成功した。

 そうして、一夜明けて全員でニュクスに挑むにあたり、決戦がいつになるかを綾時が皆に説明して今後の大まかな予定が決まった。

 ニュクスとの決戦はおよそ一ヶ月後。多少の伸びはあるかもしれないが、最短で一月の末日になるだろうと見られている。

 宣告者としての役割を持っていた綾時の言葉だからこそ、ニュクス降臨の予測は正しいのだろう。

 同じくニュクスの存在を知っていた湊も否定しなかったので、他の者たちもそれまでにどれだけ力を付けられるかとやる気に駆られていた。

 ただし、いくら残り一ヶ月しかないと言っても、大晦日や正月三が日くらいはゆっくり過しても罰は当たるまい。

 皆もその期間は休養に充てるという案に賛成し、話し合いを終えると解散の流れになった。

 ここで暮らしていないのはコロマルを含めれば、外部協力員であるラビリスとチドリ、桐条の遺言で特別課外活動部の責任者になっていながらまともに活動を見ていない湊だけ。

 ただ、ラビリスはアイギスの部屋に泊る事になっており、コロマルもその関係で今日は寮に残る。

 チドリは実家で家族と過すという事で帰ったが、湊は夕方から人と会う約束があるからと来てすぐに帰ってしまった。

 勘の良い者たちはその相手が女性だと察して彼に冷たい視線を向けていたが、七歌たちが悩んで戦いから離れている間もシャドウを狩り続け、十年前から影時間を終わらせるために力を求め続けていた青年が、このタイミングで色恋沙汰のために人に会うとは考えづらい。

 だとすれば、その約束はEP社関連のものか、ニュクスとの決戦に何かしら関係しているものだと思われる。

 仕事関係ならば詳しく聞くことは出来ないし、仮に個人的なものであったとしても、彼には彼のプライベートが存在する。

 故に、彼に冷たい視線を向けていた者たちも少しすれば機嫌を直し、食料の買い出しに出掛けると夕方には帰ってきて年越しの準備をしていた。

 今日はやはり大晦日だからと全員で年越しそばを食べる事になっている。

 他の者たちが買い出しに出ている間に荒垣が蕎麦のつゆを作り、ネギやかまぼこ等の具材も切っておいたので、時間になって蕎麦を茹でさえすれば直ぐに食べる事が可能だ。

 もっとも、育ち盛りの学生たちが蕎麦一杯で夕食を済ますことなど出来る訳がない。

 他にも料理が出来るメンバーが色々と作り、美鶴も寿司の出前を頼んでいたので、今日は年越し蕎麦を食べつつ他の物も摘まむ形で夕食を取る事になった。

 

「いやぁ、それにしてもニュクスの戦いが一ヶ月後に控えてるってのに、こうやって紅白見てると今年もようやく終わりかってしんみりするよなぁ」

「フフッ、僕は実際に視るのは初めてだけどね。湊の中にいた時から知識としては知っていたよ」

 

 年末番組を見たいからとテレビを移動させた順平は、キッチン前のテーブルで綾時と並んで蕎麦を啜りながらしみじみ呟く。

 テレビでは男が白、女が紅のチームに分かれて競い合う歌番組がやっている。

 綾時も湊の中にいた頃から外界の情報を得ていたので、こういった番組がある事は知っていたが、自分の目で実際に視るのは初めてなんだと楽しそうにしている。

 順平はこういった伝統的な番組よりも、裏でやっているバラエティの方が好きそうなイメージだが、意外と伝統を気にするようで知らない演歌の時にチャンネルを変えることはあっても、基本的にはこの歌番組を点けておくらしい。

 他のメンバーたちも視るとすればこの番組らしいので、こんなところでくだらないチャンネル争いをする必要がなかったのは幸運だろう。

 そして、綾時と同じように初めての年の瀬を過すアイギスは、ラビリスの隣でお寿司を食べつつ、興味深そうにテレビを視ている。

 

「チームに分かれて競い合うという事でしたが、出演者の歌唱力には大きなバラつきがあるように感じます。また、歌唱力は高くとも世間の流行から外れていると言いますか、一般的な認知度が低い方もおられます。これでは明確な勝敗をつけるのは難しいのでは?」

「まぁ、言うてもお祭りみたいなもんやから。ゲスト審査員の票と会場の観覧者の票に加えて、ネット経由での一般投票も合せた合計数で勝負するんよ」

「人によっては自分の好きな歌手のいる方に入れたり、視ていて番組を盛り上げたと思う方に入れるから、コンクールみたいに純粋な歌唱力の勝負じゃないの」

 

 ラビリスと風花があくまで年越し前のお祭りなんだと説明すれば、成程と頷いてアイギスは興味深そうに視線を再びテレビに向ける。

 今は白組で六人組の男性アイドルグループが歌っているが、どうやらゆかりが割りと好きなグループらしく、「新曲より定番で来たかぁ」と苦笑していた。

 ゆかり的には今年の夏に出した新曲を歌って欲しかったようで、去年ヒットしたドラマの主題歌を今年も歌われてもマンネリ感が強いらしい。

 とはいえ、ドラマと共にヒットした歌ではあるので、歌い終わると会場中で拍手が起こり盛り上がっていた。

 大きなヒット曲がない年だと番組の盛り上がりもイマイチなので、定番曲を歌うグループがいようと今年は出演者の選定もバランスがよくちゃんと盛り上がっているように思える。

 それから交互に歌って数組が歌い終えると、天田が少しソワソワし出したので、急にどうしたと荒垣が声をかけた。

 

「おい。落ち着かないでどうした?」

「え、いや、その……。今回の白組の応援ゲストでフェザーマンが出るらしいって話があって」

「他局なのに出て良いのか?」

「えっと、夏の劇場版が異例の大ヒットで、邦画の歴代興行収入のトップテン入りしたので、子どもやファミリー層への話題性もあって呼んだみたいです」

 

 天田が説明した映画はここにいる全員が知っている。

 湊がゲストキャラクターとして出演していた事もあって、若い女性を中心に話題になったが、アクション映画の有名監督がメガホンを取ったストーリーもどちらかというと大人向けで、今年の映画は幅広い年齢層にウケて大ヒットに繋がった。

 この歌番組のテレビ局もそうした話題があれば他局の特撮番組でも呼ぶのに問題ないと判断したのか、天田が言った通りに変身前のフェザーマンたち七人が舞台に現われた。

 続けて怪人も現われてゲスト審査員を人質に取ると、スモークで舞台の上が真っ白になり、その中から変身したフェザーマンたちが現われてヒーローショーが始まる。

 男子たちはまさかこの番組でフェザーマンが見られるとは思っていなかったと楽しんでいたが、そば湯を飲んでいた美鶴が先ほどの天田の言葉を思い出して素朴な疑問を口にした。

 

「ん? 劇場版のヒットが切っ掛けなのに、八雲と柴田さやかは出ないのか?」

「八雲君たちは映画の宣伝で番組出演はしてましたけど、これはその範囲に含まれないから契約外でオファー出来なかったんじゃないですかね」

「なるほど、そういう物なのか」

 

 確かにフェザーマンは劇場版のヒットから歌番組への出演が決まったが、劇場版のゲストキャラクターとして出演した湊とアイドルの柴田さやかは劇場版関連の宣伝以外は出演する義務がない。

 それを越えてさらに出演して貰おうとすると、二人とも話題の人物と言うこともあって依頼料がかなりかさむ。

 七歌の予想ではフェザーマンたちの出演料を合せた額よりも、湊か柴田を一人呼ぶ方が多く掛かる。

 番組全体での予算もあるはずなので、メインキャラたちと怪人を呼んでのヒーローショーでも十分に頑張ったと方だ。

 テレビ越しの視聴者を楽しませ、会場も盛り上がっているので、白組の応援ゲストに彼らを呼んだのは英断だったと言えるだろう。

 綾時は封印の関係もあって映画を観ていないが、他の男子たちは全員が観たこともあって、会場の盛り上がりを考えると今年は白組の勝ちだなと話している。

 しかし、まだ番組は中盤に差し掛かったところだ。紅組には今年大ヒットを飛ばした歌手やグループも残っている。

 いくら何でも勝ちを確信するのは早いのではと七歌は反論した。

 

「確かにフェザーマンは盛り上がったけど、あくまで歌合戦だからね。ゲストのヒーローショーで勝ちを確信するのは流石に早計でしょ」

「つっても、七歌っちは紅組にこれ以上の応援ゲストいると思うか? フェザーマンの興行収入は今年じゃなくて歴代トップテンなんだぜ? 今年一番の話題の人って考えたらやっぱ勝ちは固いって」

 

 順平がそんな風に言えば、他の男子たちも妙に勝ち誇った顔でテレビを視ている。

 別にお前たちは何もしていないだろうと言いたいが、彼らにすれば自分たちの性別と同じ男チームである白組が勝つと嬉しいらしい。

 七歌たち女性陣は彼らのその感覚はよく分からないものの、男子たちが妙に勝ち誇っている顔が男の方が上だと言っているようで勘に障った。

 この後の出演者を見るために風花が席を立って新聞を取ってくれば、女性陣は今の白組優勢な空気を変えられそうな者はいないかと探す。

 後半にはベテラン勢や歌姫と呼ばれる者もいるが、順平の言ったように今年の話題性で言うと少し弱い気がした。

 ここにいる七歌たちに出来る事はないというのに、ゆかりはどうすると真剣な顔で他の者に相談する。

 

「マジで今の流れだと白優勢なんだけど、これひっくり返すの難しいと思う?」

「ドラマとか映画の主題歌組もいるし。Yuriとかアジガルも残ってはいるけどね。インパクトで言うと確かにもう一声って感じかな」

「そうなると、紅組の応援ゲストと出演者のミニコーナーが鍵になるね」

 

 ゆかりと七歌と風花が一緒になって話し合うと、白組の残りのメンバーは紅組の出演者とそう変わらないレベルだと判断された。

 そうなってくるとやはりステージセット変更中の時間繋ぎに行なわれるミニコーナーなどが鍵になってくる。

 天田はフェザーマンが白組の応援ゲストに出ると知っていたが、紅組の応援ゲストも全員が公表されている訳ではないので、とんでもないサプライズゲストが残っている可能性がある。

 男がどうだの女がどうだのはどうでも良いが、順平たちの顔がムカつくから紅組に勝って欲しい。

 女性陣がそう願って食後のお茶を飲みながら番組を見ていれば、紅組司会者が応援ゲストの登場だと言って舞台がスモークに包まれた。

 フェザーマンの変身シーンばりの演出に、もしや本当にとんでもないサプライズゲストが登場するのかと期待が高まる。

 そして、スモークの中に人影が見えたと思えば、次の瞬間にスモークが弾けるように一瞬で霧散し、中から中世ヨーロッパの貴族のような豪華な衣装を身に纏った湊と柴田さやかが現われた。

 湊は蒼銀の糸で刺繍が施された黒のジャケットの胸に真紅の薔薇という出で立ちで、対する柴田は黄金の糸で刺繍が施された真紅のドレスを見事に着こなしている。

 少し前に白組の応援ゲストでフェザーマンが登場した事もあって、そちらを知っている者たちは二人の衣装が劇場版フェザーマンで自分が演じたキャラのイメージカラーを取り入れている事にすぐに気がついた。

 だが、二人はあくまで有里湊と柴田さやかとして登場しており、フェザーマンとは無関係ですよと言った雰囲気を出している。

 アイドルである柴田は歌番組に出てもおかしくないが、スポーツと美術工芸分野で有名になった青年が歌番組で何をしようと言うのかと注目が集まる。

 すると、青年は気品に溢れた仕草でヴァイオリンを構え、柴田も姿勢を正すと目を閉じて厳かな雰囲気を纏い。ヴァイオリン演奏でアメイジング・グレイスを歌い出した。

 フェザーマンの登場からどこか浮ついていた空気は鎮まり、柴田の透き通るような歌声がヴァイオリンの旋律に乗って人々へと届けられてゆく。

 七歌たちもテレビ越しではあるが自然と歌と音楽に集中し、二人の演奏に聴き惚れる。

 二人の演奏に特別な演出はない。暗い舞台の上で、音を奏でる二人がライトに照らされているだけだ。

 だというのに、テレビ越しに見ている七歌たちも、何故か二人の周りに不思議な光の玉が踊る様を幻視し、ライトとは別の温かく神聖な光が彼らを照らしているように見える。 

 時間にすれば四分ほどの事だが、その僅かな時間だけ番組を見ていた日本中の人々がただ静かにその演奏に耳を傾けた。

 音楽分野で何の功績も持たない素人の青年と、“アイドル”という色眼鏡で見られやすい肩書きで歌を歌っている少女の全力の演奏は、聴いていた人々の記憶と心に深く刻み込まれる。

 画面の向こうでは審査員と観客だけでなく、他の出演者たちも惜しみない拍手で二人を讃えている。中には感動のあまり涙を流している者もいた。

 まさかの人物の登場に驚いていた七歌たちも、応援ゲストにこんな最終兵器を投入してくるとは思わなかったと苦笑する。

 

「いやぁ、完全に出演者を喰っちゃうゲストは問題あるとおもうなぁ。テレビ番組の演奏で鳥肌立つとか初めてだよ」

「八雲さんの隠された特技も驚きましたが、柴田さんの心に届く歌唱力も凄まじいものでした」

「うーん。ウチも流石に予想外やったわ。っていうか、この二人って未だに連絡取り合っててんな」

 

 世間の注目を集めるための仕込みで熱愛報道を流した二人は、イベントを終えた後も連絡を取り合っていたようで、司会者たちにどうして今回のコラボレーションが実現したのか訊かれて答えている。

 元々は、柴田のアイドルという枠に収まらない圧倒的な歌唱力を使い、聴いている者たちの注目を一気に掻っ攫う予定だったらしい。

 けれど、自分の持ち歌や名曲を豪華なバンドメンバーと演奏しても、番組を盛り上げる一要因になるだけで人々の記憶に深く刻み込まれる事は無いと彼女は思った。

 そこで考えたのが伴奏一人と自分の歌だけという誤魔化しの利かない演奏形態での全力勝負。

 失敗すれば自惚れアイドルという烙印を押されるため、事務所だけでなくオファーを出した番組側からも止めた方が良いのではと言われたという。

 しかし、柴田はそれでもやりたいと、どこまで出来るか挑戦したいと企画を押し通した。

 

《でも、本当に大変だったのはそこからでしたね。年末ってコンサートが多くて、共演オファーを出してもスケジュールが厳しいからと全然通らなかったんです。準備期間も短いのに伴奏が一人っていうのも問題だったみたいで本当に焦りました》

《ええっ!? そんな状態だと周りから企画を変えるように言われたりしたんじゃないですか?》

《事務所の社長からも言われましたね。でも、やっぱり歌で勝負したいと思ったので、最後にダメ元で有里君に伝手がないか聞いてみたんです。そしたら、楽器は一通り出来るって返してきて。そういえば、前に野外フェスでもピンチヒッターで普通にギター演奏してたなって思い出して》

 

 EP社の伝手を使えないか尋ねたというのに、まさかの本人が楽器は一通り出来ると返してきた事で、柴田は実力を確認して行けそうなら共演もありだと思ったらしい。

 事務所と番組プロデューサーもそれは面白そうだと食いついたそうだが、やはり実際に実力を確かめなければ許可は出せない。

 曲は柴田が事前に『アメイジング・グレイス』に決めたので、音響スタッフや知り合いのプロの演奏家の見ている前で彼に演奏させてみたところ、本人の言った通りピアノやヴァイオリンにフルートなどどの楽器をやらせても問題ないとすぐに許可が出たという。

 

《私、他人の才能に嫉妬とかって基本的にはしないんですけど、レッスンしてくれる先生が有里君の事ばっかりべた褒めした時は、この才能マンめってホントにムカついたんです》

《……別に楽譜通りに引いてただけですけどね》

《ほら、こういう事を平気で言ってくるんですよ? だから、途中から私と有里君が音で殴り合う感じにレッスンが進んだんです。おかげで天井知らずに上達して思っていた以上の仕上がりになりました》

《やめてください。せっかくの感動にそういう裏話は聞きたくないです》

 

 湊も柴田もやや腹黒な部分がある事をカメラの前でも隠していないので、司会者が感動が薄れるからそういう話はしなくていいと慌てて止めている。

 彼らのやり取りに会場は笑いに包まれたが、二人の演奏は柴田の思惑通りに人々の記憶に深く刻み込まれたのは間違いない。

 二人の出演はここまでのようで、湊が柴田の腰に手を回してエスコートしながら舞台から去って行くが、彼らが舞台から完全に見えなくなっても拍手が続いていた。

 先ほどまで白組優勢だった空気が一気に紅組優勢に変化し、勝ち誇っていた男子たちの表情もやや曇っている。

 それを見た七歌たちは思わずハイタッチし合って喜んだ。

 

「イエーイ、八雲君の一手で逆転ですよ。これはもう紅組の勝ちで決まりかなぁ? さっきまでは白組優勢だったのに、応援ゲストの登場で逆転しちゃってホントに申し訳ないなぁ!!」

「ねぇ、本当にねぇ! でもぉ、歌番組なのにヒーローショーで勝つのもおかしな話だし。本格的な歌と演奏に負けるのはある意味当然よねー!」

 

 先ほどまでは白組が優勢だったので文句を言いづらかったが、逆転すればこっちのものだと七歌とゆかりは男子たちを全力で煽る。

 二人は男子たちの方を見ずに言っているものの、言葉の端々から“ねぇ、今どんな気持ち?”と嘲笑が感じられる。

 そんな彼女たちの反応に順平は歯ぎしりして悔しがり、荒垣も苛ついているのか貧乏揺すりをしている。

 さらに真田も不機嫌な様子を隠さず、一気にお茶を飲み干すとコップを勢いよくテーブルに置いた。

 

「クソッ、あの裏切り者め。男なら白組で登場するべきだろうがっ」

「大人は汚いですよ。あの衣装シグルムとガルダのイメージカラーに合わせて、ばっちりフェザーマンの人気も意識してるじゃないですか」

「僕は正直勝ち負けはどうでも良いんだけど、ドレス姿のアイドルの腰に手を回していたのは羨ましいな」

 

 珍しく天田もこんなのずるいとストレートに感情を表に出し、綾時だけは他の者と違った視点ではあるが湊に文句を言っている。

 女子たちはそんな彼らの様子に非常に満足しているようで、マナー違反ではあるがお茶のカップで乾杯して祝杯をあげる。

 忙しそうにしていた青年が年末の国民的音楽番組に登場するなど、まさかのサプライズだったが視聴者だけでなく仲間たちも大いに盛り上がることが出来た。

 男子たちにとっては最悪な締めくくりになったかもしれないが、女子たちは来年も良いことがありそうだと小さな期待を胸に大晦日を過す事が出来たのだった。

 


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