【トリコ夢】赤い宇宙へ   作:らぴ=どらみ

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空模様と、サニーとユキの関係について、2つの意味をかけたタイトルです。
ようやくサニーの熱視線の理由が判明しました。
えーいっ、もどかしいんじゃあっ!


21密雲不雨

密雲不雨(みつうんふう)・・・前触れ/前兆はあるのに事が起こらない。兆候はあるのに、以前として物事が変わらない。雨雲が空一面を覆っているが、まだ雨は降らない。恩恵が行き渡らない。

 

 

『マッシュルームウッド』を抜けて、サニーと小松は岩石(がんせき)砂漠のような地表が岩で(おお)われた場所を歩いていた。

いつの間にか空全体が密雲(みつうん)に閉ざされ、辺りはどんよりと薄暗い。

1枚の葉も無いぐにゃりと(いびつ)に曲がりくねった木々が、岩肌の平野にポツポツと生えている。

 

「なあ。所長のリッキーと行動している・・・ユキ、だっけ。今なにしてんだ?」

「さあ、ボクも別行動の理由を聞いてなくて。いつもは一緒にトリコさんの狩りに付いて行っているんですけどね」

「ふーーーん・・・・・・。ところで袖口(そでぐち)のソレなんだ?」

サニーは小松の腕に知らぬ間に付いている模様を指差す。

「ユキさんの位置と様子がわかるそうですよ。試しに見てみましょうか」

向けられた疑問を解消しようと、小松は模様に触れてみる。

 

模様から浮かび上がったのは、マッシュルームウッドと黒草の草原(ブラックカーペット)の堺。

リッキーの背から降りて、一輪の花を手に取るユキの姿があった。

「なんだこの花・・・ほんのり光ってね?」

(この辺りじゃ見ねえ花だな・・・)

鮮やかな(だいだい)の花弁を持つ植物は、ユリに似た外見をしている。

「キレーですね。なんの花でしょう」

 

『―――忘れ(ぐさ)か・・・。なんでこんなところに』

 

「!向こうの声も聞こえんのか」

「そのようですね」

聞こえて来たユキの声に、途端に後ろめたさを覚える。

「これって・・・(のぞ)き見か盗撮じゃね・・・?」

「い、一応ユキさんの許可というか、見られること知ってますからね?!ユキさんの道具ですし、ボクらの様子も向こうから見えるはずです」

小松が弁明するが、先にユキの様子を見てしまったサニーの負い目は晴れない。

模様(ソレ)に触れなきゃ見れねえだろ。てか、俺の許可も取れよっ」

「・・・ごもっともです」

 

『誰も居ないところにあったのは(さいわ)いだけど・・・。私も向こうじゃ忘れらてるかな』

『・・・ギャウゥ・・・』

頭をすり寄せてきたリッキーの(あご)を、ユキはゆっくりと()でる。

 

(ワスレグサに、向こう(・・・)?故郷や元居た職場か・・・?)

ユキの別行動の理由に、第1ビオトープでは見かけぬ花。

引っかかる事ばかりだが、サニーが最も注目していたのは別にあった。

(黒い草原を背景に(たたず)むハイアンパンサーと謎の花を手にした若い女性・・・。マッシュルームウッドでも場所はアレだったが・・・猛獣と心通わせてんのは、この上ない美だった)

 

「ユキさん・・・」

なにか感じ入っている小松以上に、サニーは映し出される光景に魅入(みい)る。

華麗な花を手に、しなやかでいて(うるわ)しい獣と共に黒い草原に悠然(ゆうぜん)と立つその姿。

ある種、非現実的な黒漆(こくしつ)の草地では、黒以外のものがよく()える。

(なんつう素晴らしいシチュっ・・・!!・・・まるで一枚の絵画のようだ)

サニーは己の目に映る感動的なコラボレーションに、ひとつの理想を見たと打ち(ふる)えていた。

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