とんでもねぇモンスターパニックの幕開けですからね。
最初に感じたのは、濃い緑の香り。
若い女性―――ユキが
最期に覚えているのは、
明るい場所を目指して上り坂を歩いて行けば、
―――空は快晴。
切り立った断崖に囲まれた川には小さな滝がいくつか流れ込むが、本流はずっと上流だろう。
崖ふちで太い鉄筋にワイヤーを巻き付け釣りをしている、大柄な若い男性が居た。
ワイヤーの先にはとても抱えきれない程のトノサマバッタのような虫が
「ええっと・・・釣り、だよね?あんなでっかい虫が
ユキは驚きのあまり心の声がそのまま出てしまい、しまったと思った。
「―――さあ、なにが釣れるかな」
(・・・良かった。言葉は通じた)
言語は同じだが、浮いているバッタの大きさがユキの知る常識とはかけ離れており、ここが別の世界なのだとハッキリ突き付けてくる。
男性が腰かける岩に通常サイズのトカゲが
ユキは深く考えるのを止めて崖ふちにしゃがみ込み、釣りの
ガサガサと草木をかき分ける音が響き、先程ユキも通った場所から小柄なスーツ姿の男性が顔を見せる。
彼は小松と名乗り、美食屋の仕事の依頼で来たという。
国際グルメ機関、IGO(International Gourmet Organization)主催のグルメパーティで出す食材の調達をして欲しいと話す小松に、釣りをする男性は返事をしない。
「って聞いてらっしゃいます?トリコさん!」
トリコと呼ばれた男性が立ち上がって
怪鳥はヘビのような尾を5本
獲物を横取りされまいとトリコと呼ばれた男性は
五ツオオワシ、ザリガニフィッシュの捕獲を目の当たりにした小松は、改めてガララワニの捕獲を依頼すると、トリコは想像で口元によだれを
「出発だ!」
「―――それ、付いて行ってもいい?」
「別に構わねぇけど?」
「あ、ボクもお願いします!」
*********
美食丸という小型の船で向かいながらトリコは「つーかよ、なんでお前まで来るんだ」と魚を
船を出してくれたのは、トムと呼ばれるグラサンの男性。
「上司が、ガララワニの生態を調査してこいと」
「料理人のお前が?」
トリコは確信をもって尋ねているが、小松は職業まで話してはいなかったはずだ。
五つ星ホテル『ホテルグルメ』で
「誰も見た事がない食材を探して食べる、食の探究者―――美食屋。その中でも世界の約30万種の食材の内の2%―――約6千種を見付けたグルメ時代のカリスマ、美食屋トリコ。凄すぎる」
「小松めっちゃ説明してくれるね」
「ユキさんはどうして同行を?」
「―――この世界に興味があって」
「え?世界??確かにグルメ時代において美食屋はその中心的存在ですが、
やがて
警戒心が強く臆病だというフライデーモンキーの姿は、どこか半魚人を
唯一の入り口とされるマングローブのトンネル、通称‵鬼の口′からゴムボートに乗り継いでバロン諸島最南端のババリア島上陸を目指す。
IGO―――国際グルメ機関規定では、プロのハンター10人でやっと仕留められるレベルだという。
水面下にはそんな
マングローブのトンネルを進んでいくと、
バロン諸島に存在する約5万種の生物の王者に
ボートを降りてジャングルを進む途中、ヒルに噛まれた小松にマングローブの葉を
「はあ~、トリコ物知りなんだね~」
「なるほど・・・メモっとこ」
夕日が山に差しかかり始めた頃、トリコが追い払ったのは本来バロン湿原の奥地に
「やはりなにかおかしい。フライデーモンキーにしたってそうだ。一生を
「・・・そ、その捕食者って?」
「トリコ、ホラーを語る才能あるよ絶対・・・っ」
トリコの語り口に、小松とユキは息を
日も完全に落ち、沼で捕らえたヘビガエルを夕食に火を囲む3人。
妙な
(あの生き物・・・修正される前のハルキゲニアの復元図に似てる・・・)
ヒルに噛まれた小松の首には大きな絆創膏が貼られているが、未だ血は止まっていない。
その理由についてヒルジンという物質が原因だと話すトリコ。
吸血時に痛みを感じにくくし、出血を長く持続させる。
「
「うぅぅ、お願いします」
ユキの提案に、小松は情けない声を出した。
直後、3人の前に沼から
バロンヒルと共生し獲物を探し当てていたガララワニを、トリコはナイフとフォークという技で地面に沈めた。
仕留めた巨体を小分けにし、肉塊を木に刺して直火で焼き上げるトリコ。
加えて小松は、石焼きにして仕上げる調理工程を踏む。
そうして2人の口に運ばれていく肉を見守りながらユキは思った。
(・・・味付け、しないのかな・・・)
食事をしながら小松は一流の料理人になる夢を、トリコは人生のフルコースを作るという一生を
それぞれの夢を描く2人の姿は、頭上に輝く星明かりのように
「トリコさん、またこういう機会があったら付いて行ってもいいですか」
「私も一緒に行っていい?」
小松とユキの希望に、トリコは好きにすればいいと了承する。
「ユキさんはなにか夢ありますか?」
「―――私は・・・よく、わかんないなぁ・・・」
小松の純粋な質問に、ユキは夜空を見上げて静かに答えた。