【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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オリジナル主人公のバックグラウンドについて。
衣食住を確保しました。


02顛末(てんまつ)

バロン諸島へ出向く前の港で、ユキは小松に聞かれた。

「早いですね。ボクは昨日ホテルの方で仕込みを手伝ってから来たんですが、ユキさんはどちらからいらしたんですか?」

「・・・ふふ、この世界(ここ)からは遠いとおーい、誰も知らないような場所だよ」

「えぇっと・・・すごく(へん)ぴな所って事ですか?」

その時は、茶目(ちゃめ)っ気を(まじ)えて笑って誤魔化したユキ。

 

*********

 

バロン諸島でガララワニを捕獲し、その肉全てを平らげた帰路。

「そういえば今更ですけど初めて会った時、ユキさんはなぜあんな山奥に居たんですか?トリコさんの狩りに同行を?」

ジャングルを進みながら、向けられた小松からの純粋な質問にユキは返答に(きゅう)した。

「―――っ・・・」

(わず)かに顔を強張(こわば)らせたユキに、小松は即座に無理強(むりじ)いではない意思を示す。

「あぁ、言いにくい事でしたら別に―――」

「小松はさ。テレポーテーションって信じる?」

空気を読んで引こうとする小松に、ユキは唐突(とうとつ)な質問を投げかける。

「え?フィクションなんかで描かれる、ワープとか瞬間移動の事ですか?」

(きょ)を突かれた小松に、トリコも話に加わる。

一概(いちがい)にフィクションとばかりも言えねぇぞ?過去には瞬間移動したとしか思えねーような出来事が、いくつも歴史的事例として残ってるしな。(きり)に包まれて、気付いた時には何千キロも離れた場所にいた・・・なんて話は(ざら)にある」

「へえ~~・・・。え、なんで急にそんな話を―――」

「・・・・・・・・・」

トリコの話に(うな)らされた小松が、疑問と共にユキを見れば硬い笑みを(たた)えていた。

「・・・ユキ、さん・・・?」

「私が―――別の世界から来たって話だよ」

「「!!?!」」

ユキの言葉に小松とトリコは驚愕(きょうがく)し、声を上擦(うわず)らせる。

「~~~別のっ、世界!!?」

「マジかよっ!!?どうやってだ!?」

心底驚いた様子の2人に、ユキは思わず拍子(ひょうし)抜けしてしまう。

「どうやってって・・・そこ重要?」

 

「ユキさんが別の世界から来た人間・・・ええっとどう言えば・・・」

小松は混乱しつつも、別世界から転移してきた者についての呼び方を考える。

彼方者(あっちもの)・・・とか?けど亡くなった奴や瀕死(ひんし)って意味もあるしな」

トリコも名称について考え始め、ユキは(あき)れながらいくつか案を提示する。

「呼び方は・・・迷い人?よそ者、異邦人(いほうじん)異境人(いきょうじん)なんでもいいけど」

「なるほど、案外(あんがい)色々とありますね」

「異なる世界の人間、異世界人ってことか。いや、外宇宙とかからやって来たって場合もあるんじゃねーか?」

「えぇっ、それじゃ宇宙人ってことになるじゃないですかっ」

可能性を語るトリコに、論点がズレていく気がしたユキが待ったをかける。

「いや、私のいた世界の(ことわり)とは、明らかに成り立ちから違うところがあるから、それは無いと思うよ」

この世界は、そう―――世界を創造した神によって食を中心に(つく)られている。

 

「それより、信じてくれてるって事でいいの?」

「え?あ、はい。驚きはしましたけど」

「?んな突拍子(とっぴょうし)もねぇ(うそ)、言わねーだろ」

なんともアッサリと信じてくれたようでユキは肩透(かたす)かしを食らったが、気を取り直して話を続ける。

「まずトリコの質問について。どうやってこの世界に来たかだけど、恐らくは事故・・・だと思う」

「事故?」

「元居た世界で、ある儀式(ぎしき)研究みたいなものをしていて・・・その暴発による事故が原因じゃないかと」

「研究と・・・儀式(ぎしき)、ですか?なんだかチグハグというかミスマッチな印象を受けますが」

どういったものか想像出来ない2人に、その背景からユキは説明する。

 

「私が所属していたのは、自然界の力を操る(すべ)を学び、研究・開発する『極東(きょくとう)秘術(ひじゅつ)専門機関―――眞秀(まほ)ろば』。考えとして神道に近いところがあるけど、この世界に神社仏閣(ぶっかく)なんかは・・・」

「美食神を(まつ)る神社とかならあるぞ」

トリコの(げん)にユキは(うなず)き返し、更に続ける。

「自然界のあらゆるもの―――動植物や無生物(有機物・無機物)に精霊や神が宿るという考えの自然信仰(アニミズム)的なものなんだけど、自然の力を使い奇跡を起こす。それらは一般に、様々な呼び名がある。神秘の力、霊妙(れいみょう)な力、神通力(じんつうりき)、霊感、魔力、呪術、神術―――」

トリコも小松も、神妙(しんみょう)な面持ちでユキの話を聞いていた。

 

「要するに、そんな不可思議な力や(じゅつ)の研究中に事故って暴発して、結果私がこの世界に飛ばされたんじゃないか・・・っていう推測(すいそく)というよりは、状況を(かえり)みての憶測(おくそく)なんだけど―――」

「「・・・・・・・・・」」

無言の2人に、ユキは心配になって確認を入れる。

「えっと、理解・・・追いついてる?」

壮大(そうだい)過ぎて・・・ちょっと。ユキさんは神職(しんしょく)って事でしょうか?」

もたらされる情報に圧倒されているのか、小松は愕然(がくぜん)と目を見開いている。

「え?あぁ、まぁ・・・どうだろ?広義(こうぎ)では・・・?トリコは?」

「・・・自然界の美味いもん見付けられたりすんのか?」

大層(たいそう)真剣な眼差しで問われた。

「ブレないね。それは今のとこ分からん」

この世界の事がまだわからな過ぎて、試してもいない事なのでユキは正直に伝える。

 

「―――コレが初めて会った時、私があんな山奥に居た理由だよ、小松」

「・・・ボクが港でどこから来たのか(たず)ねた時、遠い遠いところだって言ったのは、そういった経緯(けいい)があったからだったんですね」

ユキの不可解な言動についての合点がいった小松。

「ん?待てよ。じゃあ帰る場所がないって事か?」

「だから会ったばかりで危険な狩りに付いて来たんですか?無謀(むぼう)過ぎません?!」

トリコの気付きに、小松が(なお)も驚いた様子で訴えかけてくる。

驚きの上乗せが出来るとは、小松はなんて器用な事をするのか。

小松が軽はずみな行動だと声を上げれば、ユキも言い返す。

「小松だって力が無いのに、無謀(むぼう)なのは一緒でしょ」

「いや、そこじゃねーよ。ユキ、行く当てがねぇならウチに来ねぇか?」

「!いいのっ?」

トリコの提案に、ユキは瞳を輝かせる。

「ああ、部屋は(あま)ってるし。金もねぇならどこも泊まれねぇだろ?」

正直(しょうじき)渡りに船だよっ、ありがとうーっ!!」

「良かったですねユキさんっ」

身の上を打ち明けることに対する不安から一転、当面の衣食住が保証されユキは心から感謝の意を示した。

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