皆々おいでませ~。ヒーロー協会食堂。   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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タンクトップタイガーとタンクトップブラックホールに血縁関係が有るか分かんないけど、取り敢えず実の兄弟設定という捏造


二食目:タンクトップ兄弟と、バナナパフェ

最強の男の娘こと、S級5位の激雷の天使・・・。ホタルがシッチに食堂の炊事係に任命されてから、早数日。利用者のヒーローやヒーロー協会の職員達からは好評の嵐であり、ホタルの読み通りにクレームが来ることも無く快適に業務をこなしていた。

 

 

そんなある日、ホタルにとって因縁深い・・・という訳でもないが、見知った顔が現れた。それは、虎柄のタンクトップと黒いタンクトップを着たヒーロー兄弟・・・

 

 

「あれ?貴方達は、いつぞやの・・・。タンクトップタイガーさんと、タンクトップブラックホールさん?」

 

 

そのホタルの言葉にタンクトップ兄弟は、びくりと肩を震わせる。何故なら、彼らはZ市に隕石が襲来した際にホタルに正論パンチでバチボコに叱られ、プライドをズタズタに引き裂かれた過去が有るからである。そんな中、ブラックホールが辛うじて口を開く。

 

 

「ほ・・・本日は御日柄もよく・・・。」

 

 

そう堅苦しい挨拶をする彼に、ホタルは一瞬ポカンとするとクスッと笑う。

 

 

「そんなに堅苦しくしなくて結構ですよ。もう、あの件は怒ってませんから。」

 

 

その言葉に、タイガーが恐る恐る口を開く。

 

 

「ほ、本当か?」

 

 

その問いに、ホタルは柔らかな笑みのまま答える

 

 

「はい。流石に、あれだけ前の事を引きずるなんて大人気ないですからね。」

 

 

「・・・そうか。」

 

 

そう言いながらも、何処かどんよりした雰囲気の彼等にホタルは問いを投げかける。

 

 

「どうかされましたか?その・・・初めて御会いした時より元気が無い様ですが・・・。」

 

 

ホタルのその言葉に、ブラックホールとタイガーは顔を見合わせる。そして、ブラックホールが俯きながら声を絞り出す。

 

 

「実は・・・。弟と話し合った結果、ヒーローを引退する事にした。」

 

 

その言葉に、ホタルは何も言わない。まるで、その言葉の続きを待つように。そして、ブラックホールに続くようにタイガーも話し始める。

 

 

「人間怪人ガロウ・・・。アンタもS級なら話は回って来てるだろう?俺達は、奴にボコボコにされたんだ・・・。」

 

 

「・・・新人潰しなんてものに、胡坐を掻いていた罰が当たったのかもな・・・。ハハッ・・・。」

 

 

そういう二人に、ホタルは温かいお茶を淹れてやる。

 

 

「ですが、今あなた方は生きているじゃないですか。生きていれば、次があります。」

 

 

その言葉に、タンクトップ兄弟は自嘲気味に笑う。

 

 

「ハハッ・・・。次、か・・・。」

 

 

「俺達みたいな筋肉馬鹿に、次なんてもんがあるのかね・・・。」

 

 

そう茶を啜るタンクトップ兄弟を見ながら、ホタルは考え込む。

 

 

(んー・・・。そうとう心に来てるっぽいね。そうだ!こんな時は・・・。)

 

 

そう考えると、ホタルは食堂の冷蔵庫を漁りながら話し掛ける。

 

 

「折角ですから、何か食べてってください。お腹が空いていては、良い考えも浮かびませんよ?甘いものでも食べますか?今日は、新鮮なバナナがあるんです。パフェでも作りましょうか?」

 

 

「パフェ?」

 

 

「はい。実はパフェに使われる材料には、抗鬱作用が含まれるものが多いんです。それに、甘いものを食べると心が幸せになるじゃないですか。」

 

 

その言葉にタイガーがぼそりと呟く

 

 

「甘い物・・・か。そういや、昔お袋が良く作ってくれたよな・・・。なぁ、兄貴。」

 

 

「そうだな・・・。あの頃は、只々(ただただ)純粋にヒーローを目指そうとしてたっけか・・・。一体いつからだろうな、弟よ。ランキングを気にして新人潰しなんて馬鹿な事を考え始めたのは・・・。」

 

 

「さぁな・・・。それを思い出す事すらできない程、俺達の心は(ただ)れまったんだろうな・・・。」

 

 

そう嘆くタンクトップ兄弟に、ホタルは慰めの言葉を掛ける。

 

 

「人には三大欲求というものがあるように、欲があるのは当たり前ですから・・・。ただ、その欲をどう抑えるか。それが、大事だったのかもしれませんね・・・。」

 

 

そう言いながらも、ホタルは料理を始めていく。そんな中、彼はタンクトップ兄弟に苦手なものはないかと質問をする。

 

 

「そういえば、アレルギーの類はありますか?一応、バナナとか使うんですけど・・・。」

 

 

その言葉に、ブラックホールが頭を振りながら答える。

 

 

「いや・・・。特には無い。ただ・・・、今は甘いものでも食べて落ち着きたい・・・。」

 

 

「俺もだ・・・体に力が入らねぇ・・・。」

 

 

「では、パフェを食べて心を豊かにしましょうね。」

 

 

そう微笑みかけながら言うと、ホタルによるデザートクッキングが始まったのだった。

 

 

そうしてホタルはタンクトップ兄弟が見ている中、バナナババロアを作り始める。まずは容器を二つ用意して、一方の器に御水大さじ2杯に、ゼラチンを5g程溶かし入れる。そうして、もう一方の容器にはバナナを入れフォークで潰し始める。

 

 

そうして、ボウルに卵黄1個と砂糖30gを入れて泡立て器で掻き混ぜ始める。

 

 

続いて、御鍋に牛乳200mLを入れて中火で沸騰直前まで温め、それを先程の卵黄と砂糖を混ぜたボウルの中に3回に分けて入れ始めて泡立て器で掻き混ぜ始める。そんな中、ホタルはタンクトップ兄弟に話し掛ける。

 

 

「そういえば、御二人は料理とかはされたりしますか?」

 

 

そんなホタルの言葉に二人は顔を見合わせると、思い出すように話し始める。

 

 

「そういえば・・・お袋が昔、ホットケーキを作ってくれたな。」

 

 

「あぁ、ホットケーキのタネを舐めて怒られたっけか・・・。」

 

 

「アハハ、あるあるですねー。僕は兎も角、お兄ちゃんはやってましたよ~。」

 

 

そんなホタルの言葉に、タイガーが納得したような眼差しをしながらぼやく。

 

 

「あ~・・・やってそうだよな、お前の兄貴・・・。」

 

 

「そうなんですよ・・・。色々杜撰(ずさん)で・・・。まぁ・・・隕石事件も言い方や過程がアレだっただけで、貴方達が言ってた事にも正論な部分はありましたし・・・。はぁ・・・。」

 

 

そう溜息を吐くホタルに、ブラックホールが慌ててフォローを入れる。

 

 

「い、いやいや・・・。ま、まぁあれだ。確かあのハゲも、今じゃあB級ヒーローになってるんだろ?」

 

 

その言葉に、掻き混ぜたボウルの中身を鍋に戻しながら中火で沸騰直前まで温め始め、温め終わった鍋を休ませながら、溶かしておいたゼラチンとバナナを入れつつ、ホタルはブラックホールに質問をする。

 

 

「そうですね・・・。まぁ、何となく続けてる感じですね・・・。そういえば・・・、一つ気になったんですけどブラックホールさん。」

 

 

「ん?どうした?」

 

 

「ブラックホールさんは、フブキ組に勧誘されたことはありますか?」

 

 

そう言いながら鍋の中身を清潔なカップに入れて冷蔵するホタルに、ブラックホールは唸りながらも首を振って話し始める。

 

 

「あー・・・。勧誘されたはされたんだが、俺はタンクトップマスターの派閥に居たしな。マスターを裏切る真似なんて、出来ねぇよ。」

 

 

「お前の兄貴は勧誘されたのか?」

 

 

そう訊いてくるタイガーに、苦笑いをしながらもホタルはバニラアイスを作りながら肯定の意を示しつつ説明するが、誤ってフブキの事を愛称で呼んでしまう。そして、そんな言葉をタイガーは聞き逃さなかった。

 

 

「はい。フーちゃん先輩・・・、じゃなかった。B級1位の地獄のフブキさんに、勧誘されたらしいです。」

 

 

「へぇ・・・。・・・ん?フーちゃん先輩?何だその呼び方?」

 

 

「え、あ・・・えっと・・・。」

 

 

そのタイガーの疑問に、耳まで顔が赤く成ったホタルを見ながらタンクトップ兄弟は何かを察する様な顔に成ると、生暖かい目線をホタルに向ける。

 

 

「そうかそうか、確かに地獄のフブキは美人だからな。」

 

 

「分かるぞ、男ならあんな美人を目の前にしたら惚れちまうよな。」

 

 

「か、揶揄わないでくださいよ・・・。そうですよ、好きですよ・・・。でも・・・、フーちゃん先輩が僕の事を好きかどうかは分かりませんし、僕みたいなチビなんかよりももっと相応しい人が居るかもですし・・・。」

 

 

そう言いながらも、段々としょぼくれてくるホタルに対してブラックホールとタイガーは、慌ててフォローを入れる。

 

 

「げ、元気出せよ!そ、それにほら!確かお前、ネットでは夫にしたいヒーローナンバーワンに成ってたはずだぜ!なぁ、兄貴!!」

 

 

「そ、そうだぞ!!今の時代、料理系男子もモテるって言うからな!!」

 

 

「あはは・・・有り難う御座います。」

 

 

そんな兄弟に苦笑しながらも、ホタルはボウルに卵黄三個に砂糖50gを入れてハンドミキサーで掻き混ぜる。そして、掻き混ぜながらも牛乳を3回に分けながらも入れ始める。そして、バニラエッセンス5,6滴ほど加えてハンドミキサーで混ぜ始める。

 

 

続いて生クリーム100mLをハンドミキサーで8分立てに成るまで掻き混ぜ、混ぜ終えた生クリームを、先程のバニラエッセンスを混ぜたボウルの中に3回に分けて混ぜ合わせる。そして、それを冷蔵庫の中に入れて冷やし始め、いい具合の硬さに成ったところで取り出し始める。

 

 

そうして、硬め終われば前任の調理師であるサトウさんの置き土産であるパフェグラスを二つ用意し、下から順番にチョコソース、バナナババロア、コーンフレーク、麦チョコ、たっぷりの生クリーム、櫛切りにしたバナナ、生クリーム、バナナの順に入れて最後にバナナとチョコソースと生アーモンドをトッピングする。そうして遂に・・・。

 

 

「出来た・・・。」

 

 

ホタル特製、チョコバナナパフェが完成し、2人分のパフェをタンクトップ兄弟の前に並べ終えたのだった。

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「グスッ・・・うめぇよぉ・・・。兄貴ぃ・・・。」

 

 

「あぁ・・・美味いなぁ、弟よ。」

 

 

パフェを食べ始めた二人の第一声は、鼻詰まりを起こしながらも歓喜に満ち溢れた声だった。

 

 

「喜んでいただけて、良かったです。チョコの苦みは、丁度良い感じですか?」

 

 

「あぁ・・・この苦みが、更にアイスの甘さを引き立ててくれている。」

 

 

「それに・・・。俺と兄貴のアイスで、色が少し違うんだが・・・?」

 

 

そのタイガーの言葉に微笑みながら、ホタルはこだわりポイントを説明する。

 

 

「はい。ブラックホールさんのアイスは、ブラックホールを意識したブラックチョコレート味に。タイガーさんのアイスはバニラアイスにチョコソースをかけて虎柄に成るようにしてみました。」

 

 

「なるほどぉ・・・凝ってんなぁ。」

 

 

そう言いながらも、タンクトップ兄弟の脳裏には在りし日の記憶が蘇ってくる。順位や新人潰しなどに拘る事無く、純粋に怪人退治や人助けに明け暮れていたときの記憶を。どうして、今と昔であぁも自分達は変わってしまったんだろうと・・・。

 

 

そう考えながらも、兄弟達は目の前のパフェに一言も発する事無く一心不乱にパフェを食べ続け、ついに完食して手を合わせる。

 

 

「ごちそうさま・・・。美味かったよ。」

 

 

「あぁ・・・満足だ!!」

 

 

そういうタンクトップ兄弟達にホタルは微笑みながらも、とある質問を投げかける。

 

 

「御粗末様です。そう言ってもらえると、料理人の冥利(みょうり)に尽きます。それで・・・これから如何なさるのですか?」

 

 

その言葉に、タンクトップ兄弟は迷う事無く同じ言葉を述べる。

 

 

「まずはヒーロー協会を退会して、故郷(くに)に帰って・・・。自警団として活動でもしてみるよ・・・。ヒーローなんてしがらみに囚われてたのがいけなかったのもしれねぇ・・・。」

 

 

「今から始めるのは・・・。ただの趣味に過ぎない、自警団みたいなもんだ・・・。だけど、少しづつやり直してみる事にするぜ・・・。」

 

 

その言葉にホタルは微笑みながらも、とある小袋を彼等に手渡す。それは、可愛らしい動物のクッキーだった。

 

 

「分かりました。御二人の旅立ちが、幸有るものに成るように願っておりますね。こちらは、餞別(せんべつ)です。」

 

 

「・・・いいのか?こんなに貰っちまって。」

 

 

「はい、御二人が皆から頼られる素敵な方に成る事を願っての物ですから。パフェの御代も必要ありません。」

 

 

そう微笑むホタルに申し訳なさそうな顔に成る兄弟だったが、顔を引き締めると改めてホタルに宣言する。

 

 

「礼を言わせてくれ・・・。それから、約束させてくれ。今日食べたパフェと、アンタの心遣いに誓って更生して見せるってな!!」

 

 

「そして、今度来たときにはまた美味い定食でも食わせてくれ!!」

 

 

そう宣言をする兄弟に、ホタルは改めて礼をする。

 

 

「分かりました・・・。当食堂は、御二人の帰りを心より御待ちしております。またのご来店を・・・、御待ちしておりますね。」

 

 

そう微笑むホタルに黙って一礼をすると、タンクトップ兄弟はヒーロー協会の出口から立ち去っていく。そんな彼等の表情は、利権に溺れた欲(まみ)れの男の表情ではなく、助けを求める者に対して純粋に手を差し伸べようとする漢の顔立ちとなっていたのだった・・・。

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