【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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(現実にも存在するものはまだしも)トリコ世界のアルコール類が、急に恐ろしくなってきました。


10望月の饗宴

拘泥(こうでい)・・・他に選びようもあるのに、特定の事柄に強くこだわること。一つの考えや行動に固執(こしつ)する。ある事に過度にこだわり、柔軟な対応や思考が出来ない状態。

 

バッカス/バックス・・・ギリシャ神話、ローマ神話の酒と豊穣と神ディオニソス/デュオニス/ディオニュソス。

 

アメジスト/紫水晶/紫石英(しせきえい)・・・古代ギリシャ語のamethustos「酒に酔わない」「酔わせない」に由来。ギリシャ神話バッカスの物語から、「酒に酔いにくくなる」「悪酔いを防ぐ」宝石とされてきた。

 

紫色の光の波動には、光修復酵素を刺激しDNAの損傷を修復する作用があり、自律神経のバランスを整え自然治癒力を高める効果がある。肝臓の解毒効果も高める。

 

・・・ホントに?更に調べるとフォトリアーゼなるものが・・・。

 

フォトリアーゼ/光回復酵素/DNA修復酵素は、青色や紫色の光エネルギーでDNAを修復する・・・ってこと?難しくてよく(わか)らぬ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

空に満月が(とも)(よい)のうち。

騒動がひと段落し、所長室の前へと場所を移した一同。

「え!?トリコ、ほとんど治療してない・・・?!」

トリコとマンサムは服を着替えるために一旦別室へ向かったのだが、無数の傷口を(おお)いもせずに戻って来たトリコにユキは意表を突かれる。

「なんで!?大怪我なのにっ!!」

「大丈夫だって。所長がご馳走してくれるって話だし」

「トリコもウチも所長(ハゲ)も、グルメ細胞持ってるから平気なんだし」

ユキを(なだ)めるトリコに続いたのは、黒髪ショートの若い女性。

「えっと・・・?」

「ウチはリン。コロシアムで猛獣使いの仕事してんの。ソッチは?」

「ユキ・・・、トリコの食材捕獲に小松と一緒に同行させてもらってる」

ずいと顔を近付けてくるリンの強い圧に面食らい、思わずユキは頭を後ろにそらす。

「そうなの?美食屋見習いってこと?」

「話は後だ。料理の用意が出来たぞ!」

幾人もの従業員によって配膳ワゴンが続々と運ばれていく所長室へと、マンサムの呼びかけで足を踏み入れる。

 

直径20mを優に超える円形テーブルに、所狭しと並べられた料理の数々。

中でも目を引くのが先のコロシアムで登場した水陸両用の悪魔ガウチの丸焼きと、2つの尾を持つ翼竜獣類バッカスドラゴンの姿焼きだ。

「手前の皿はともかく、奥の方どうやって食べるん・・・」

どうがんばっても届かない。

そもそもどうやってテーブル中央付近に料理を並べたのか。

「はっ!わかった。グラウンド整備とかゲームチップ回収に使われる系の棒だ!」

ユキはT字型の土をならしたり、チップをかき集める伸縮式のワンド、熊手(レーキ)を使ったのではと当たりを付ける。

「どう思う小松っ。・・・小松?」

豪勢な料理を前にマンサムから取材の招待を受けたティナと、それを(こころよ)く思わないリンが言い争っているのをそっちのけで、ユキは小松に話を振る。

一方の小松は、トリコの目にも留まらぬ食事スピードに目玉を飛び出していた。

「トリコさん食べるの早ぁっ!!―――あれ・・・?」

テーブルにうず高く積まれていく皿の存在より、小松とユキには気になるものがあった。

「―――トリコ・・・体の傷が・・・」

料理を次々かき込んでいくトリコの肌には、負傷していた形跡すら残っていない。

圧倒的回復スピードを見せ付けられ、小松とユキは言葉を失い唖然(あぜん)としていた。

 

マンサムのフルコースを始めとしたアルコールが多分に含有(がんゆう)された料理が多い中、ユキはトリコにノンアルコールのものを尋ねる。

「ねえトリコ、お酒入ってないの教えてくれない?」

「ん。そーいや、ヒレ酒の時も遠慮してたな。えーと、これとコレとこれ・・・あとコッチの方のヤツも・・・」

トリコは嗅覚と大きな体躯(たいく)を生かして、手近なアルコールを含まぬ料理をいくつかユキの前へと並べていく。

「あ、ありがとう・・・けどそんな食べれないから」

そうか(ほぉか)?」

口いっぱいに料理を含むトリコは、特に気にした素振りもない。

「ユキさん、この霜降(しもふ)り豆腐、(あぶら)の割にふわっと軽いですよ」

量が食べられないというユキに、小松が食べた料理を(すす)める。

「ほう!あ、小松。この色味が鮮やかな果物もおいしいよ」

ユキも食品生産工場で見かけたものと同じ色彩の果実を紹介し返した。

 

「・・・にしても結構火が通ってる感じなのに、なんでアルコール飛んでないんだ・・・?」

拘泥(こうでい)なまでに酒にこだわった料理の数々に、頭がふらついたのは気化した料理のアルコールが原因だけではないだろう。

(―――待って?熱で蒸発してないって・・・本来揮発(きはつ)性が高いはずのアルコール、大なり小なり元の世界(向こう)と特性が異なるとなると・・・ひょっとしたら私、分解できない可能性高くない!?)

不意に浮かんだ危険性に、ユキは嫌な汗が(にじ)む。

(仮にもし、アルコールが分解できないってなると・・・肝機能障害、血中のアルコール濃度が上がって最悪・・・死―――っ!?!)

思い(いた)って、ユキは一気に血の気が引いた。

アルコールが分解されない場合の致死量はどの程度なのか。

(―――ぉおぉ落ち着け。肝臓で分解処理できなくても、いずれ体外へは排出される・・・)

もしも誤って摂取し急性アルコール中毒になった時を踏まえて、アルコールが分解されにくい体質という(てい)で血液透析でもしてもらえるよう話を通しておくべきか。

(お守りとしてアメジストでも持っておくべきかもしれない・・・)

元の世界の常識がまた1つ崩れていく感覚に、ユキはなんとか足を踏ん張っていた。

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